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Scene∞ エピローグ

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自分の書いた小説に転生するなんて経験をするのは、数多あまたある世界でもほんの一握りの人間だ。

そして更にその一握りの中でも、望んだ結末を迎えられるのは、片手で数えられるほどかもしれない。

それでは、自分の書いた小説に転生した狭山尚さやまなおは、どうだったのか。


◇◇◇◇◇


「おい、サミュエル。俺は王太子だぞ。少しは兄をたてろよ」

「兄上こそ王太子なら、3年もの間、城を離れていた弟を気遣うべきだよ」

「殿下、お帰りください。彼女はあのパーティーで、私の贈ったドレスを身に着けた。この意味はお分かりでしょう?」

「マーカス様・・それは私のセリフです。うちの屋敷で堂々と仰っしゃらないでください」

ここはリンドン侯爵家だ。その客間にいるのは、ミーリエルとマーカス、そして双子の王子だ。

何故かあのパーティーの後、オーウェンとサミュエルは、ミーリエルに「妃になって欲しい」と迫ってきた。戸惑うミーリエルは逃げ出したが、あの日以来連日、王子たちの訪問攻撃を受けている。そしてそれを阻止するため、マーカスも毎日訪れていた。

そこにコンコンとノックがされ、いつものようにアリアナが颯爽と現れた。

「あら、皆さまお揃いですか。丁度良いタイミングでしたね」

アリアナは笑顔を見せると、持参してきた箱を差し出す。

「ミーリエル様、新しいお菓子を持って来たので、庭で食べましょう」

ミーリエルは、嬉しそうに飛び付いた。すると、そんなミーリエルの姿を満足そうに見つめるアリアナが、男性陣に向けたのは勝ち誇った笑顔だった。

「そういうことですので、殿下とマーカスは、お帰りくださいね」

美女の有無を言わさぬ笑顔というのは、実に恐ろしいものだった。

こうしてミーリエルの侯爵令嬢としての人生は、彼女の望む平坦な道とは違い、上り下りの激しい道であることを予感させていたのだが、当のミーリエルはまだ気づいていない。

呑気にお菓子の箱を手に、庭へ続く窓から姿を消した。

そしてまた、その先の青い空に青い鳥が2羽飛んでいることに誰も気づいていないのだった。


◆◆◆◆◆


駆け足で進んできたミーリエルの物語は、ここで終了です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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