【 化学型錬金術師の異世界放浪記 】

杏忍 東風

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プロローグ①

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 化学とは英語名でChemistry、ラテン語でケミーアと言い、この世に存在するさまざまな物質の性質・構造および、その物質が、なにから、どのような構造で出来ていて、どのような特徴を持っていて、そしてどのような性質を持っているか、そして物質を構成する分子や原子の結合状態をもとに、
その物質相互の構造の変化すなわち、化学反応によりどのように別なものに変化するか研究する自然科学の一分野である。


 化学は対象や研究する方向により、生化学や核化学、無機化学や有機化学などいろいろな分野に分けられる。そして、現代科学の主たるアース・ケミストリー、英語でgeochemistry、つまり地球化学も化学のひとつと言えるのだ。
 その分野の派生である宇宙化学という宇宙空間の元素組成、宇宙空間に存在する元素からなる組成、そして星や星間物質の組成・構造について研究をする分野であり、無機化学の周辺分野に位置づけられる元素や同位体の分布を分析する分野である。

 そして、この物語の主人公のひとり、叢井信之助はこの宇宙化学を研究する大学院生であり、そして将来有望な若者であり、信之助が尊敬するフィンランドの科学者、アルトゥーリ・ヴィルタネンのようにノーベル化学賞を受賞する日も近いかもしれないと言われていた。だが、そんなある日のこと、いつものようにシンノスケが研究室で昼寝をしていると、突然の爆発音が轟き、シンノスケは目を覚ました。
「ノブ、またなにかやらしたの?」
 ノブと呼ばれた青年は、モクモクと煙が出る部屋を換気しながら、ゴホゴホと咳き込んでる。
 その煙は無害ではあるようだが、焚き火を室内で起こしたとしても、これほどの煙幕にはならないというほどの不透明な空間になっていた。
「研究室で全く別の研究してたら、また教授に怒られるぞ?研究室で遊ぶなって」
 シンノスケがそう言っている間にケムリは少しずつ薄らいでいき、ノブの顔が少しづつハッキリ見えてきた。
 その青年は今どき珍しい丸縁の小さなメガネをかけていて、少し幼く少年っぽい顔をしている。
 だがよく見ると顔パーツは整っていて、モデル雑誌の読者モデルのような顔立ちであり、一見すると女のコのようにも見える。
 その青年は少し顔を赤らめながら、ゴホッとなにか喉につまら出たように咳き込んだ。
 そして、ケムリも落ち着き、少し涙目でシンノスケの返答に答えを用意していた。
「遊んでるわけじゃないよ。急ぎで完成させなきゃいけない研究だったから、ちょっとだけ、焦って、無理にピコレットで穴に詰め込んじゃったから、予想以上の反応してきちゃって・・・」
 そう言いながら、眼鏡をとり、潤んだ瞳にすこし涙をためながら、換気した窓の側で深呼吸を深くすると、先程開けた窓をまた閉め始めたのだった。
「その研究って、学会に発表するぶんじゃなくて、ノブの個人的な研究だろ」
 まだ眠そうな瞳を無理やり擦りながらシンノスケは、研究室にあるお昼寝用のハンモックから足をゆっくりと降ろした。
「だ、だって、しょうがないじゃん。。。家でしてたら、またママに叱られるかもしれないし・・・」
 そう言って、ノブは気にもしないかのように、また別の違う研究を始めた。
「それよりシンノスケ?学会近いのに研究、しなくていいの?それこそ、教授に叱られちゃうよ?」
 そう言いながらノブは心配そうに、シンノスケの顔を覗き込んだ。
 急に近づけられたノブの不思議そうな顔にビックリした様子のシンノスケは、眠たそうな瞳のまま、ハンモックの隣りにあるパソコンデスクの上に座った。
「心配しなくても、まだ大丈夫だよ。それよりこれから配信しないといけない課題が残っててさぁ、まだその編集が終わってないんだ」
 そう言いながら、スイッチをポチリと入れ、目の前にあるパソコンを立ち上げた。
 PCは静かなモーター音がなり、軽い振動を刻み始めた。
「それこそ、研究と関係ないじゃん?ねぇ、本当に教授に叱られちゃうよ?次はタダでは手伝ってあげないんだからね」
 そう言ってむくれ顔で何やら怪しい研究を続けるノブを横目に、シンノスケはPCをいじり始めた。
「そう言うなよって」
 シンノスケはノブの顔を覗き込むとかすかに微笑んだ。
 そして、PCが立ち上がり、
 動画の編集のファイルを急いで開けて、振動するPCのキーボードに若い指を走らせた。
 ノブは少し呆れ顔をしながら、ため息をつく。
 無表情な表情が突如、なにか閃いたように目を輝かした。
「そういえば、明日はヒマ?」
 瞳を輝かせながら言うノブに、シンノスケは面倒くさそうに、
「暇じゃねえよ」
 とそっけなく答える。
「絶対ヒマじゃん!彼女がいるわけでもないし、明日もまだ教授も学会で帰ってこないはずだし」
 ノブはそう言って、お願いっと言って、シンノスケの顔の前で手を合わせてみせた。
「どぉうしても、手伝って欲しい研究があって、明日は他の研究生のいなくて、明日は二人っきりだから、他に頼める人いなくて」
 潤々したつぶらなノブの瞳は、シンノスケを直視していた。
そして、お願いのポーズをして、シンノスケにわがままを言い始めた。
「しょうがないなぁ。じゃあ、その代わりに、俺の学会提出分の研究やってくれたら、考えてやらなくもないよ」
 そう意地悪そうに言うと、ノブは少し瞳を落とし考え込みながら、
「自分の研究なんだから、本当は自分でやらなきゃ意味がないんだよぉ!でも、それでもいいから、お願ぃ!!」
 そう言って手を合わせるノブに、パソコンの画面から、後ろで懇願するノブに顔を向けてたシンノスケは少しびっくりした様子だった。
 まさかOKが出るとは思っても見なかったからだ。
 だが、もとよりこのような関係が慣れていたせいか、すぐに正常意識をシンノスケは取り戻し、
「じゃあ、今回は手伝うよ。場所はここの研究室でいいんだよな」
 そう言うと、ノブはニンマリと少し不敵な笑みを浮かべた。
 だが、すぐにいつものあどけない表情に戻り、そのいつものアドケナイ表情で素直に喜び始めたのだ。
「じゃあ、明日までに準備することがあるから、ちょっと出かけてくるね」
 いつの間にか、研究をやめて、片付けをすべて済ましていたノブに、シンノスケは不思議そうに聞いた。
「ところで、その研究ってなんの研究するの?」
 少し訝しそうな顔をするシンノスケにノブは満面な笑みで、
「それは明日までの秘密!」
 そう言って、スニーカーを急いで履いて、研究室の扉を開けて出ていってしまった。
 不可思議そうな顔をするシンノスケだったが、気を取り直して続きのゲーム動画の編集始めたのだった。


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