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第Ⅱ章
第12話 真実
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「誤解?何を言ってるんですか?」
ナタリアの言葉に舌をチョロチョロと出し、問いかけるテリオス。しかしナタリアは、言葉を続ける。
「テリオス様、言いましたよね?『過去の女神は酷い行いをあなた達の仲間にした。だから女神の生まれ変わりである私に責任を取ってもらう』と・・・そもそもの発端は、そちら側の原因なんですよ」
これには、少し興奮した様子でテリオスは反論する。
「そんな筈ありません!我々に代々伝わる話では、二百五十年前、猫の女神が我らの仲間をちょうちょ結びにしたと・・何も悪いことなどしてないヘビを!証拠もあります!長老の家には、キレイにちょうちょ結びされた仲間のミイラがあるんです!私はこの目で見た!“いつか女神に復讐を”これがヘビたちに伝わる呪いの言葉です!これのどこが誤解だと言うんですか!」
「私は、閉じ込められていた地下で真実を見ました。水晶玉があったでしょう?あれから僅かに光が漏れていたのが、ずっと気になっていて、あなた達が出て行った後覗き込んだんです。そうしたら、その過去の光景が目の前で繰り広げられました。だから誤解だと、言ってるんです!今から私の見た真実をお話しします!」
そう言ってナタリアは、自分の見た過去を話し出す。
猫の女神が、ヘビたちをちょうちょ結びにしたのは事実だった。しかしその前にも真実があったのだ。それはまだ猫とヘビが仲が良かった時代。ある日、女神が森で休んでいると、そこに現れたヘビたちは女神の美しさに心を奪われる。しかし女神たちは、小さなヘビたちに気付かない。どうしても彼女に気付いてほしかったヘビたちは、あろうことか女神の頭にのぼり髪に擬態したのだ。それをちょうど通りかかったリスに見られてしまう。
『メドゥーサ・・』
思わず女神の姿を見たリスの口から漏れたセリフ。これを聞いた女神は、ようやく自分の頭に乗る無数のヘビたちに気付いた。悲鳴をあげ、頭からヘビを振り落とした女神は、怒りで我を失った。逃げるヘビたちを掴むと、鮮やかな手付きで次々にちょうちょ結びを仕上げていった。
これがナタリアの見た真実だった。
「嘘だ・・我々が最初に失礼をはたらいたと言うのか・・・?」
ナタリアから告げられた真実に茫然とするテリオスだが、その後ろではバスチアンが「騙されるなよ!猫なんて狡猾な生き物だと、教えられてきただろっ!」と吐き出すように言う。
やはり自分の言葉だけでは、信じてもらえないのかとナタリアが落胆したその時、対峙する猫とヘビの間にあの小さなヘビがチョロチョロっと現れると言った。
「彼女の言ってることは、本当です」
!!!
「おい!お前ヘビだろ!何故、コイツらの肩を持つんだ!」
バスチアンが食って掛かりそうな勢いで体を伸び上がらせるが、小さなヘビは驚きの言葉を続けた。
「肩もなにも、女神様の気を引きたくて愚かなことをしたのが、この私だからです。仲間が次々に結ばれていったあの光景は、目に焼き付いて今でも忘れられません」
思わぬ張本人の登場にナタリアを含め誰もが驚き、小さなヘビにこの場のすべての視線が集まる。
「あの~、あなたは本当に犯人さんなのかしら?」
ナタリアが聞くと、ヘビは「はい」と一言を返す。しかしライモンが率直な疑問を投げかけた。
「そもそもヘビの寿命は、どれ位なんだ?さすがに百五十年は、生きないだろう?」
それにテリオスが「長くても三十年だ」と答えると、小さなヘビは再び驚きの信実を述べる。
「私は魔女の呪いによって、死ねないんです」
その言葉に皆、「魔女?」「死ねないってどういうことだ」と口々に戸惑いの言葉を口にする。ライモンとセバちゃんもいきなり魔女の話が出てきて、人一倍驚いていた。「始めからお話しします」と言って、小さなヘビは話し始めた。
ヘビが女神にちょっかいを出し、仕返しをされたところまでは、ナタリアの話と同じだった。そしてここからが、当事者しか知らない話だった。
仲間が次々とちょうちょ結びされる中、このヘビは体が小さかったことが幸いし、木の陰に隠れ難を逃れる。そして仲間が無惨な姿にされる光景を陰からジッと見ていたのだ。そしてそのまま逃げ帰った小さなヘビだったが、途中で魔女に出会ってしまう。魔女は、まるで見ていたかのようにヘビの女神への仕打ちと仲間が餌食になっているのに、このヘビが逃げ出したことを実に楽しげに語った。
「私はお前みたいにラッキーな奴、嫌いじゃないのよ。ただもっと楽しいことが見たいのよ。だから、ちょっと手を加えることにするわ」
魔女はそう言うと、杖を一振りする。特に何も変化はないが、次の魔女のセリフでヘビは愕然とする。
「さあ!これでお前の命は、私が飽きるまで絶えることはない。死ねないってことさ。永遠に生き続けるんだよ。お前たちの浅はかな行動のせいで、これからヘビと猫が反目し合う時代がやって来る。それを見届け、原因となった事件の生き証人として生き続けるんだ。仲間は次々と死んでいくのに、自分だけ取り残されるのはツライぞ。だが仲間を見捨て、逃げ出したお前への罰だと思え。私はずっと見ているからね」
「こうして私は二百五十年前から、生き続けているんです。せめてもの罪滅ぼしにと、代々の女神様の側で見守り、何かあればこの身を捧げる覚悟でしたが、今回このような大事になり、真実をお伝えするべきと現れました」
そうして小さなヘビは、テリオスとバスチアンに向き合うと尋ねる。
「これが紛れもない真実です。私は、いくらでも罰は受けます。しかしその前に聞きたい。これでも尚、彼女たちを恨み続けますか?」
この問いにテリオスとバスチアンは、顔を見合わせる。そして答える代わりに、ヘビの姿から人間の姿をへと戻ると、ナタリアたちへ頭を下げたのだった。
ナタリアの言葉に舌をチョロチョロと出し、問いかけるテリオス。しかしナタリアは、言葉を続ける。
「テリオス様、言いましたよね?『過去の女神は酷い行いをあなた達の仲間にした。だから女神の生まれ変わりである私に責任を取ってもらう』と・・・そもそもの発端は、そちら側の原因なんですよ」
これには、少し興奮した様子でテリオスは反論する。
「そんな筈ありません!我々に代々伝わる話では、二百五十年前、猫の女神が我らの仲間をちょうちょ結びにしたと・・何も悪いことなどしてないヘビを!証拠もあります!長老の家には、キレイにちょうちょ結びされた仲間のミイラがあるんです!私はこの目で見た!“いつか女神に復讐を”これがヘビたちに伝わる呪いの言葉です!これのどこが誤解だと言うんですか!」
「私は、閉じ込められていた地下で真実を見ました。水晶玉があったでしょう?あれから僅かに光が漏れていたのが、ずっと気になっていて、あなた達が出て行った後覗き込んだんです。そうしたら、その過去の光景が目の前で繰り広げられました。だから誤解だと、言ってるんです!今から私の見た真実をお話しします!」
そう言ってナタリアは、自分の見た過去を話し出す。
猫の女神が、ヘビたちをちょうちょ結びにしたのは事実だった。しかしその前にも真実があったのだ。それはまだ猫とヘビが仲が良かった時代。ある日、女神が森で休んでいると、そこに現れたヘビたちは女神の美しさに心を奪われる。しかし女神たちは、小さなヘビたちに気付かない。どうしても彼女に気付いてほしかったヘビたちは、あろうことか女神の頭にのぼり髪に擬態したのだ。それをちょうど通りかかったリスに見られてしまう。
『メドゥーサ・・』
思わず女神の姿を見たリスの口から漏れたセリフ。これを聞いた女神は、ようやく自分の頭に乗る無数のヘビたちに気付いた。悲鳴をあげ、頭からヘビを振り落とした女神は、怒りで我を失った。逃げるヘビたちを掴むと、鮮やかな手付きで次々にちょうちょ結びを仕上げていった。
これがナタリアの見た真実だった。
「嘘だ・・我々が最初に失礼をはたらいたと言うのか・・・?」
ナタリアから告げられた真実に茫然とするテリオスだが、その後ろではバスチアンが「騙されるなよ!猫なんて狡猾な生き物だと、教えられてきただろっ!」と吐き出すように言う。
やはり自分の言葉だけでは、信じてもらえないのかとナタリアが落胆したその時、対峙する猫とヘビの間にあの小さなヘビがチョロチョロっと現れると言った。
「彼女の言ってることは、本当です」
!!!
