14 / 32
chrono-14:気力は、ヒート!刻むぞ血液の(以下略)ッ!!の巻
しおりを挟む
盛り盛りにも程があるほどの本日の諸々は、ようやく落ち着いたとみてもいいんでしょうか……何度目かの意識の覚醒……もう何か自分の立ち位置が定まらんのですが……一応、本当に、戻ってきた、娑婆に(たぶん)。
「……」
思てた以上にガタガタの身体を何とか引きずりつつ、家近の噴水公園から一路、僕……「たち」は駅の方まで戻るのであった。急激に思い出したことがあったからであり。「思い出し」……うぅん……これもまた「能力」の恩恵なんだろうか……記憶力ってのが大分機能するようになってる気が……するよ。気のせいかも知れないけど。
鼻の骨も紙一重で折れていないことがはっきり分かり、口元に落とされた肘もまあ割と手加減はされていたようで、唇のかさつきひび割れてたところが裂けただけに留まった。とは言えそれより何より……
「……途中でぶっ倒れられたら困るから、とりあえず付き合ってやる。なんかヤバそうな気配感じたら医者行けよな」
在坂選手……てっきり見捨てられて置き去りにされたものとばかり思ってたけど、本日二度目の卒倒から立ち直った僕を、さすがに遠目からだったけれどそれでも見守り続けてくれていた御大は、先ほどの出来事などまるで気にしてませんよな体でいたわりの言葉なんかを掛けてくれたわけで。これも能力の発露……では無いよね。何でも能力に結び付けてしまうのはやめよう。素直に感謝だ。しかし穏やかな土曜午後、いい風が吹き抜ける駅前大通りまでの歩道を男女微妙な距離を取りながら歩いているという……何というかの青春感……僕は今、明らかに何かを得ようとしている……
いや浸とる場合でも無い。どうしても寄りたい場所があるって言ったら、じゃ、じゃあそこまで一緒に行ってやるよとのこれはもしや同伴……なのか……いやいや、思考の指向性が最近いかれてきているようにも感じられるけど。何とか自分の中の昂ぶりを抑えつつ駅ビル七階の百円ショップに到着となる。どうしても買いたいもの、それは、
――えへへバレンタインのチョコだよ、なんかこういうとこで渡してみたかったんだよね……
先月の記憶が、確かに蘇る。「二月十四日」、すなわち例年の僕にはあまり脈絡も関係も無い日ではあったものの、【気力14】が「13」に戻ったことから、その日のことは鮮明に再生できるようになっていた。放課後、妹から部活前にちょっとと呼び出されて何だ何だと行った校舎裏の桜の木の下で唐突に手渡された手の込んだ包装が為されたこれでもかのハート型の箱……いやぁ他に渡す奴いないの? との口は叩いたものの、嬉しかったことは事実だ。手作りの色とりどりのトリュフを一日一粒と決めて二週間近くこそこそと楽しんでいたのは誰にも言えない……というかそんな記憶までおぼろに失ってたのかよダメ過ぎるだろ僕は。
そして本日はそのちょうどひと月後なのであり。そしてもらった厚意をないがしろにするのはいくらダメな兄貴でもダメなわけであり。思い出して本当良かったよ……本当に記憶界隈の事は得体の知れない「能力」の覚醒に感謝かも。店の前で、ほ、ホワイトデーって誰に返すんだよ、と在坂は決まりきったことを何故か食い気味に訊いてきたのだけれど、あ、あーあー明日奈だよなそうだよな、と勝手に納得してたりと何かやっぱりさっきから挙動が微妙におかしいなどうしたんだ……?
