90 / 202
第2章
第82話 リリス13歳 多事多難6
しおりを挟む
アルバスに帰宅を促され、リリスはネージュに「帰ろう」と声をかけた。鱗獣はアルバスが預かることになったため、彼が抱き上げようと手を伸ばすと、その前にネージュが立ち塞がった。
ニャーヴヴヴウー・・・
えっ?!・・・・
「ネージュ、邪魔したらダメだよ。先生、悪い人じゃないから大丈夫だよ」
リリスはネージュに声をかける。
「悪い人じゃないって・・」とリリスの言葉にヘンリーはクックッと笑いを堪えている。そして当のネージュは毛を逆立て、アルバスを威嚇していた。アルバスはというと、両手を上げ「攻撃の意思はないんだけど」と困惑した表情でネージュと向かい合っている。
そんなネージュの姿にヘンリーと顔を見合わせたリリスは、肩をすくめるとアルバスに言った。
「先生、今日は聖獣語しゃべらないんですか?・・というのは冗談で、この子ネージュに懐いてるみたいですし、家で預かりますか?」
「あれは仕方なく喋っただけだ。他から見たら、大の男が何やってるんだ?!状態だぞ。必要に迫られれば致し方ないが、そうそう使いたくはないな。
それに連れて帰るのは構わないが、もしかしたら君に悪意を持っているかもしれない聖獣だぞ。平気なのか?」
「ですよねぇ。それはネージュが守ってくれるから大丈夫かと・・」
リリスはそう言うと、ネージュを見て「ねっ?守ってくれるよね?」と笑顔で言った。リリスのお願いにネージュは「ウーニャ」と短く鳴くと、アルバスに対する威嚇をやめた。リリスは苦笑し「ほら、大丈夫みたいです」と言った。
ネージュに威嚇されたのがショックだったのか、アルバスは「何か気に触ることやらかしたかなぁ」と本気で悩んでいる様子だった。
その後、ヘンリーが鱗獣を抱き上げる。リリスが連れて行こうとしたが、ヘンリーに「危ないかもしれないだろう?とりあえず僕が家まで連れて行くから」と言われ、彼が頑として譲らなかったのだ。
(ヘンリーは私にちょっと過保護すぎるのよね。この子もドラゴンだったら正直怖いけど、ネージュと同じ聖獣なら全然怖くないし。帰ったら、メッチャクチャ構ちゃうんだから!
見て!尻尾ブンブン振って可愛すぎでしょ!あれ絶対喜んでるんだって)
リリスはそんな事を考えながら、ヘンリーたちと揃って保健室を後にした。
廊下へ出ると、アルバスは「これからアルミーダに急ぎ連絡をとって、明後日約束を取り付けるから」と言ったので、彼とは別れた。
そしてリリスとヘンリー、そして聖獣2匹は馬車まで向かった。
「明日、アリーナたちに連絡しないとね。みんな空いてるといいんだけど・・・あっ、お義母様どうしよう」
「しばらくこちらに居るみたいだし、また今度で大丈夫だよ」
「でも・・それなら来週の週末はどうかな?」
「多分大丈夫だと思うけど、母さんに聞いてみるよ。多少の用事ぐらいならリリィのためにキャンセルしそうだけど」
(あー、お義母様・・・想像できちゃうところがなんとも・・ねえ)
リリスは夏休みに訪問した際のヘンリーの両親の様子を思い出し、心が温かくなったのだった。
ニャーヴヴヴウー・・・
えっ?!・・・・
「ネージュ、邪魔したらダメだよ。先生、悪い人じゃないから大丈夫だよ」
リリスはネージュに声をかける。
「悪い人じゃないって・・」とリリスの言葉にヘンリーはクックッと笑いを堪えている。そして当のネージュは毛を逆立て、アルバスを威嚇していた。アルバスはというと、両手を上げ「攻撃の意思はないんだけど」と困惑した表情でネージュと向かい合っている。
そんなネージュの姿にヘンリーと顔を見合わせたリリスは、肩をすくめるとアルバスに言った。
「先生、今日は聖獣語しゃべらないんですか?・・というのは冗談で、この子ネージュに懐いてるみたいですし、家で預かりますか?」
「あれは仕方なく喋っただけだ。他から見たら、大の男が何やってるんだ?!状態だぞ。必要に迫られれば致し方ないが、そうそう使いたくはないな。
それに連れて帰るのは構わないが、もしかしたら君に悪意を持っているかもしれない聖獣だぞ。平気なのか?」
「ですよねぇ。それはネージュが守ってくれるから大丈夫かと・・」
リリスはそう言うと、ネージュを見て「ねっ?守ってくれるよね?」と笑顔で言った。リリスのお願いにネージュは「ウーニャ」と短く鳴くと、アルバスに対する威嚇をやめた。リリスは苦笑し「ほら、大丈夫みたいです」と言った。
ネージュに威嚇されたのがショックだったのか、アルバスは「何か気に触ることやらかしたかなぁ」と本気で悩んでいる様子だった。
その後、ヘンリーが鱗獣を抱き上げる。リリスが連れて行こうとしたが、ヘンリーに「危ないかもしれないだろう?とりあえず僕が家まで連れて行くから」と言われ、彼が頑として譲らなかったのだ。
(ヘンリーは私にちょっと過保護すぎるのよね。この子もドラゴンだったら正直怖いけど、ネージュと同じ聖獣なら全然怖くないし。帰ったら、メッチャクチャ構ちゃうんだから!
見て!尻尾ブンブン振って可愛すぎでしょ!あれ絶対喜んでるんだって)
リリスはそんな事を考えながら、ヘンリーたちと揃って保健室を後にした。
廊下へ出ると、アルバスは「これからアルミーダに急ぎ連絡をとって、明後日約束を取り付けるから」と言ったので、彼とは別れた。
そしてリリスとヘンリー、そして聖獣2匹は馬車まで向かった。
「明日、アリーナたちに連絡しないとね。みんな空いてるといいんだけど・・・あっ、お義母様どうしよう」
「しばらくこちらに居るみたいだし、また今度で大丈夫だよ」
「でも・・それなら来週の週末はどうかな?」
「多分大丈夫だと思うけど、母さんに聞いてみるよ。多少の用事ぐらいならリリィのためにキャンセルしそうだけど」
(あー、お義母様・・・想像できちゃうところがなんとも・・ねえ)
リリスは夏休みに訪問した際のヘンリーの両親の様子を思い出し、心が温かくなったのだった。
0
お気に入りに追加
582
あなたにおすすめの小説
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
【完結160万pt】王太子妃に決定している公爵令嬢の婚約者はまだ決まっておりません。王位継承権放棄を狙う王子はついでに側近を叩き直したい
宇水涼麻
恋愛
ピンク髪ピンク瞳の少女が王城の食堂で叫んだ。
「エーティル様っ! ラオルド様の自由にしてあげてくださいっ!」
呼び止められたエーティルは未来の王太子妃に決定している公爵令嬢である。
王太子と王太子妃となる令嬢の婚約は簡単に解消できるとは思えないが、エーティルはラオルドと婚姻しないことを軽く了承する。
その意味することとは?
慌てて現れたラオルド第一王子との関係は?
なぜこのような状況になったのだろうか?
ご指摘いただき一部変更いたしました。
みなさまのご指摘、誤字脱字修正で読みやすい小説になっていっております。
今後ともよろしくお願いします。
たくさんのお気に入り嬉しいです!
大変励みになります。
ありがとうございます。
おかげさまで160万pt達成!
↓これよりネタバレあらすじ
第一王子の婚約解消を高らかに願い出たピンクさんはムーガの部下であった。
親類から王太子になることを強要され辟易しているが非情になれないラオルドにエーティルとムーガが手を差し伸べて王太子権放棄をするために仕組んだのだ。
ただの作戦だと思っていたムーガであったがいつの間にかラオルドとピンクさんは心を通わせていた。
悪役令嬢ってこれでよかったかしら?
砂山一座
恋愛
第二王子の婚約者、テレジアは、悪役令嬢役を任されたようだ。
場に合わせるのが得意な令嬢は、婚約者の王子に、場の流れに、ヒロインの要求に、流されまくっていく。
全11部 完結しました。
サクッと読める悪役令嬢(役)。
【完結】私を捨てて駆け落ちしたあなたには、こちらからさようならを言いましょう。
やまぐちこはる
恋愛
パルティア・エンダライン侯爵令嬢はある日珍しく婿入り予定の婚約者から届いた手紙を読んで、彼が駆け落ちしたことを知った。相手は同じく侯爵令嬢で、そちらにも王家の血筋の婿入りする婚約者がいたが、貴族派閥を保つ政略結婚だったためにどうやっても婚約を解消できず、愛の逃避行と洒落こんだらしい。
落ち込むパルティアは、しばらく社交から離れたい療養地としても有名な別荘地へ避暑に向かう。静かな湖畔で傷を癒やしたいと、高級ホテルでひっそり寛いでいると同じ頃から同じように、人目を避けてぼんやり湖を眺める美しい青年に気がついた。
毎日涼しい湖畔で本を読みながら、チラリチラリと彼を盗み見ることが日課となったパルティアだが。
様子がおかしい青年に気づく。
ふらりと湖に近づくと、ポチャっと小さな水音を立てて入水し始めたのだ。
ドレスの裾をたくしあげ、パルティアも湖に駆け込んで彼を引き留めた。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
最終話まで予約投稿済です。
次はどんな話を書こうかなと思ったとき、駆け落ちした知人を思い出し、そんな話を書くことに致しました。
ある日突然、紙1枚で消えるのは本当にびっくりするのでやめてくださいという思いを込めて。
楽しんで頂けましたら、きっと彼らも喜ぶことと思います。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい
三谷朱花
恋愛
アリス・デッセ侯爵令嬢と婚約者であるハース・マーヴィン侯爵令息の出会いは最悪だった。
そして、学園の食堂で、アリスは、「ハース様を解放して欲しい」というメルル・アーディン侯爵令嬢の言葉に、頷こうとした。
闇黒の悪役令嬢は溺愛される
葵川真衣
恋愛
公爵令嬢リアは十歳のときに、転生していることを知る。
今は二度目の人生だ。
十六歳の舞踏会、皇太子ジークハルトから、婚約破棄を突き付けられる。
記憶を得たリアは前世同様、世界を旅する決意をする。
前世の仲間と、冒険の日々を送ろう!
婚約破棄された後、すぐ帝都を出られるように、リアは旅の支度をし、舞踏会に向かった。
だが、その夜、前世と異なる出来事が起きて──!?
悪役令嬢、溺愛物語。
☆本編完結しました。ありがとうございました。番外編等、不定期更新です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる