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プロローグ
死因
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とはいえ、果たして他の大臣も狙われているのかは疑問があった。
もし大臣の中にターゲットがいるのなら、別の大臣を狙うのではないだろうか。
大臣は表にも顔を出し、外にも出ることが多く、その分多くの人の目に触れる。
しかし女王は、既に第一線を退いていて、表には顔を出していない。
国王の時代から恨みのある人間が居ないとも限らないが、わざわざ真っ先に女王を狙うとも思えないし、そもそも女王を狙える状況ということもありえないだろう。
「すみません」
ひとまずその場は解散し、皆が戻って行ったあと、症状を確認していた医者の先生が、マリーとメイド長を呼び止める。
先生によれば、毒によって起こる症状が見られ、それが死の原因とみて、間違いないだろうということだった。
「でも、どうやって」
「恐らく、注射かと」
腕の辺りに、注射を使うことによって起こる現象が起こっていたらしい。
あとの詳しいことは、ここでは難しいとの事で、日を改めることになった。
近いうちに、密かに運ぶことは、ある程度計画を立てていた。
「毒か…」
メイド長の話していた通りだった。
だとしたら、身内である確率が高いだろう。食事に混ぜたのか?寝てる間に忍び込んだ?あるいは、どこかの国のスパイ?と1つ疑問が解消されると、また別の疑問が浮かんでくる。
「国王様」
若い側近がマリー達に声をかける。
「今の曖昧なままの話で伝えても、かえって皆がお互いを疑い合ってしまいます」
話を聞いていたらしく、側近は公表は先延ばしにするべきだと伝えた。
「母が以前から病気であったことにすれば良いのでは?」
「だとしたら、もっと早く公表しても良かったのでは、となりかねないのではないでしょうか」
一線を退いている人間の病気を隠している必要はない、と、国王寄りの大臣たちにつけ込まれる可能性を指摘する。
「ここにいない者たちは、国王様になられて役職を外されたものも多いのです。付け入られる隙は、なるべく減らしておくべきでしょう」
うーん、とマリーは腕を組む。
現状に、死因は特定中と付け加えて説明しておいた方が良いのではとも思っていた。
「それを踏まえて、もう一度考えましょう」
メイド長の言葉に、恭しく頭を下げて大臣は下がって行った。
「あの」
そこへ白衣の女性が声をかけてきた、
「すみません、お尋ねしてもよろしいでしょうか」
慌てた様子の彼女の話を聞くと、注射器がひとつ見当たらないので見かけていないか、ということだった。
昨日、月に一度の検診の日できたばかりだったらしい。
「あ」
そういえば、とメイド長が思い出す。
メイド長とマリーが廊下歩いていた時、お医者の先生とすれ違っていた。その時、マリーがその注射器を拾い、先生の後ろを歩いていた、白衣の女性にそれを渡していた。
「マリー様がお渡ししていましたよね?」
「はい、拾ってもらったはずなのですが、数が合わなくて」
「別の注射器なのでは?」
「いえ、それぞれ分かるようにテープがしてあるので、それがないのは間違いないのです」
備品一つなくしただけでも大問題になるらしく、彼女は顔は真っ青だ。
「こちらでも探してみますので、何とか誤魔化せますか?」
看護師は何度も頷いてから戻って行った。
「怪しいですね」
「ちょっとあからさまな気もするけど」
様々な意味で疑念を持ちながら、注射器を探して回ったが、注射器は出てこなかった。
もし大臣の中にターゲットがいるのなら、別の大臣を狙うのではないだろうか。
大臣は表にも顔を出し、外にも出ることが多く、その分多くの人の目に触れる。
しかし女王は、既に第一線を退いていて、表には顔を出していない。
国王の時代から恨みのある人間が居ないとも限らないが、わざわざ真っ先に女王を狙うとも思えないし、そもそも女王を狙える状況ということもありえないだろう。
「すみません」
ひとまずその場は解散し、皆が戻って行ったあと、症状を確認していた医者の先生が、マリーとメイド長を呼び止める。
先生によれば、毒によって起こる症状が見られ、それが死の原因とみて、間違いないだろうということだった。
「でも、どうやって」
「恐らく、注射かと」
腕の辺りに、注射を使うことによって起こる現象が起こっていたらしい。
あとの詳しいことは、ここでは難しいとの事で、日を改めることになった。
近いうちに、密かに運ぶことは、ある程度計画を立てていた。
「毒か…」
メイド長の話していた通りだった。
だとしたら、身内である確率が高いだろう。食事に混ぜたのか?寝てる間に忍び込んだ?あるいは、どこかの国のスパイ?と1つ疑問が解消されると、また別の疑問が浮かんでくる。
「国王様」
若い側近がマリー達に声をかける。
「今の曖昧なままの話で伝えても、かえって皆がお互いを疑い合ってしまいます」
話を聞いていたらしく、側近は公表は先延ばしにするべきだと伝えた。
「母が以前から病気であったことにすれば良いのでは?」
「だとしたら、もっと早く公表しても良かったのでは、となりかねないのではないでしょうか」
一線を退いている人間の病気を隠している必要はない、と、国王寄りの大臣たちにつけ込まれる可能性を指摘する。
「ここにいない者たちは、国王様になられて役職を外されたものも多いのです。付け入られる隙は、なるべく減らしておくべきでしょう」
うーん、とマリーは腕を組む。
現状に、死因は特定中と付け加えて説明しておいた方が良いのではとも思っていた。
「それを踏まえて、もう一度考えましょう」
メイド長の言葉に、恭しく頭を下げて大臣は下がって行った。
「あの」
そこへ白衣の女性が声をかけてきた、
「すみません、お尋ねしてもよろしいでしょうか」
慌てた様子の彼女の話を聞くと、注射器がひとつ見当たらないので見かけていないか、ということだった。
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「あ」
そういえば、とメイド長が思い出す。
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「はい、拾ってもらったはずなのですが、数が合わなくて」
「別の注射器なのでは?」
「いえ、それぞれ分かるようにテープがしてあるので、それがないのは間違いないのです」
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「こちらでも探してみますので、何とか誤魔化せますか?」
看護師は何度も頷いてから戻って行った。
「怪しいですね」
「ちょっとあからさまな気もするけど」
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