「おい!お前ヘビだろ!何故、コイツらの肩を持つんだ!」
バスチアンが食って掛かりそうな勢いで体を伸び上がらせるが、小さなヘビは驚きの言葉を続けた。
「肩もなにも、女神様の気を引きたくて愚かなことをしたのが、この私だからです。仲間が次々に結ばれていったあの光景は、目に焼き付いて今でも忘れられません」
思わぬ張本人の登場にナタリアを含め誰もが驚き、小さなヘビにこの場のすべての視線が集まる。
「あの~、あなたは本当に犯人さんなのかしら?」
ナタリアが聞くと、ヘビは「はい」と一言を返す。しかしライモンが率直な疑問を投げかけた。
「そもそもヘビの寿命は、どれ位なんだ?さすがに百五十年は、生きないだろう?」
それにテリオスが「長くても三十年だ」と答えると、小さなヘビは再び驚きの信実を述べる。
「私は魔女の呪いによって、死ねないんです」
その言葉に皆、「魔女?」「死ねないってどういうことだ」と口々に戸惑いの言葉を口にする。ライモンとセバちゃんもいきなり魔女の話が出てきて、人一倍驚いていた。「始めからお話しします」と言って、小さなヘビは話し始めた。
ヘビが女神にちょっかいを出し、仕返しをされたところまでは、ナタリアの話と同じだった。そしてここからが、当事者しか知らない話だった。
仲間が次々とちょうちょ結びされる中、このヘビは体が小さかったことが幸いし、木の陰に隠れ難を逃れる。そして仲間が無惨な姿にされる光景を陰からジッと見ていたのだ。そしてそのまま逃げ帰った小さなヘビだったが、途中で魔女に出会ってしまう。魔女は、まるで見ていたかのようにヘビの女神への仕打ちと仲間が餌食になっているのに、このヘビが逃げ出したことを実に楽しげに語った。
「私はお前みたいにラッキーな奴、嫌いじゃないのよ。ただもっと楽しいことが見たいのよ。だから、ちょっと手を加えることにするわ」
魔女はそう言うと、杖を一振りする。特に何も変化はないが、次の魔女のセリフでヘビは愕然とする。
「さあ!これでお前の命は、私が飽きるまで絶えることはない。死ねないってことさ。永遠に生き続けるんだよ。お前たちの浅はかな行動のせいで、これからヘビと猫が反目し合う時代がやって来る。それを見届け、原因となった事件の生き証人として生き続けるんだ。仲間は次々と死んでいくのに、自分だけ取り残されるのはツライぞ。だが仲間を見捨て、逃げ出したお前への罰だと思え。私はずっと見ているからね」
「こうして私は二百五十年前から、生き続けているんです。せめてもの罪滅ぼしにと、代々の女神様の側で見守り、何かあればこの身を捧げる覚悟でしたが、今回このような大事になり、真実をお伝えするべきと現れました」
そうして小さなヘビは、テリオスとバスチアンに向き合うと尋ねる。
「これが紛れもない真実です。私は、いくらでも罰は受けます。しかしその前に聞きたい。これでも尚、彼女たちを恨み続けますか?」
この問いにテリオスとバスチアンは、顔を見合わせる。そして答える代わりに、ヘビの姿から人間の姿をへと戻ると、ナタリアたちへ頭を下げたのだった。
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