それよりも残金が五二六円しか無いよ栗饅頭とか買い食いしてる場合じゃなかった……これで果たして気の利いたお返しプレゼントが買えるものだろうか……との逡巡はでも、瞬時に僕の頭の中の精鋭たちがアイデアを湯水のように出してきて消し去ってくれるわけで……
・チャーム空枠(円形)2Pセット
・超!速乾UVレジン液(ハード)5g
・ネイルエナメル(パールホワイト)
計三三〇円也。会計を終えた僕は、同じ階にあったフードコートのオープンテラスになってる壁際の二人席を在坂に確保してもらうと、臆面も無く何も注文することなく紙カップに冷水をふたつ汲むと、ついでとばかりにカウンターに置いてある爪楊枝を二本失敬し席に戻る。何やんだ的な顔でこちらの手元を興味深そうに覗いてくる褐色顔の近さと舞い上がる何ともいえない良き香りにおののきつつ、これやるよ水にサッと溶けるアクアプロテインレモン味このブランドの奴はコスパいいんだぜ……と重そうな革バッグからスティック状の個包装を二本出してきたかと思うや、手慣れた感じでカップの水にザッと入れてくれる在坂の得意げな顔にちょっと集中を乱されつつも、手際よく僕は作業を始めるわけで。あ本当だクリアで爽やかな味だね飲むプロテインってもっとこってりした奴だけかと思ってたよ……
在坂の肘を傷めない変化球の投げ方講座を聞きながら、僕は手早く五百円玉くらいの金属の円い輪っか二つを、それらが入っていた包装の中の厚紙を引っ張り出してテーブルに置いた上に並べて置く。レジン液の目薬のような小さな容器の蓋を開け、その内容液を慎重にそれら枠内に垂らしていき、枠の高さ半分くらいまで満たしたところで止めると、入ってしまった細かい気泡を爪楊枝の先で丹念につついて消していく。第一段階終了。この窓際席に当たる午後の日差しは結構強く、これなら十五分くらいでレジンは固まるはずだ。埃がつかないように、輪っかの入っていたプラの透明包装を上に被せてしばし静置と。
その間に画像を検索だ。在坂の方はなんだかんだでこのまま付き合ってくれるみたいで、腹減ったしせっかくだからオレはサバみそバーガー&ポテトLサイズセットを食べるぜ、と男らしく言い残して緑の看板の方へと注文しに行ったけど。
明日奈の好きなもので、「シルエット映えるもの」ってなんだろう……と思考を走らせた瞬間、またも「能力」も走る感覚が。【分析力】かな【観察力】かなそれともその両方かもかな……
「……」
犬好き明日奈の最近のお気に入り……「ウエスティ」こと「ウエストハイランドホワトテリア」。頭大きめ耳も大きく三角に立っている……おすわりした姿はシルエットでも絶対分かるはずだし、色とかそこまで考えて無かったけど、さっき買ったエナメルは白、ウエスティもその名の通り全身真っ白毛並み……これ以上ない好都合さじゃないか……ッ!! よしこれで決まり。そしてもうひとつの図柄も……脳内に浮かんできたぞ、さすが「能力」。思うにこういう平和的なことに使うべきだよね……と珍しく殊勝気味なのは朝からもう二十発は撃ちっぱなしていたことによる賢者的反動なのかも知れないけど……乾いて固まった「土台」の上に、僕はもう一本の爪楊枝を鉛筆のように持つと、その先に乗せた白いエナメルを透明で小さなキャンバスに走らせていく……
意外な器用さだなそういうのからっきしだから結構いま尊敬感増してきたわ……みたいに何とかバーガーを美味しそうに頬張る在坂の素直そうな言葉にだいぶ鼓動速度を上げられつつも、【集中】の力を発揮中の僕の指先は揺るがずに手早くかわいらしい子犬の輪郭を描き終えている。しかして集中し過ぎたか、エネルギー枯渇の合図とばかりにグオウとおなかが鳴ってしまう。目の前で油系のにおいが漂っているもんね成長期だししょうがないよね……
とか、何事もなかった体でスルーしようとしていた僕だけど、
「当てつけがましーなー来野兄は。しょうがねえからこの至高の逸品をひとくちだけやるよ」
うぅん在坂は割と天然なのかも知れないけど、これって間接なんちゃらにならんのだろうか……体育会系ってそんなの気にしないのかな……であれば僕も気にするのはアレだし、さっき表皮一枚くらいのニアミスだけど直接なんちゃらもカマしているわけで、まあ御言葉に甘えて……と、差し出された結構特徴的な和の香りがたなびくバーガーにかじりつかせてもらうけど。
どよ? みたいな得意げな顔で見据えられてるけど、うん、まごうことなきサバをミソで煮込んだモノだねでもその柔らかな感触が何かを想起して脈動に来そうだよ……
まあまあいける、との最大限に濁した感想を告げて作業を続けるけど、視界の端でようやくコトに気づいたのか在坂がひとくち齧った後で動きを止めて顔を赤らめてそのあと何事もなかったようにがむしゃらに咀嚼し始めた一連の出来事を逐一感知してしまうのだけれど。これもまた「能力」の? うぅん情報量が多すぎる気もするェ……
「出来た」
そんな内なる逡巡を毛ほども意に介さず、僕の中のやるべきヒトらは作業をてきぱき的確に終わらせていたわけで。
おお、と在坂の賞賛含みの声。レジンで作った即席チャームの出来上がり。透明の円の中には白一色だけどかえってそれがデザイン的にシンプルでいいじゃない? と思わせるシルエットながら精緻に輪郭を描いた小型犬の姿が浮かんでいる。いいね。やっぱり能力はこういうことに使うべきだよ。
これなら絶対喜ぶだろ手作りだしレベル高ぇしよぉ、と手放しで言ってくれる在坂だけど、その目の前に、もうひとつ作ってたチャームを差し出す。
え? と困惑気味の御仁。え? ああちょっと分かりにくい図柄だったかな……野球ボールを握っている手をマークっぽくデザインしてみたんだけど……さっき調べた「スプリットチェンジ」の握りの。
「今日は、明日奈と僕に付き合ってくれてありがとう、ってのの気持ちだよ、付ける金具は用意してもらわなきゃだけど……」
キーホルダーにするにせよ首から掛けるとかにせよ、その辺はご自由に、っていうかお金に余裕がなかったってのが本音ですが。あれ? 何か掌の上に乗せてしげしげと眺められているけど。短時間で仕上げた割には出来にけっこう自信は……
「……ありがと」
ん? なんかうつむいて消え入りそうな声で小さく御礼を言われた。あれ、微妙だったかな図柄……と、
<……何というかここまで黙ってたけどこれだけは言わせてくれ。キミは本当に我らを統べるべくして統べる存在なのかも知れないェ……>
んん? ファイブもそんな呆れ腐った声を脳内に響かせてくるけど。あっるぇ~また僕なんかやっちゃいました~?
「……」
思てた以上にガタガタの身体を何とか引きずりつつ、家近の噴水公園から一路、僕……「たち」は駅の方まで戻るのであった。急激に思い出したことがあったからであり。「思い出し」……うぅん……これもまた「能力」の恩恵なんだろうか……記憶力ってのが大分機能するようになってる気が……するよ。気のせいかも知れないけど。
鼻の骨も紙一重で折れていないことがはっきり分かり、口元に落とされた肘もまあ割と手加減はされていたようで、唇のかさつきひび割れてたところが裂けただけに留まった。とは言えそれより何より……
「……途中でぶっ倒れられたら困るから、とりあえず付き合ってやる。なんかヤバそうな気配感じたら医者行けよな」
在坂選手……てっきり見捨てられて置き去りにされたものとばかり思ってたけど、本日二度目の卒倒から立ち直った僕を、さすがに遠目からだったけれどそれでも見守り続けてくれていた御大は、先ほどの出来事などまるで気にしてませんよな体でいたわりの言葉なんかを掛けてくれたわけで。これも能力の発露……では無いよね。何でも能力に結び付けてしまうのはやめよう。素直に感謝だ。しかし穏やかな土曜午後、いい風が吹き抜ける駅前大通りまでの歩道を男女微妙な距離を取りながら歩いているという……何というかの青春感……僕は今、明らかに何かを得ようとしている……
いや浸とる場合でも無い。どうしても寄りたい場所があるって言ったら、じゃ、じゃあそこまで一緒に行ってやるよとのこれはもしや同伴……なのか……いやいや、思考の指向性が最近いかれてきているようにも感じられるけど。何とか自分の中の昂ぶりを抑えつつ駅ビル七階の百円ショップに到着となる。どうしても買いたいもの、それは、
――えへへバレンタインのチョコだよ、なんかこういうとこで渡してみたかったんだよね……
先月の記憶が、確かに蘇る。「二月十四日」、すなわち例年の僕にはあまり脈絡も関係も無い日ではあったものの、【気力14】が「13」に戻ったことから、その日のことは鮮明に再生できるようになっていた。放課後、妹から部活前にちょっとと呼び出されて何だ何だと行った校舎裏の桜の木の下で唐突に手渡された手の込んだ包装が為されたこれでもかのハート型の箱……いやぁ他に渡す奴いないの? との口は叩いたものの、嬉しかったことは事実だ。手作りの色とりどりのトリュフを一日一粒と決めて二週間近くこそこそと楽しんでいたのは誰にも言えない……というかそんな記憶までおぼろに失ってたのかよダメ過ぎるだろ僕は。
そして本日はそのちょうどひと月後なのであり。そしてもらった厚意をないがしろにするのはいくらダメな兄貴でもダメなわけであり。思い出して本当良かったよ……本当に記憶界隈の事は得体の知れない「能力」の覚醒に感謝かも。店の前で、ほ、ホワイトデーって誰に返すんだよ、と在坂は決まりきったことを何故か食い気味に訊いてきたのだけれど、あ、あーあー明日奈だよなそうだよな、と勝手に納得してたりと何かやっぱりさっきから挙動が微妙におかしいなどうしたんだ……?
それよりも残金が五二六円しか無いよ栗饅頭とか買い食いしてる場合じゃなかった……これで果たして気の利いたお返しプレゼントが買えるものだろうか……との逡巡はでも、瞬時に僕の頭の中の精鋭たちがアイデアを湯水のように出してきて消し去ってくれるわけで……
・チャーム空枠(円形)2Pセット
・超!速乾UVレジン液(ハード)5g
・ネイルエナメル(パールホワイト)
計三三〇円也。会計を終えた僕は、同じ階にあったフードコートのオープンテラスになってる壁際の二人席を在坂に確保してもらうと、臆面も無く何も注文することなく紙カップに冷水をふたつ汲むと、ついでとばかりにカウンターに置いてある爪楊枝を二本失敬し席に戻る。何やんだ的な顔でこちらの手元を興味深そうに覗いてくる褐色顔の近さと舞い上がる何ともいえない良き香りにおののきつつ、これやるよ水にサッと溶けるアクアプロテインレモン味このブランドの奴はコスパいいんだぜ……と重そうな革バッグからスティック状の個包装を二本出してきたかと思うや、手慣れた感じでカップの水にザッと入れてくれる在坂の得意げな顔にちょっと集中を乱されつつも、手際よく僕は作業を始めるわけで。あ本当だクリアで爽やかな味だね飲むプロテインってもっとこってりした奴だけかと思ってたよ……
在坂の肘を傷めない変化球の投げ方講座を聞きながら、僕は手早く五百円玉くらいの金属の円い輪っか二つを、それらが入っていた包装の中の厚紙を引っ張り出してテーブルに置いた上に並べて置く。レジン液の目薬のような小さな容器の蓋を開け、その内容液を慎重にそれら枠内に垂らしていき、枠の高さ半分くらいまで満たしたところで止めると、入ってしまった細かい気泡を爪楊枝の先で丹念につついて消していく。第一段階終了。この窓際席に当たる午後の日差しは結構強く、これなら十五分くらいでレジンは固まるはずだ。埃がつかないように、輪っかの入っていたプラの透明包装を上に被せてしばし静置と。
その間に画像を検索だ。在坂の方はなんだかんだでこのまま付き合ってくれるみたいで、腹減ったしせっかくだからオレはサバみそバーガー&ポテトLサイズセットを食べるぜ、と男らしく言い残して緑の看板の方へと注文しに行ったけど。
明日奈の好きなもので、「シルエット映えるもの」ってなんだろう……と思考を走らせた瞬間、またも「能力」も走る感覚が。【分析力】かな【観察力】かなそれともその両方かもかな……
「……」
犬好き明日奈の最近のお気に入り……「ウエスティ」こと「ウエストハイランドホワトテリア」。頭大きめ耳も大きく三角に立っている……おすわりした姿はシルエットでも絶対分かるはずだし、色とかそこまで考えて無かったけど、さっき買ったエナメルは白、ウエスティもその名の通り全身真っ白毛並み……これ以上ない好都合さじゃないか……ッ!! よしこれで決まり。そしてもうひとつの図柄も……脳内に浮かんできたぞ、さすが「能力」。思うにこういう平和的なことに使うべきだよね……と珍しく殊勝気味なのは朝からもう二十発は撃ちっぱなしていたことによる賢者的反動なのかも知れないけど……乾いて固まった「土台」の上に、僕はもう一本の爪楊枝を鉛筆のように持つと、その先に乗せた白いエナメルを透明で小さなキャンバスに走らせていく……
意外な器用さだなそういうのからっきしだから結構いま尊敬感増してきたわ……みたいに何とかバーガーを美味しそうに頬張る在坂の素直そうな言葉にだいぶ鼓動速度を上げられつつも、【集中】の力を発揮中の僕の指先は揺るがずに手早くかわいらしい子犬の輪郭を描き終えている。しかして集中し過ぎたか、エネルギー枯渇の合図とばかりにグオウとおなかが鳴ってしまう。目の前で油系のにおいが漂っているもんね成長期だししょうがないよね……
とか、何事もなかった体でスルーしようとしていた僕だけど、
「当てつけがましーなー来野兄は。しょうがねえからこの至高の逸品をひとくちだけやるよ」
うぅん在坂は割と天然なのかも知れないけど、これって間接なんちゃらにならんのだろうか……体育会系ってそんなの気にしないのかな……であれば僕も気にするのはアレだし、さっき表皮一枚くらいのニアミスだけど直接なんちゃらもカマしているわけで、まあ御言葉に甘えて……と、差し出された結構特徴的な和の香りがたなびくバーガーにかじりつかせてもらうけど。
