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第弐章:ムロトー/ナイトフィーバー/レリGO
#065:想定な(あるいは、フラ~イハイ♪ スカ~イハイ♪ おさ~るさあんだよ~♪)
しおりを挟む「だぁぁぁイラっ、グラっ、っぱぅぁぁぁぁ!!」
諸々あったが、第四戦は<先手:10,406ボルティックブースト>にて終局した。
「……『10,000ボルティック』超級!! し、死んでも知らないんだからねっ」
切羽詰った永佐久ちゃんのツン忠告も聞かず、
「出ました、五桁アナリストです……」
ぶつぶつと何事かをつぶやいている内に、堀之内は相当きつめの折檻電流に貫かれ、冒頭のちょっと形容しにくい叫び声を上げて、果てた。
「き、棄権デ」
そしてチームメイトの内ひとりがその惨状を見てすぐさま降伏の意思を告げたのだが、いきなりもう一人が激昂すると、その相方の首を掴んで揺さぶり始めたわけで。
「ラグナ氏~、だから貴様はダメクエでも馬鹿にされると言うんだぁぁ~!!」
「六田《ろくだ》氏~、コートゥックラッ、サワディークラッ!!」
何やらコントみたいなやり取りが始まったけど、何これ。
「『棄権』なんて誰も言わねーんだー、この神聖な場ではー!! よく見とけー」
と、首を絞めていた側、筋肉質の熱血っぽい方、六田がリングにおもむろに上がってきた。やるつもりか。自陣営からは続けて行けとの無言の合図。もういけるとこまで僕を酷使するつもりだろ。抗議したところで聞く耳持たないと思うので僕はこのまま続投を決意する。が、
「イエス!! 負けだ!!」
六田は僕と対峙するやいなや、大声を張り上げると、腰を深く折って頭を下げた。
「声ハッテ言ウコトヤナイヤロッ!!」
瞬間、息を吹き返したかのように、絞められていたタイ人の方、ラグナが絶妙の突っ込みを入れてくる。もういいよ、もういい。
そんなこんなで僕らチームはスココンと四連勝。準決勝へと駒を進めたのであった。これで二十万。チャリチャリチャチャリーンという音が僕の脳内で弾ける。そんな僕にまたしても可憐なる声が。
「む、ムロトっ」
永佐久ちゃんだった。さっきもその前も前も実況少女たちに労われたけど、もはや僕のモテは現実のものとなってきているわけで。
「べ、べつに犬が好きってわけじゃないんだからねっ」
顔を真っ赤にしつつも怒り顔で、永佐久ちゃんは僕の顔に指を突きつける。華奢な指先だ……勝気そうな表情を常に浮かべているが、内面は何と言うか無理している感があるわけで。そして、
「……ムロトが好きなだけっ」
言いつつ、かわいく泣きそうな顔をされても!! 僕は精一杯クールに手を差し伸べるのが限界だった。山岳救助犬のみなさんに乾杯だ(その首のウイスキーで)。
「……応援してる。決勝まで絶対、勝つんだからねっ」
真っ赤っかの顔で、潤んだ瞳で見つめられても!! その温かく少し湿った手に手を取られ、僕はもう未来の嫁選びに頭を悩ます段階に来ていた。次も……勝つしかない。勝ってすべてを得るしかないんやぁっちゅうねんっ。
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