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第2章

第58.5話 幕間 ヘンリー視点1

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(リリィ、何処へ行ってるんだ?顔色が悪かったのに。まさか倒れたりしてないよな?!)

僕はアルバート家の客間にいる。日中、彼女の顔色が悪いことが気になり、心配だから帰りに送って行こうかと提案したが断られてしまった。このまま帰宅しても安心できないので、もう一度彼女の顔を見たるため急遽アルバート家を訪ねたのだ。先触れ?そんな悠長なこと言ってられなかった。
しかし用事があるとは言っていたが、昼間のあの様子ではそう遅くはならないだろうと思い来てみれば、執事から告げられたのは「申し訳ございません。お嬢様はまだ帰宅されておりません」という言葉だった。

(嘘だろ・・・)

執事が「お待ちになりますか」と言ったので、こうして今、彼女の帰宅を待っているのだ。

(もうすぐ暗くなる時刻なのに・・)

僕は彼女の所在が気になり、ソワソワと落ち着かずソファーと窓を何度も往復していた。やがて外から馬車の音がしたことに気付き、急いで窓から外を見る。ここからちょうど屋敷の門が遠目に見えるのだ。

(やっとリリィのお帰りかな。ん?あれは・・んん?リリィ?一緒だったのか?)

僕の瞳にはスタイラスに送られて来た彼女の姿が映った。それからの僕は心ここにあらず状態だった。いつもなら心躍る彼女からの夕食の誘いも断って、早々に帰ってきてしまった。

(さっきリリィが明日話があるとか言ってたけど、まさかアイツのこと好きになったとかじゃないよな。そんなこと言われても絶対に手放さないけど)


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


翌日、彼女が約束通り訪ねてきた彼女はどこか落ち着かない様子だった。僕は内心何を言われるのかと心臓が爆発しそうだった。

「・・・ヘンリー、昨日話したいことがあるって言ったことなんだけど」

(いよいよ来た!)

僕は緊張で手が汗ばんでいた。そんな僕に彼女が告げたのは全く予想もしない内容だった。彼女が夢見のキャンディーで見たのが、楽しいものではなく悪夢だったと。しかも彼女が友達をイジメるらしい。この優しい女神のような彼女が?!あり得なかった。でも真剣に悩み、その澄んだ瞳に涙を溜めて話す彼女に優しく語りかけた。

「リリィ、話してくれてありがとう。知られることが怖いリリィの気持ちも分かるよ。辛かったよね」

彼女は黙っていたことをなぜ怒らないのかと言った。手をギュッと握り締めて。そんなに握ったら綺麗な肌に傷がついてしまう。リリィ、そんなに自分を責めないで・・
彼女が落ち着きを取り戻してから、僕たちはこの先について話し合った。その時、彼女がアイツには昨日夢の話をした事を知り、嫉妬した。婚約者である僕より先に彼女から悩みを打ち明けられるなんて・・
よって、僕はあの男より先に彼女の憂いを取り除く事を心に決めたんだ。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


先生に授業で使った資料を運ぶのを手伝ってくれと頼まれたので、席を外した。まさかそのタイミングで彼女が僕を訪ねてくるなんて。戻ってきた廊下で彼女の後ろ姿を見つけた時は、先生を恨めしく思ったし、自然と僕の歩みは早くなった。

「リリィ?!」

僕の声に彼女が振り返る。彼女のホッとした笑顔を見た瞬間、彼女しか僕の瞳には映らなくなった。周りはその他大勢だ。
僕が駆け付けると彼女の口がムニョムニョしてる。ニヤけるのを我慢してるんだ。

(かっ、かわいい・・こんな可愛らしい姿をその他大勢に見せるなんて厄介じゃないか?!)

だから僕は彼女がいつも付けてくれてる髪留めに触れ、彼女が僕のものであることを確認した。こうして触れられるのは僕だけだ。

「噂には聞いていたけど、あれは本当だったのね。いや、噂以上ね」

何だ、シシリー嬢居たのか。しかも隣に厄介な奴まで居るじゃないか。うちのクラスでいちばん彼女に近付けてはならない奴。

「何とでも言ってくれ」

その噂は僕が彼女を目に入れても痛くないほど、溺愛してるってやつだろ。そんなの放っておけばいいさ。事実なんだから。それよりコイツを追い払わないとな。僕は氷点下の視線を奴に向けてやった。そしたら「そう威嚇するなって・・・あっ、そういえば・・」とか言って尻尾を巻いて逃げた。あの台詞、どんな大根役者だよ。
しかしその後、彼女とシシリー嬢に既に面識があったと分かった。彼女のシシリー嬢への視線が熱を帯びているのは気の所為じゃないな。彼女の心に少しでも入り込むなんて許せないが、今回はザイルの魔の手から助けてくれたようだし、目を瞑ってやるかな。
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