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第2章
第58.5話 幕間 ヘンリー視点2
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放課後、彼女がアルバス先生と会うと言うので、僕はその前にどうしても会わなくてはならない男がいた。スタイラス・マリアセレンだ。あの男も同席するらしいから、その前に打ち合わせをしたかった。全ては彼女を守るため。あの男より先に彼女の憂いを取り去るため。
そして、あの男と会った。
「僕もこの後同席させてもらうよ」
僕がそう告げると、この男は「良かった。ヘンリー様が居ればリリス嬢も心強い」と苦笑した。何か言葉とは裏腹な苦笑にモヤッとするが、まあいい。
「あっ、それからこれを・・」と言ってこの男が差し出してきたのは、あのキャンディーだった。どうやら彼女から貰ったらしい。貰ったなら何故すぐ試さなかったのか疑問に思ったが、このキャンディーが解決の糸口になるかもしれない。僕たちはタイミングを見て、これを出すことに決めた。
しかし、話してみると中々いい男だった。頭はキレるし、彼女の友人という立場も弁えてる。流石は四大公爵家嫡男。最初こそは彼女に横恋慕するんじゃないかとヤキモキしたが、彼女を守るという運命共同体となると頼もしい限りだった。
僕は思わず「僕の事はヘンリーと呼んでくれ」と口にしてしまった。すると彼も「それじゃあ、僕のことはスタイラスと」と言った。こうして僕たちは、"リリス死守"という旗の下、タッグを組んだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ここは魔法資料室。いま僕達はアルバス先生に相談していた。
夢を見ること。そしてその夢は彼女が友人をイジメること。
"そんなことは彼女に限ってあり得ない"
僕はそう叫びたかったが、黙って彼女を見守るしかなかった。先生が夢を見るようになったキッカケに心当たりがあるのか聞いてきた。それに彼女は答える。
「それは多分キャンディーだと思います。王都のお店で貰ったキャンディーです。それを食べてから眠ると、楽しい夢を見られると言われました。ヘンリー様は言葉通り良い夢をみましたが、私はさっき言った通りの夢を見てしまいまして・・」
(ここだな。あのキャンディーを出すタイミング・・)
僕はスタイラスに視線を送り、出すよう促した。先生は受け取ったキャンディーをじーっと見つめて考えている。
(普通のキャンディーに見えるけどな。やっぱり何かあるんだろうか。実際、僕はリリィとの楽しい夢を見られたし。あのリリィも可愛かったなぁ)
そんなの僕の思考を先生の思いがけない言葉が遮った。
「これには魔力が込められてる。本当に僅かな魔力がね」
(魔力だと?・・)
僕はその後、先生が言った言葉に更に驚かされた。
「ただ君は属性判定の時も最初の授業の時も魔力が不安定だったね。最近は安定してるみたいだけど、もしかしたらそれが関係してるかもしれない」
彼女の魔力が不安定だった?!魔力が不安定だと魔法が暴発してしまうこともある。まさか授業で何かあったのか?彼女は何も言ってなかった・・・これは後で彼女に確認しなくてはいけないね。
その後、先生が頼りになりそうな友人を紹介してくれると知って、一安心した。しかし提案された日は、生憎あのキャンディー屋を訪れると決めていた日だ。先生の方を優先すべきか迷ったが、二人に無言で確認すると、予定は変えないようだった。
学園に入学してから、彼女の周囲で色んなことが起こっている気がする。単純に人との関わりが増えたことが、原因だろうか。何にしても、僕のやることは変わらない。ただ、愛しい婚約者を守るだけだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
翌朝、昨日半ば強引にとりつけた約束通り、僕は彼女と一緒に学園に向かっていた。
(朝からリリィの笑顔に会えるなんて最高だなぁ。これから行きも帰りもこの笑顔のリリィと一緒に居られるなんて、夢じゃないよな)
僕は浮かれていた。目の前の彼女をただただニコニコ見つめていた。傍から見たら、ヤバい奴かもしれない。でもそんな事どうでも良かった。こんなに彼女の姿を瞳に映して良いのは、婚約者である僕だけの特権だ。
馬車が学園まであと半分ほどに差し掛かった頃、僕は昨日から彼女に確かめようと決めていた事を聞いた。
「ところでリリィ、属性判定や授業のとき何かあったの?」
彼女は僕の満面の笑みに顔を引き攣らせ
「そんなに大したことはなかったよ」と言いながら、目が泳がせていた。こういう時の彼女は誤魔化すことが恐ろしく下手だ。
僕は追求の手を緩めなかった。ここで見逃して彼女の身になにかあったら、僕は後悔してもしきれないのが分かっているから。
「リリィ?大したことないはずないでしょ?昨日、アルバス先生が魔力が不安とか言ってたよねぇ」
彼女はいよいよ観念したのか渋々話し始めた。
「いやぁ、それが属性判定で魔法陣が人よりちょっと光って、初めの授業で少し体が熱くなっただけだよぉ」
(へぇ、人より"ちょっと"光った?!体が"少し"熱くなった?!)
これは絶対に過小評価してるね。これは彼女と同じ属性のスタイラスに確認しないとね。
覚悟してなよ、リリィ・・
そして、あの男と会った。
「僕もこの後同席させてもらうよ」
僕がそう告げると、この男は「良かった。ヘンリー様が居ればリリス嬢も心強い」と苦笑した。何か言葉とは裏腹な苦笑にモヤッとするが、まあいい。
「あっ、それからこれを・・」と言ってこの男が差し出してきたのは、あのキャンディーだった。どうやら彼女から貰ったらしい。貰ったなら何故すぐ試さなかったのか疑問に思ったが、このキャンディーが解決の糸口になるかもしれない。僕たちはタイミングを見て、これを出すことに決めた。
しかし、話してみると中々いい男だった。頭はキレるし、彼女の友人という立場も弁えてる。流石は四大公爵家嫡男。最初こそは彼女に横恋慕するんじゃないかとヤキモキしたが、彼女を守るという運命共同体となると頼もしい限りだった。
僕は思わず「僕の事はヘンリーと呼んでくれ」と口にしてしまった。すると彼も「それじゃあ、僕のことはスタイラスと」と言った。こうして僕たちは、"リリス死守"という旗の下、タッグを組んだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ここは魔法資料室。いま僕達はアルバス先生に相談していた。
夢を見ること。そしてその夢は彼女が友人をイジメること。
"そんなことは彼女に限ってあり得ない"
僕はそう叫びたかったが、黙って彼女を見守るしかなかった。先生が夢を見るようになったキッカケに心当たりがあるのか聞いてきた。それに彼女は答える。
「それは多分キャンディーだと思います。王都のお店で貰ったキャンディーです。それを食べてから眠ると、楽しい夢を見られると言われました。ヘンリー様は言葉通り良い夢をみましたが、私はさっき言った通りの夢を見てしまいまして・・」
(ここだな。あのキャンディーを出すタイミング・・)
僕はスタイラスに視線を送り、出すよう促した。先生は受け取ったキャンディーをじーっと見つめて考えている。
(普通のキャンディーに見えるけどな。やっぱり何かあるんだろうか。実際、僕はリリィとの楽しい夢を見られたし。あのリリィも可愛かったなぁ)
そんなの僕の思考を先生の思いがけない言葉が遮った。
「これには魔力が込められてる。本当に僅かな魔力がね」
(魔力だと?・・)
僕はその後、先生が言った言葉に更に驚かされた。
「ただ君は属性判定の時も最初の授業の時も魔力が不安定だったね。最近は安定してるみたいだけど、もしかしたらそれが関係してるかもしれない」
彼女の魔力が不安定だった?!魔力が不安定だと魔法が暴発してしまうこともある。まさか授業で何かあったのか?彼女は何も言ってなかった・・・これは後で彼女に確認しなくてはいけないね。
その後、先生が頼りになりそうな友人を紹介してくれると知って、一安心した。しかし提案された日は、生憎あのキャンディー屋を訪れると決めていた日だ。先生の方を優先すべきか迷ったが、二人に無言で確認すると、予定は変えないようだった。
学園に入学してから、彼女の周囲で色んなことが起こっている気がする。単純に人との関わりが増えたことが、原因だろうか。何にしても、僕のやることは変わらない。ただ、愛しい婚約者を守るだけだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
翌朝、昨日半ば強引にとりつけた約束通り、僕は彼女と一緒に学園に向かっていた。
(朝からリリィの笑顔に会えるなんて最高だなぁ。これから行きも帰りもこの笑顔のリリィと一緒に居られるなんて、夢じゃないよな)
僕は浮かれていた。目の前の彼女をただただニコニコ見つめていた。傍から見たら、ヤバい奴かもしれない。でもそんな事どうでも良かった。こんなに彼女の姿を瞳に映して良いのは、婚約者である僕だけの特権だ。
馬車が学園まであと半分ほどに差し掛かった頃、僕は昨日から彼女に確かめようと決めていた事を聞いた。
「ところでリリィ、属性判定や授業のとき何かあったの?」
彼女は僕の満面の笑みに顔を引き攣らせ
「そんなに大したことはなかったよ」と言いながら、目が泳がせていた。こういう時の彼女は誤魔化すことが恐ろしく下手だ。
僕は追求の手を緩めなかった。ここで見逃して彼女の身になにかあったら、僕は後悔してもしきれないのが分かっているから。
「リリィ?大したことないはずないでしょ?昨日、アルバス先生が魔力が不安とか言ってたよねぇ」
彼女はいよいよ観念したのか渋々話し始めた。
「いやぁ、それが属性判定で魔法陣が人よりちょっと光って、初めの授業で少し体が熱くなっただけだよぉ」
(へぇ、人より"ちょっと"光った?!体が"少し"熱くなった?!)
これは絶対に過小評価してるね。これは彼女と同じ属性のスタイラスに確認しないとね。
覚悟してなよ、リリィ・・
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