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第2章
第75話 リリス13歳 結果は一緒
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ちょうどその時、廊下が騒がしくなり、授業終了の鐘が鳴った。
それから程なくして、扉をノックする音と共にアリーナが入って来た。
「リリス、気分はどお?あっ、ヘンリー様、やっぱりいらしたのですね」
ヘンリーの姿を確認したアリーナは、会釈した。
「うん。だいぶ良くなったわ」
「アリーナ嬢、リリィがお世話になったね。ありがとう」
二人の言葉に軽く頷いたアリーナは「あっ、リリスの鞄持ってきたから、置いておくね」と言って持っていた鞄をテーブルに置いた。そして椅子をベッドの横に持ってくると腰掛け、不満そうに口を開いた。
「もう、やっぱり講堂での魔法実技はつまらないわね」
それにヘンリーが「あぁ、確かに僕も退屈だったの覚えてるよ」と賛成した。その同意の言葉にアリーナの文句は勢いを増す。
「やっぱりそうですよね。雨の日の実技は、いっそ中止でもいいくらいですよ。特に土魔法なんて、最悪なんですから」
アリーナは腕を組み、口を尖らせている。そんなアリーナの様子にヘンリーは「確かに肝心の地面がないもんね」と苦笑した。
そしてまた扉がノックされ、今度はスタイラス、アシュリー、エリーゼが入って来た。
「リリス嬢、大丈夫?」
「顔色良くなってるね。良かった」
アシュリーとスタイラスはそう口にしながら、ベッドまで近寄って来た。
エリーゼはすぐにヘンリーがいることに気付き、彼に挨拶をする。彼女は夏休みにアルバート領に来られなかったので、ヘンリーとは初対面だった。
「リリス様、気分は・・・まあ、はじめまして。サラマンカ伯爵家のエリーゼと申します」
エリーゼの挨拶にヘンリーも名乗り、「今日はリリィがお世話になったようで、すまなかったね。ありがとう」と感謝の言葉を口にした。
挨拶も済み、みんながリリスの所へ揃うと彼女はベッドから立ち上がり、頭を下げた。
「今日はみんなに迷惑をかけてしまったわ。ごめんなさい。本当にありがとう」
頭を下げたリリスにみんなは気にするなと口々に言った。それにリリスはもう一度「ありがとう」と笑顔を向けた。
「それからレイリー嬢には、新しい制服を渡したから、大丈夫だよ。アシュリーに用意してもらったんだ」
スタイラスの言葉にアシュリーも笑顔で頷いた。それに「本当に何から何まで・・あっ、代金はうちに請求してね」とリリスは言うのを忘れなかった。
「さぁ、もうこの話はお終いね。リリス様も大丈夫そうだし、そろそろ帰るわ」と言ってエリーゼは出て行った。
そしてエリーゼを見送り、扉が閉まるのと同時にアリーナが真剣な表情で口を開いた。
「で、どうなのよ。何があったのよ」
みんなの視線が一斉にリリスへ向けられる。それをリリスはぐるりと見回してから、話し始めた。
「肘が何かに当たったのは確かなの。それが押されたのか当たっただけなのかは、正直分からない」
「今日は混んでたもんな。誰かに当たったのかもしれないよ」
スタイラスの言葉にアリーナとアシュリーも頷いた。
「でも例え偶然でもレイリー様に被害がいったのは、やっぱり驚いたわ。あの時は頭が真っ白になってしまって・・・」
リリスの言葉にアリーナがあれは仕方ないよと慰める。
「リリィの見た夢と結果は同じだけど、違う部分もあるよね?」
ヘンリーの問にリリスは頷き、答える。
「そうね。夢ではお茶会だった。でも私が見た夢も最初と二度目では微妙に変わってるのよ」
「うーん。そうなると、今日起きた事だけ見ると夢と多少違っても、リリィの起こす行動は変わらないってことか」
「でもさ、リリスが夢を見ただけで、何でその夢と同じことが起こるんだろうね。何か得体のしれない力が関わってるとかないよね?」
アリーナが疑問を投げかける。
「確かに人間の仕業ではないかもしれないね」
「えっ、人間じゃないとしたら何?怖い」
「うーん、分からないけど、魔法とか?精霊とか?」
「とにかく今日は制服を汚しただけで済んだけど、階段の夢は何としても阻止しないとね」
アシュリーの言葉にみんなはゴクリと喉を鳴らした。
(そうよ。今日みたいに謝って済む話じゃなくなる。レイリー様に怪我をさせて、下手したら死・・)
リリスは恐ろしさにブルっと体を震わせた。それを心配そうにヘンリーが背中を擦った。
「とにかく階段にだけは注意しないとね。階段なら今日みたいに混んでるなんてこともないだろうし、大丈夫よ」
アリーナはそう言うと頷き、リリスに笑顔を向けた。それにみんなも口々に同意した。
(本当にみんなが大丈夫だと言ってくれると、大丈夫な気がしてくるから不思議ね。みんながいてくれて、良かった)
「僕達も帰ろうか」
アシュリーの言葉をキッカケにみんなも頷き、保健室を出る。そしてヘンリーは鞄を教室に置いたままだったので、リリスと一緒に取りに行くため、アリーナたちとはそのまま別れた。
教室へ向かう途中ヘンリーが口を開いた。
「リリィ、今日は疲れたでしょう?」
「平気よ。保健室で休んだしね」
「あっ、僕も保健室で休んでたことになってるんだったな」
と冗談ぽく笑ったヘンリーを見て、リリスはクスッと笑った。
それから程なくして、扉をノックする音と共にアリーナが入って来た。
「リリス、気分はどお?あっ、ヘンリー様、やっぱりいらしたのですね」
ヘンリーの姿を確認したアリーナは、会釈した。
「うん。だいぶ良くなったわ」
「アリーナ嬢、リリィがお世話になったね。ありがとう」
二人の言葉に軽く頷いたアリーナは「あっ、リリスの鞄持ってきたから、置いておくね」と言って持っていた鞄をテーブルに置いた。そして椅子をベッドの横に持ってくると腰掛け、不満そうに口を開いた。
「もう、やっぱり講堂での魔法実技はつまらないわね」
それにヘンリーが「あぁ、確かに僕も退屈だったの覚えてるよ」と賛成した。その同意の言葉にアリーナの文句は勢いを増す。
「やっぱりそうですよね。雨の日の実技は、いっそ中止でもいいくらいですよ。特に土魔法なんて、最悪なんですから」
アリーナは腕を組み、口を尖らせている。そんなアリーナの様子にヘンリーは「確かに肝心の地面がないもんね」と苦笑した。
そしてまた扉がノックされ、今度はスタイラス、アシュリー、エリーゼが入って来た。
「リリス嬢、大丈夫?」
「顔色良くなってるね。良かった」
アシュリーとスタイラスはそう口にしながら、ベッドまで近寄って来た。
エリーゼはすぐにヘンリーがいることに気付き、彼に挨拶をする。彼女は夏休みにアルバート領に来られなかったので、ヘンリーとは初対面だった。
「リリス様、気分は・・・まあ、はじめまして。サラマンカ伯爵家のエリーゼと申します」
エリーゼの挨拶にヘンリーも名乗り、「今日はリリィがお世話になったようで、すまなかったね。ありがとう」と感謝の言葉を口にした。
挨拶も済み、みんながリリスの所へ揃うと彼女はベッドから立ち上がり、頭を下げた。
「今日はみんなに迷惑をかけてしまったわ。ごめんなさい。本当にありがとう」
頭を下げたリリスにみんなは気にするなと口々に言った。それにリリスはもう一度「ありがとう」と笑顔を向けた。
「それからレイリー嬢には、新しい制服を渡したから、大丈夫だよ。アシュリーに用意してもらったんだ」
スタイラスの言葉にアシュリーも笑顔で頷いた。それに「本当に何から何まで・・あっ、代金はうちに請求してね」とリリスは言うのを忘れなかった。
「さぁ、もうこの話はお終いね。リリス様も大丈夫そうだし、そろそろ帰るわ」と言ってエリーゼは出て行った。
そしてエリーゼを見送り、扉が閉まるのと同時にアリーナが真剣な表情で口を開いた。
「で、どうなのよ。何があったのよ」
みんなの視線が一斉にリリスへ向けられる。それをリリスはぐるりと見回してから、話し始めた。
「肘が何かに当たったのは確かなの。それが押されたのか当たっただけなのかは、正直分からない」
「今日は混んでたもんな。誰かに当たったのかもしれないよ」
スタイラスの言葉にアリーナとアシュリーも頷いた。
「でも例え偶然でもレイリー様に被害がいったのは、やっぱり驚いたわ。あの時は頭が真っ白になってしまって・・・」
リリスの言葉にアリーナがあれは仕方ないよと慰める。
「リリィの見た夢と結果は同じだけど、違う部分もあるよね?」
ヘンリーの問にリリスは頷き、答える。
「そうね。夢ではお茶会だった。でも私が見た夢も最初と二度目では微妙に変わってるのよ」
「うーん。そうなると、今日起きた事だけ見ると夢と多少違っても、リリィの起こす行動は変わらないってことか」
「でもさ、リリスが夢を見ただけで、何でその夢と同じことが起こるんだろうね。何か得体のしれない力が関わってるとかないよね?」
アリーナが疑問を投げかける。
「確かに人間の仕業ではないかもしれないね」
「えっ、人間じゃないとしたら何?怖い」
「うーん、分からないけど、魔法とか?精霊とか?」
「とにかく今日は制服を汚しただけで済んだけど、階段の夢は何としても阻止しないとね」
アシュリーの言葉にみんなはゴクリと喉を鳴らした。
(そうよ。今日みたいに謝って済む話じゃなくなる。レイリー様に怪我をさせて、下手したら死・・)
リリスは恐ろしさにブルっと体を震わせた。それを心配そうにヘンリーが背中を擦った。
「とにかく階段にだけは注意しないとね。階段なら今日みたいに混んでるなんてこともないだろうし、大丈夫よ」
アリーナはそう言うと頷き、リリスに笑顔を向けた。それにみんなも口々に同意した。
(本当にみんなが大丈夫だと言ってくれると、大丈夫な気がしてくるから不思議ね。みんながいてくれて、良かった)
「僕達も帰ろうか」
アシュリーの言葉をキッカケにみんなも頷き、保健室を出る。そしてヘンリーは鞄を教室に置いたままだったので、リリスと一緒に取りに行くため、アリーナたちとはそのまま別れた。
教室へ向かう途中ヘンリーが口を開いた。
「リリィ、今日は疲れたでしょう?」
「平気よ。保健室で休んだしね」
「あっ、僕も保健室で休んでたことになってるんだったな」
と冗談ぽく笑ったヘンリーを見て、リリスはクスッと笑った。
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