上 下
30 / 46

28

しおりを挟む
  「やっぱり来たな」

  「予想通りでしたね」

  「今までの国であった事を聞いていれば、リーザロッテ嬢をそのままにしておくとは考えられなかったからな」

  「アレは余程、王子の元婚約者を不幸にしないと気が済まないようですね」

  「悪役令嬢、は破滅しないといけないの。と今までのアレが全員言っているらしいからな」
  
  「悪役令嬢ねぇ」

  王太子と話しているエルバルトが苦笑する

  「アレが善で、王子の婚約者は悪、っていう決まりらしいね」

  そう言った王太子が堪えきれずに吹き出すと二人は声を出して笑った

  「まあ、あの国のこれからが見ものだよ。あれだけの前例が各国で起こっているのにも関わらず全く対策を考えていなかったんだからね」

  王太子は基本的には穏やかな温厚な人物であるが、一方で愚かな者や利のないものに対しては容赦なく切り捨てる面がある
  今、リドウィンとルイが大臣を伴ってリンドル公爵領と辺境伯領に出向いて今後の話し合いを持っているが、エルバルトがリーザロッテを気に入って婚約者として迎えていなければ、とっくに放置して高みの見物をしていただろう

  アレの存在が各国に現れ始めた頃、他国の者達は不思議に思った
  アレは可愛らしい容姿をしているが、特に傾国と呼ばれる程のものでもない
  アレ程度の容姿であれば、余程貴族の令嬢の方が優れた容姿を持っている
  人格も質も、はっきり言えば悪いといえた
  だからライディン王国に相談が持ち込まれたのだ
  そしてライディン王国の魔術師達が各国に出向いてアレと対面する事によって、魅了、の存在が明らかになった
  それが明らかになれば各国で起こった現象に説明がついた
  ライディン王国の者達には魅了が効かない、が、他国の者達は魅了されてしまう
  それを防ぐ為に魅了を防ぐ魔石を作り出し各国に輸出した
  シストラ王国はそれをしなかった国であった
  だから、エルバルト達が留学と称して視察に行ったのだ
  結果は、ご存知の通りだ
  ライディン王国は、求められない限りは手を差し伸べない、内政干渉するつもりはないからだ

  だから、リンドル公爵領と辺境伯領に置いても、リドウィン達との話し合い次第、という事になるだろう

  リーザロッテの為には、エルバルトが思い描いている結果になる事を願っている

  エルバルトは王太子の執務室を後にすると、リーザロッテとゆっくりお茶をしようと、リーザロッテの部屋に向かった
  
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

拝啓、婚約者さま

松本雀
恋愛
――静かな藤棚の令嬢ウィステリア。 婚約破棄を告げられた令嬢は、静かに「そう」と答えるだけだった。その冷静な一言が、後に彼の心を深く抉ることになるとも知らずに。

勘違いって恐ろしい

りりん
恋愛
都合のいい勘違いって怖いですねー

婚約破棄されて満足したので聖女辞めますね、神様【完結、以降おまけの日常編】

佐原香奈
恋愛
聖女は生まれる前から強い加護を持つ存在。 人々に加護を分け与え、神に祈りを捧げる忙しい日々を送っていた。 名ばかりの婚約者に毎朝祈りを捧げるのも仕事の一つだったが、いつものように訪れると婚約破棄を言い渡された。 婚約破棄をされて喜んだ聖女は、これ以上の加護を望むのは強欲だと聖女引退を決意する。 それから神の寵愛を無視し続ける聖女と、愛し子に無視される神に泣きつかれた神官長。 婚約破棄を言い出した婚約者はもちろんざまぁ。 だけどどうにかなっちゃうかも!? 誰もかれもがどうにもならない恋愛ストーリー。 作者は神官長推しだけど、お馬鹿な王子も嫌いではない。 王子が頑張れるのか頑張れないのか全ては未定。 勢いで描いたショートストーリー。 サイドストーリーで熱が入って、何故かドタバタ本格展開に! 以降は甘々おまけストーリーの予定だけど、どうなるかは未定

追放された令嬢は英雄となって帰還する

影茸
恋愛
代々聖女を輩出して来た家系、リースブルク家。 だがその1人娘であるラストは聖女と認められるだけの才能が無く、彼女は冤罪を被せられ、婚約者である王子にも婚約破棄されて国を追放されることになる。 ーーー そしてその時彼女はその国で唯一自分を助けようとしてくれた青年に恋をした。 そしてそれから数年後、最強と呼ばれる魔女に弟子入りして英雄と呼ばれるようになったラストは、恋心を胸に国へと帰還する…… ※この作品は最初のプロローグだけを現段階だけで短編として投稿する予定です!

公爵令嬢が婚約破棄され、弟の天才魔導師が激怒した。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています

乙女ゲームの世界だと知っていても

竹本 芳生
恋愛
悪役令嬢に生まれましたがそれが何だと言うのです。

【完結】目覚めたらギロチンで処刑された悪役令嬢の中にいました

桃月とと
恋愛
 娼婦のミケーラは流行り病で死んでしまう。 (あーあ。贅沢な生活してみたかったな……)  そんな最期の想いが何をどうして伝わったのか、暗闇の中に現れたのは、王都で話題になっていた悪女レティシア。  そこで提案されたのは、レティシアとして贅沢な生活が送れる代わりに、彼女を陥れた王太子ライルと聖女パミラへの復讐することだった。 「復讐って、どうやって?」 「やり方は任せるわ」 「丸投げ!?」 「代わりにもう一度生き返って贅沢な暮らしが出来るわよ?」   と言うわけで、ミケーラは死んだはずのレティシアとして生き直すことになった。  しかし復讐と言われても、ミケーラに作戦など何もない。  流されるままレティシアとして生活を送るが、周りが勝手に大騒ぎをしてどんどん復讐は進んでいく。 「そりゃあ落ちた首がくっついたら皆ビックリするわよね」  これはミケーラがただレティシアとして生きただけで勝手に復讐が完了した話。

伯爵令嬢が婚約破棄され、兄の騎士団長が激怒した。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

処理中です...