上 下
52 / 106

<K13> 皇女はスーパーガールなのです

しおりを挟む
††

 一周もしないうちに、女子はどんどん脱落してって、半周したら歩いてる状態。
 
 男子は意外と頑張って、最初に先頭集団に20人以上が飛び出して、結構頑張ってた。
 
 うちのクラスからも何人かいるかな。私は先頭集団の最後尾付近を追尾中。
 
 それでも最初に無理したせいか、ぼろぼろと脱落していきます。
 
 後続の集団も3周を過ぎると殆どが居なくなってて、へばりこんでる。
 
 先頭集団で残ってるうちのクラスの子は、大公子息のクリフ君とロレッツオ辺境伯子息のツェザーリ君、それにちょっとというか、結構遅れてバルト辺境伯子女のマルセルさん。
 
 私はツェザーリ君のちょっと後ろまで上げて、追尾中。でもこのくらいゆっくりだと、返って疲れるな~。
 
 さらに周回が重なると、どんどん落ちていく。いまじゃ6周目には10人も残ってない。
 
 マルセルさんも根性で走ってたけど、ついに8周で脱落。
 
 残るは上級貴族から3人。下級貴族から2人、平民クラスから3人。
 
 なんかよく見ると下級貴族の1人がクリフ君と張り合ってるみたいだけど、どちらもヘロヘロ、なんとなく意地で走ってる感じ。
 
 たま~にちらっと私に視線を向けるから、にっこり笑って手を振ってあげる。すると直ぐに前を向いて、少しだけ奔る速度が上がります。私の笑顔のお陰かな?
 
 でもどんどん遅くなってる。そのうち歩き出すんじゃない?あと1周なのに。
 
 そしてようやくゴール。結局残ったのはクリフ君とツェザーリ君、それに私。あとは下級貴族の一人と、平民の一人。
 
 皆頑張ったねぇ。
 
 あたしも頑張った。皆に合わせるのがこんなにつらいとは思わなかったよ。でもなんとか気合で走り抜いたよ。頑張ったよ、かったるかったけど、加減して走ったよ。
 
 きっとエリーザも褒めてくれる。きっと。
 
 走り終わった皆さんは床にへたばって休んでるけど、私はちょっと屈伸したりストレッチ中。
 
 だって遅すぎてかったる過ぎなんだもん。身体が鈍っちゃうよ。走り足りない分は、ちょっと全速力でもしてやろうかしら、でも怒られそうだな。やめとこ。
 
 ていうか、お前らもこの程度なら全力疾走でいけや。
 
 もとインターハイ候補選手舐めんな。
 
 ストレッチしてたら、なんか生徒とセンセから熱い視線を感じるのは、何故なんだぜ?
 

 さて次に課される基礎鍛錬は、剣の素振り。

 得意な武器は兎も角、剣技は基礎の基礎ということで、基礎では常に剣技を教えるそです。

 武器は剣術に始まり剣術に終わるとかで、剣術は様々な技術の基礎となるってのが、センセの意見でした。
 
 ほんとなの?
 
 まあ確かに王立騎士団でも、基本は剣術と槍術だからね。それ以外の武器って見たこと無い。そもそも騎士ってのは槍持って馬乗ってだからな~。馬を降りての白兵戦で、身軽に動ける剣ってのも解るな~。
 
 それに新兵の基礎訓練はまず剣術だし、やっぱ大事なのかな。
 
 それで進化したのか知らないけど、王立の剣法なんてのも有ります。主に騎士団で習うんですけどね。
 
 騎士団長さんに聞いた所、騎士団では神光流剣術という流派を基礎にしているそうです。
 
 市井の冒険者達は其々好きな流派だそうですが、騎士団は昔から神光流と決まってるとか。ただ盾を装備する歩兵部隊は翆明流を学ぶらしい。
 
 騎士団長さんが知る限り、剣の流派にはいくつかあって、
 
 神光流
  高速攻撃を主体とした、攻撃のための剣術だそうです。
  その攻撃速度は、他の流派を凌ぎ最大剣速による攻撃は、岩をも断ち切るとか。先の先と得意とするそうな。

 翆明流
  本来は水中戦闘を得意とする剣術。転じて盾や防御を主体とした、受けの剣術とも云われるとかで、相手の攻撃を盾で受けて反撃したり、また盾などが無くとも剣で受け流し、隙を造り攻撃を仕掛けるとか。後の先を得意とするらしい。
 
