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第2章
第12話 リリス13歳 婚約者に翻弄される
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ふたりが教室にやってくると、廊下に見覚えのある人物をリリスは見つけた。
「やあ、リリス。やっと会えたね」
にっこりと微笑みながら片手を上げて、リリスに声をかけてきたのは、婚約者のヘンリーだった。
「ヘンリー様。ごきげんよう」
婚約者のキラッキラの笑顔に自身の心臓がうるさくなるのを自覚しながら、リリスは挨拶を返す。
「これから学園のある日は、毎日会えるね。分からないことがあったら、遠慮なく聞いてね」
「でもヘンリー様とは学年が違うので、毎日なんて会えませんわよね?」
「リリス、何言ってるのさ。ランチだって一緒にとれるし、毎朝、君を迎えに行ってもいいんだよ。それにここじゃあ、僕が会いにくるし、たまに君から会いに来てくれたら嬉しいけどね。そう考えれば、会う機会なんていくらでもできるだろう?」
そう一気に話すと、ヘンリーは輝きを増した笑顔で自身の婚約者に笑いかけた。
「そっ、そうですわね」
リリスはヘンリーの笑顔に足が下がりそうになりながら、必死に耐える。
(ヘンリー様、なんかキラキラ度が以前会ったときより増してる気がするんだけど。なんか魔法で光らせてる?)
そんなことを考えていると、ヘンリーの砂糖を吐きそうなダメ押しの台詞がリリスの耳に届く。
「そういえば、いつもヘンリーって呼んでほしいとお願いしてるだろう?」
「なっ?!・・・
ヘンリー様、そういうことはまわりに誰もいない時に・・・」
「へぇ、ふたりっきりの時ならいいんだぁ」
イタズラっ子のような笑顔で、リリスの言葉に被せるようにヘンリーは言う。
リリスの真っ赤な顔もドッキドキな心臓も限界かと思われたその時
「あのー、お二人の世界に水を差すようで申し訳ないのですが、みんな見てますよ」
アリーナが申し訳なさそうに、二人の会話に口はさんだ。
(アリーナ、ナイスっ!助かったわ)
そう胸をなで下ろしながら、リリスがまわりに視線をふると、廊下はもちろん教室の中の生徒まで廊下に面する窓から二人のやり取りを見ていた。
ぽかんと口を開けている者、顔を真っ赤にしている者、ニヤニヤ笑みを浮かべている者などいろんな表情がそこにはあった。
(ヒッ!もう恥ずかしすぎるっ!)
リリスは頭がボンっと爆発しそうになりながら、目の前の婚約者に必死に言った。
「もうヘンリー"様"!教室に戻られたほうが、いいですわよ。そろそろ先生がいらっしゃる時間じゃなくて?」
特に"様"を強調したのは、彼女のささやかな反抗だった。
そんな事を気にしない様子のヘンリーは
「僕たちの授業は今日ないからね。
式が終われば、帰るだけなんだよ。なんなら、君が終わるのを待っていようかな?」
と言った。
「結構ですっ!早くお帰りになってっ!」
リリスの言葉を聞いて
「分かったよ。我が婚約者様。またね」
と優しい声で語りかけながら、リリスの頭を軽くポンポンと撫でるように叩いて、ヘンリーは去っていく。
肩まで上げた片手をヒラヒラと振りながら。
ヘンリーの後ろ姿が廊下を曲がって見えなくなると、アリーナが言った。
「あっ、そういえば紹介してもらうの忘れたゃったわ。せっかくお会いできたのに」
「そういえば、そうだったわ。
すっかりヘンリー様のペースにのせられてしまって、忘れてた。もう、本当に恥ずかしいったら・・・」
「ふたりって、いつもあんな感じなの?」
リリスの言葉の途中にアリーナが質問する。
「まあ、いつも通りといえば、そうなんだけど。今日はさらにパワーアップしてたかも。もうキラッキラがすごくて」
「へえ、そうなんだぁ。これから楽しみ・・・ゴホッ、ゴホッ・・今度は忘れずに紹介よろしくね」
そう言われたリリスは
(んっ?いま"楽しみっ"って言われたような気がしないでもないけど・・・まあ、いっか)
と思いながら
「はいはい」
と返事を返し、教室へ入っていった。
(よーく考えたら、私、彼の手のひらの上で転がされてる気がするわ・・・・)
リリスはその考えを忘れるように頭を振る。
(そういえばアリーナの婚約者は、アーウィンと同い年よね。てことは、来年入学かぁ。アリーナたちが結婚したら、"姉さん女房"になるんだわ・・・・・・んっ?いま私、知らない言葉考えたような気が・・・・うーん、まっ、いっか)
リリスは、席についた。
「やあ、リリス。やっと会えたね」
にっこりと微笑みながら片手を上げて、リリスに声をかけてきたのは、婚約者のヘンリーだった。
「ヘンリー様。ごきげんよう」
婚約者のキラッキラの笑顔に自身の心臓がうるさくなるのを自覚しながら、リリスは挨拶を返す。
「これから学園のある日は、毎日会えるね。分からないことがあったら、遠慮なく聞いてね」
「でもヘンリー様とは学年が違うので、毎日なんて会えませんわよね?」
「リリス、何言ってるのさ。ランチだって一緒にとれるし、毎朝、君を迎えに行ってもいいんだよ。それにここじゃあ、僕が会いにくるし、たまに君から会いに来てくれたら嬉しいけどね。そう考えれば、会う機会なんていくらでもできるだろう?」
そう一気に話すと、ヘンリーは輝きを増した笑顔で自身の婚約者に笑いかけた。
「そっ、そうですわね」
リリスはヘンリーの笑顔に足が下がりそうになりながら、必死に耐える。
(ヘンリー様、なんかキラキラ度が以前会ったときより増してる気がするんだけど。なんか魔法で光らせてる?)
そんなことを考えていると、ヘンリーの砂糖を吐きそうなダメ押しの台詞がリリスの耳に届く。
「そういえば、いつもヘンリーって呼んでほしいとお願いしてるだろう?」
「なっ?!・・・
ヘンリー様、そういうことはまわりに誰もいない時に・・・」
「へぇ、ふたりっきりの時ならいいんだぁ」
イタズラっ子のような笑顔で、リリスの言葉に被せるようにヘンリーは言う。
リリスの真っ赤な顔もドッキドキな心臓も限界かと思われたその時
「あのー、お二人の世界に水を差すようで申し訳ないのですが、みんな見てますよ」
アリーナが申し訳なさそうに、二人の会話に口はさんだ。
(アリーナ、ナイスっ!助かったわ)
そう胸をなで下ろしながら、リリスがまわりに視線をふると、廊下はもちろん教室の中の生徒まで廊下に面する窓から二人のやり取りを見ていた。
ぽかんと口を開けている者、顔を真っ赤にしている者、ニヤニヤ笑みを浮かべている者などいろんな表情がそこにはあった。
(ヒッ!もう恥ずかしすぎるっ!)
リリスは頭がボンっと爆発しそうになりながら、目の前の婚約者に必死に言った。
「もうヘンリー"様"!教室に戻られたほうが、いいですわよ。そろそろ先生がいらっしゃる時間じゃなくて?」
特に"様"を強調したのは、彼女のささやかな反抗だった。
そんな事を気にしない様子のヘンリーは
「僕たちの授業は今日ないからね。
式が終われば、帰るだけなんだよ。なんなら、君が終わるのを待っていようかな?」
と言った。
「結構ですっ!早くお帰りになってっ!」
リリスの言葉を聞いて
「分かったよ。我が婚約者様。またね」
と優しい声で語りかけながら、リリスの頭を軽くポンポンと撫でるように叩いて、ヘンリーは去っていく。
肩まで上げた片手をヒラヒラと振りながら。
ヘンリーの後ろ姿が廊下を曲がって見えなくなると、アリーナが言った。
「あっ、そういえば紹介してもらうの忘れたゃったわ。せっかくお会いできたのに」
「そういえば、そうだったわ。
すっかりヘンリー様のペースにのせられてしまって、忘れてた。もう、本当に恥ずかしいったら・・・」
「ふたりって、いつもあんな感じなの?」
リリスの言葉の途中にアリーナが質問する。
「まあ、いつも通りといえば、そうなんだけど。今日はさらにパワーアップしてたかも。もうキラッキラがすごくて」
「へえ、そうなんだぁ。これから楽しみ・・・ゴホッ、ゴホッ・・今度は忘れずに紹介よろしくね」
そう言われたリリスは
(んっ?いま"楽しみっ"って言われたような気がしないでもないけど・・・まあ、いっか)
と思いながら
「はいはい」
と返事を返し、教室へ入っていった。
(よーく考えたら、私、彼の手のひらの上で転がされてる気がするわ・・・・)
リリスはその考えを忘れるように頭を振る。
(そういえばアリーナの婚約者は、アーウィンと同い年よね。てことは、来年入学かぁ。アリーナたちが結婚したら、"姉さん女房"になるんだわ・・・・・・んっ?いま私、知らない言葉考えたような気が・・・・うーん、まっ、いっか)
リリスは、席についた。
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