78 / 202
第2章
第70.5話 幕間 アシュリー視点
しおりを挟む
今日はスタイラスたち皆が作戦会議のため、うちに集まっていた。
「あっ、父さん!今、スタイラスたちが来てるんだ」
僕は商会を出て行こうとしていた父さんに声をかけたが、彼は軽く手を振ると行ってしまった。「シュトリーマとの商談に遅れそうなんですよ」と番頭が教えてくれた。
今日はリリス嬢にヘンリー様、アリーナ嬢もいるのに。会わせたかったな。まあ、仕方ないか。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
リリス嬢の話が一段落したところで、僕が最も気になっていた事をアリーナ嬢が切り出した。ナイスアシスト!
「ねえねえ、ところで魔女アルミーダに会った時のこと、もっと詳しく教えなさいよ」
「いいね。僕も非常に興味があるね」
僕は興奮を抑え、冷静を装い言った。
リリス嬢の話は、驚きの連続だった。
あのお婆さんが魔女だったのに始まり、キャンディーに込められた魔力、終いには店番を影武者?いや違うな・・影武者ではなくて分身?に任せてたなんて。さすが魔女アルミーダ。
どうせならその分身を見たかった。目の前で見たら、興奮して夜、眠れなかっただろう。
さらにリリス嬢はもうひとつ分かったことがあると言った。そして彼女は立ち上がると、窓の前の何もない空間を撫で始めた。そして、優しく何かに語りかけた。
「ねぇ、ネージュ。お願い。みんな私の大事な友達なの。だから、ネージュも仲良くしてくれたら嬉しいな」
どうしたんだ?いったいそこに何かあるのか?!おまけに"ネージュ"って・・さっき誤魔化されたやつじゃないか。
そんな僕の思考は、目の前の変化に吹っ飛んだ。リリス嬢の目の前に白い生き物が現れたのだ。陽の光を浴び真っ白い毛がキラキラ反射していて、神々しさを放っていた。
(凄い!これはなんだ?!猫?・・いや、違うな。尻尾が2本あるぞ)
僕の疑問にスタイラスが聖獣だと教えてくれた。しかもリリス嬢が手懐けたって、そんなことできるのか?!
これがネージュか?!しかし、生き物は流石に取り扱えないな。残念。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
リリス嬢が新たな夢を見たということで、昼休みに緊急招集された。
今度は、どんな夢だろうか。誰ひとり傷付かない夢ならどんなにかいいのに。
話を聞いてみると、なかなかショッキングな内容だった。
王子が出てくるとか国外追放に暗殺とか現実味がない気がするけど・・だから夢なのか・・
「それにリリィの婚約者は、"僕"だからね」
ヘンリー様が、リリス嬢の所有権を主張している。そんなの皆分かってますよ。
「でもリリス嬢の婚約者という立場から考えると物語の王子は、ヘンリーということになるよなぁ。実はヘンリーとレイリー嬢が恋仲になるってことはないよな?!」
スタイラスはできるヤツだと思っていたが、気付かなくていいところまで気付いてくれちゃって、どうすんだ?!この雰囲気。
リリス嬢もアリーナ嬢も石像のように固まってるし、ヘンリー様なんて殺気を放ってるぞ。そういうことは、気付いても口にしたら駄目だろ。まさか、お前の私欲が混じってないよな。
ヘンリー様が他の令嬢と仲良くなって、リリス嬢との婚約を破棄とか天変地異が起こってもないだろう。どれだけ彼がリリス嬢を溺愛してるか、お前分かってるだろうに。
スタイラスがリリス嬢に好意を持っていることは、何となく気付いていた。きっと気付いたのは、長い付き合いの僕だけだろう。
思えば、僕達がリリス嬢と仲良くなるきっかけも、スタイラスが彼女をランチに積極的に誘ってたからだ。きっと入学式の日、彼女と婚約者の姿が目立ってたから、そこで興味持ったんだろうな。
あの時のリリス嬢は、僕が見ても可愛かった。いや普段も可愛らしいが、ヘンリー様に翻弄されてる姿が何とも言えず・・おっと、こんなこと考えてるなんて、ヘンリー様に知られたら・・それこそ明日には行方不明になってそうだ。
スタイラスは元々、誰とでも分け隔てなく接する奴だ。身分を笠に着る貴族も多いなか、彼は公爵家嫡男という立場を少しも鼻にかけない良い奴だ。ただの商会の息子の僕とも仲良くしてくれる。
「リリス嬢、僕たち早めにカフェテリアに行くんだけど、一緒に行かない?」
最初にスタイラスが誘ったとき、明らかにリリス嬢とアリーナ嬢は戸惑ってた。でもスタイラスは、そんなことどこ吹く風で自己紹介始めちゃってさ。
「僕はスタイラス。で、こいつはアシュリー。エルムンド商会の息子だよ」
とかサラッと答えやがって。
まさかと思うが、ヘンリー様から彼女を奪おうなんて考えてないよな。
いいや、それはないな。スタイラスはそんな奴じゃない。
こいつの婚約者は、昨年流行り病で亡くなっていた。それ以来、婚約の打診が山のようにくるが、どれもピンとこないらしい。家格のつり合いとか色々あるんだとさ。貴族って面倒だよな。
