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第2章
第31話 リリス13歳 Newショップ
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カフェを出たふたりは迎えの時間まで、街をまた散策することにした。
しばらく歩くと、あざやかな赤い庇が目を引く見知らぬ店があった。
(新しいお店かな?)
店を覗いてみると、中は客でなかなか賑わっている。
「気になるね。入ってみようか」とヘンリーに促され、リリスたちも入ってみることにした。
中に入ると、そこには色とりどりのキャンディーが置いてあった。
いろんなフルーツの甘い匂いがリリスの鼻をくすぐる。
「屋敷のみんなにお土産を買いたい」とリリスが言うと「いいよ。待ってるから、ゆっくり選んでね」と彼が笑顔で言った。
リリスはいろんな形や色のキャンディーに目移りしてしまう。
(この星型もいいわね。マリーにはこのお花かな。アーウィンには・・・渦巻き模様・・でいっか)
いくつか選んだ商品をカゴに入れ、お金を払おうと店の奥に進むと、そこには白髪を後ろでまとめたお婆さんがいた。どうやらここは彼女の店らしい。
カゴをお婆さんに渡し、包んでもらう。
リリスはお金を払って買ったお土産を受け取り、そして店を出ようと振り返・・・れなかった。
「ちょっと待ちな」
なぜかお婆さんに引き止められた。
リリスがお婆さんに問いかけるように目線を送ると、老女が机の下から可愛くラッピングされた小さな袋を取り出し、そして「ほれっ」との言葉と一緒にポイッとその包みを渡してきた。
(???なに?)
ふたりが不思議そうに包みを見ていると
「開店記念でプレゼントしてるのさ。持ってお行きっ」
お婆さんは言った。
「まあ、ありがとうございます。中には何が?」
リリスが笑顔で聞く。
するとお婆さんは意味ありげに笑いながら言った。
「夢見のキャンディーだよ」
「「夢見のキャンディー?」」
リリスとヘンリーの声が揃う。
「ああ、そうさ。それをなめてから眠りにつくと、楽しい夢が見られるのさ。3つ入ってるから、そこの男前と分けるといい」
(楽しい夢が見られるなんて、面白そう!)
リリスは面白そうなアイテムに素直に喜んでいたが、ヘンリーは少し怪しむような表情をしていた。
そんなヘンリーを察したのか「食べたくなけりゃ、捨ててくれて構わないよ。ほら次の客が待ってるから退いとくれ」
と老女は言った。
「あっ、すみません。ありがとうございました」
リリスはペコリと会釈をして、ヘンリーとともに店を出ていった。
「なんか面白いお婆さんだったね」
「ええ、しかもお土産ももらってしまって」
「夢見のキャンディーって言ってたよね。せっかく貰ったんだし、1つちょうだいね」
ヘンリーはリリスが持つお婆さんから渡された袋を見つめながら、言った。
「はい。そろそろ帰りましょうか」
リリスの言葉を合図に、ふたりは帰りの馬車が待つ場所へ向かった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「それじゃあ、また明日ね」
「はい。今日はありがとうございました」
アルバート家に到着した馬車の前でお互いに挨拶をしていた。
名残り惜しそうにヘンリーが馬車へ乗り込む。
扉が閉まり、馬車がゆっくり動き出すと小窓からヘンリーが片手をあげてにっこりと笑顔をリリスへ送る。
「またね」相手に聞こえないほどの小さな声でヘンリーは言う。
リリスの瞳にはそれが妙に色っぽく写り、頬を染めた。
馬車の姿が小さくなるのを、リリスは見つめていた。
その時、彼女は弟との約束を思い出した。
(あっ、昨日アーウィンと約束したことヘンリー様に聞くの忘れちゃった。まあ、いっか。)
そしてマリアセレン家へ向かう場所の中には、帰りの馬車の中でリリスに渡されたキャンディーをひとつ嬉しそうに見つめるヘンリーがいた。
「僕が見るのはきっとリリスの夢だね・・・」
しばらく歩くと、あざやかな赤い庇が目を引く見知らぬ店があった。
(新しいお店かな?)
店を覗いてみると、中は客でなかなか賑わっている。
「気になるね。入ってみようか」とヘンリーに促され、リリスたちも入ってみることにした。
中に入ると、そこには色とりどりのキャンディーが置いてあった。
いろんなフルーツの甘い匂いがリリスの鼻をくすぐる。
「屋敷のみんなにお土産を買いたい」とリリスが言うと「いいよ。待ってるから、ゆっくり選んでね」と彼が笑顔で言った。
リリスはいろんな形や色のキャンディーに目移りしてしまう。
(この星型もいいわね。マリーにはこのお花かな。アーウィンには・・・渦巻き模様・・でいっか)
いくつか選んだ商品をカゴに入れ、お金を払おうと店の奥に進むと、そこには白髪を後ろでまとめたお婆さんがいた。どうやらここは彼女の店らしい。
カゴをお婆さんに渡し、包んでもらう。
リリスはお金を払って買ったお土産を受け取り、そして店を出ようと振り返・・・れなかった。
「ちょっと待ちな」
なぜかお婆さんに引き止められた。
リリスがお婆さんに問いかけるように目線を送ると、老女が机の下から可愛くラッピングされた小さな袋を取り出し、そして「ほれっ」との言葉と一緒にポイッとその包みを渡してきた。
(???なに?)
ふたりが不思議そうに包みを見ていると
「開店記念でプレゼントしてるのさ。持ってお行きっ」
お婆さんは言った。
「まあ、ありがとうございます。中には何が?」
リリスが笑顔で聞く。
するとお婆さんは意味ありげに笑いながら言った。
「夢見のキャンディーだよ」
「「夢見のキャンディー?」」
リリスとヘンリーの声が揃う。
「ああ、そうさ。それをなめてから眠りにつくと、楽しい夢が見られるのさ。3つ入ってるから、そこの男前と分けるといい」
(楽しい夢が見られるなんて、面白そう!)
リリスは面白そうなアイテムに素直に喜んでいたが、ヘンリーは少し怪しむような表情をしていた。
そんなヘンリーを察したのか「食べたくなけりゃ、捨ててくれて構わないよ。ほら次の客が待ってるから退いとくれ」
と老女は言った。
「あっ、すみません。ありがとうございました」
リリスはペコリと会釈をして、ヘンリーとともに店を出ていった。
「なんか面白いお婆さんだったね」
「ええ、しかもお土産ももらってしまって」
「夢見のキャンディーって言ってたよね。せっかく貰ったんだし、1つちょうだいね」
ヘンリーはリリスが持つお婆さんから渡された袋を見つめながら、言った。
「はい。そろそろ帰りましょうか」
リリスの言葉を合図に、ふたりは帰りの馬車が待つ場所へ向かった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「それじゃあ、また明日ね」
「はい。今日はありがとうございました」
アルバート家に到着した馬車の前でお互いに挨拶をしていた。
名残り惜しそうにヘンリーが馬車へ乗り込む。
扉が閉まり、馬車がゆっくり動き出すと小窓からヘンリーが片手をあげてにっこりと笑顔をリリスへ送る。
「またね」相手に聞こえないほどの小さな声でヘンリーは言う。
リリスの瞳にはそれが妙に色っぽく写り、頬を染めた。
馬車の姿が小さくなるのを、リリスは見つめていた。
その時、彼女は弟との約束を思い出した。
(あっ、昨日アーウィンと約束したことヘンリー様に聞くの忘れちゃった。まあ、いっか。)
そしてマリアセレン家へ向かう場所の中には、帰りの馬車の中でリリスに渡されたキャンディーをひとつ嬉しそうに見つめるヘンリーがいた。
「僕が見るのはきっとリリスの夢だね・・・」
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