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第37話 いつからダンジョンゲームになった?2

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「こっ、これは・・・転移の扉」

そう言ったのは、フェクターだ。リュシェルも目の前のそれが何か知ってるかのように頷いている。

(転移の扉・・・転移ってことは、これに入ると遠いところに飛ばされるってこと!?しかもどっかで聞いたような名前。まるであのゲームの○の扉みたいじゃない!?ありなの!?これはありなんですか!?)

空間に渦を巻くそれに、皆の視線が集まる。

「どうしますか?入ってみますか?」

「・・・いっ、行き先が分からないから・・・流石にそっ、それは」

若干胸をワクワクさせながら尋ねるリリスにフェクターが至極真っ当なセリフを吐く。しかし、初めて見た転移の扉なるものに俄然興味をひかれたリリスが「一応、行き先を見てくるだけでも・・」と食い下がる。それにリュシェルが「却下。着いた先で危険があったらどうするの!?」と冷めた眼差しを送ってきた。

(おおぅ・・・氷点下対応きたぁ。ですよねぇ。入るなんて選択肢、万が一にもないですよねぇ)

「もっ、戻りましょう」と短い言葉で促すフェクターが洞窟へと再び歩き出す。仕方なく諦めたリリスも来た道へ戻り始めたその時、前を行くリュシェルが足元をぐらつかせた。どうやら小石を踏んだようだ。バランスを崩した彼女の身体がリリスへ向かってくる。不意の出来事にリリスが「えっ・・」と声を上げ、リュシェルを受け止めようと腕を広げる。しかし、タイミングが遅れ、リュシェルを身体で受け止めてしまった。そうして王女の身体に押されたリリスの身体も後ろへ傾く。そして、その先にある渦の中へ一直線に吸い込まれていった。扉にリリスとリュシェル、そしてリュシェルを咄嗟に掴んだフェクターも一緒に吸い込まれ、三人は姿を消した。かわりに、扉の前には女性物の壊れたヒールが転がっていた。

扉に吸い込まれどこかへ飛ばされたリリスは、覆いかぶさるリュシェルを起こす。

「リュシェル様、大丈夫ですか?」

「ええ、それよりごめんなさい。私が転んでしまったから」

「いえ、お怪我がな・・」

ここでリリスの言葉が途切れる。その瞳に一人の少女が映したからだ。金色の髪に茶色の瞳を持つ少女は、目を見開き、明らかに驚いている。年の頃は、リリスより少し年下に見えた。少女は首をフルフルと横に振ると、駆け寄り心配そうに尋ねる。

「あの・・大丈夫ですか?一体、どこからいらっしゃったのですか?突然、現れたので、驚きました」

(あらっ、可愛らしい子・・・よかった。とりあえず危険はなさそうね)

「ええ・・・驚かせてしまって、申し訳ありませんでした。セルジュ領に滞在していたのですが、転移の扉に入ってしまって、飛ばされましたの」

リリスがそう答えると、少女は首を傾げ「セルジュ領?・・それはどこですか?」と問う。少女の様子にリリスの心に一抹の不安がよぎる。

「えっと・・ガイアールとの国境地帯にある領地ですわ」

「・・ガイアール・・・まさか」

リリスは嫌な予感を胸に抱き、しかし聞かなくてはならない質問を口にした。

「・・あのぉ・・・・もしかして、ここはプロメアではないのですか?」

すると、少女の口から信じられないセリフが告げられた。

「プロメアって、プロメア王国ですか!?とんでもない!ここはミレドールですよ」

「「ミレドール!?」」

初めて三人の声が揃った。

「ええ、ミレドールです・・・私は、サスティナ侯爵家のマリアと申します」

嵐のように次々と知らされる事実にリリスは目眩がした。
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