 これ以外にも槍術とかもあるそうだけど、王国内ではこの2つが主流だとか。

 私はほー、へー、と聞かせてもらい、神光流を習いました。

 で、センセはやっぱり基本は神光流だそです。ただ希望があれば翆明流も教えるとか。ほー、2つとも使えるんですね。

 センセ曰く、どのような流派を学ぼうと、戦場でモノを言うのは素早い動きと、相手を押しつぶす膂力、攻撃を躱す体捌き、最後に剣戟の正確さだとおっしゃる。騎士団でも同じような事教えてもらったかな。
 
 で、まずは最初に重い剣を自在に扱うための、筋力トレーニングってことになります。
 
 刃引きのショートソードが渡されて、其々で素振りを開始。
 
 軽めに作られてるけど、2キロ以上あるかな。幼児にはそれなりに重いかもしれない。
 
 生徒たちはよろよろとしながら剣を振ってます。
 
 一振りする度に、剣に身体を持ってかれてこけたり、あちこちで大変な騒ぎ。
 
 先生はその様子を見ながら、剣の握り方、構え方、脚の踏ん張り方、何かを矯正してます。
 
 何故か私だけ何も云われなかった。
 
 なんか素通りされた。
 
 何か言ってよセンセ?と眼で訴えても、爽やかな笑顔でうんうんと頷かれた。
 
 まだ色気はないか。
 
 てかそういう事じゃなくて~。ほらぁ他の男子が変な目で見てるし~。きっと王族の権限とか贔屓されてるとか、そんなふうに見られるっての~。
 
 
 凡そ剣の持ち方、構え方とか基礎的なモノが様になってくると、次は素振り100回。
 
 やったな~、これ。騎士団入門してまずはやってみろと4歳の幼女に糞重い刃引き剣持たせやがった。
 
 鬼かっ!と思ったけどやったよ。
 
 汗みどろになって振ったよ。最後の方ではもう血豆とかできてさ、ぶちぶち潰れてさ、脳裏で超速再生とかがレベルアップしたとかいろんなことが……て
 
 懐かしいな~
 
 なんて思い出しながら素振りしてたら、センセが辞めろって怒鳴った。
 
 え?あたしなんかしたかな?
 
「アリス様、もうとっくに100回は超えているかと思います。」
「そうなんですか?」
「はい、十分見せていただきました。」

 なんかセンセ、顔引き攣ってる。
 
 おろおろして周りをみると、結構ぶっ潰れてる子もいるんだけど、まだ立っている子は、なんかすごい目で、怖いものでも見る目で私を見てるんだけど。
 
 
 
 
 
 あとでエリーザに怒られちった。
 
「風切音をたてるような素振りを、他の子が十数回やる間に100回以上こなせば、誰だってそうなります。」

 そですか、ごべんなさい。
 
††
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

魔物の装蹄師はモフモフに囲まれて暮らしたい ~捨てられた狼を育てたら最強のフェンリルに。それでも俺は甘やかします~

うみ
ファンタジー
 馬の装蹄師だった俺は火災事故から馬を救おうとして、命を落とした。  錬金術屋の息子として異世界に転生した俺は、「装蹄師」のスキルを授かる。  スキルを使えば、いつでもどこでも装蹄を作ることができたのだが……使い勝手が悪くお金も稼げないため、冒険者になった。  冒険者となった俺は、カメレオンに似たペットリザードと共に実家へ素材を納品しつつ、夢への資金をためていた。  俺の夢とは街の郊外に牧場を作り、動物や人に懐くモンスターに囲まれて暮らすこと。  ついに資金が集まる目途が立ち意気揚々と街へ向かっていた時、金髪のテイマーに蹴飛ばされ罵られた狼に似たモンスター「ワイルドウルフ」と出会う。  居ても立ってもいられなくなった俺は、金髪のテイマーからワイルドウルフを守り彼を新たな相棒に加える。  爪の欠けていたワイルドウルフのために装蹄師スキルで爪を作ったところ……途端にワイルドウルフが覚醒したんだ!  一週間の修行をするだけで、Eランクのワイルドウルフは最強のフェンリルにまで成長していたのだった。  でも、どれだけ獣魔が強くなろうが俺の夢は変わらない。  そう、モフモフたちに囲まれて暮らす牧場を作るんだ!

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...