28 / 58
第25話 おバカな難敵
しおりを挟む
アーサーとサリーの接触後、アーサーは彼女に付き纏われていた。以前から付き纏われていたが、陰から見つめるストーカーから、姿を隠さずに絡んでくる迷惑なファンにサリーは勝手に昇格したのだ。最初こそ笑顔で「やあ、また会ったね」と対応していたアーサーだったが、毎度わざとらしく転ぶので困り果てていた。リリスは、至急対策を練ることにし、アリーナたちいつものメンバーでヒソヒソと話し合っていた。
「でもさぁ、殿下には申し訳ないけど、このまま仲を深めてもらえば、いいんじゃないの?どうせ偽りの友人以上恋人未満作戦にするつもりだったんだし」
アシュリーがあっけらかんとそう言えば、リリスは険しい顔で答える。
「それはそうなんだけど、一度接触させれば、自制がきくと思ったのよ。そうすれば少しの間、落ち着いた時間を過ごせるとも思ったしね」
「でも実際はタガが外れた」
スタイラスの言葉にリリスは、ため息をつく。
「そうね。流石に王太子相手にここまで一方的に絡んでくるなんて予想外だったわ。普通の人なら不敬だと分かるもの。でも、まさか同じ手を何度も何度も・・・こんなにもおバカだったとはね」
「とにかくどうにかしないと、殿下が流石に不憫だよ」とスタイラスは言うと、皆は再び頭を悩ませる。
・・・・
皆の間を沈黙が流れる中、スタイラスが尋ねる。
「おい、アシュリー。何か使えそうな道具ないか?」
「えー、またぁ。そう簡単に言うけど、対策の方針を決めてくれないと、そうそう道具なんて思いつかないよ」
アシュリーは口を尖らせ、もっともな抗議をすると「だよなぁ。悪かった」とスタイラスは謝った。しかし、すぐに何か閃いた様子で皆の顔を見回すと、頼もしいセリフを口にする。
「あっ!道具じゃないけど、思い付いちゃった」
「「えっ!?何?」」
期待値がグーンと上がッた様子の皆に、アシュリーは勿体ぶった声で言った。
「フフフッ・・スタイラス。去年のディファナとの戦いを思い出してみなよ・・・・・ヒントはネージュ・・・あっ、リリス嬢たちは知らないからね」
暫く考え込んだスタイラスは、パッとアシュリーと視線を交差させると「あっ、あれかっ!」と言った。その様子にアシュリーは満足そうに頷くと「そう、やっと気付いたみたいだね」と笑う。そして首を傾げるリリスたち女性陣に説明を始めた。
アシュリーの話を聞き終えたリリスたちは、驚きを隠さない。
「まあ、そんなことがあったの!?」
「聖獣って、凄いのね」
「ネージュの能力は先生から聞いていたけど、まさかそんな形で助けてもらっていたなんて・・・」
三者三様の反応を見せる。そしてリリスは微笑むと、アシュリーに言った。
「分かったわ。その手使えそうね。明日からネージュを連れてくるわ」
そこに別の声が混ざる。
「ねえ、何を話してるの?」
リリスの背後から掛けられた声に振り向くと、そこにはグラムとリュシェルがいた。リリスたちの仕組んだ茶番を知っている二人に話の内容を隠す必要はなかったが、聖獣の存在は秘密なのでリリスは誤魔化した。
「いえ、アーサー殿下が困っておられるので、その憂いを取り除く方法を話しておりました」
その返答にリュシェルはふーんとジッと見つめると、尋ねる。
「ねえ、リリス様はこのやり方が本当に、正解だと思っているの?アーサー様の負担が大きすぎるのではなくて?」
刺々しい声で尋ねるリュシェルと、横で二人のやり取りを静観するグラムは対照的だ。リリスが「リュシェル様も了承された筈ですよね」と言葉を返すと、リュシェルは「そうね。でも・・いえ、今の言葉は忘れてちょうだい」と言葉を残して立ち去った。
王女からの意味不明な絡まれ方に、アリーナたちは不満そうに言う。
「一体、何なの?」
「アーサー殿下がなんだかんだ楽しそうにリリスに絡むから、面白くないんでしょ。何か隣国の王女様だと一目置いていたけど、ちょっと残念だわ」
エリーゼはそう言うと肩をすくめる。そして、リリスへ同情の眼差しを送った。
「気にしないわ。前から少し冷たかったし・・」と気にする様子の全くないリリスに、「でも王女様のお世話係があるでしょう?」と親友を心配するアリーナ。リリスは「まあね。でも思っていたより、そう機会は多くないのよ」と笑って返した。
そんな女性陣の会話をスタイラスとアシュリーは、黙って見つめていた。
「でもさぁ、殿下には申し訳ないけど、このまま仲を深めてもらえば、いいんじゃないの?どうせ偽りの友人以上恋人未満作戦にするつもりだったんだし」
アシュリーがあっけらかんとそう言えば、リリスは険しい顔で答える。
「それはそうなんだけど、一度接触させれば、自制がきくと思ったのよ。そうすれば少しの間、落ち着いた時間を過ごせるとも思ったしね」
「でも実際はタガが外れた」
スタイラスの言葉にリリスは、ため息をつく。
「そうね。流石に王太子相手にここまで一方的に絡んでくるなんて予想外だったわ。普通の人なら不敬だと分かるもの。でも、まさか同じ手を何度も何度も・・・こんなにもおバカだったとはね」
「とにかくどうにかしないと、殿下が流石に不憫だよ」とスタイラスは言うと、皆は再び頭を悩ませる。
・・・・
皆の間を沈黙が流れる中、スタイラスが尋ねる。
「おい、アシュリー。何か使えそうな道具ないか?」
「えー、またぁ。そう簡単に言うけど、対策の方針を決めてくれないと、そうそう道具なんて思いつかないよ」
アシュリーは口を尖らせ、もっともな抗議をすると「だよなぁ。悪かった」とスタイラスは謝った。しかし、すぐに何か閃いた様子で皆の顔を見回すと、頼もしいセリフを口にする。
「あっ!道具じゃないけど、思い付いちゃった」
「「えっ!?何?」」
期待値がグーンと上がッた様子の皆に、アシュリーは勿体ぶった声で言った。
「フフフッ・・スタイラス。去年のディファナとの戦いを思い出してみなよ・・・・・ヒントはネージュ・・・あっ、リリス嬢たちは知らないからね」
暫く考え込んだスタイラスは、パッとアシュリーと視線を交差させると「あっ、あれかっ!」と言った。その様子にアシュリーは満足そうに頷くと「そう、やっと気付いたみたいだね」と笑う。そして首を傾げるリリスたち女性陣に説明を始めた。
アシュリーの話を聞き終えたリリスたちは、驚きを隠さない。
「まあ、そんなことがあったの!?」
「聖獣って、凄いのね」
「ネージュの能力は先生から聞いていたけど、まさかそんな形で助けてもらっていたなんて・・・」
三者三様の反応を見せる。そしてリリスは微笑むと、アシュリーに言った。
「分かったわ。その手使えそうね。明日からネージュを連れてくるわ」
そこに別の声が混ざる。
「ねえ、何を話してるの?」
リリスの背後から掛けられた声に振り向くと、そこにはグラムとリュシェルがいた。リリスたちの仕組んだ茶番を知っている二人に話の内容を隠す必要はなかったが、聖獣の存在は秘密なのでリリスは誤魔化した。
「いえ、アーサー殿下が困っておられるので、その憂いを取り除く方法を話しておりました」
その返答にリュシェルはふーんとジッと見つめると、尋ねる。
「ねえ、リリス様はこのやり方が本当に、正解だと思っているの?アーサー様の負担が大きすぎるのではなくて?」
刺々しい声で尋ねるリュシェルと、横で二人のやり取りを静観するグラムは対照的だ。リリスが「リュシェル様も了承された筈ですよね」と言葉を返すと、リュシェルは「そうね。でも・・いえ、今の言葉は忘れてちょうだい」と言葉を残して立ち去った。
王女からの意味不明な絡まれ方に、アリーナたちは不満そうに言う。
「一体、何なの?」
「アーサー殿下がなんだかんだ楽しそうにリリスに絡むから、面白くないんでしょ。何か隣国の王女様だと一目置いていたけど、ちょっと残念だわ」
エリーゼはそう言うと肩をすくめる。そして、リリスへ同情の眼差しを送った。
「気にしないわ。前から少し冷たかったし・・」と気にする様子の全くないリリスに、「でも王女様のお世話係があるでしょう?」と親友を心配するアリーナ。リリスは「まあね。でも思っていたより、そう機会は多くないのよ」と笑って返した。
そんな女性陣の会話をスタイラスとアシュリーは、黙って見つめていた。
0
お気に入りに追加
357
あなたにおすすめの小説
不機嫌な悪役令嬢〜王子は最強の悪役令嬢を溺愛する?〜
晴行
恋愛
乙女ゲームの貴族令嬢リリアーナに転生したわたしは、大きな屋敷の小さな部屋の中で窓のそばに腰掛けてため息ばかり。
見目麗しく深窓の令嬢なんて噂されるほどには容姿が優れているらしいけど、わたしは知っている。
これは主人公であるアリシアの物語。
わたしはその当て馬にされるだけの、悪役令嬢リリアーナでしかない。
窓の外を眺めて、次の転生は鳥になりたいと真剣に考えているの。
「つまらないわ」
わたしはいつも不機嫌。
どんなに努力しても運命が変えられないのなら、わたしがこの世界に転生した意味がない。
あーあ、もうやめた。
なにか他のことをしよう。お料理とか、お裁縫とか、魔法がある世界だからそれを勉強してもいいわ。
このお屋敷にはなんでも揃っていますし、わたしには才能がありますもの。
仕方がないので、ゲームのストーリーが始まるまで悪役令嬢らしく不機嫌に日々を過ごしましょう。
__それもカイル王子に裏切られて婚約を破棄され、大きな屋敷も貴族の称号もすべてを失い終わりなのだけど。
頑張ったことが全部無駄になるなんて、ほんとうにつまらないわ。
の、はずだったのだけれど。
アリシアが現れても、王子は彼女に興味がない様子。
ストーリーがなかなか始まらない。
これじゃ二人の仲を引き裂く悪役令嬢になれないわ。
カイル王子、間違ってます。わたしはアリシアではないですよ。いつもツンとしている?
それは当たり前です。貴方こそなぜわたしの家にやってくるのですか?
わたしの料理が食べたい? そんなのアリシアに作らせればいいでしょう?
毎日つくれ? ふざけるな。
……カイル王子、そろそろ帰ってくれません?
悪役令嬢、第四王子と結婚します!
水魔沙希
恋愛
私・フローディア・フランソワーズには前世の記憶があります。定番の乙女ゲームの悪役転生というものです。私に残された道はただ一つ。破滅フラグを立てない事!それには、手っ取り早く同じく悪役キャラになってしまう第四王子を何とかして、私の手中にして、シナリオブレイクします!
小説家になろう様にも、書き起こしております。
転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。
しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。
冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!
わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?
それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?
政略結婚の約束すら守ってもらえませんでした。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
「すまない、やっぱり君の事は抱けない」初夜のベットの中で、恋焦がれた初恋の人にそう言われてしまいました。私の心は砕け散ってしまいました。初恋の人が妹を愛していると知った時、妹が死んでしまって、政略結婚でいいから結婚して欲しいと言われた時、そして今。三度もの痛手に私の心は耐えられませんでした。
モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~
咲桜りおな
恋愛
前世で大好きだった乙女ゲームの世界にモブキャラとして転生した伯爵令嬢のアスチルゼフィラ・ピスケリー。
ヒロインでも悪役令嬢でもないモブキャラだからこそ、推しキャラ達の恋物語を遠くから鑑賞出来る! と楽しみにしていたら、関わりたくないのに何故か悪役令嬢の兄である騎士見習いがやたらと絡んでくる……。
いやいや、物語の当事者になんてなりたくないんです! お願いだから近付かないでぇ!
そんな思いも虚しく愛しの推しは全力でわたしを口説いてくる。おまけにキラキラ王子まで絡んで来て……逃げ場を塞がれてしまったようです。
結構、ところどころでイチャラブしております。
◆◇◇◇ ◇◇◇◇ ◇◇◇◆
前作「完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい」のスピンオフ作品。
この作品だけでもちゃんと楽しんで頂けます。
番外編集もUPしましたので、宜しければご覧下さい。
「小説家になろう」でも公開しています。
悪役令嬢に転生したので落ちこぼれ攻略キャラを育てるつもりが逆に攻略されているのかもしれない
亜瑠真白
恋愛
推しキャラを幸せにしたい転生令嬢×裏アリ優等生攻略キャラ
社畜OLが転生した先は乙女ゲームの悪役令嬢エマ・リーステンだった。ゲーム内の推し攻略キャラ・ルイスと対面を果たしたエマは決心した。「他の攻略キャラを出し抜いて、ルイスを主人公とくっつけてやる!」と。優等生キャラのルイスや、エマの許嫁だった俺様系攻略キャラのジキウスは、ゲームのシナリオと少し様子が違うよう。
エマは無事にルイスと主人公をカップルにすることが出来るのか。それとも……
「エマ、可愛い」
いたずらっぽく笑うルイス。そんな顔、私は知らない。
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
【完結】愛とは呼ばせない
野村にれ
恋愛
リール王太子殿下とサリー・ペルガメント侯爵令嬢は六歳の時からの婚約者である。
二人はお互いを励まし、未来に向かっていた。
しかし、王太子殿下は最近ある子爵令嬢に御執心で、サリーを蔑ろにしていた。
サリーは幾度となく、王太子殿下に問うも、答えは得られなかった。
二人は身分差はあるものの、子爵令嬢は男装をしても似合いそうな顔立ちで、長身で美しく、
まるで対の様だと言われるようになっていた。二人を見つめるファンもいるほどである。
サリーは婚約解消なのだろうと受け止め、承知するつもりであった。
しかし、そうはならなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる