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第2章
第64話 リリス13歳 魔女ってすごい!2
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「どうですか?何か変なところありませんか?」
リリスは自分の感じた違和感を払拭できる期待を胸に聞いてみた。
するとアルミーダが「あんたは何か感じたんだね?でなきゃ、あたしに見せないし、聞かないね」と言った。
「リリス嬢がこれを購入した店に違和感を感じて、先日こちらの店に来たんです。そうしたらアルミーダさんに今日ここへ来るように誘われた次第です」
端的に説明したスタイラスの言葉に、アルバスはこれを何処で購入したのか聞いてきた。
「アルバート領にオープンしたキャンディー屋です。街ではこのお店の2号店として噂になってました」
リリスの返答にアルバスは顎に手を当ててアルミーダと顔を見合わせた。ふたりは何か思案しているようだった。しばらくの間、静けさが部屋を支配する。
そしてアルミーダのため息と不機嫌な声が静けさを破った。
「はぁぁ・・全くちょっと留守にしてる間に好き勝手されたもんだ」
「アルミーダがじっとしてないから・・この店に専念していれば、こんなふうにコケにされなかったよ」
「毎日毎日キャンディーを作っては売り、作っては売りで飽きたんだよ。たまには魔女にも息抜きは必要さっ。でも分身はちゃんと置いといただろ?」
「ぶっ、分身?」
リリスが驚きの声をあげ、ヘンリーとスタイラスも目を見開いている。
アルバスが苦笑すると教えてくれた。
「アルミーダはこの性格だから、しょっちゅうこの店を放ったらかして、出掛けてるんだよ。短い時は数時間だけど、長い時は何日も帰って来ない。でもお店は今日のように休みにしていない。不思議だろう?主がいないのに、店が開けられるんだから。
その答えは分身だ。彼女は自分が店にいない間、自分の分身を置いてカモフラージュしていたんだ。アルミーダ、百聞は一見にしかずだ。見せてやりなよ、ほらっ」
するとアルミーダは「全く・・・特別だよっ」と渋々立ち上がると、部屋の奥にある棚から何かを手に取るとリリスたちの側へやってきた。手に持っていたのは、手のひらサイズの表情も何もないただ人型の人形だった。
それから目を瞑り、何か短い言葉を唱える。すると人形がむくむくと大きくなり、アルミーダそっくりな姿に化けたのだ。リリスたちが口々に「すごい!」「どうなってるんだ?!」などと感嘆の声をあげていると、「分かっただろっ?」と言い、アルミーダ2号を消した。その2号のいた場所には、さっきの人形が転がっていた。
「今の人形が店番をしていたということですか?客の対応もあの人形が?」
興奮気味のスタイラスが前のめりに聞いた。それにアルミーダは面倒くさそうに「だからそう言ってるだろっ。あたしなら、人形にそれぐらいさせるのは朝めし前なんだよ」と言った後、思い出したように付け加えた。
「ああ、それからこの間あんた達が来た時は、本物だったからね」
「ところで、そのキャンディーはどうなんですか?」
だいぶ横道に逸れた話を、ヘンリーが戻す。アルミーダが「アルバスが余計なこと言うから、本題忘れちまってたね」と小言忘れずに言ったあと続けた。
「これには魔力は込められてるが、お粗末な代物だ。あたしの傑作と比べたら、駄作だね。ヒドイもんだよ」
「それはやはり偽物ということですか?」
「そうさ。大体、ここで売る分しか作ってないからね。店だって、ここだけで十分だよ」
「やっぱりリリス嬢の感は当たってたな。」
リリスは頷くと「こんなことする人に心当たりはありますか?」と聞いた。
「心当たりはないことはないが、まだこのキャンディーしか見てないからね」
アルミーダの後にアルバスも言った。
「2号店というのは人の噂なんだよね?店が積極的にそう謳ってるならともかく、まだ今の段階ではアルミーダは無関係としか言えないね。まあ、アルミーダも流石にこのまま放置はできないから、調査ぐらいするでしょ。ねえ、アルミーダ?」
それにアルミーダは大きなため息をついて、部屋の奥へ消えた。
リリスは自分の感じた違和感を払拭できる期待を胸に聞いてみた。
するとアルミーダが「あんたは何か感じたんだね?でなきゃ、あたしに見せないし、聞かないね」と言った。
「リリス嬢がこれを購入した店に違和感を感じて、先日こちらの店に来たんです。そうしたらアルミーダさんに今日ここへ来るように誘われた次第です」
端的に説明したスタイラスの言葉に、アルバスはこれを何処で購入したのか聞いてきた。
「アルバート領にオープンしたキャンディー屋です。街ではこのお店の2号店として噂になってました」
リリスの返答にアルバスは顎に手を当ててアルミーダと顔を見合わせた。ふたりは何か思案しているようだった。しばらくの間、静けさが部屋を支配する。
そしてアルミーダのため息と不機嫌な声が静けさを破った。
「はぁぁ・・全くちょっと留守にしてる間に好き勝手されたもんだ」
「アルミーダがじっとしてないから・・この店に専念していれば、こんなふうにコケにされなかったよ」
「毎日毎日キャンディーを作っては売り、作っては売りで飽きたんだよ。たまには魔女にも息抜きは必要さっ。でも分身はちゃんと置いといただろ?」
「ぶっ、分身?」
リリスが驚きの声をあげ、ヘンリーとスタイラスも目を見開いている。
アルバスが苦笑すると教えてくれた。
「アルミーダはこの性格だから、しょっちゅうこの店を放ったらかして、出掛けてるんだよ。短い時は数時間だけど、長い時は何日も帰って来ない。でもお店は今日のように休みにしていない。不思議だろう?主がいないのに、店が開けられるんだから。
その答えは分身だ。彼女は自分が店にいない間、自分の分身を置いてカモフラージュしていたんだ。アルミーダ、百聞は一見にしかずだ。見せてやりなよ、ほらっ」
するとアルミーダは「全く・・・特別だよっ」と渋々立ち上がると、部屋の奥にある棚から何かを手に取るとリリスたちの側へやってきた。手に持っていたのは、手のひらサイズの表情も何もないただ人型の人形だった。
それから目を瞑り、何か短い言葉を唱える。すると人形がむくむくと大きくなり、アルミーダそっくりな姿に化けたのだ。リリスたちが口々に「すごい!」「どうなってるんだ?!」などと感嘆の声をあげていると、「分かっただろっ?」と言い、アルミーダ2号を消した。その2号のいた場所には、さっきの人形が転がっていた。
「今の人形が店番をしていたということですか?客の対応もあの人形が?」
興奮気味のスタイラスが前のめりに聞いた。それにアルミーダは面倒くさそうに「だからそう言ってるだろっ。あたしなら、人形にそれぐらいさせるのは朝めし前なんだよ」と言った後、思い出したように付け加えた。
「ああ、それからこの間あんた達が来た時は、本物だったからね」
「ところで、そのキャンディーはどうなんですか?」
だいぶ横道に逸れた話を、ヘンリーが戻す。アルミーダが「アルバスが余計なこと言うから、本題忘れちまってたね」と小言忘れずに言ったあと続けた。
「これには魔力は込められてるが、お粗末な代物だ。あたしの傑作と比べたら、駄作だね。ヒドイもんだよ」
「それはやはり偽物ということですか?」
「そうさ。大体、ここで売る分しか作ってないからね。店だって、ここだけで十分だよ」
「やっぱりリリス嬢の感は当たってたな。」
リリスは頷くと「こんなことする人に心当たりはありますか?」と聞いた。
「心当たりはないことはないが、まだこのキャンディーしか見てないからね」
アルミーダの後にアルバスも言った。
「2号店というのは人の噂なんだよね?店が積極的にそう謳ってるならともかく、まだ今の段階ではアルミーダは無関係としか言えないね。まあ、アルミーダも流石にこのまま放置はできないから、調査ぐらいするでしょ。ねえ、アルミーダ?」
それにアルミーダは大きなため息をついて、部屋の奥へ消えた。
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