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第39.5話 幕間 リュシェル視点1
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「リュシェル様、スカートめくってください」
洞窟に似合わぬセリフを私に対して口にするのは、リリス様。予想の斜め上をいく彼女の言葉に、私の「・・なっ!何てこと言うの!!!」と返す声は裏返ってしまった。
えっ?なぜこのような会話をしているのかって?
それは遡ること二十分前。
ミレドールから転移の扉で戻ってきた私たちは、再び洞窟の中にいた。とりあえず、無事にプロメアに戻って来られたことは喜ばしいのだけれど、ここからが不安。だって、この洞窟から出られるのか分からないのだから。
私たちは行きに来た道を戻ろうと、歩き始めたわ。その時、リリス様が声を上げた。
「あっ!リュシェル様ちょっとお待ちください!」
私は怪訝な表情を彼女に向けると、私の足元に驚きの眼差しを向けるリリス様がいた。私もつられて視線を落とすと、血が・・・・あぁ・・私、血の赤って苦手なのよね・・うんん・・それより血が・・私のスカートに血がついていたの。これを見た私は悲鳴をあげたわ。
「きゃぁ!血が・・血が・・・」
「怪我をしているのでは、ありませんか?」
リリス様の質問に私は「怪我?どこも痛くないわ」と返した。でもその時、急に足に痛みが・・何でこんなに痛いのかしら。足を見たいけど、今は殿方もおられるし、もし・・もしも本当に怪我をしていて、傷を見たら・・私、気を失うかもしれないわ。
どうしようか迷った私は、結局痛みを我慢することにした。
「ほらっ・・」
そう言って、私は軽くその場でジャンプする。だけど本当は凄く・・すごーく痛い。でも、そんな痛みより今はここから脱出するほうが先決!
でも、私の決死の行動にもリリス様は険しい表情を浮かべている。あー、もうどうしてこの方は素直に私の言葉を受け取らないのかしら。行動力がありすぎるのよ。公爵家ご令嬢でしょう?貴女・・・
先程はミレドールで出会った女の子と再会の約束をしてしまうし・・・これでは婚約者のヘンリー様の気苦労も多いわね、きっと。でも、羨ま・・・・あっ、今のは忘れてくださる?
それより血よ!血!
私の言葉を疑うリリス様が今度はフェクター様に不思議なお願いをした。
「フェクター様、申し訳ありませんが、いいと言うまで後ろを向いていていただけますか?」
その言葉に彼はコクリと頷くと壁に近寄り、私たちに背中を向けた。そして頭頂部を目の前の壁につけた。
何あれ。何やってるのかしら・・痛くない?ねえ、頭痛くないの?そんなに押し付けて・・・彼女は“後ろを向け”とお願いしただけなのに・・
本当に彼変わってるわ。無口で何を考えてるか分からないのに、この国の王太子に仕えてる。おまけにアーサー様は彼を気に入っているみたいだし・・何者なのかしらね、フェクター様って・・・
嗚呼、また話が逸れてしまったわ。
ええと・・リリス様はフェクター様が背を向けたのを確認すると、今度は私に信じられないお願いをしてきた。
「リュシェル様、スカートめくってください」
「・・なっ!何てこと言うの!!!」
スカートをめくれなんて、信じられない。でもそう言ったリリス様の目は真剣。決してフザケてるわけではなく、私を心配してくれてのこと。
でも、それだけは駄目!絶対に駄目!!
だって、そんなことをしたら、私の・・私たちの秘密が白日の下に晒されてしまうもの!
「男性に見られる心配はありません。ですから、スカートめくってください」
洞窟に似合わぬセリフを私に対して口にするのは、リリス様。予想の斜め上をいく彼女の言葉に、私の「・・なっ!何てこと言うの!!!」と返す声は裏返ってしまった。
えっ?なぜこのような会話をしているのかって?
それは遡ること二十分前。
ミレドールから転移の扉で戻ってきた私たちは、再び洞窟の中にいた。とりあえず、無事にプロメアに戻って来られたことは喜ばしいのだけれど、ここからが不安。だって、この洞窟から出られるのか分からないのだから。
私たちは行きに来た道を戻ろうと、歩き始めたわ。その時、リリス様が声を上げた。
「あっ!リュシェル様ちょっとお待ちください!」
私は怪訝な表情を彼女に向けると、私の足元に驚きの眼差しを向けるリリス様がいた。私もつられて視線を落とすと、血が・・・・あぁ・・私、血の赤って苦手なのよね・・うんん・・それより血が・・私のスカートに血がついていたの。これを見た私は悲鳴をあげたわ。
「きゃぁ!血が・・血が・・・」
「怪我をしているのでは、ありませんか?」
リリス様の質問に私は「怪我?どこも痛くないわ」と返した。でもその時、急に足に痛みが・・何でこんなに痛いのかしら。足を見たいけど、今は殿方もおられるし、もし・・もしも本当に怪我をしていて、傷を見たら・・私、気を失うかもしれないわ。
どうしようか迷った私は、結局痛みを我慢することにした。
「ほらっ・・」
そう言って、私は軽くその場でジャンプする。だけど本当は凄く・・すごーく痛い。でも、そんな痛みより今はここから脱出するほうが先決!
でも、私の決死の行動にもリリス様は険しい表情を浮かべている。あー、もうどうしてこの方は素直に私の言葉を受け取らないのかしら。行動力がありすぎるのよ。公爵家ご令嬢でしょう?貴女・・・
先程はミレドールで出会った女の子と再会の約束をしてしまうし・・・これでは婚約者のヘンリー様の気苦労も多いわね、きっと。でも、羨ま・・・・あっ、今のは忘れてくださる?
それより血よ!血!
私の言葉を疑うリリス様が今度はフェクター様に不思議なお願いをした。
「フェクター様、申し訳ありませんが、いいと言うまで後ろを向いていていただけますか?」
その言葉に彼はコクリと頷くと壁に近寄り、私たちに背中を向けた。そして頭頂部を目の前の壁につけた。
何あれ。何やってるのかしら・・痛くない?ねえ、頭痛くないの?そんなに押し付けて・・・彼女は“後ろを向け”とお願いしただけなのに・・
本当に彼変わってるわ。無口で何を考えてるか分からないのに、この国の王太子に仕えてる。おまけにアーサー様は彼を気に入っているみたいだし・・何者なのかしらね、フェクター様って・・・
嗚呼、また話が逸れてしまったわ。
ええと・・リリス様はフェクター様が背を向けたのを確認すると、今度は私に信じられないお願いをしてきた。
「リュシェル様、スカートめくってください」
「・・なっ!何てこと言うの!!!」
スカートをめくれなんて、信じられない。でもそう言ったリリス様の目は真剣。決してフザケてるわけではなく、私を心配してくれてのこと。
でも、それだけは駄目!絶対に駄目!!
だって、そんなことをしたら、私の・・私たちの秘密が白日の下に晒されてしまうもの!
「男性に見られる心配はありません。ですから、スカートめくってください」
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