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第弐章:ムロトー/ナイトフィーバー/レリGO
#080:殊更な(あるいは、ダメの王)
しおりを挟む「あいたたた……」
そんな声が漏れ出てしまうほどの強ばりまくった体を、エアロバイク状の装置から引き剥がすかのようにして地面に降りた。つつつ疲れた……。そのまま人工芝の上に仰向けで倒れ込んでしまう。
長かった。時間にしては30分余りのことだったらしいけど、僕には(多分ほかの皆様方にも)その500倍くらいには体感されているわけで。
「……」
「お、オバヒアぁぁ……」
流石のメイドお化け達も疲労困憊の体で、柔らかな芝生の上に横たわっている。勝利したという喜びよりも、きついのがやっと終わったというような安堵感の方が強い。そんな弛緩した空気の中、
「……完敗だ。君は本当に……いや、次戦以降も見させてもらうとする」
僕らに声をかけてきてくれたのは、他ならぬ対戦チームの司令塔、桂馬だった。何を言いかけたのか? それは判らないけど、僕は必死で上体を起こすと、差し出された握手に応じた。そして、
「室戸さんっ、決勝進出おめでとうございます!!」
恒例の実況少女との絡みが待っていた。けど今回は僕がいっぱいいっぱいで、無表情と半笑いの中間のような、妙な顔つきでリアちゃんを迎えるしか出来なかったわけで。
「本当っ……この死闘、絶対伝説になると思います……!! そしてそれを決着付けた室戸さん……私ファンになっちゃ」
黄緑実況少女リアちゃんが手を組み合わせ、目を輝かせて僕にアップで迫ってくるが、次の瞬間、その左肩を何者かにがっしと掴まれるやいなや、僕の視界後方へと引き飛ばされていった。ええー。
「室戸。お前と戦えて良かった」
そして何事も無かったようにレーゼさんが今度はアップで居た。す、すごい腕力ですねへぇぇぇ。ヘルメットもゴーグルも取り去っていて、赤髪の、想像していた以上の美女が熱っぽい視線で僕の顔を見据えている。多量の汗で水をかぶったかのようだが、正に水も滴るってやつだよね……これまでのフラれ続けた哀しい経験を糧に、僕はこの溜王でエロゲハーレム的なモテ王として君臨しつつある。世界よ、我こそがダメの王、モテの王であるぞ。
「自分たちより飛べるやつらがいるなんて、思ってもみなかった。決勝もその勢いで飛んでくれ」
そう言いつつレーゼさんは、僕の体を固く抱擁するわけで。オウフ、しなやか体躯、でも出るとこ出てます質感キタコレですな……なんて、余裕ぶってられないくらい、僕の頭は疲労と興奮のダブルショックでクラクラだ。
でもやったるでぇぇぇぇ、ついに決勝!! 予選優勝賞金90万円がもうすぐそこに、手の届きそうなとこまで来ているっ……!! 僕は改めてそんなゲスいことを考えつつ、頭も体も欲望に満たされていくのを感じるのであった。フオオオオオォォォ!!
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