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第2章
第93話 リリス13歳 愛情表現頑張ってみた4
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カフェでお土産にといくつかケーキを包んで貰い、店を後にしたリリスたちは帰宅の途に着いていた。
「リリィ、今日はとても驚いたし、楽しかったよ。まさか芝居をプランしてくれてるとは思ってなかったからね」
「ホント?ホントにホント?じゃあ、サプライズは成功ね」
リリスは興奮して前のめりに言った。それにヘンリーは微笑むと「あぁ、でも一番驚かされたのはお義父上だね」と言い、リリスもそれに頷いた。
「まさかお父様があんな手配をしてたなんて、知らなかった。今朝もいつも通りなーんにも言わずにお仕事に行ったのよ」
「きっと今日は落ち着かなかっただろうね。ずっとリリィが驚いているかなってソワソワしてそうじゃない?」
ダーウィンの姿を想像したふたりは顔を見合わせ、笑った。
そして、リリスは座席の端に置いていたバッグから小さな包みを取り出し、ヘンリーに渡す。「お誕生日のプレゼント・・気に入ってくれるといいんだけど」と言い、微笑んだ。ヘンリーはパッと笑顔になると「開けていい?」と聞き、彼女が頷くと包みをゆっくり開けた。
「あっ、これ。欲しかったやつだ」
彼の手には一本のペンがあった。
「リリィ、いつから準備してくれたの?このペンって王都で一番の職人が作るペンだよね。注文してから手に入れるまで何ヶ月もかかるって・・しかも名前まで入ってる」
ヘンリーの嬉しそうな様子にリリスは満足そうに何度も頷いた。
「普段使えるものがいいと思って。それにペンなら学園でも使えるし」
「そうだね。このペンで勉強したら、捗りそうだよ。それにリリィとの結婚証書のサインもこのペンでしたら、素敵じゃないかい?」
「そっ、そんなに先の話・・」
「僕としてはリリィが成人したら、すぐにでも結婚したいからね。そうするとあと2年半足らずだよ。その前から結婚式の準備があるから、あっという間だろう?」
王国ではお互いに16歳の誕生日を迎えると結婚できる。平民ではそうする者も多いが、国内のいずれかの学生になることが多い貴族は、卒業してから結婚するのが慣例だった。どこの学び舎を卒業するかによって得られるステータスも違い、社交において重要な役割も担っていた。また婚約者のいない者にとって、より良い結婚相手探しの手助けにもなるからだ。もし学生のうちに結婚の運びとなった場合は、退学するというのが当たり前だった。
「ちょっと、ヘンリー!成人してすぐって、私たちまだ学生よ!そんなの聞いたことがないわ!」
リリスは慌てて言った。ヘンリーなら本当に周りを納得させ、結婚しそうだと思ったからだ。リリスの慌てっぷりにヘンリーはクスクス笑うと穏やかな声で言った。
「リリィ、冗談だよ。いや、成人してすぐ結婚したいというのは冗談じゃなくて僕の本心だよ。でも流石にリリィが卒業するまでは待つから、あと・・4年半か。長いなぁ・・今日ほどリリィと同じ年に生まれなかったことを恨んだことはないね」
ヘンリーはそう口にすると、リリスの漆黒の長い髪を一束手に取ると、それに唇を落とした。その仕草を妙に色っぽく感じたリリスの頬は一瞬で赤く染まり、彼から目を離せなくなった。
「リリィ」
ヘンリーがリリスの瞳を見つめて艶っぽい声で呼ぶ。その声にリリスは思わずあのボックス席での出来事を思い出した。
「だっ、だっ、ダメッ!」
リリスはそう叫ぶと、思わず目をギュッと瞑った。
・・・・・・
(あれっ?なにも・・ない・・)
恐る恐るリリスは目を開けると、そこには必死に笑いを堪えているヘンリーの姿があった。
「クックッ・・もうリリィは何を想像したのかなぁ。クスックッ・・・」
(悔しいぃぃぃ・・かっ、完全にからかわれたぁ)
「あっ、あれはヘンリーが悪いのよ。あっ、あんなことす・・・」
リリスは自分の言葉にさらに顔を真っ赤にし、頭を抱えた。そしてジト目で彼を見た。
(もう人をなんだと思ってるのよ。そんなに笑わなくてもいいじゃない・・ヘンリーのイジワル・・)
「リリィ、今日はとても驚いたし、楽しかったよ。まさか芝居をプランしてくれてるとは思ってなかったからね」
「ホント?ホントにホント?じゃあ、サプライズは成功ね」
リリスは興奮して前のめりに言った。それにヘンリーは微笑むと「あぁ、でも一番驚かされたのはお義父上だね」と言い、リリスもそれに頷いた。
「まさかお父様があんな手配をしてたなんて、知らなかった。今朝もいつも通りなーんにも言わずにお仕事に行ったのよ」
「きっと今日は落ち着かなかっただろうね。ずっとリリィが驚いているかなってソワソワしてそうじゃない?」
ダーウィンの姿を想像したふたりは顔を見合わせ、笑った。
そして、リリスは座席の端に置いていたバッグから小さな包みを取り出し、ヘンリーに渡す。「お誕生日のプレゼント・・気に入ってくれるといいんだけど」と言い、微笑んだ。ヘンリーはパッと笑顔になると「開けていい?」と聞き、彼女が頷くと包みをゆっくり開けた。
「あっ、これ。欲しかったやつだ」
彼の手には一本のペンがあった。
「リリィ、いつから準備してくれたの?このペンって王都で一番の職人が作るペンだよね。注文してから手に入れるまで何ヶ月もかかるって・・しかも名前まで入ってる」
ヘンリーの嬉しそうな様子にリリスは満足そうに何度も頷いた。
「普段使えるものがいいと思って。それにペンなら学園でも使えるし」
「そうだね。このペンで勉強したら、捗りそうだよ。それにリリィとの結婚証書のサインもこのペンでしたら、素敵じゃないかい?」
「そっ、そんなに先の話・・」
「僕としてはリリィが成人したら、すぐにでも結婚したいからね。そうするとあと2年半足らずだよ。その前から結婚式の準備があるから、あっという間だろう?」
王国ではお互いに16歳の誕生日を迎えると結婚できる。平民ではそうする者も多いが、国内のいずれかの学生になることが多い貴族は、卒業してから結婚するのが慣例だった。どこの学び舎を卒業するかによって得られるステータスも違い、社交において重要な役割も担っていた。また婚約者のいない者にとって、より良い結婚相手探しの手助けにもなるからだ。もし学生のうちに結婚の運びとなった場合は、退学するというのが当たり前だった。
「ちょっと、ヘンリー!成人してすぐって、私たちまだ学生よ!そんなの聞いたことがないわ!」
リリスは慌てて言った。ヘンリーなら本当に周りを納得させ、結婚しそうだと思ったからだ。リリスの慌てっぷりにヘンリーはクスクス笑うと穏やかな声で言った。
「リリィ、冗談だよ。いや、成人してすぐ結婚したいというのは冗談じゃなくて僕の本心だよ。でも流石にリリィが卒業するまでは待つから、あと・・4年半か。長いなぁ・・今日ほどリリィと同じ年に生まれなかったことを恨んだことはないね」
ヘンリーはそう口にすると、リリスの漆黒の長い髪を一束手に取ると、それに唇を落とした。その仕草を妙に色っぽく感じたリリスの頬は一瞬で赤く染まり、彼から目を離せなくなった。
「リリィ」
ヘンリーがリリスの瞳を見つめて艶っぽい声で呼ぶ。その声にリリスは思わずあのボックス席での出来事を思い出した。
「だっ、だっ、ダメッ!」
リリスはそう叫ぶと、思わず目をギュッと瞑った。
・・・・・・
(あれっ?なにも・・ない・・)
恐る恐るリリスは目を開けると、そこには必死に笑いを堪えているヘンリーの姿があった。
「クックッ・・もうリリィは何を想像したのかなぁ。クスックッ・・・」
(悔しいぃぃぃ・・かっ、完全にからかわれたぁ)
「あっ、あれはヘンリーが悪いのよ。あっ、あんなことす・・・」
リリスは自分の言葉にさらに顔を真っ赤にし、頭を抱えた。そしてジト目で彼を見た。
(もう人をなんだと思ってるのよ。そんなに笑わなくてもいいじゃない・・ヘンリーのイジワル・・)
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