スタイラスもいつかは婚約しなくちゃいけないんだし、リリス嬢みたいな素敵な人が現れるといいよな。
親友として心から願ってるよ。
「あっ、父さん!今、スタイラスたちが来てるんだ」
僕は商会を出て行こうとしていた父さんに声をかけたが、彼は軽く手を振ると行ってしまった。「シュトリーマとの商談に遅れそうなんですよ」と番頭が教えてくれた。
今日はリリス嬢にヘンリー様、アリーナ嬢もいるのに。会わせたかったな。まあ、仕方ないか。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
リリス嬢の話が一段落したところで、僕が最も気になっていた事をアリーナ嬢が切り出した。ナイスアシスト!
「ねえねえ、ところで魔女アルミーダに会った時のこと、もっと詳しく教えなさいよ」
「いいね。僕も非常に興味があるね」
僕は興奮を抑え、冷静を装い言った。
リリス嬢の話は、驚きの連続だった。
あのお婆さんが魔女だったのに始まり、キャンディーに込められた魔力、終いには店番を影武者?いや違うな・・影武者ではなくて分身?に任せてたなんて。さすが魔女アルミーダ。
どうせならその分身を見たかった。目の前で見たら、興奮して夜、眠れなかっただろう。
さらにリリス嬢はもうひとつ分かったことがあると言った。そして彼女は立ち上がると、窓の前の何もない空間を撫で始めた。そして、優しく何かに語りかけた。
「ねぇ、ネージュ。お願い。みんな私の大事な友達なの。だから、ネージュも仲良くしてくれたら嬉しいな」
どうしたんだ?いったいそこに何かあるのか?!おまけに"ネージュ"って・・さっき誤魔化されたやつじゃないか。
そんな僕の思考は、目の前の変化に吹っ飛んだ。リリス嬢の目の前に白い生き物が現れたのだ。陽の光を浴び真っ白い毛がキラキラ反射していて、神々しさを放っていた。
(凄い!これはなんだ?!猫?・・いや、違うな。尻尾が2本あるぞ)
僕の疑問にスタイラスが聖獣だと教えてくれた。しかもリリス嬢が手懐けたって、そんなことできるのか?!
これがネージュか?!しかし、生き物は流石に取り扱えないな。残念。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
リリス嬢が新たな夢を見たということで、昼休みに緊急招集された。
今度は、どんな夢だろうか。誰ひとり傷付かない夢ならどんなにかいいのに。
話を聞いてみると、なかなかショッキングな内容だった。
王子が出てくるとか国外追放に暗殺とか現実味がない気がするけど・・だから夢なのか・・
「それにリリィの婚約者は、"僕"だからね」
ヘンリー様が、リリス嬢の所有権を主張している。そんなの皆分かってますよ。
「でもリリス嬢の婚約者という立場から考えると物語の王子は、ヘンリーということになるよなぁ。実はヘンリーとレイリー嬢が恋仲になるってことはないよな?!」
スタイラスはできるヤツだと思っていたが、気付かなくていいところまで気付いてくれちゃって、どうすんだ?!この雰囲気。
リリス嬢もアリーナ嬢も石像のように固まってるし、ヘンリー様なんて殺気を放ってるぞ。そういうことは、気付いても口にしたら駄目だろ。まさか、お前の私欲が混じってないよな。
ヘンリー様が他の令嬢と仲良くなって、リリス嬢との婚約を破棄とか天変地異が起こってもないだろう。どれだけ彼がリリス嬢を溺愛してるか、お前分かってるだろうに。
スタイラスがリリス嬢に好意を持っていることは、何となく気付いていた。きっと気付いたのは、長い付き合いの僕だけだろう。
思えば、僕達がリリス嬢と仲良くなるきっかけも、スタイラスが彼女をランチに積極的に誘ってたからだ。きっと入学式の日、彼女と婚約者の姿が目立ってたから、そこで興味持ったんだろうな。
あの時のリリス嬢は、僕が見ても可愛かった。いや普段も可愛らしいが、ヘンリー様に翻弄されてる姿が何とも言えず・・おっと、こんなこと考えてるなんて、ヘンリー様に知られたら・・それこそ明日には行方不明になってそうだ。
スタイラスは元々、誰とでも分け隔てなく接する奴だ。身分を笠に着る貴族も多いなか、彼は公爵家嫡男という立場を少しも鼻にかけない良い奴だ。ただの商会の息子の僕とも仲良くしてくれる。
「リリス嬢、僕たち早めにカフェテリアに行くんだけど、一緒に行かない?」
最初にスタイラスが誘ったとき、明らかにリリス嬢とアリーナ嬢は戸惑ってた。でもスタイラスは、そんなことどこ吹く風で自己紹介始めちゃってさ。
「僕はスタイラス。で、こいつはアシュリー。エルムンド商会の息子だよ」
とかサラッと答えやがって。
まさかと思うが、ヘンリー様から彼女を奪おうなんて考えてないよな。
いいや、それはないな。スタイラスはそんな奴じゃない。
こいつの婚約者は、昨年流行り病で亡くなっていた。それ以来、婚約の打診が山のようにくるが、どれもピンとこないらしい。家格のつり合いとか色々あるんだとさ。貴族って面倒だよな。
