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chrono-20:体力は、ウッド!寄らば大樹の恵体かなの巻
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休日午後の穏やかな空気……はミリほどもこの場には対流滞留しておらず。
「……」
ドライアイスの煙的にテーブルを這うように重く澱みながらも、触れたらこちらの肌を刺すくらいの刺激感を有してそうな緊迫と敵意と欲望とあと何かが混ざったような瘴気のようなものが、六人が囲む中心付近からモクモクと発生しているかのようだ……
窓際の四人掛け席へと移動させてもらい、奥のソファに二人、残る四人は椅子をなるべく車座になるように配置し座っているという異空間……店内ガラ空きゆえに出来る布陣だけど、巻き起こっているだろう不穏感に、ドリンクバー帰りの人らが二度見していくという悪目立ち状況……しかして居並ぶ面子たちは毛ほども外面は気にせずに、ただ戦いが始まるのを恐ろしく静かに待っているよこれほどの事態になるとは思いもしなかったけど……いや、僥倖、そう取っておくしかないか。
<ウインクキラー細則>
・対局開始前に、「キラー」1枚と「市民」5枚が記された「カード」が各々配られる。自分だけ確認し、対局中はテーブルの上に伏せておくこと。
・告発用に、自分以外の者の名前が書かれた「チップ」も各々配られる。使い方は後述。
・対局時間は無制限。①キラーが告発される(「告訴」した者に2p)。②被害者が三人に達する(キラーに1p)。このふたつを以って、ひとつの対局は終了する。
・キラーは目が市民と目が合った瞬間、ウインクすることで「殺す」ことが出来る。
・「キラー」によりウインクされた「市民」は、そこから三秒以上経ってから、「殺られました」と自己申告しなければならない。その際、自分のカードを表に返すこと(すぐに申告すると直前に目を合わせていたはずのキラーが判別されやすくなるため)。
・キラーと疑わしい人物を告発するには、右手を挙げて「告訴」と宣言すること。
・ひとりでは「告訴」することは出来ない。もうひとりが「同意」と左手を挙げた時点で成立する。複数「同意」者がいた場合、早かった方が採用される。
・告訴者は同意者を承認しない場合は、「取り下げ」と告げ、キャンセルすることが出来る。
・告訴者は同意者を承認した場合、「承認」と告げて、キラーと思われる人物の名前が記された「チップ」を場に伏せて出す。同意者もその後に同じくチップを出す。
・チップ二枚が出揃ったら、告訴者は「オープン」と告げ、二枚同時に表を向ける。この時、名前が揃わなかった場合は、告訴者がアウト、「被害者」として自分のカードを表に返さなければならない。同意者は何もせず続行となる。
「待てまてまてまて。細則が複雑すぎないか? 私らをこの膨大さで押し切って煙に巻こうとか考えてないか?」
先生から貰ったB5サイズのルーズリーフの一枚にそう声に出しながら書きつけていたら待ったがかかったけれど。頭頂のまげを震わせながら灰炉……意外に鋭いね、眼光や蹴りだけじゃあなく。まあでも割とメジャーなゲームよこれ。陰なる者である僕にとっては初めての参戦になるわけだけど。
「それに諸々伏せていることがまだあるよねぇ……こすい策を張り巡らせて『正々堂々』? ふざけるなーってカンジだけど?」
わざとそんなな小馬鹿口調の杜条……だんだん「把握」出来てきたよ、いまキミは「不安35%:それを上書こうとへらへらの虚勢平常心が22%:残りは僕への不審感」って感じのメンタル具合だろ? だったらこっちはそこを突いていく。戦いはもう始まってるのだから……ッ!!
「……いまいち乗り切れては無いかなって、今になって思っただけだよ。僕も、キミらも」
これ以上ないほどのニヒルかつダンディな笑みを浮かばせつつ、僕はそうゆっくりと言葉を紡ぎ出していくけれど。煽る。煽って煽って平常心をまず揺さぶってやる。
「えーとちょっと待って来野くん。センセイはほぼほぼ足もちょっと掛かったくらいなんだけれど……」
朋有先生がそんな、今になって眠たいことを言ってくるから。うんうん、ここからが鉄火場なんだってことを表明しておかないといけないよね。
テーブルの横の席についた僕を六時の位置とすると、窓際のソファに僕寄りからその先生と明日奈が横並び、僕の正面十二時方向には相変わらず僕を珍獣でも見るかのような目つきで見てくる赤いおさげの銀鈴、そこから時計回りに杜条、灰炉と。配置までは僕の意図は込められなかったけど、まあそのくらいはしょうがない。それよりも、場の制圧、それが何より先んじる、はずだ。
「何が言いたいあるか。いま降参したらその『ジショキン』カード差し出すだけで解放するある。ハイロの上段の練習台にならなくてすむね」
銀鈴が食いついてくれたのはラッキーこの上なしだ。やはりこの希少図書カードにはお金で買えない価値があった……いまこの瞬間、僕は自分の父親に初めて心の中で御礼を言う。
「……!!」
おもむろにまた財布をべりりと開き、お札を入れるべきところから束で掴みだしたモノをばんとテーブル上に置き、奇術師のような手さばきでそれらをゆっくり扇状に広げていく……ことは出来なかったのでせこせこと両手を使って開示していく。
僕の全財産と言ってもいい、先ほど一枚示した「カード」と同じもの……小一から小六の間、性懲りもなく毎年親父はこの「五枚セット」をくれたよね……それが、こんな形で実を結ぶとは。
「……!!」
間違いなく、四人の息を飲む音が聞こえた。さらには四色の「吐息の粒子」が揺らめいたのも視認した。そう、先ほど提示したジショキンの、今見たら悶絶の図書カードの、
種類は「五種類」……のちに役者の才能を開花させ、大河にてもうるさ方をその渋い演技で唸らせた、当代一の売れっ子の、
「何かに大袈裟に驚いたような渾身の顔面で両腕を水平に伸ばして両膝揃えて右方向にツイストしたようなジャンプポーズ」「何かに大袈裟に悲しんでいるかのような悲哀の顔面で両目の下にぴんと伸ばした両手指を添えて身体を丸く縮こませたようなジャンプポーズ」「何かに大袈裟に喜んだような動向全開の顔面で両腕両脚をこれでもかの大の字におっぴろげたジャンプポーズ」「何かに大袈裟に憤怒しているようなひょっとこと阿修羅のハイブリッドのような顔面で腕を組みつつ両膝をくの字に曲げて何故か両足裏を合わせたジャンプポーズ」、そしてレアなのか何だか分からないけど、輝くプリズム仕上げを施された「何にも心を動かされていないような能面で、きちりと正座したままの姿勢でのジャンプポーズ(跳躍しているかは定かではないけどそう見える)」の見ているだけでこちらが恥ずかしくなってくるような布陣が総勢三十枚……うん、まあ柄はともかく「五種類ある」というところがミソだ。
「先ほども言ったが『5p』先取した者が勝者。その時点での残りカード全部を進呈するよ。だけど……その完全勝者が決定するまでにも、『1p』得るたびにこのカードを一枚ずつ進呈するという親切仕様だ……これはもうコンプリートするためには積極参加するしかないよねえ……」
にちゃあと音が出そうなほどの汚い笑顔が僕の得意とするところであり、煽り性能は大したもんだと自負するその顔貌を前に、三名ほどの目の色は確かに変わったものの。
「はっ、安易だねー、そうすることによってうちらの協力を阻もうとかって思ってるわけだ。はっきり、短絡」
杜条だけは察したね流石だよ……そう、四人が一致協力されて僕をツブそうとしてくること、それは容易に読めたからのこの布石だったけど、やっぱ鋭いわ……
けど。
「別に、そちらがどう動こうと僕は意に介さない。ただ、これほどまでに正々堂々と、さらにはメリットまで呈している僕に対し、そうまでしないと向かって来れないっていうのはいささか失望ではあるけどねぇ……」
右斜め前の灰炉から瞬間、瞬息の拳撃が放たれようとしてきたけど、その右隣の杜条が、いやに無表情になった顔でそれを軽く制した。
「煽ってんならへったくそ。どのみちキミに何であれ負けるなんてことは許されないうちらだし、やるからには全力でツブすから。それがイヤだったらこの場から消えるかだね」
おーおー、言いつつだいぶ火がついてきたじゃないか杜条……だが、
「『全力』? おいおい、この条件じゃあ全力まで全然行かないっての、それじゃあ意味ないだろ。僕はヒリついた鉄火勝負を望んでいるのだからねぇ……こちらは虎の子の『百五十万相当』とも言われているカードを提供しているんだ……無論、僕の方の『勝利報酬』も定めさせてもらう」
僕の言葉に、一様に怪訝な表情を見せる面々。そう、これが僕の本当の切り札だッ!!
「こっちもカネ出せとかあるか? 百歩譲って図書券を賞品としての卓上遊戯までは御上も黙認してくれるとしても、流石に先生もいるし無理あるね、馬鹿タカ」
銀鈴に至ってはお金なんて屁でもないだろうしね。もちろん、そんなことじゃあ揺さぶれないってことは分かっているよ。いや図書カードもどうかと思うけどェ……というような消え入りそうな先生の言葉は無論黙殺される。そして、
「お金で買えない価値がある……それを供出してもらえば結構さ。つまり僕が最終的に『5p』に最速到達して完全勝利したら、その時点で最もポイントの低い者の……」
ニヒルがどうしても板につかない僕の勿体ぶった言葉に、脛を蹴られる頻度が増してきたように感じるのだが。はよ言え的な圧力に、いくらパンプアップさせたところで痛覚までは変わらなかったのでその痛みに耐えつつ、僕は姿勢を正し、高らかに言い放つ。
「胸を揉む」
ハァァッ!? という今回ばかりは五方向からのイキれた声に囲まれ包まれながらも、その圧に負けず、ここぞとばかりに能力を全開にしつつ、声を張る。
……【魅力】【統率】【発言】【説得力】【協力】【コミュ力】は……あああああッ!!
【ブライトファラオドリルカットリングダスト】ッ、だぁぁぁぁぁあッ!! 貫けぇぁッ!!
「だぁかぁらぁぁあああッ!! ……胸をぉぁぁッ!! じっくりゆったりしっとりねっぷりまんじりもんまり揉むぅぁぁぁぁッ!! 揉むんじゃああああああああッ!!」
淡いスポットライトが照らす中、僕のイキりきって脈動する叫びは、その場から音と熱のすべてを奪いつくし、トルネードのように天上高みへとぶち上げていくのであった……ッ!!
唖然以上の何かが抜けた表情を見せる場の五人の、その能面のような顔の下に各々鎮座する双球計十球に視点を均等にロックオンさせる。よぉしよしよし、ここからが、ガチの勝負だぞッ!!
「……」
ドライアイスの煙的にテーブルを這うように重く澱みながらも、触れたらこちらの肌を刺すくらいの刺激感を有してそうな緊迫と敵意と欲望とあと何かが混ざったような瘴気のようなものが、六人が囲む中心付近からモクモクと発生しているかのようだ……
窓際の四人掛け席へと移動させてもらい、奥のソファに二人、残る四人は椅子をなるべく車座になるように配置し座っているという異空間……店内ガラ空きゆえに出来る布陣だけど、巻き起こっているだろう不穏感に、ドリンクバー帰りの人らが二度見していくという悪目立ち状況……しかして居並ぶ面子たちは毛ほども外面は気にせずに、ただ戦いが始まるのを恐ろしく静かに待っているよこれほどの事態になるとは思いもしなかったけど……いや、僥倖、そう取っておくしかないか。
<ウインクキラー細則>
・対局開始前に、「キラー」1枚と「市民」5枚が記された「カード」が各々配られる。自分だけ確認し、対局中はテーブルの上に伏せておくこと。
・告発用に、自分以外の者の名前が書かれた「チップ」も各々配られる。使い方は後述。
・対局時間は無制限。①キラーが告発される(「告訴」した者に2p)。②被害者が三人に達する(キラーに1p)。このふたつを以って、ひとつの対局は終了する。
・キラーは目が市民と目が合った瞬間、ウインクすることで「殺す」ことが出来る。
・「キラー」によりウインクされた「市民」は、そこから三秒以上経ってから、「殺られました」と自己申告しなければならない。その際、自分のカードを表に返すこと(すぐに申告すると直前に目を合わせていたはずのキラーが判別されやすくなるため)。
・キラーと疑わしい人物を告発するには、右手を挙げて「告訴」と宣言すること。
・ひとりでは「告訴」することは出来ない。もうひとりが「同意」と左手を挙げた時点で成立する。複数「同意」者がいた場合、早かった方が採用される。
・告訴者は同意者を承認しない場合は、「取り下げ」と告げ、キャンセルすることが出来る。
・告訴者は同意者を承認した場合、「承認」と告げて、キラーと思われる人物の名前が記された「チップ」を場に伏せて出す。同意者もその後に同じくチップを出す。
・チップ二枚が出揃ったら、告訴者は「オープン」と告げ、二枚同時に表を向ける。この時、名前が揃わなかった場合は、告訴者がアウト、「被害者」として自分のカードを表に返さなければならない。同意者は何もせず続行となる。
「待てまてまてまて。細則が複雑すぎないか? 私らをこの膨大さで押し切って煙に巻こうとか考えてないか?」
先生から貰ったB5サイズのルーズリーフの一枚にそう声に出しながら書きつけていたら待ったがかかったけれど。頭頂のまげを震わせながら灰炉……意外に鋭いね、眼光や蹴りだけじゃあなく。まあでも割とメジャーなゲームよこれ。陰なる者である僕にとっては初めての参戦になるわけだけど。
「それに諸々伏せていることがまだあるよねぇ……こすい策を張り巡らせて『正々堂々』? ふざけるなーってカンジだけど?」
わざとそんなな小馬鹿口調の杜条……だんだん「把握」出来てきたよ、いまキミは「不安35%:それを上書こうとへらへらの虚勢平常心が22%:残りは僕への不審感」って感じのメンタル具合だろ? だったらこっちはそこを突いていく。戦いはもう始まってるのだから……ッ!!
「……いまいち乗り切れては無いかなって、今になって思っただけだよ。僕も、キミらも」
これ以上ないほどのニヒルかつダンディな笑みを浮かばせつつ、僕はそうゆっくりと言葉を紡ぎ出していくけれど。煽る。煽って煽って平常心をまず揺さぶってやる。
「えーとちょっと待って来野くん。センセイはほぼほぼ足もちょっと掛かったくらいなんだけれど……」
朋有先生がそんな、今になって眠たいことを言ってくるから。うんうん、ここからが鉄火場なんだってことを表明しておかないといけないよね。
テーブルの横の席についた僕を六時の位置とすると、窓際のソファに僕寄りからその先生と明日奈が横並び、僕の正面十二時方向には相変わらず僕を珍獣でも見るかのような目つきで見てくる赤いおさげの銀鈴、そこから時計回りに杜条、灰炉と。配置までは僕の意図は込められなかったけど、まあそのくらいはしょうがない。それよりも、場の制圧、それが何より先んじる、はずだ。
「何が言いたいあるか。いま降参したらその『ジショキン』カード差し出すだけで解放するある。ハイロの上段の練習台にならなくてすむね」
銀鈴が食いついてくれたのはラッキーこの上なしだ。やはりこの希少図書カードにはお金で買えない価値があった……いまこの瞬間、僕は自分の父親に初めて心の中で御礼を言う。
「……!!」
おもむろにまた財布をべりりと開き、お札を入れるべきところから束で掴みだしたモノをばんとテーブル上に置き、奇術師のような手さばきでそれらをゆっくり扇状に広げていく……ことは出来なかったのでせこせこと両手を使って開示していく。
僕の全財産と言ってもいい、先ほど一枚示した「カード」と同じもの……小一から小六の間、性懲りもなく毎年親父はこの「五枚セット」をくれたよね……それが、こんな形で実を結ぶとは。
「……!!」
間違いなく、四人の息を飲む音が聞こえた。さらには四色の「吐息の粒子」が揺らめいたのも視認した。そう、先ほど提示したジショキンの、今見たら悶絶の図書カードの、
種類は「五種類」……のちに役者の才能を開花させ、大河にてもうるさ方をその渋い演技で唸らせた、当代一の売れっ子の、
「何かに大袈裟に驚いたような渾身の顔面で両腕を水平に伸ばして両膝揃えて右方向にツイストしたようなジャンプポーズ」「何かに大袈裟に悲しんでいるかのような悲哀の顔面で両目の下にぴんと伸ばした両手指を添えて身体を丸く縮こませたようなジャンプポーズ」「何かに大袈裟に喜んだような動向全開の顔面で両腕両脚をこれでもかの大の字におっぴろげたジャンプポーズ」「何かに大袈裟に憤怒しているようなひょっとこと阿修羅のハイブリッドのような顔面で腕を組みつつ両膝をくの字に曲げて何故か両足裏を合わせたジャンプポーズ」、そしてレアなのか何だか分からないけど、輝くプリズム仕上げを施された「何にも心を動かされていないような能面で、きちりと正座したままの姿勢でのジャンプポーズ(跳躍しているかは定かではないけどそう見える)」の見ているだけでこちらが恥ずかしくなってくるような布陣が総勢三十枚……うん、まあ柄はともかく「五種類ある」というところがミソだ。
「先ほども言ったが『5p』先取した者が勝者。その時点での残りカード全部を進呈するよ。だけど……その完全勝者が決定するまでにも、『1p』得るたびにこのカードを一枚ずつ進呈するという親切仕様だ……これはもうコンプリートするためには積極参加するしかないよねえ……」
にちゃあと音が出そうなほどの汚い笑顔が僕の得意とするところであり、煽り性能は大したもんだと自負するその顔貌を前に、三名ほどの目の色は確かに変わったものの。
「はっ、安易だねー、そうすることによってうちらの協力を阻もうとかって思ってるわけだ。はっきり、短絡」
杜条だけは察したね流石だよ……そう、四人が一致協力されて僕をツブそうとしてくること、それは容易に読めたからのこの布石だったけど、やっぱ鋭いわ……
けど。
「別に、そちらがどう動こうと僕は意に介さない。ただ、これほどまでに正々堂々と、さらにはメリットまで呈している僕に対し、そうまでしないと向かって来れないっていうのはいささか失望ではあるけどねぇ……」
右斜め前の灰炉から瞬間、瞬息の拳撃が放たれようとしてきたけど、その右隣の杜条が、いやに無表情になった顔でそれを軽く制した。
「煽ってんならへったくそ。どのみちキミに何であれ負けるなんてことは許されないうちらだし、やるからには全力でツブすから。それがイヤだったらこの場から消えるかだね」
おーおー、言いつつだいぶ火がついてきたじゃないか杜条……だが、
「『全力』? おいおい、この条件じゃあ全力まで全然行かないっての、それじゃあ意味ないだろ。僕はヒリついた鉄火勝負を望んでいるのだからねぇ……こちらは虎の子の『百五十万相当』とも言われているカードを提供しているんだ……無論、僕の方の『勝利報酬』も定めさせてもらう」
僕の言葉に、一様に怪訝な表情を見せる面々。そう、これが僕の本当の切り札だッ!!
「こっちもカネ出せとかあるか? 百歩譲って図書券を賞品としての卓上遊戯までは御上も黙認してくれるとしても、流石に先生もいるし無理あるね、馬鹿タカ」
銀鈴に至ってはお金なんて屁でもないだろうしね。もちろん、そんなことじゃあ揺さぶれないってことは分かっているよ。いや図書カードもどうかと思うけどェ……というような消え入りそうな先生の言葉は無論黙殺される。そして、
「お金で買えない価値がある……それを供出してもらえば結構さ。つまり僕が最終的に『5p』に最速到達して完全勝利したら、その時点で最もポイントの低い者の……」
ニヒルがどうしても板につかない僕の勿体ぶった言葉に、脛を蹴られる頻度が増してきたように感じるのだが。はよ言え的な圧力に、いくらパンプアップさせたところで痛覚までは変わらなかったのでその痛みに耐えつつ、僕は姿勢を正し、高らかに言い放つ。
「胸を揉む」
ハァァッ!? という今回ばかりは五方向からのイキれた声に囲まれ包まれながらも、その圧に負けず、ここぞとばかりに能力を全開にしつつ、声を張る。
……【魅力】【統率】【発言】【説得力】【協力】【コミュ力】は……あああああッ!!
【ブライトファラオドリルカットリングダスト】ッ、だぁぁぁぁぁあッ!! 貫けぇぁッ!!
「だぁかぁらぁぁあああッ!! ……胸をぉぁぁッ!! じっくりゆったりしっとりねっぷりまんじりもんまり揉むぅぁぁぁぁッ!! 揉むんじゃああああああああッ!!」
淡いスポットライトが照らす中、僕のイキりきって脈動する叫びは、その場から音と熱のすべてを奪いつくし、トルネードのように天上高みへとぶち上げていくのであった……ッ!!
唖然以上の何かが抜けた表情を見せる場の五人の、その能面のような顔の下に各々鎮座する双球計十球に視点を均等にロックオンさせる。よぉしよしよし、ここからが、ガチの勝負だぞッ!!
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