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<C16> ドワーフの願い
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††
吸い込まれそうなほどの輝きを持つ刀身。
刀身と鍔に描かれた紋様のような髭文字とでもいうのか、くねくねとした解読不能な文字が描かれている。
柄を握ると、刀から何かしらの意思を感じた。まるで語り掛けてくるような。
ランスの言葉ではないが、この刀が俺に呼応しているようにも感じられる。理由はわからない。
ただこの刀は俺のものだ、俺のために作られた刀だと感じた。
馬鹿な!
これは100年も前に造られたものだ。そんな馬鹿なことがあるわけがない。いくら異世界でもおかしいだろ。
だが、こいつはまるで俺を待ち望んでいたような、そんな気がするんだ。
俺は前世では極平凡なヒキニートだ。特に変わったこともなかった。
平々凡々なヒキニートだ。
もし何かしら関わりがあるとしたら──おそらくこちらに来てからだろう。
例えば、女神が与えた負の称号、【不死神】が関係があるとか。
もしかしたら、あの称号が呼応しているのかもしれない。確かまだ発動していないスキルもあった。【吸精】と【眷属召喚】だったか。
どちらも関係ありそうには思えないな。
あのドジ女神を呼んで聞いてみたい、まあ無理だけど。
解らない、理解できないことは今は置いておこう。
ともかくちょうど武器が痛んでいたところだし、これほどの銘品なら、魔族を斬りまくっても大丈夫かもしれないな。
「私も……欲しいな……」
横でアリスが物欲しそうな顔して、指を咥えている。
おいっ、お前はなんもしてないだろうが!
そもそもこれは雷神剣《ライトニングブレード》を返したから、そのお返しにくれたものだぞ。
「……アリスさんは、ジュンヤさんと旅をしているのかね?」
ランスが尋ねてくる。いやこいつはほっといていいですから。
「あ、はい、そうです。」
まて、まてまてまて。
お前、調子よくねえか?
一応目的地は一緒だが、旅をしたのはここ数日ぐらいだし、そもそもお前はオーガウォリアーも倒してないし。
あ~、相手が皇女でなければ怒鳴りつけてるところだぞ。
「ジュンヤと一緒にノスフェラトゥへ向かいます。」
「なんと……」
この馬鹿……いやもしかして作為的か?
「………そうですか、そうですか。少々お待ちください。」
ランスはにこにこして立ち上がり、部屋を出て行った。
「アリスっ!」
「ごめん、ついっ」
なんてペロッと舌をだしてるが、絶対わざとだろ。何か貰おうとしてるだろ。
「お待たせしました。こちらは先日お預かりした、雷神剣《ライトニングブレード》です。」
ランスが戻ってくるなり、雷神剣《ライトニングブレード》を差し出した。
「これは少々扱い難い武器ではありますが、神の武具《アーティファクト》の一本です。貴女の旅の助けとなるでしょう。良かったらどうぞお持ちください。」
「……よろしいのですか?」
しおらしく困った顔半分で尋ねるアリス。
このアマぁ、人の好意利用してんじゃねーぞ。とは思いつつも、俺も困った顔で応対する。
「できれば、もし可能なら残る神の武具《アーティファクト》を集め、使っていただけるか、どこかに封印して頂くなりして下さい。」
「え、しかし、それでよろしいんですか?私たちが神の武具《アーティファクト》を悪用するかもしれませんよ。」
俺が慌てて返すと、ランスは顔を綻ばせて笑った。皺だらけの顔が、くしゃっとなるが、とても良い笑顔だ。
「ふぉふぉふぉ、先日ジュンヤさんは、オーガウォリアーから奪ったこの雷神剣《ライトニングブレード》を、私たちに返して下さいました。なんら見返りも求めずに。」
「いやま、それはほら、貴方の父の形見みたいなものらしいから、返すのが当然かなって。」
奪い返したというか、そんな成り行き知らなかったしな。下手すりゃニトロが売り飛ばしていたんだし。
「……今時珍しい、心の正直な方だ。きっとご両親の教えがしっかりしていたのでしょう。」
ランスの言葉に、俺は黙り込んだ。
──親父、お袋。
俺の脳裏に2人の優しい顔が思い浮かび、優しかった2人の思い出が蘇り、そして焼死体となった二人がフラッシュバックする。
俺は視線を落とし俯いた。膝に置いた手が、堅く拳を握りしめ体が震えてくる。
「……これは失礼しました……」
俺の様子をみて、ランスは俺の気持ちを汲み取ったのか、謝罪した。
「……ジュンヤさん、ますます貴方達には神の武具《アーティファクト》を集めて欲しい。きっと、お役に立てると思います。それにジュンヤさんと同行される方であればきっと……
アリスさん、この雷神剣《ライトニングブレード》は貴女に託させて頂きます。」
アリスはこくりと頷いて雷神剣《ライトニングブレード》を受け取った。
俺は心を落ち着かせ、顔をあげてランスを見つめた。
「ランスさん、はっきり言って全部取り戻せるかなんて、自信がない、でも軽諾寡信ってわけじゃないけど………頑張ってみます。」
「はい、是非とも、そしてお2人の目的が果たせるよう、祈っております」
ぶっちゃけ残りの神の武具《アーティファクト》を取り戻せるかなんて、この広い世界だ。自信なんてさっぱりない。
ただ乗りかかった船だし、やるだけやってみるかな。ランスは優しい目をして、俺とアリスを見つめ、微笑んでいた。
「私も……この雷神剣《ライトニングブレード》にかけて、取り戻して見せます。」
アリスは女の細腕にも関わらず、身長ほどもあるずしりと重い両手剣の柄を持つと、目の前で水平に構えた。
それを見たランスが少し驚き、そしてうんうんと頷いた。
「アリスさんなら、きっと雷神剣《ライトニングブレード》本来の能力を発揮させられそうですな。」
「本来の……能力?」
アリスが尋ね返すが、ランスは優しい目で見つめるだけだ。確かに先日みた戦いでは、アリスはこの剣を使いこなしていた。オーガウォリアーが使っていた時よりも。
流石に天輪王の称号持ちってところだろうか。『天の理地の理を知り、森羅万象を知る者』ってところか。
「でも、アリスちっこいか──」
ボクッ
「いてっ」
一応注意のつもりだったんだが、拳で頭を叩かれた。
「無礼な口を利くではないっ」
こんな時だけ皇女かよっ。
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吸い込まれそうなほどの輝きを持つ刀身。
刀身と鍔に描かれた紋様のような髭文字とでもいうのか、くねくねとした解読不能な文字が描かれている。
柄を握ると、刀から何かしらの意思を感じた。まるで語り掛けてくるような。
ランスの言葉ではないが、この刀が俺に呼応しているようにも感じられる。理由はわからない。
ただこの刀は俺のものだ、俺のために作られた刀だと感じた。
馬鹿な!
これは100年も前に造られたものだ。そんな馬鹿なことがあるわけがない。いくら異世界でもおかしいだろ。
だが、こいつはまるで俺を待ち望んでいたような、そんな気がするんだ。
俺は前世では極平凡なヒキニートだ。特に変わったこともなかった。
平々凡々なヒキニートだ。
もし何かしら関わりがあるとしたら──おそらくこちらに来てからだろう。
例えば、女神が与えた負の称号、【不死神】が関係があるとか。
もしかしたら、あの称号が呼応しているのかもしれない。確かまだ発動していないスキルもあった。【吸精】と【眷属召喚】だったか。
どちらも関係ありそうには思えないな。
あのドジ女神を呼んで聞いてみたい、まあ無理だけど。
解らない、理解できないことは今は置いておこう。
ともかくちょうど武器が痛んでいたところだし、これほどの銘品なら、魔族を斬りまくっても大丈夫かもしれないな。
「私も……欲しいな……」
横でアリスが物欲しそうな顔して、指を咥えている。
おいっ、お前はなんもしてないだろうが!
そもそもこれは雷神剣《ライトニングブレード》を返したから、そのお返しにくれたものだぞ。
「……アリスさんは、ジュンヤさんと旅をしているのかね?」
ランスが尋ねてくる。いやこいつはほっといていいですから。
「あ、はい、そうです。」
まて、まてまてまて。
お前、調子よくねえか?
一応目的地は一緒だが、旅をしたのはここ数日ぐらいだし、そもそもお前はオーガウォリアーも倒してないし。
あ~、相手が皇女でなければ怒鳴りつけてるところだぞ。
「ジュンヤと一緒にノスフェラトゥへ向かいます。」
「なんと……」
この馬鹿……いやもしかして作為的か?
「………そうですか、そうですか。少々お待ちください。」
ランスはにこにこして立ち上がり、部屋を出て行った。
「アリスっ!」
「ごめん、ついっ」
なんてペロッと舌をだしてるが、絶対わざとだろ。何か貰おうとしてるだろ。
「お待たせしました。こちらは先日お預かりした、雷神剣《ライトニングブレード》です。」
ランスが戻ってくるなり、雷神剣《ライトニングブレード》を差し出した。
「これは少々扱い難い武器ではありますが、神の武具《アーティファクト》の一本です。貴女の旅の助けとなるでしょう。良かったらどうぞお持ちください。」
「……よろしいのですか?」
しおらしく困った顔半分で尋ねるアリス。
このアマぁ、人の好意利用してんじゃねーぞ。とは思いつつも、俺も困った顔で応対する。
「できれば、もし可能なら残る神の武具《アーティファクト》を集め、使っていただけるか、どこかに封印して頂くなりして下さい。」
「え、しかし、それでよろしいんですか?私たちが神の武具《アーティファクト》を悪用するかもしれませんよ。」
俺が慌てて返すと、ランスは顔を綻ばせて笑った。皺だらけの顔が、くしゃっとなるが、とても良い笑顔だ。
「ふぉふぉふぉ、先日ジュンヤさんは、オーガウォリアーから奪ったこの雷神剣《ライトニングブレード》を、私たちに返して下さいました。なんら見返りも求めずに。」
「いやま、それはほら、貴方の父の形見みたいなものらしいから、返すのが当然かなって。」
奪い返したというか、そんな成り行き知らなかったしな。下手すりゃニトロが売り飛ばしていたんだし。
「……今時珍しい、心の正直な方だ。きっとご両親の教えがしっかりしていたのでしょう。」
ランスの言葉に、俺は黙り込んだ。
──親父、お袋。
俺の脳裏に2人の優しい顔が思い浮かび、優しかった2人の思い出が蘇り、そして焼死体となった二人がフラッシュバックする。
俺は視線を落とし俯いた。膝に置いた手が、堅く拳を握りしめ体が震えてくる。
「……これは失礼しました……」
俺の様子をみて、ランスは俺の気持ちを汲み取ったのか、謝罪した。
「……ジュンヤさん、ますます貴方達には神の武具《アーティファクト》を集めて欲しい。きっと、お役に立てると思います。それにジュンヤさんと同行される方であればきっと……
アリスさん、この雷神剣《ライトニングブレード》は貴女に託させて頂きます。」
アリスはこくりと頷いて雷神剣《ライトニングブレード》を受け取った。
俺は心を落ち着かせ、顔をあげてランスを見つめた。
「ランスさん、はっきり言って全部取り戻せるかなんて、自信がない、でも軽諾寡信ってわけじゃないけど………頑張ってみます。」
「はい、是非とも、そしてお2人の目的が果たせるよう、祈っております」
ぶっちゃけ残りの神の武具《アーティファクト》を取り戻せるかなんて、この広い世界だ。自信なんてさっぱりない。
ただ乗りかかった船だし、やるだけやってみるかな。ランスは優しい目をして、俺とアリスを見つめ、微笑んでいた。
「私も……この雷神剣《ライトニングブレード》にかけて、取り戻して見せます。」
アリスは女の細腕にも関わらず、身長ほどもあるずしりと重い両手剣の柄を持つと、目の前で水平に構えた。
それを見たランスが少し驚き、そしてうんうんと頷いた。
「アリスさんなら、きっと雷神剣《ライトニングブレード》本来の能力を発揮させられそうですな。」
「本来の……能力?」
アリスが尋ね返すが、ランスは優しい目で見つめるだけだ。確かに先日みた戦いでは、アリスはこの剣を使いこなしていた。オーガウォリアーが使っていた時よりも。
流石に天輪王の称号持ちってところだろうか。『天の理地の理を知り、森羅万象を知る者』ってところか。
「でも、アリスちっこいか──」
ボクッ
「いてっ」
一応注意のつもりだったんだが、拳で頭を叩かれた。
「無礼な口を利くではないっ」
こんな時だけ皇女かよっ。
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