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第43話 再会
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「会いたかたっわ!マリア様!」
お目当ての人物を見たリリスは、そう喜びを言葉にする。すると、三人の中で一番若い少女が答えた。
「私もです!リリス様。もうこの日を指折り数えていたんですよ」
「もう、嬉しいこと言ってくれるわね。あっ、紹介するわね」
リリスは満面の笑みを浮かべると、「私の婚約者です」とヘンリーを紹介する。
「まあ、そうなんですか!はじめまして。マリア・サスティナと申します」
「はじめまして。ヘンリー・セルジュです。今日は彼女の護衛として、付き添ってきたんです。突然で驚いたでしょう?」
そう言うと、ヘンリーは優しい眼差しをリリスへ向けた。
そして、挨拶を済ませたところで、リリスはマリアに尋ねた。
「マリア様。その後、二人の王子様とはどうなりましたの?」
やはり口から出るのは、恋バナだ。そしてリリスがマリアから語られるその後をワクワクしながら待っていると、思わぬ答えが返ってくる。
「どうもなりませんわ。それはこれからも、きっと・・」
「えっ!?どういうことですか?どちらの王子様とも合わなかったのですか!?」
全く予想しない話の展開に驚いたリリスは前のめりで聞いた。そんなリリスの様子にマリアは苦笑すると、ゆっくりと真実を告げた。
「合わなかったのではなく、選ぶ資格がないのです。だって、亡くなったと思っていた婚約者のアルバート様が生きていたんですもの」
「ええー!!!???」
すると、マリアはあの再会の後の出来事を語りだした。彼女によると、毎晩のように枕元に不思議な影が現れ、その影と不思議な交流を交わした。まるでマリアを楽しませようとする影に、彼女に恐怖心はなかった。ある日、城でその影を見かけ、追いかける。そして、その追いかけた先の隠された小部屋でアルバートを見つけたと・・・
「なかなかの行動力ですわね、マリア様は!」
マリアの話を聞いたリリスが感嘆する。そこにヘンリーが「リリィも負けてないけどね」と横槍を入れる。それにリリスは「もう!ちょっとヘンリーは黙ってて!今いいところなんだから!」と言い返した。そして、リリスは「フフッ」と何かを企むような笑いを漏らすと「マリア様!錬金術師ならご用意できますわ!これでお二人の障害を解決できますね!」と言い放つ。そんなリリスに信じられないといった表情を浮かべたマリアが、聞き返す。
「えっ!?錬金術師を用意って、そんな簡単なんですか!?」
「フフフッ・・・何を隠そうこのフェクター様こそが、その錬金術師なんですよ!」
リリスの言葉に「えっ!?」と驚きの声を上げるマリア。そしてリリスは、控えめに後ろに立っていたフェクターの背中を押し、前に押し出した。
「フェクター様、私たちがここへ辿り着いた理由は、こういう事だったんですね。それでは、どーんと出しちゃってください!」
リリスは自分たちがこの場に呼ばれた訳はこの為だったのだと、確信した。何故、フェクターだけでなく、リリスも巻き込まれたのかは、きっと口下手なフェクターの通訳的な役割だろうと勝手に解釈する。
そしてフェクターは、リリスの期待どおりに一つの小瓶を出した。マリアは、フェクターの手の中に突然現れた小瓶をジッと見つめ、呆気にとられている。すると、フェクターは何も言わずにマリアへ小瓶を差し出す。差し出されたマリアは、おずおずと手を伸ばし受け取った。そして、それを見守るリリスへ視線を向けてきた。
「あの、これは・・」
リリスはフェクターにちゃんと説明するよう促すと、フェクターはいつもの調子で話し始めた。
「こっ、これは・・・どんな病でも・・なっ、治せる薬・・です。もっ、もちろん・・毒に苦しむ・・人も・・三日間・・欠かさず・・夜飲ませて・・ください・・・」
説明を聞いたマリアは「治せる・・?」と、呆然としている。そんなマリアにリリスは迷いのない声で言った。
「治せます!フェクター様のその薬があれば、アルバート様はきっとお元気になりますよ!」
「・・リリス様がそうおっしゃるのでしたら、信じる他ありませんわね」
そして、マリアの出会ってから一番の笑顔がリリスの瞳に映った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
それから無事にセルジュ領に戻ってきたリリスたち。屋敷へ戻る森の中でリリスたちの声だけが聞こえる。
「アルバート様が元気になって、マリア様と仲良くしてくれたら本当に嬉しい」
「そうだね。でも、これっきりなんて良かったのかい?」
ヘンリーがそう問いかけるのは、転移の扉を使って会うのは、今日で最後と決めたことだ。それにリリスは晴れやかな笑顔で、返す。
「もちろん!転移の扉は魅力的よ。でも私たちの役目も終えたし、自分の楽しみのためだけに利用する物ではないから、きっと。それにフェクター様のあの薬なら、結果なんて聞かなくても分かるもの。ねえ?フェクター様?」
リリスの問いにやはりコクッと頷きで返すフェクター。そんなフェクターにリリスとヘンリーは、穏やかな微笑みを浮かべる。
そしてリリスたちの姿は森の木々が見守る中、森の外へと消えていった。
お目当ての人物を見たリリスは、そう喜びを言葉にする。すると、三人の中で一番若い少女が答えた。
「私もです!リリス様。もうこの日を指折り数えていたんですよ」
「もう、嬉しいこと言ってくれるわね。あっ、紹介するわね」
リリスは満面の笑みを浮かべると、「私の婚約者です」とヘンリーを紹介する。
「まあ、そうなんですか!はじめまして。マリア・サスティナと申します」
「はじめまして。ヘンリー・セルジュです。今日は彼女の護衛として、付き添ってきたんです。突然で驚いたでしょう?」
そう言うと、ヘンリーは優しい眼差しをリリスへ向けた。
そして、挨拶を済ませたところで、リリスはマリアに尋ねた。
「マリア様。その後、二人の王子様とはどうなりましたの?」
やはり口から出るのは、恋バナだ。そしてリリスがマリアから語られるその後をワクワクしながら待っていると、思わぬ答えが返ってくる。
「どうもなりませんわ。それはこれからも、きっと・・」
「えっ!?どういうことですか?どちらの王子様とも合わなかったのですか!?」
全く予想しない話の展開に驚いたリリスは前のめりで聞いた。そんなリリスの様子にマリアは苦笑すると、ゆっくりと真実を告げた。
「合わなかったのではなく、選ぶ資格がないのです。だって、亡くなったと思っていた婚約者のアルバート様が生きていたんですもの」
「ええー!!!???」
すると、マリアはあの再会の後の出来事を語りだした。彼女によると、毎晩のように枕元に不思議な影が現れ、その影と不思議な交流を交わした。まるでマリアを楽しませようとする影に、彼女に恐怖心はなかった。ある日、城でその影を見かけ、追いかける。そして、その追いかけた先の隠された小部屋でアルバートを見つけたと・・・
「なかなかの行動力ですわね、マリア様は!」
マリアの話を聞いたリリスが感嘆する。そこにヘンリーが「リリィも負けてないけどね」と横槍を入れる。それにリリスは「もう!ちょっとヘンリーは黙ってて!今いいところなんだから!」と言い返した。そして、リリスは「フフッ」と何かを企むような笑いを漏らすと「マリア様!錬金術師ならご用意できますわ!これでお二人の障害を解決できますね!」と言い放つ。そんなリリスに信じられないといった表情を浮かべたマリアが、聞き返す。
「えっ!?錬金術師を用意って、そんな簡単なんですか!?」
「フフフッ・・・何を隠そうこのフェクター様こそが、その錬金術師なんですよ!」
リリスの言葉に「えっ!?」と驚きの声を上げるマリア。そしてリリスは、控えめに後ろに立っていたフェクターの背中を押し、前に押し出した。
「フェクター様、私たちがここへ辿り着いた理由は、こういう事だったんですね。それでは、どーんと出しちゃってください!」
リリスは自分たちがこの場に呼ばれた訳はこの為だったのだと、確信した。何故、フェクターだけでなく、リリスも巻き込まれたのかは、きっと口下手なフェクターの通訳的な役割だろうと勝手に解釈する。
そしてフェクターは、リリスの期待どおりに一つの小瓶を出した。マリアは、フェクターの手の中に突然現れた小瓶をジッと見つめ、呆気にとられている。すると、フェクターは何も言わずにマリアへ小瓶を差し出す。差し出されたマリアは、おずおずと手を伸ばし受け取った。そして、それを見守るリリスへ視線を向けてきた。
「あの、これは・・」
リリスはフェクターにちゃんと説明するよう促すと、フェクターはいつもの調子で話し始めた。
「こっ、これは・・・どんな病でも・・なっ、治せる薬・・です。もっ、もちろん・・毒に苦しむ・・人も・・三日間・・欠かさず・・夜飲ませて・・ください・・・」
説明を聞いたマリアは「治せる・・?」と、呆然としている。そんなマリアにリリスは迷いのない声で言った。
「治せます!フェクター様のその薬があれば、アルバート様はきっとお元気になりますよ!」
「・・リリス様がそうおっしゃるのでしたら、信じる他ありませんわね」
そして、マリアの出会ってから一番の笑顔がリリスの瞳に映った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
それから無事にセルジュ領に戻ってきたリリスたち。屋敷へ戻る森の中でリリスたちの声だけが聞こえる。
「アルバート様が元気になって、マリア様と仲良くしてくれたら本当に嬉しい」
「そうだね。でも、これっきりなんて良かったのかい?」
ヘンリーがそう問いかけるのは、転移の扉を使って会うのは、今日で最後と決めたことだ。それにリリスは晴れやかな笑顔で、返す。
「もちろん!転移の扉は魅力的よ。でも私たちの役目も終えたし、自分の楽しみのためだけに利用する物ではないから、きっと。それにフェクター様のあの薬なら、結果なんて聞かなくても分かるもの。ねえ?フェクター様?」
リリスの問いにやはりコクッと頷きで返すフェクター。そんなフェクターにリリスとヘンリーは、穏やかな微笑みを浮かべる。
そしてリリスたちの姿は森の木々が見守る中、森の外へと消えていった。
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