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第2章

第96話 リリス13歳 商会訪問2

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開かれた扉の先は薄暗い部屋だった。昼間なのに暗いのはカーテンが閉められているからだった。アシュリーは明かりをつけると、皆を中へ招き入れた。
部屋の真ん中には、大きなテーブルが置いてあった。ベイガーとアシュリーがテーブルを回り込み、そのテーブルを挟んでみんなの向かいに立つ。
そしてベイガーが「さあ、ご覧なさぁい」と言うと、何もなかったテーブルの上に突然パッと3つの品が現れた。現れたのは、右からツボ、ラペルピン、生地だった。突然現れた品にリリスたち女性陣は驚きの声を上げた。

「えっ?どこから現れたの?」
「何もなかったのに!」
「どんな仕掛け?!」

「みんな驚かせちゃったよね。すごく貴重な品だから、普段は魔法で見えないようにしてるんだ」

「そうなのよぉ。一応、貴重な商品は厳重に保管してるんだけどぉ、これは特に珍しい商品だから、部屋に結界張って、さらに魔法で隠してるのよぉ。万が一、盗まれたなんてことになったら、もうたいへーん。うち潰れちゃうわぁ」

アシュリーとベイガーが説明した。

「あっ、さっきボタンを押していたのは、結界ですか?」

リリスの問に「御名答」と上機嫌でベイガーが答えた。

(へえ、魔法でなくあんなボタンで結界を操作できるなんて、凄いわね。なんか他にもいろいろ仕掛けがありそうね)

そう考えたリリスは、部屋の中を見回した。そんなリリスにスタイラスは「リリス嬢、探しても簡単には見つからないと思うよ」と小声で言った。それにリリスは「へっ?!なんで分かったの?」と顔を赤くした。

(相変わらず、スタイラス様に思考がダダ漏れかぁ。ホントに彼は鋭いわね。アルミーダさんにも分かりやすいって言われた前科あるし、これは本格的に貴族の仮面を被る練習が必要かしら)

リリスが考えてる横でエリーゼが「私たちにそんなこと言っても大丈夫なんですか?」と聞いた。それにベイガーが微笑むと、言った。

「大丈夫。息子が信用してるお友達だしぃ、それにアルバート公爵家にマリアセレン公爵家はもちろん、サマリー侯爵家とサラマンカ伯爵家、どの家もとーっても信用のおける貴族だし、お客様ですものぉ・・ねっ?だからぜーんぜん平気なの。
さあ、それより今日はこれを見に来たんでしょ?さあさあ、近くに来て見てみなさい」

ベイガーに促されたリリスたちは前へ出て、テーブルに並ぶ品を珍しそうに見る。ツボと生地は淡いブルーをしており、ラペルピンにはやはり淡いブルーの宝石が付いていた。

「手に取っても大丈夫だよ。光の角度によって色が変わるから、やってみて」

アシュリーの言葉にリリスたちは各々手に取る。ラペルピンを手にしたリリスは目の高さにかざし、角度を変えてみる。すると噂通り淡いブルーの宝石がピンクに見えたり、グリーンに見えたりした。

「うわぁ、すごくきれい」

思わず感嘆の声を上げたリリスに、ベイガーが言った。

「そうでしょう?その石はアクアマリンなんだけどぉ、ミレドールで採れる石だけは、そうやって色が変化して見えるのよぉ。不思議よねぇ。
ちなみにそれはさる高貴なお方がご購入済みだからぁ、もう買えないわよぉ」

(へえ、高貴なお方・・・こんなの買えるなんて、王族か公爵、侯爵ぐらいよね。まあうちじゃないわね。スタイラス様のところでもなさそうだし・・・まあ、関係ないか。それより・・)

リリスはここへ来る途中に見かけた物が気になっていたため、ベイガーに聞いた。

「あの、さっきここへ来る途中に見かけた商品を買うことはできますか?」

「あらぁ、何かリリス様のお眼鏡に叶う商品があったかしらぁ」

「テーブルの上にアクセサリーが沢山置いてあったうちの1つです」

「あぁ、あそこね。もちろんだーい歓迎よぉ。後で案内するわね」

ベイガーはそう言うと、ウインクした。

(おっおう、おじさまのウインクはなかなかの破壊力ね。でもやった。どうしてもあれが気になるのよ)

リリスはあれをもう一度見られることに心が躍った。
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