スタイラスもいつかは婚約しなくちゃいけないんだし、リリス嬢みたいな素敵な人が現れるといいよな。
親友として心から願ってるよ。
0
お気に入りに追加
580
あなたにおすすめの小説
政略結婚の約束すら守ってもらえませんでした。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
「すまない、やっぱり君の事は抱けない」初夜のベットの中で、恋焦がれた初恋の人にそう言われてしまいました。私の心は砕け散ってしまいました。初恋の人が妹を愛していると知った時、妹が死んでしまって、政略結婚でいいから結婚して欲しいと言われた時、そして今。三度もの痛手に私の心は耐えられませんでした。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。
因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。
そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。
彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。
晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。
それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。
幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。
二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。
カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。
こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。
愛されなかった公爵令嬢のやり直し
ましゅぺちーの
恋愛
オルレリアン王国の公爵令嬢セシリアは、誰からも愛されていなかった。
母は幼い頃に亡くなり、父である公爵には無視され、王宮の使用人達には憐れみの眼差しを向けられる。
婚約者であった王太子と結婚するが夫となった王太子には冷遇されていた。
そんなある日、セシリアは王太子が寵愛する愛妾を害したと疑われてしまう。
どうせ処刑されるならと、セシリアは王宮のバルコニーから身を投げる。
死ぬ寸前のセシリアは思う。
「一度でいいから誰かに愛されたかった。」と。
目が覚めた時、セシリアは12歳の頃に時間が巻き戻っていた。
セシリアは決意する。
「自分の幸せは自分でつかみ取る!」
幸せになるために奔走するセシリア。
だがそれと同時に父である公爵の、婚約者である王太子の、王太子の愛妾であった男爵令嬢の、驚くべき真実が次々と明らかになっていく。
小説家になろう様にも投稿しています。
タイトル変更しました!大幅改稿のため、一部非公開にしております。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
【完結】悪女のなみだ
じじ
恋愛
「カリーナがまたカレンを泣かせてる」
双子の姉妹にも関わらず、私はいつも嫌われる側だった。
カレン、私の妹。
私とよく似た顔立ちなのに、彼女の目尻は優しげに下がり、微笑み一つで天使のようだともてはやされ、涙をこぼせば聖女のようだ崇められた。
一方の私は、切れ長の目でどう見ても性格がきつく見える。にこやかに笑ったつもりでも悪巧みをしていると謗られ、泣くと男を篭絡するつもりか、と非難された。
「ふふ。姉様って本当にかわいそう。気が弱いくせに、顔のせいで悪者になるんだもの。」
私が言い返せないのを知って、馬鹿にしてくる妹をどうすれば良かったのか。
「お前みたいな女が姉だなんてカレンがかわいそうだ」
罵ってくる男達にどう言えば真実が伝わったのか。
本当の自分を誰かに知ってもらおうなんて望みを捨てて、日々淡々と過ごしていた私を救ってくれたのは、あなただった。
ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~
柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。
その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!
この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!?
※シリアス展開もわりとあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる