36 / 46
34
しおりを挟む
リーザロッテと辺境伯令嬢エミリアは数ヶ月振りに再会して、お互いに無事に会えた事を喜びあった
リーザロッテは自分だけエルバルト達に助けてもらったことを心苦しく思っていたが、エミリアはリーザロッテを一人学園に残して領に帰っていた事を申し訳なかったと謝った
「謝らないでくださいませ。わたくしはエルバルト殿下方に助けていただきましたもの。エミリア様こそ、マーノ様とは·····」
「マーノ様とは婚約破棄されましたわ。破棄するという旨の書状が届きました。国王陛下の了承も出ていると」
「まあ··········書状一つで婚約破棄を」
「ええ、ミンス男爵令嬢を虐めたと。虐められた男爵令嬢は恐ろしくて泣いているんだぞ、と言うような罵詈雑言の手紙と共に」
「ルルア様を虐めなど·····マーノ様はエミリア様が辺境伯領に帰っていらっしゃた事を知らなかったのかしら」
「さあ?帰る前に伝えましたのよ。ミンス男爵令嬢とは入れ替わりで、二日程顔を合わせた程度で全く関わりもなかったのですけれどね」
「わたくしは、助けていただくばかりで何も出来ませんでしたわ。エミリア様の事も、何も出来ませんでしたの·····マーノ様にもしっかりと忠告しなければならない立場でしたのに」
俯くリーザロッテの手をエミリアが握り締めて
「マーノ様が、リーザロッテ様にどんな事をしたのか、サイラー様とロットナー様から聞きましたの。騎士を目指す者が力なき女性に·····許されない事ですわ。ですから、婚約破棄されてかえって良かったと思っていますわ」
自身も辺境伯令嬢として剣の訓練をしてきたエミリアはさっぱりとした顔でキッパリと言い切った
リーザロッテはあの時の恐怖が蘇ったが、それを顔に出してしまうとエミリアが気に病む事になると思い平然とした顔で
「エミリア様が気になさっていないのでしたら、良かったわ確かにあのままマーノ様と婚約を続けていてはエミリア様も危険でしたもの」
そう、エミリアがあの場にいなくて書状一枚で婚約破棄が済んで良かったのだ
「こうしてリーザロッテ様とも再会出来ましたし、エルバルト第二王子殿下との婚約をお祝いする事が出来て良かったですわ。おめでとうございますリーザロッテ様」
「ありがとうございます」
祝福を述べるエミリアにリーザロッテは顔をほんのりと染めてお礼を述べた
「美しい国ですわね。馬車から見えた王都も素敵でしたわ。領に戻る前に一度王都を見学出来れば嬉しいのですけれど」
「わたくしもまだ王都には出た事がありませんの。一度一緒に出掛ける事は可能かエルバルト殿下にお伺いしてみますわ」
王都に出てみたいなどと言っては我儘だろうかと不安になりながらも、嫁ぐ事になる国を見てみたいとの気持ちもあり、久しぶりの友人と約束を交わして部屋に戻ったリーザロッテは、訪ねてきたエルバルトに聞いてみた
「エミリア様と、一度王都に出掛けてみたいとお話ししていたのですけれど、いけませんでしょうか」
「辺境伯令嬢と?」
「はい」
リーザロッテの顔をジッと見つめていたエルバルトはリーザロッテの手を取って握り締めて
「リーザロッテはまだ一度も王都に出てなかったね。うん、いいよ。その代わり、俺も一緒に行くけど、良いかな?」
「エルバルト様もご一緒してくださるのですか。勿論、嬉しいですわ」
大輪の花が咲いたような笑みを浮かべたリーザロッテに、握っていた手を更に握り締めて、『暴走してはいけない。暴走してはいけない』何度も口の中でブツブツと繰り返すと
「では予定を立てるから、少しだけ待ってて」
そう言って握り締めた手を口元に近づけると、そっと唇を落とした
リーザロッテは自分だけエルバルト達に助けてもらったことを心苦しく思っていたが、エミリアはリーザロッテを一人学園に残して領に帰っていた事を申し訳なかったと謝った
「謝らないでくださいませ。わたくしはエルバルト殿下方に助けていただきましたもの。エミリア様こそ、マーノ様とは·····」
「マーノ様とは婚約破棄されましたわ。破棄するという旨の書状が届きました。国王陛下の了承も出ていると」
「まあ··········書状一つで婚約破棄を」
「ええ、ミンス男爵令嬢を虐めたと。虐められた男爵令嬢は恐ろしくて泣いているんだぞ、と言うような罵詈雑言の手紙と共に」
「ルルア様を虐めなど·····マーノ様はエミリア様が辺境伯領に帰っていらっしゃた事を知らなかったのかしら」
「さあ?帰る前に伝えましたのよ。ミンス男爵令嬢とは入れ替わりで、二日程顔を合わせた程度で全く関わりもなかったのですけれどね」
「わたくしは、助けていただくばかりで何も出来ませんでしたわ。エミリア様の事も、何も出来ませんでしたの·····マーノ様にもしっかりと忠告しなければならない立場でしたのに」
俯くリーザロッテの手をエミリアが握り締めて
「マーノ様が、リーザロッテ様にどんな事をしたのか、サイラー様とロットナー様から聞きましたの。騎士を目指す者が力なき女性に·····許されない事ですわ。ですから、婚約破棄されてかえって良かったと思っていますわ」
自身も辺境伯令嬢として剣の訓練をしてきたエミリアはさっぱりとした顔でキッパリと言い切った
リーザロッテはあの時の恐怖が蘇ったが、それを顔に出してしまうとエミリアが気に病む事になると思い平然とした顔で
「エミリア様が気になさっていないのでしたら、良かったわ確かにあのままマーノ様と婚約を続けていてはエミリア様も危険でしたもの」
そう、エミリアがあの場にいなくて書状一枚で婚約破棄が済んで良かったのだ
「こうしてリーザロッテ様とも再会出来ましたし、エルバルト第二王子殿下との婚約をお祝いする事が出来て良かったですわ。おめでとうございますリーザロッテ様」
「ありがとうございます」
祝福を述べるエミリアにリーザロッテは顔をほんのりと染めてお礼を述べた
「美しい国ですわね。馬車から見えた王都も素敵でしたわ。領に戻る前に一度王都を見学出来れば嬉しいのですけれど」
「わたくしもまだ王都には出た事がありませんの。一度一緒に出掛ける事は可能かエルバルト殿下にお伺いしてみますわ」
王都に出てみたいなどと言っては我儘だろうかと不安になりながらも、嫁ぐ事になる国を見てみたいとの気持ちもあり、久しぶりの友人と約束を交わして部屋に戻ったリーザロッテは、訪ねてきたエルバルトに聞いてみた
「エミリア様と、一度王都に出掛けてみたいとお話ししていたのですけれど、いけませんでしょうか」
「辺境伯令嬢と?」
「はい」
リーザロッテの顔をジッと見つめていたエルバルトはリーザロッテの手を取って握り締めて
「リーザロッテはまだ一度も王都に出てなかったね。うん、いいよ。その代わり、俺も一緒に行くけど、良いかな?」
「エルバルト様もご一緒してくださるのですか。勿論、嬉しいですわ」
大輪の花が咲いたような笑みを浮かべたリーザロッテに、握っていた手を更に握り締めて、『暴走してはいけない。暴走してはいけない』何度も口の中でブツブツと繰り返すと
「では予定を立てるから、少しだけ待ってて」
そう言って握り締めた手を口元に近づけると、そっと唇を落とした
12
お気に入りに追加
348
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されて満足したので聖女辞めますね、神様【完結、以降おまけの日常編】
佐原香奈
恋愛
聖女は生まれる前から強い加護を持つ存在。
人々に加護を分け与え、神に祈りを捧げる忙しい日々を送っていた。
名ばかりの婚約者に毎朝祈りを捧げるのも仕事の一つだったが、いつものように訪れると婚約破棄を言い渡された。
婚約破棄をされて喜んだ聖女は、これ以上の加護を望むのは強欲だと聖女引退を決意する。
それから神の寵愛を無視し続ける聖女と、愛し子に無視される神に泣きつかれた神官長。
婚約破棄を言い出した婚約者はもちろんざまぁ。
だけどどうにかなっちゃうかも!?
誰もかれもがどうにもならない恋愛ストーリー。
作者は神官長推しだけど、お馬鹿な王子も嫌いではない。
王子が頑張れるのか頑張れないのか全ては未定。
勢いで描いたショートストーリー。
サイドストーリーで熱が入って、何故かドタバタ本格展開に!
以降は甘々おまけストーリーの予定だけど、どうなるかは未定
嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜
𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。
だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。
「もっと早く癒せよ! このグズが!」
「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」
「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」
また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、
「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」
「チッ。あの能無しのせいで……」
頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。
もう我慢ならない!
聖女さんは、とうとう怒った。
その聖女、娼婦につき ~何もかもが遅すぎた~
ノ木瀬 優
恋愛
卒業パーティーにて、ライル王太子は、レイチェルに婚約破棄を突き付ける。それを受けたレイチェルは……。
「――あー、はい。もう、そういうのいいです。もうどうしようもないので」
あっけらかんとそう言い放った。実は、この国の聖女システムには、ある秘密が隠されていたのだ。
思い付きで書いてみました。全2話、本日中に完結予定です。
設定ガバガバなところもありますが、気楽に楽しんで頂けたら幸いです。
R15は保険ですので、安心してお楽しみ下さい。
転生したら死にそうな孤児だった
佐々木鴻
ファンタジー
過去に四度生まれ変わり、そして五度目の人生に目覚めた少女はある日、生まれたばかりで捨てられたの赤子と出会う。
保護しますか? の選択肢に【はい】と【YES】しかない少女はその子を引き取り妹として育て始める。
やがて美しく育ったその子は、少女と強い因縁があった。
悲劇はありません。難しい人間関係や柵はめんどく(ゲフンゲフン)ありません。
世界は、意外と優しいのです。
あなたが捨てた私は、もう二度と拾えませんよ?
AK
恋愛
「お前とはもうやっていけない。婚約を破棄しよう」
私の婚約者は、あっさりと私を捨てて王女殿下と結ばれる道を選んだ。
ありもしない噂を信じ込んで、私を悪女だと勘違いして突き放した。
でもいいの。それがあなたの選んだ道なら、見る目がなかった私のせい。
私が国一番の天才魔導技師でも貴女は王女殿下を望んだのだから。
だからせめて、私と復縁を望むような真似はしないでくださいね?
婚約破棄された令嬢は森で静かに暮らしたい
しざくれ
恋愛
ソフィアは家族にも周囲にも疎まれて育った。それは妹が光の聖女に選ばれたから。公爵家に産まれているのになんの才能もないと蔑まれていたのだ。
そして、妹に惚れ込んでいる第二王子であり、ソフィアの婚約者の男から婚約破棄を受けた時、ソフィアは意を決する。
「家を出よう」
そう決めたソフィアの行動は早かった。16を数えたばかりのソフィアは家を出た。そして見つけてしまった。『伝説の魔女』と呼ばれた稀代の英傑を。
それから20歳になる。
師匠と崇めた老婆が死に、ソフィアは育った森で、弱った冒険者を助けたり、時に大疫病に効く薬を作ったりと活躍をする……。
そんなソフィア宛に、かつて婚約破棄をした王子や、その国からの招待状やらが届く。もちろん他の国からも。時には騎士達も来るが……。
ソフィアは静かに森で暮らしてたいだけなのだが、どうも周囲はそうさせてくれないよう。
イケメンに化けるドラゴンさんも、そんなソフィアを脅かす一人なのだ。
【完結24万pt感謝】子息の廃嫡? そんなことは家でやれ! 国には関係ないぞ!
宇水涼麻
ファンタジー
貴族達が会する場で、四人の青年が高らかに婚約解消を宣った。
そこに国王陛下が登場し、有無を言わさずそれを認めた。
慌てて否定した青年たちの親に、国王陛下は騒ぎを起こした責任として罰金を課した。その金額があまりに高額で、親たちは青年たちの廃嫡することで免れようとする。
貴族家として、これまで後継者として育ててきた者を廃嫡するのは大変な決断である。
しかし、国王陛下はそれを意味なしと袖にした。それは今回の集会に理由がある。
〰️ 〰️ 〰️
中世ヨーロッパ風の婚約破棄物語です。
完結しました。いつもありがとうございます!
お望み通りに婚約破棄したのに嫌がらせを受けるので、ちょっと行動を起こしてみた。
夢草 蝶
恋愛
婚約破棄をしたのに、元婚約者の浮気相手から嫌がらせを受けている。
流石に疲れてきたある日。
靴箱に入っていた呼び出し状を私は──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる