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第1章 〜 運命 〜
神域
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あれからどれくらいの時間がたったのか、龍鬼達はあの森から遙か遠くの場所に来ていた。
実はこの場所、別の神が納める神域で、その神の使徒が何人か滞在している。
基本神々は他の神が納める場には踏み入らないのが暗黙の了解の様になっているのだが、今回は非常事態だった為、遥か遠い場所ではあるがヘヴンズロウから一番近いこの地に避難をさせてもらった。
『………龍鬼神よ、一体何があった?
お前からこの地に避難をさせて欲しいと連絡があった時はかなり驚いたが…
『それに闘鬼神のその傷………只の傷では無いな?
そしてその泣いている子供も…………』
矢継ぎ早に質問して来るこの地を納める二人の神に対し龍鬼は言う。
『天津神、山津神よ、この地に招き入れて下さった事、いえ避難させて下さった事感謝致します。
我が相方の闘鬼神のこの傷ですが、我も分からぬのです。
そしてこの子供の事ですが、詳しくは我も分かりませぬ。
ただ我らが護る場所で、愚かな人間が禁忌を破り創り出した空間に居たので、今は監視がてら我らの元に置いております』
そう説明する龍鬼。
しかし龍鬼は知っていた、闘鬼のこの傷の事を。
しかしそれを話せば他の神達も集まり、今度こそ世界が滅ぶ事になる可能性がある。
その為全てを話さないでいた。
そしてリィオの事に関しては龍鬼自信も本当によく分かっていなかった。
何故自分達の側に置いているのか、家族が居ないなら他にこの子を育ててくれる人間の元に連れて行けばいいのに、それをしないでいるのか。
それにあの時闘鬼が言った様に、封印されていたなら危険なはずで、排除しなければならない。
だが一目見ただけで排除の対象では無く護るべき存在と直感した。
『…ふむ。
まぁ良かろう。
お前達の力が戻るまで此処に居ると良い』
『此処は神域だ。
闘鬼神のその傷も直ぐに癒えよう』
そう言うと、少し怪訝な顔をしたものの、神域に留まる事を許可してくれた二人の神は何処かへと姿を消した。
その消えた二人の神の方に向かい、龍鬼は頭を深々と下げ言う。
『有難う御座います天津神、山津神』
そして頭を上げた龍鬼はリィオの方を向き言う。
「リィオ、もう泣かなくて良い。
此処には絶対に先程の様な怖い物は来ない。
だから安心しろ。
それにあれはお前のせいでは無い」
そう言ってリィオを抱き、軽く背中を叩く。
リィオはずっと泣きながら謝っていた。
自分のせいで二人が危険な目にあい死にかけたと。
中々泣き止まないリィオを前に、如何したものかと考えた末、リィオの額に口付けをする。
それに驚いたリィオは泣き止み、そして目をパチパチとさせている。
それを見てホッとしたのと、口付けた事に段々と気恥ずかしさが込み上げて来て顔を背ける。
「………ちょっとした呪いだ…」
そう言った龍鬼の耳は赤くなっていた。
「…まじ…………ない………………」
リィオは額を押さえ、そして嬉しそうに笑った。
一方天津神と山津神は、龍鬼達から離れ考えていた。
滞在する事を許したが、果たしてあの人間の子供は本当に安全なのかと。
龍鬼達が側で監視しているとは言え、安心していいのか如何か。
すると龍鬼達の様子を見ていた神使から伝達が来る。
『天津神様、山津神様。
龍鬼神様がかの子供に神の加護を御与えになりました』
『何?』
『しかもアレは…………』
神使が言葉を続けようとした時、神域の外で何か強大な力が放出し、神域を護る結界に衝撃が与えられる。
その頃の龍鬼と漸く泣き止んだリィオだったが、先程の衝撃音でまた泣き出してしまった。
龍鬼は少し苛ついたが、その力を感じ取った瞬間に誰の仕業か確信し、そして呆れる。
意識を取り戻した闘鬼もまたその力が誰の者か分かり苦笑する。
『………闘鬼、リィオを頼む』
そう言ってリィオを闘鬼の側に下ろすと、龍鬼は強い力を発する場所へ向かった。
『はは………参ったな…
こんな状態じゃなければ俺も挨拶をしに行くんだがな…』
まだ傷が痛むのか、顔を歪めながら呟く。
リィオの方をちらりと見てみると、先程までとは言わないが、まだ恐怖でカタカタ震えながら泣いている。
そして闘鬼はリィオの額から相方の力を感じる事に気付く。
『(…………まさか龍鬼の奴)』
疑問を抱きつつ、龍鬼の代わりに子供をあやしだした闘鬼であった。
一方、強い力を発する場所に到着した龍鬼は、先に来ていた二人の神ともう一人の姿を見ると軽く会釈をする。
するとそのもう一人の神が豪快に笑いながら親しげに三人の神に話しかける。
『ははははは!!
やはり龍鬼神もいたか!
それにしても、お前達そんなに仲良かったのか!!
儂は嬉しいぞ!!!』
本当に嬉しそうに言うこの男は神々の中でもかなり強い力を持つ者の一人だ。
『相変わらずだな爆猿神』
半ば呆れと諦めが入り混じった声音でそう返す山津神。
その横で彼の相方の天津神が問う。
『それで、何かあったのか?』
それを聞いて龍鬼も思う。
基本他の神が納める神域に立ち入る事はしない事になっていて、何か用事があった時は自前に知らせるのも暗黙の了解にもなっている。
それがこの神二人の反応を見るに、爆猿神は何も知らせずに来たと見える。
『ん?
あー、そうだった!
おい龍鬼神!』
いきなり名を呼ばれた龍鬼は、声が大きいなこの神は………と呆れながらも、『はい』と短く返事をし、先に続く言葉を待った。
『お前達がいた国ヘヴ…………『ヘヴンズロウです』
国名を言うのに詰まっていた爆猿神に龍鬼が尽かさず言う。
それを聞いてニカッと笑い、『すまんすまん!』と大袈裟なリアクションで謝り話を続ける。
『でだ!
その国なんだが、大変な事になっているぞ?』
『!?』
それを聞いた龍鬼は直ぐ様ヘヴンズロウへ向おうと神気を強めた瞬間、天津神と山津神に止められる。
『龍鬼神よ落ち着け』
『それにどう大変なのか詳しく聞く必要があるだろう』
そう言って爆猿神に話す様に目で合図する。
それを見て爆猿神は
『うむ…
実はな…ーーー』
『よう龍鬼、おかえり……って何かあったのか?』
闘鬼達の所に戻って来た龍鬼は神妙な面持ちだった。
それを見て闘鬼は不思議に思い聞く。
しかし龍鬼は迷っていた。
果たして闘鬼に先程の事を言うべきか、それとも自分一人でどうにかするべきかと。
爆猿神の話が事実なら早急に何とかしなければならない。
勿論神である爆猿神を疑う訳では無いが、どうしても腑に落ちないのだ。
見ていて大変な事になっていたのなら何故何もしなかったのかと……
いや、他の神が納める場所に手を出す事は出来ないのは解ってはいるが、それでも何故何もしないのかと…………
『(もしかしたら私達を探してくれては居たかも知れないが………)』
拉致の開かない事を考えていると、足元にリィオがしがみつく。
「リィオ?」
何かあったのかと聞こうと、リィオの背に合わせてしゃがむと
「あの…ね、たくさんの黒いのがね、その、えっと……どこかわからないけど、たくさんの人にね、いっぱいひどいことをしてるの」
「!」
龍鬼は驚いた。
それはまさに先程爆猿神から聞いたヘヴンズロウの状況に酷似していたからだ。
そしてそんな事を知らない筈のリィオが言い当てたのだ。
「リィオその事を何故…!?」
「!!」
『龍鬼落ち着け。
ほらこいつも怖がってるじゃねーか』
「…っ!?
すまない…」
闘鬼に言われ、自分の声が大きくなっていたのを自覚した。
リィオは龍鬼の声に怯えてしまい、闘鬼の後ろに隠れてしまった。
『…まったく、お前が大きな声を出すなんて珍しい。
一体何があったんだ?』
闘鬼の質問に、先程聞いた事を話す事にしたのだった。
実はこの場所、別の神が納める神域で、その神の使徒が何人か滞在している。
基本神々は他の神が納める場には踏み入らないのが暗黙の了解の様になっているのだが、今回は非常事態だった為、遥か遠い場所ではあるがヘヴンズロウから一番近いこの地に避難をさせてもらった。
『………龍鬼神よ、一体何があった?
お前からこの地に避難をさせて欲しいと連絡があった時はかなり驚いたが…
『それに闘鬼神のその傷………只の傷では無いな?
そしてその泣いている子供も…………』
矢継ぎ早に質問して来るこの地を納める二人の神に対し龍鬼は言う。
『天津神、山津神よ、この地に招き入れて下さった事、いえ避難させて下さった事感謝致します。
我が相方の闘鬼神のこの傷ですが、我も分からぬのです。
そしてこの子供の事ですが、詳しくは我も分かりませぬ。
ただ我らが護る場所で、愚かな人間が禁忌を破り創り出した空間に居たので、今は監視がてら我らの元に置いております』
そう説明する龍鬼。
しかし龍鬼は知っていた、闘鬼のこの傷の事を。
しかしそれを話せば他の神達も集まり、今度こそ世界が滅ぶ事になる可能性がある。
その為全てを話さないでいた。
そしてリィオの事に関しては龍鬼自信も本当によく分かっていなかった。
何故自分達の側に置いているのか、家族が居ないなら他にこの子を育ててくれる人間の元に連れて行けばいいのに、それをしないでいるのか。
それにあの時闘鬼が言った様に、封印されていたなら危険なはずで、排除しなければならない。
だが一目見ただけで排除の対象では無く護るべき存在と直感した。
『…ふむ。
まぁ良かろう。
お前達の力が戻るまで此処に居ると良い』
『此処は神域だ。
闘鬼神のその傷も直ぐに癒えよう』
そう言うと、少し怪訝な顔をしたものの、神域に留まる事を許可してくれた二人の神は何処かへと姿を消した。
その消えた二人の神の方に向かい、龍鬼は頭を深々と下げ言う。
『有難う御座います天津神、山津神』
そして頭を上げた龍鬼はリィオの方を向き言う。
「リィオ、もう泣かなくて良い。
此処には絶対に先程の様な怖い物は来ない。
だから安心しろ。
それにあれはお前のせいでは無い」
そう言ってリィオを抱き、軽く背中を叩く。
リィオはずっと泣きながら謝っていた。
自分のせいで二人が危険な目にあい死にかけたと。
中々泣き止まないリィオを前に、如何したものかと考えた末、リィオの額に口付けをする。
それに驚いたリィオは泣き止み、そして目をパチパチとさせている。
それを見てホッとしたのと、口付けた事に段々と気恥ずかしさが込み上げて来て顔を背ける。
「………ちょっとした呪いだ…」
そう言った龍鬼の耳は赤くなっていた。
「…まじ…………ない………………」
リィオは額を押さえ、そして嬉しそうに笑った。
一方天津神と山津神は、龍鬼達から離れ考えていた。
滞在する事を許したが、果たしてあの人間の子供は本当に安全なのかと。
龍鬼達が側で監視しているとは言え、安心していいのか如何か。
すると龍鬼達の様子を見ていた神使から伝達が来る。
『天津神様、山津神様。
龍鬼神様がかの子供に神の加護を御与えになりました』
『何?』
『しかもアレは…………』
神使が言葉を続けようとした時、神域の外で何か強大な力が放出し、神域を護る結界に衝撃が与えられる。
その頃の龍鬼と漸く泣き止んだリィオだったが、先程の衝撃音でまた泣き出してしまった。
龍鬼は少し苛ついたが、その力を感じ取った瞬間に誰の仕業か確信し、そして呆れる。
意識を取り戻した闘鬼もまたその力が誰の者か分かり苦笑する。
『………闘鬼、リィオを頼む』
そう言ってリィオを闘鬼の側に下ろすと、龍鬼は強い力を発する場所へ向かった。
『はは………参ったな…
こんな状態じゃなければ俺も挨拶をしに行くんだがな…』
まだ傷が痛むのか、顔を歪めながら呟く。
リィオの方をちらりと見てみると、先程までとは言わないが、まだ恐怖でカタカタ震えながら泣いている。
そして闘鬼はリィオの額から相方の力を感じる事に気付く。
『(…………まさか龍鬼の奴)』
疑問を抱きつつ、龍鬼の代わりに子供をあやしだした闘鬼であった。
一方、強い力を発する場所に到着した龍鬼は、先に来ていた二人の神ともう一人の姿を見ると軽く会釈をする。
するとそのもう一人の神が豪快に笑いながら親しげに三人の神に話しかける。
『ははははは!!
やはり龍鬼神もいたか!
それにしても、お前達そんなに仲良かったのか!!
儂は嬉しいぞ!!!』
本当に嬉しそうに言うこの男は神々の中でもかなり強い力を持つ者の一人だ。
『相変わらずだな爆猿神』
半ば呆れと諦めが入り混じった声音でそう返す山津神。
その横で彼の相方の天津神が問う。
『それで、何かあったのか?』
それを聞いて龍鬼も思う。
基本他の神が納める神域に立ち入る事はしない事になっていて、何か用事があった時は自前に知らせるのも暗黙の了解にもなっている。
それがこの神二人の反応を見るに、爆猿神は何も知らせずに来たと見える。
『ん?
あー、そうだった!
おい龍鬼神!』
いきなり名を呼ばれた龍鬼は、声が大きいなこの神は………と呆れながらも、『はい』と短く返事をし、先に続く言葉を待った。
『お前達がいた国ヘヴ…………『ヘヴンズロウです』
国名を言うのに詰まっていた爆猿神に龍鬼が尽かさず言う。
それを聞いてニカッと笑い、『すまんすまん!』と大袈裟なリアクションで謝り話を続ける。
『でだ!
その国なんだが、大変な事になっているぞ?』
『!?』
それを聞いた龍鬼は直ぐ様ヘヴンズロウへ向おうと神気を強めた瞬間、天津神と山津神に止められる。
『龍鬼神よ落ち着け』
『それにどう大変なのか詳しく聞く必要があるだろう』
そう言って爆猿神に話す様に目で合図する。
それを見て爆猿神は
『うむ…
実はな…ーーー』
『よう龍鬼、おかえり……って何かあったのか?』
闘鬼達の所に戻って来た龍鬼は神妙な面持ちだった。
それを見て闘鬼は不思議に思い聞く。
しかし龍鬼は迷っていた。
果たして闘鬼に先程の事を言うべきか、それとも自分一人でどうにかするべきかと。
爆猿神の話が事実なら早急に何とかしなければならない。
勿論神である爆猿神を疑う訳では無いが、どうしても腑に落ちないのだ。
見ていて大変な事になっていたのなら何故何もしなかったのかと……
いや、他の神が納める場所に手を出す事は出来ないのは解ってはいるが、それでも何故何もしないのかと…………
『(もしかしたら私達を探してくれては居たかも知れないが………)』
拉致の開かない事を考えていると、足元にリィオがしがみつく。
「リィオ?」
何かあったのかと聞こうと、リィオの背に合わせてしゃがむと
「あの…ね、たくさんの黒いのがね、その、えっと……どこかわからないけど、たくさんの人にね、いっぱいひどいことをしてるの」
「!」
龍鬼は驚いた。
それはまさに先程爆猿神から聞いたヘヴンズロウの状況に酷似していたからだ。
そしてそんな事を知らない筈のリィオが言い当てたのだ。
「リィオその事を何故…!?」
「!!」
『龍鬼落ち着け。
ほらこいつも怖がってるじゃねーか』
「…っ!?
すまない…」
闘鬼に言われ、自分の声が大きくなっていたのを自覚した。
リィオは龍鬼の声に怯えてしまい、闘鬼の後ろに隠れてしまった。
『…まったく、お前が大きな声を出すなんて珍しい。
一体何があったんだ?』
闘鬼の質問に、先程聞いた事を話す事にしたのだった。
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