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第25話 おバカな難敵

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アーサーとサリーの接触後、アーサーは彼女に付き纏われていた。以前から付き纏われていたが、陰から見つめるストーカーから、姿を隠さずに絡んでくる迷惑なファンにサリーは勝手に昇格したのだ。最初こそ笑顔で「やあ、また会ったね」と対応していたアーサーだったが、毎度わざとらしく転ぶので困り果てていた。リリスは、至急対策を練ることにし、アリーナたちいつものメンバーでヒソヒソと話し合っていた。

「でもさぁ、殿下には申し訳ないけど、このまま仲を深めてもらえば、いいんじゃないの?どうせ偽りの友人以上恋人未満作戦にするつもりだったんだし」

アシュリーがあっけらかんとそう言えば、リリスは険しい顔で答える。

「それはそうなんだけど、一度接触させれば、自制がきくと思ったのよ。そうすれば少しの間、落ち着いた時間を過ごせるとも思ったしね」

「でも実際はタガが外れた」

スタイラスの言葉にリリスは、ため息をつく。

「そうね。流石に王太子相手にここまで一方的に絡んでくるなんて予想外だったわ。普通の人なら不敬だと分かるもの。でも、まさか同じ手を何度も何度も・・・こんなにもおバカだったとはね」

「とにかくどうにかしないと、殿下が流石に不憫だよ」とスタイラスは言うと、皆は再び頭を悩ませる。

・・・・

皆の間を沈黙が流れる中、スタイラスが尋ねる。

「おい、アシュリー。何か使えそうな道具ないか?」

「えー、またぁ。そう簡単に言うけど、対策の方針を決めてくれないと、そうそう道具なんて思いつかないよ」

アシュリーは口を尖らせ、もっともな抗議をすると「だよなぁ。悪かった」とスタイラスは謝った。しかし、すぐに何か閃いた様子で皆の顔を見回すと、頼もしいセリフを口にする。

「あっ!道具じゃないけど、思い付いちゃった」

「「えっ!?何?」」

期待値がグーンと上がッた様子の皆に、アシュリーは勿体ぶった声で言った。

「フフフッ・・スタイラス。去年のディファナとの戦いを思い出してみなよ・・・・・ヒントはネージュ・・・あっ、リリス嬢たちは知らないからね」

暫く考え込んだスタイラスは、パッとアシュリーと視線を交差させると「あっ、あれかっ!」と言った。その様子にアシュリーは満足そうに頷くと「そう、やっと気付いたみたいだね」と笑う。そして首を傾げるリリスたち女性陣に説明を始めた。

アシュリーの話を聞き終えたリリスたちは、驚きを隠さない。

「まあ、そんなことがあったの!?」

「聖獣って、凄いのね」

「ネージュの能力は先生から聞いていたけど、まさかそんな形で助けてもらっていたなんて・・・」

三者三様の反応を見せる。そしてリリスは微笑むと、アシュリーに言った。

「分かったわ。その手使えそうね。明日からネージュを連れてくるわ」

そこに別の声が混ざる。

「ねえ、何を話してるの?」

リリスの背後から掛けられた声に振り向くと、そこにはグラムとリュシェルがいた。リリスたちの仕組んだ茶番を知っている二人に話の内容を隠す必要はなかったが、聖獣の存在は秘密なのでリリスは誤魔化した。

「いえ、アーサー殿下が困っておられるので、その憂いを取り除く方法を話しておりました」

その返答にリュシェルはふーんとジッと見つめると、尋ねる。

「ねえ、リリス様はこのやり方が本当に、正解だと思っているの?アーサー様の負担が大きすぎるのではなくて?」

刺々しい声で尋ねるリュシェルと、横で二人のやり取りを静観するグラムは対照的だ。リリスが「リュシェル様も了承された筈ですよね」と言葉を返すと、リュシェルは「そうね。でも・・いえ、今の言葉は忘れてちょうだい」と言葉を残して立ち去った。

王女からの意味不明な絡まれ方に、アリーナたちは不満そうに言う。

「一体、何なの?」

「アーサー殿下がなんだかんだ楽しそうにリリスに絡むから、面白くないんでしょ。何か隣国の王女様だと一目置いていたけど、ちょっと残念だわ」

エリーゼはそう言うと肩をすくめる。そして、リリスへ同情の眼差しを送った。

「気にしないわ。前から少し冷たかったし・・」と気にする様子の全くないリリスに、「でも王女様のお世話係があるでしょう?」と親友を心配するアリーナ。リリスは「まあね。でも思っていたより、そう機会は多くないのよ」と笑って返した。

そんな女性陣の会話をスタイラスとアシュリーは、黙って見つめていた。
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