どよ? みたいな得意げな顔で見据えられてるけど、うん、まごうことなきサバをミソで煮込んだモノだねでもその柔らかな感触が何かを想起して脈動に来そうだよ……
まあまあいける、との最大限に濁した感想を告げて作業を続けるけど、視界の端でようやくコトに気づいたのか在坂がひとくち齧った後で動きを止めて顔を赤らめてそのあと何事もなかったようにがむしゃらに咀嚼し始めた一連の出来事を逐一感知してしまうのだけれど。これもまた「能力」の? うぅん情報量が多すぎる気もするェ……
「出来た」
そんな内なる逡巡を毛ほども意に介さず、僕の中のやるべきヒトらは作業をてきぱき的確に終わらせていたわけで。
おお、と在坂の賞賛含みの声。レジンで作った即席チャームの出来上がり。透明の円の中には白一色だけどかえってそれがデザイン的にシンプルでいいじゃない? と思わせるシルエットながら精緻に輪郭を描いた小型犬の姿が浮かんでいる。いいね。やっぱり能力はこういうことに使うべきだよ。
これなら絶対喜ぶだろ手作りだしレベル高ぇしよぉ、と手放しで言ってくれる在坂だけど、その目の前に、もうひとつ作ってたチャームを差し出す。
え? と困惑気味の御仁。え? ああちょっと分かりにくい図柄だったかな……野球ボールを握っている手をマークっぽくデザインしてみたんだけど……さっき調べた「スプリットチェンジ」の握りの。
「今日は、明日奈と僕に付き合ってくれてありがとう、ってのの気持ちだよ、付ける金具は用意してもらわなきゃだけど……」
キーホルダーにするにせよ首から掛けるとかにせよ、その辺はご自由に、っていうかお金に余裕がなかったってのが本音ですが。あれ? 何か掌の上に乗せてしげしげと眺められているけど。短時間で仕上げた割には出来にけっこう自信は……
「……ありがと」
ん? なんかうつむいて消え入りそうな声で小さく御礼を言われた。あれ、微妙だったかな図柄……と、
<……何というかここまで黙ってたけどこれだけは言わせてくれ。キミは本当に我らを統べるべくして統べる存在なのかも知れないェ……>
んん? ファイブもそんな呆れ腐った声を脳内に響かせてくるけど。あっるぇ~また僕なんかやっちゃいました~?
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
パワハラ女上司からのラッキースケベが止まらない
セカイ
ライト文芸
新入社員の『俺』草野新一は入社して半年以上の間、上司である椿原麗香からの執拗なパワハラに苦しめられていた。
しかしそんな屈辱的な時間の中で毎回発生するラッキースケベな展開が、パワハラによる苦しみを相殺させている。
高身長でスタイルのいい超美人。おまけにすごく巨乳。性格以外は最高に魅力的な美人上司が、パワハラ中に引き起こす無自覚ラッキースケベの数々。
パワハラはしんどくて嫌だけれど、ムフフが美味しすぎて堪らない。そんな彼の日常の中のとある日の物語。
※他サイト(小説家になろう・カクヨム・ノベルアッププラス)でも掲載。
隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)
チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。
主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。
ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。
しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。
その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。
「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」
これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる