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<K07> マリア、お前何者?

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††

 そういうわけで部屋の片付けが終わった。
 
 主にマリアとエリーザがしてくれました。
 
 私見てただけです。
 
 だって手伝おうとすると、仕事を取るなって怒られるんだもん。
 
 冗談は置いといて、私は制服に着替えさせてもらって、まずは宿舎内と校舎をぶらりと見て歩くことにした。
 
 明日からお世話になるのだから、一応下見を兼ねてということで。エリーザは自室の片付けも有るため、マリアが付き従うことになる。
 
 ん、自室?もう終わってるだろって?いえいえ、エリーザとマリアのお部屋の片づけです。
 
 そう私のお隣はエリーザとマリアのお部屋です。そうなんです、付き人の部屋もあるんですよ、この寄宿舎。
 
 考えてみれば当然だよね。貴族って自分だけじゃ何もできないからね。大人になればそうでも無いんだろうけど、基本的に着替えは全て侍女がしてくれます。

 自分一人でお着替えなんてしません。

 お風呂も侍女が付き従います。

 お湯に浸かってでたあとは、侍女が全て洗ってくれます。自分で洗うといっても洗ってくれます。あんな所からこんな所まで、バカっ丁寧に綺麗にしてくれます。

 ほんと赤面ものですが、慣れました。

 だからまぁそういうわけで、寄宿舎なんぞに貴族の子を一人で放り込んだら、大変なことになるわけです。
 
 私の場合、お城でのお付の侍女はエリーザを筆頭に6人いるのですが、それ全部を連れては学園に来るのは流石に無理なので、2人まで許可されるわけです。
 
 それで筆頭のエリーザと新人のマリアとなったわけですね。
 
 まあそうした内部事情は置いといて、上級貴族専用制服とやらに着替えて、マリアを従えてイグリーズ学園の校舎を歩き回ってみることにしました。
 
 校舎は寄宿舎から歩いて10分程。廊下を歩いて階段降りて~からの~、私の教室に到着します。
 
 途中生徒や侍女さん達と廊下でスレ違いますが、私が上級貴族だとわかると、平民や下級貴族の生徒は、ささっと避けてくれます。
 
 う~ん、THE格差社会。
 
 実際学校だから~なんて甘えは無いんですよね。下手に上級に対して下級や平民が何かしたら、斬首ものですから。そうした事を教えるのも、この学園であるわけですね。
 
 さて教室ですが、本来生徒だけが入れますが、授業中じゃないのでマリアも引き連れてGOGO
 
 私は皇女、文句あるならお父様にどうぞ~とばかりに、すいませんごめんなさい。そこまで偉ぶってません。
 
 私のクラスは1年上級貴族クラス。名前からして格差です。
 
 ふと見ると40人程は入れそうな教室のなかに、数人の生徒がおります。早めに到着した方々でしょうか。
 
 金髪の少年が1人、銀髪の少年が1人、銀髪の少女が1人、ライトブルーの髪の少女が1人、それに赤毛の少女がいる。
 
 赤毛の子は縦ロールしてたりして、あんなのマンガとかの中でしかみたことな~い。なんか大人びて見える~。でもみんな私と同じ歳のはず。

 私が教室に入った途端、全員がこちらを向いてガン見してきます。なんか~目立ってる?マリアを連れてるから?
 
「なんだアイツ、侍女連れてるぜ。」
 
 金髪の男の子が悪そうな顔で呟くと、それに従うかの様に銀髪の少年が卑屈そうに笑った。

「まだオシメが取れないんですよ。」
「は、一人で歩けないとか、どんだけ臆病貴族だよ。」

 少年たちの言葉に赤毛の少女が顔を顰めた。
 
「ちょっとやめなさいよ。」

 ふむふむ、悪ガキと窘める少女達って構図かな。少年たちが黙りこんだ所を見ると、赤毛の女の子が家格が上なのかな。

 しっかしなんだかな~。あんたらどこの貴族じゃ。ドタマかち割るぞ。だいたい此処にいるのは伯爵以上、全員上級貴族なんだからね、下手なことを言うと、子供とはいえ首が飛ぶんだからね。
 
 あ、だからマナー教育か。つまり奴らはまだまだマナーをキチンと教わってないと。
 
 んじゃ教えてやりましょうか。
 
 と思った傍からマリアが動いていた。
 
 おいい?ちょっとマリアちゃん、それってナイフ?
 
「アリス様に対する無礼な振る舞い、小奴らを始末致します。」
「ひぃぃぃっ!」

 マリアがナイフを両手に、小僧どもの首に当ててるって、ちょまて、まったらんかーい。あんたどんだけ行動早い。
 
「お待ちなさい、マリア。ナイフを収めて離れなさい。」
「はっ、お心のままに、」

 私が叱るとマリアはナイフを服の中へと戻して、数歩下がった。
 
「な、なんだ、なんなんだよっ!」

 金髪小僧がマリアと私を交互に見て怒鳴りつける。
 
「ひぇぇぇぇ……」

 銀髪小僧はその場にぺたりと尻もちを付いている。
 
「貴様、許さん、許さないぞ!俺はキルギス侯爵の息子だぞ。」

 あそう……だから?
 
「皆さん、お初にお目にかかります。これから5年間、共にこの学園で学ぶこととなりますので、よろしくお願い致しますね。」

 金髪小僧の怒鳴り声を無視して、スカートの端をチョンと持ち上げて軽く会釈する私。
 
「てめっ何無視してんだよっ!」

 煩いな~。
 
「国王ヴィクリーヌ=アマディス2世が娘、アリス=ルイーザと申します。」
「こ、皇女様っ」
 
 赤巻ロールの少女が驚いた。

「こ、こうじょ……」

 金髪小僧が唖然としている。
 
 おーおーこりゃ面白い。
 
「し、失礼いたしましたっ、私マグダナル公爵が娘ベルティユと申します。」
「わ、私は──」

 と慌てて少女たちが次々に挨拶してくれた。
 
 最後に固まってた小僧と、へたり込んでいた小僧。
 
「お、おれ、いや私は─」「キルギス侯爵のご子息ですね。覚えておきます。」

 私が遮るようにいうと、びくっと顔を強張らせた。あ、ちょっと泣きそう。うーん、楽しいけど相手は子供だし、もういっかな。
 
「は、はい、ジェラールと申します。」

 涙目でだらだらと汗かいちゃって、なんか可愛いわ~。
 
「皆さん、明日からどうぞよろしくお願い致しますね。」

 私がニッコリ笑うと、全員「ははーっ」と頭を下げた。
 
「そんなに畏まらないで下さい。皆さんご学友ですから、身分の上下など無しで、フランクに気軽にお付き合い下さい。」

 そうして私は踵を返して教室を出て行く。
 
 わ~~、なんか気分いいわ~~。
 
 って一つ忘れてた。
 
「マリアッ!」

 廊下を少し進んでから私は振り向いてマリアを見つめる。
 
「は、はっはい。」

 慌ててキョドった顔するマリアをさらに見つめる。
 
「なんであんたはあんな動きができるのよっ!」
 
 マリアのさっきの動き、あれは普通じゃない。7、8歳の子供の動きじゃなかった。私のように何年も鍛えてきた動きだ。
 
「え、あのえっと、」

 マリアの瞳が泳いでおります。
 
「ちゃんと答えないと、お城に戻って貰いますよ。」
「こ困りますぅ、それだけはどうぞお許しくださいっ!」
「じゃあ、なんであんな動きができるか、正直に言いなさいっ!」

 マリアはしばらく考え込んでいた。しかし諦めた様にはぁっと嘆息して口を開いた。

 どうやらマリアが商人の娘、というのは嘘らしい。王立騎士団の副団長の娘で、幼い頃から武器術や体術の英才教育を受け、皇族を影から守る者の一人なのだとか。
 
「影?」
「は、はい、皇族の方々を影から見守り、外敵を排除致します」
「マリアはその影の一人なの?」
「ま、まだ見習いです。ですがこの度アリス様が学園に入られるということで、年齢が近い私が身近でお守りすることになりました。」

 なるほど、学園内に於けるお付の者は2人まで。それで侍女となって付いてくれるというわけか。
 
 なるほどね~。影なんて、まったく何処のアニメだよ。
 
 ありがたいけどね。
 
††
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