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第2章
第92話 リリス13歳 愛情表現頑張ってみた3
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チュッ
空間に微かなリップ音が鳴る。
(やっちゃったぁぁぁ。やっ、やっぱり恥ずかしい・・・いっそ、逃げちゃう?ほら、ヘンリー、目を瞑ってるし・・いやいや、なーに言っちゃってるの。自分でやらかしといて、逃げるとかありえないし・・)
「もういいよ・・ヘンリー」
リリスは逃げ出すというありえない選択肢を心から消し、目の前の愛する人にそう言った。ヘンリーは、ゆっくり目を開けた。その瞳に顔を真っ赤にしたリリスの姿が映る。その彼の表情は、真剣だった。
「リリィ・・」
ヘンリーは一言そう呟くと、リリスの頭と背中に腕を回し、ぐっと引き寄せた。
そしてリリスの唇と彼のそれが合わさるかと思われたが、その寸前で止まり合わさることはなかった。
(こっ、こっ、これって・・)
ヘンリーのあっという間の行動にリリスはガチガチに固まっていた。ヘンリーはリリスに回していた腕を彼女の肩に置くと、ゆっくりと体を離した。そして小さく息を吐くと微笑んだ。
「リリィ・・こういう時はせめて頬でしょっ」
「へっ?ほほ?・・あー、頬・・頬、頬・・ほーほっほっ」
ヘンリーは言動が明らかに動揺しているリリスに苦笑すると「ごめん」と謝った。そして言葉を続けた。
「リリィのお父上がせっかく用意してくれたのに、僕が悪かったよ。危うく顔向けできないところだった」
リリスは口をパクパクさせて、ヘンリーに言葉を返すことができなかった。リリスの様子にヘンリーは苦笑した。
「リリィ、さっきも言ったけど、なんで額なの。頬にしてくれなくちゃ」
ヘンリーはそう言うと、リリスの頬にそっと触れた。そして苦笑からいつものキラキラスマイルになると、頬に当てていた手で彼女の鼻を軽くつまんだ。
「ひっ、ひひゃい」
リリスは彼のイタズラに我に返ると、見つめていた彼の視線と合った。ヘンリーはリリスの意識が自分に向くと、手を離した。
「リリィの気持ちは受け取ったからね。ありがとう」
「・・・・ほっぺは無理・・嫌とかそう言うことじゃなくて、恥ずかしすぎて・・・ヘンリーの言うとおり私がお子様なの。いまはおでこで精一杯・・・ごめんなさい」
「なんで謝るの。リリィの気持ちは今ので十分すぎるほど分かったし、いますごく幸せなんだ・・ほら、せっかくの芝居、終わっちゃうから観よう」
ヘンリーは満面の笑顔でそう言った。リリスもコクッと頷くと、微笑みを返した。そしてヘンリーは彼女がいつも付けている髪留めに一瞬触れると、舞台に向き直った。リリスもまた舞台に意識を向けた。
(はぁぁぁ、緊張したぁぁ。なんとか今日の最大ミッションは完遂したわね。
でもさっきのヘンリーにはビックリした。まさかあんな・・・でっ、でも・・いつかはするんだし、私もいつかはおでこからほっぺにできるようレベルアップ目指さないとね)
リリスは少しズレた決意を胸にこの後の予定を頭の中で考え始めた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
芝居を堪能した二人は劇場からカフェへ場所を移した。ここは人気のお店で予約なしでは入るまでに並ぶのが当たり前だった。マリーに予約をお願いしていたリリスは、ヘンリーにエスコートされ店内に入る。
「いらっしゃいませ。アルバート公爵家のリリス様いらっしゃいますね。お待ちしておりました。さあ、どうぞこちらへ」
店の女性に丁寧にお辞儀をされ、案内されていくリリスは他に客が居ないことに気付いた。思わずリリスたちは顔を見合わせた。そうして案内された先は、陽射しの温もりが有り難いテーブル席だった。リリスは席に着くと、女性に聞いた。
「あの、もしかして父から何か言われましたか?」
それに女性は微笑むと「はい。公爵様よりご連絡をいただきまして、今日は貸切とさせていただいました」と言った。
「まあ、お父様が!」とリリスは一応驚いた声を上げたが、店に他の客が居ない時点で予想はしていた。
(お父様・・今日の予定筒抜けじゃない。さてはマリーから聞き出したわね。これも嬉しいよ・・嬉しいけど、これじゃあ、私がお祝いしてるんじゃなくて、お父様がお祝いしてるみたいじゃない?!しかも領地でもないのに、公爵家の力発揮しちゃって、貸切とかそこまでしなくても・・・)
リリスはヘンリーを見て苦笑すると、彼は「お父上はリリィを溺愛してるからね」と笑って言った。
そして二人はケーキを堪能した。リリスの幸せそうな顔にヘンリーも自然と笑顔になる。二人のまわりは、周囲より穏やかな空気に包まれていた。
空間に微かなリップ音が鳴る。
(やっちゃったぁぁぁ。やっ、やっぱり恥ずかしい・・・いっそ、逃げちゃう?ほら、ヘンリー、目を瞑ってるし・・いやいや、なーに言っちゃってるの。自分でやらかしといて、逃げるとかありえないし・・)
「もういいよ・・ヘンリー」
リリスは逃げ出すというありえない選択肢を心から消し、目の前の愛する人にそう言った。ヘンリーは、ゆっくり目を開けた。その瞳に顔を真っ赤にしたリリスの姿が映る。その彼の表情は、真剣だった。
「リリィ・・」
ヘンリーは一言そう呟くと、リリスの頭と背中に腕を回し、ぐっと引き寄せた。
そしてリリスの唇と彼のそれが合わさるかと思われたが、その寸前で止まり合わさることはなかった。
(こっ、こっ、これって・・)
ヘンリーのあっという間の行動にリリスはガチガチに固まっていた。ヘンリーはリリスに回していた腕を彼女の肩に置くと、ゆっくりと体を離した。そして小さく息を吐くと微笑んだ。
「リリィ・・こういう時はせめて頬でしょっ」
「へっ?ほほ?・・あー、頬・・頬、頬・・ほーほっほっ」
ヘンリーは言動が明らかに動揺しているリリスに苦笑すると「ごめん」と謝った。そして言葉を続けた。
「リリィのお父上がせっかく用意してくれたのに、僕が悪かったよ。危うく顔向けできないところだった」
リリスは口をパクパクさせて、ヘンリーに言葉を返すことができなかった。リリスの様子にヘンリーは苦笑した。
「リリィ、さっきも言ったけど、なんで額なの。頬にしてくれなくちゃ」
ヘンリーはそう言うと、リリスの頬にそっと触れた。そして苦笑からいつものキラキラスマイルになると、頬に当てていた手で彼女の鼻を軽くつまんだ。
「ひっ、ひひゃい」
リリスは彼のイタズラに我に返ると、見つめていた彼の視線と合った。ヘンリーはリリスの意識が自分に向くと、手を離した。
「リリィの気持ちは受け取ったからね。ありがとう」
「・・・・ほっぺは無理・・嫌とかそう言うことじゃなくて、恥ずかしすぎて・・・ヘンリーの言うとおり私がお子様なの。いまはおでこで精一杯・・・ごめんなさい」
「なんで謝るの。リリィの気持ちは今ので十分すぎるほど分かったし、いますごく幸せなんだ・・ほら、せっかくの芝居、終わっちゃうから観よう」
ヘンリーは満面の笑顔でそう言った。リリスもコクッと頷くと、微笑みを返した。そしてヘンリーは彼女がいつも付けている髪留めに一瞬触れると、舞台に向き直った。リリスもまた舞台に意識を向けた。
(はぁぁぁ、緊張したぁぁ。なんとか今日の最大ミッションは完遂したわね。
でもさっきのヘンリーにはビックリした。まさかあんな・・・でっ、でも・・いつかはするんだし、私もいつかはおでこからほっぺにできるようレベルアップ目指さないとね)
リリスは少しズレた決意を胸にこの後の予定を頭の中で考え始めた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
芝居を堪能した二人は劇場からカフェへ場所を移した。ここは人気のお店で予約なしでは入るまでに並ぶのが当たり前だった。マリーに予約をお願いしていたリリスは、ヘンリーにエスコートされ店内に入る。
「いらっしゃいませ。アルバート公爵家のリリス様いらっしゃいますね。お待ちしておりました。さあ、どうぞこちらへ」
店の女性に丁寧にお辞儀をされ、案内されていくリリスは他に客が居ないことに気付いた。思わずリリスたちは顔を見合わせた。そうして案内された先は、陽射しの温もりが有り難いテーブル席だった。リリスは席に着くと、女性に聞いた。
「あの、もしかして父から何か言われましたか?」
それに女性は微笑むと「はい。公爵様よりご連絡をいただきまして、今日は貸切とさせていただいました」と言った。
「まあ、お父様が!」とリリスは一応驚いた声を上げたが、店に他の客が居ない時点で予想はしていた。
(お父様・・今日の予定筒抜けじゃない。さてはマリーから聞き出したわね。これも嬉しいよ・・嬉しいけど、これじゃあ、私がお祝いしてるんじゃなくて、お父様がお祝いしてるみたいじゃない?!しかも領地でもないのに、公爵家の力発揮しちゃって、貸切とかそこまでしなくても・・・)
リリスはヘンリーを見て苦笑すると、彼は「お父上はリリィを溺愛してるからね」と笑って言った。
そして二人はケーキを堪能した。リリスの幸せそうな顔にヘンリーも自然と笑顔になる。二人のまわりは、周囲より穏やかな空気に包まれていた。
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