285 / 349
砲撃のパラディン大佐隊編(【05】の裏)
267【挨拶回りの前後編19】どうしようもない
しおりを挟む
【パラディン大佐隊・第三班小会議室】
エリゴール、椅子から立ち上がって、ミネラルウォーターの瓶を持つ。
それに合わせて、第一号副長・ホフマンも腰を上げる。
副班長たちも起立しようとするが、エリゴールに視線で制され、あわてて椅子に座り直す。
エリゴール
「あ、そうだ。副班長」
副班長・クライン
「え、あ、はい!」
エリゴール
「うっかり言い忘れるところだった。明日の朝のミーティング、おまえも参加だ」
副班長・クライン
「え、自分もですか? 自分はもう班長代理ではなくなったのでは?」
エリゴール
「この先、また班長代理になるかもしれないだろ。……時間は一班長に確認して連絡する。ミーティング室に直行しないで、一号の待機室に寄ってくれ」
副班長・クライン
「は、はいッ! 了解いたしましたッ!」
エリゴール
「……参加したら驚くぞ。いろいろな意味で」
副班長・クライン
「え?」
エリゴール
「いや、何でもない。じゃ、また明日」
艦長たち
「お疲れ様でした!」(必要以上に大声)
***
【パラディン大佐隊・第三班小会議室前】
エリゴール、ホフマンと共に退室。
自動ドアが閉まってから、ふと立ち止まって振り返る。
第一号副長・ホフマン
「班長。……何か?」
エリゴール
「いや……今日の昼にはこの部屋で、三班長に退役届を書かせていたんだなと思ってな。臨時とはいえ、まさか自分がここの班長になるとは夢にも思っていなかった」
第一号副長・ホフマン
「……俺たちを薄情者だとお思いですか?」
エリゴール
「そういう自覚があるんなら、少なくとも、おまえは薄情者じゃない」
第一号副長・ホフマン
「班長……」
エリゴール
「それに、おまえらに惜しまれるような班長なら、ああいう辞め方もしないだろ」
第一号副長・ホフマン
「……悪い人ではなかったんですけどね」
エリゴール
「ああ。でも、班長として〝良い人〟でもなかった。だから、そんな言い方になる」
第一号副長・ホフマン
「……おっしゃるとおりです」
エリゴール
「もっとも、俺は人のことは言えないな。元マクスウェル大佐隊の四班は、俺が班長でなくなって、いちばんほっとしただろ」
第一号副長・ホフマン
「自覚はあったんですね」
エリゴール
「多少はな。でも、もうどうしようもなかった。……三班長と同じだ」
第一号副長・ホフマン
「あの人とはレベルが全然違うような気がしますが。……とにかく、待機室に戻りましょうか。俺がクルーに説明している間、班長はミネラルウォーターの残りでも飲んでいてください」
エリゴール
「コーヒーはないのか?」
第一号副長・ホフマン
「ありますよ。砂糖とミルクも」
エリゴール
「そうか。じゃあ、ブラックで飲めないほどまずかったら入れられるな」
第一号副長・ホフマン
「……入れられないように頑張ります」
***
【パラディン大佐隊・第三班小会議室】
エリゴールとホフマンが退室して、自動ドアが閉まった後。
艦長たちは一斉に溜め息を吐き出す。
第七号艦長・ガース
「緊張した……でも、いい! やっぱりいい!」
第四号艦長・キャッスル
「顔もいいが声もいい……結構めちゃくちゃなこと言ってたが、あの声で言われたら、何でもやれそうな気がしてしまう……」
副班長・クライン
「確かに、冷静に考えると、めちゃくちゃなこと言ってたな……」
第二号艦長・ハミルトン
「くそう! 今すぐ第一号に異動してえ!」
副班長・クライン
「……元四班長よりめちゃくちゃなこと言ってるな」
第二号艦長・ハミルトン
「おまえはいいよな! 元四班長と一緒にミーティング参加できて! きっと班長会議にも参加させてもらえるんだろ! 畜生! たまたま副班長に任命されただけのくせに!」
副班長・クライン
「たまたまでも副班長だからな! 副班長に任命されてよかったと、今日生まれて初めて思えたわ!」
第五号艦長・テネショー
「相変わらず、仲悪いな。同期なのに」
第四号艦長・キャッスル
「同期だから余計に悪いんじゃないのか。でも、ハミルトンが副班長に選ばれることは絶対ないよな」
第五号艦長・テネショー
「素行悪すぎるからな。うちじゃなかったら、艦長も辞めさせられてるぞ」
第三号艦長・ウェントワース
「そういや俺たち、元四班長に自己紹介しなかったけど、顔と名前、覚えてもらえてんのかなあ?」
第四号艦長・キャッスル
「名前じゃなく、号数で覚えてるんじゃないのか? デイヴィッドスン、十号って呼ばれてたし」
第八号艦長・ブレイド
「名前も長いしな。俺も十号って呼んでるわ」
第十号艦長・デイヴィッドスン
「俺だって、好きでこの名前名乗ってるわけじゃない……!」
第九号艦長・エンディコット
「でもまあ、〝死んだふり〟よりはいいだろ」
ハミルトン以外
「あー……」
第四号艦長・キャッスル
「それじゃあ、そろそろ待機室戻って、元四班長の意向を伝えるか……」
第三号艦長・ウェントワース
「結局、うちは順位のことは考えないで、四班よりいいタイムを出せばいいんだよな?」
第八号艦長・ブレイド
「それでいいんじゃないか? 理想はうちが十一位、四班が最下位なんだろうけど、狙ってなれるもんでもないからなあ」
第七号艦長・ガース
「……どうした、クライン?」
副班長・クライン
「いや。まだ今日は終わっていないが、激動の一日だったなと」
第三号艦長・ウェントワース
「そうだな。そういや昼には、この部屋の前で、プライス班長に挨拶したんだったな」
第四号艦長・キャッスル
「やべえ。俺、すっかり忘れてた」
第五号艦長・テネショー
「実は俺も……」
副班長・クライン
「……もしかしたら、元四班長は、プライス班長に頼まれたことを果たそうとしているのかもしれないな」
第七号艦長・ガース
「頼まれた? 何か頼んでたか?」
副班長・クライン
「いや。特に何と言うこともなく、漠然としていたが。……〝あとは頼む〟。そう言っていた」
第二号艦長・ハミルトン
「元四班長に何から何まで世話になっておいて〝あとは頼む〟か。どうしようもねえな」
副班長・クライン
「……おまえのことを頼んでいったのかもな。元四班長に」
第二号艦長・ハミルトン
「プライス前班長! 最後の最後で唯一仕事したな!」
副班長・クライン
「……本当に、どうしようもない」
第七号艦長・ガース
「元四班長が臨時でもうちの班長になった理由が、今わかった気がする……」
エリゴール、椅子から立ち上がって、ミネラルウォーターの瓶を持つ。
それに合わせて、第一号副長・ホフマンも腰を上げる。
副班長たちも起立しようとするが、エリゴールに視線で制され、あわてて椅子に座り直す。
エリゴール
「あ、そうだ。副班長」
副班長・クライン
「え、あ、はい!」
エリゴール
「うっかり言い忘れるところだった。明日の朝のミーティング、おまえも参加だ」
副班長・クライン
「え、自分もですか? 自分はもう班長代理ではなくなったのでは?」
エリゴール
「この先、また班長代理になるかもしれないだろ。……時間は一班長に確認して連絡する。ミーティング室に直行しないで、一号の待機室に寄ってくれ」
副班長・クライン
「は、はいッ! 了解いたしましたッ!」
エリゴール
「……参加したら驚くぞ。いろいろな意味で」
副班長・クライン
「え?」
エリゴール
「いや、何でもない。じゃ、また明日」
艦長たち
「お疲れ様でした!」(必要以上に大声)
***
【パラディン大佐隊・第三班小会議室前】
エリゴール、ホフマンと共に退室。
自動ドアが閉まってから、ふと立ち止まって振り返る。
第一号副長・ホフマン
「班長。……何か?」
エリゴール
「いや……今日の昼にはこの部屋で、三班長に退役届を書かせていたんだなと思ってな。臨時とはいえ、まさか自分がここの班長になるとは夢にも思っていなかった」
第一号副長・ホフマン
「……俺たちを薄情者だとお思いですか?」
エリゴール
「そういう自覚があるんなら、少なくとも、おまえは薄情者じゃない」
第一号副長・ホフマン
「班長……」
エリゴール
「それに、おまえらに惜しまれるような班長なら、ああいう辞め方もしないだろ」
第一号副長・ホフマン
「……悪い人ではなかったんですけどね」
エリゴール
「ああ。でも、班長として〝良い人〟でもなかった。だから、そんな言い方になる」
第一号副長・ホフマン
「……おっしゃるとおりです」
エリゴール
「もっとも、俺は人のことは言えないな。元マクスウェル大佐隊の四班は、俺が班長でなくなって、いちばんほっとしただろ」
第一号副長・ホフマン
「自覚はあったんですね」
エリゴール
「多少はな。でも、もうどうしようもなかった。……三班長と同じだ」
第一号副長・ホフマン
「あの人とはレベルが全然違うような気がしますが。……とにかく、待機室に戻りましょうか。俺がクルーに説明している間、班長はミネラルウォーターの残りでも飲んでいてください」
エリゴール
「コーヒーはないのか?」
第一号副長・ホフマン
「ありますよ。砂糖とミルクも」
エリゴール
「そうか。じゃあ、ブラックで飲めないほどまずかったら入れられるな」
第一号副長・ホフマン
「……入れられないように頑張ります」
***
【パラディン大佐隊・第三班小会議室】
エリゴールとホフマンが退室して、自動ドアが閉まった後。
艦長たちは一斉に溜め息を吐き出す。
第七号艦長・ガース
「緊張した……でも、いい! やっぱりいい!」
第四号艦長・キャッスル
「顔もいいが声もいい……結構めちゃくちゃなこと言ってたが、あの声で言われたら、何でもやれそうな気がしてしまう……」
副班長・クライン
「確かに、冷静に考えると、めちゃくちゃなこと言ってたな……」
第二号艦長・ハミルトン
「くそう! 今すぐ第一号に異動してえ!」
副班長・クライン
「……元四班長よりめちゃくちゃなこと言ってるな」
第二号艦長・ハミルトン
「おまえはいいよな! 元四班長と一緒にミーティング参加できて! きっと班長会議にも参加させてもらえるんだろ! 畜生! たまたま副班長に任命されただけのくせに!」
副班長・クライン
「たまたまでも副班長だからな! 副班長に任命されてよかったと、今日生まれて初めて思えたわ!」
第五号艦長・テネショー
「相変わらず、仲悪いな。同期なのに」
第四号艦長・キャッスル
「同期だから余計に悪いんじゃないのか。でも、ハミルトンが副班長に選ばれることは絶対ないよな」
第五号艦長・テネショー
「素行悪すぎるからな。うちじゃなかったら、艦長も辞めさせられてるぞ」
第三号艦長・ウェントワース
「そういや俺たち、元四班長に自己紹介しなかったけど、顔と名前、覚えてもらえてんのかなあ?」
第四号艦長・キャッスル
「名前じゃなく、号数で覚えてるんじゃないのか? デイヴィッドスン、十号って呼ばれてたし」
第八号艦長・ブレイド
「名前も長いしな。俺も十号って呼んでるわ」
第十号艦長・デイヴィッドスン
「俺だって、好きでこの名前名乗ってるわけじゃない……!」
第九号艦長・エンディコット
「でもまあ、〝死んだふり〟よりはいいだろ」
ハミルトン以外
「あー……」
第四号艦長・キャッスル
「それじゃあ、そろそろ待機室戻って、元四班長の意向を伝えるか……」
第三号艦長・ウェントワース
「結局、うちは順位のことは考えないで、四班よりいいタイムを出せばいいんだよな?」
第八号艦長・ブレイド
「それでいいんじゃないか? 理想はうちが十一位、四班が最下位なんだろうけど、狙ってなれるもんでもないからなあ」
第七号艦長・ガース
「……どうした、クライン?」
副班長・クライン
「いや。まだ今日は終わっていないが、激動の一日だったなと」
第三号艦長・ウェントワース
「そうだな。そういや昼には、この部屋の前で、プライス班長に挨拶したんだったな」
第四号艦長・キャッスル
「やべえ。俺、すっかり忘れてた」
第五号艦長・テネショー
「実は俺も……」
副班長・クライン
「……もしかしたら、元四班長は、プライス班長に頼まれたことを果たそうとしているのかもしれないな」
第七号艦長・ガース
「頼まれた? 何か頼んでたか?」
副班長・クライン
「いや。特に何と言うこともなく、漠然としていたが。……〝あとは頼む〟。そう言っていた」
第二号艦長・ハミルトン
「元四班長に何から何まで世話になっておいて〝あとは頼む〟か。どうしようもねえな」
副班長・クライン
「……おまえのことを頼んでいったのかもな。元四班長に」
第二号艦長・ハミルトン
「プライス前班長! 最後の最後で唯一仕事したな!」
副班長・クライン
「……本当に、どうしようもない」
第七号艦長・ガース
「元四班長が臨時でもうちの班長になった理由が、今わかった気がする……」
1
お気に入りに追加
64
あなたにおすすめの小説
俺の義兄弟が凄いんだが
kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・
初投稿です。感想などお待ちしています。
目が覚めたら、妹の彼氏とつきあうことになっていた件
水野七緒
BL
一見チャラそうだけど、根はマジメな男子高校生・星井夏樹。
そんな彼が、ある日、現代とよく似た「別の世界(パラレルワールド)」の夏樹と入れ替わることに。
この世界の夏樹は、浮気性な上に「妹の彼氏」とお付き合いしているようで…?
※終わり方が2種類あります。9話目から分岐します。※続編「目が覚めたら、カノジョの兄に迫られていた件」連載中です(2022.8.14)
なぜか第三王子と結婚することになりました
鳳来 悠
BL
第三王子が婚約破棄したらしい。そしておれに急に婚約話がやってきた。……そこまではいい。しかし何でその相手が王子なの!?会ったことなんて数えるほどしか───って、え、おれもよく知ってるやつ?身分偽ってたぁ!?
こうして結婚せざるを得ない状況になりました…………。
金髪碧眼王子様×黒髪無自覚美人です
ハッピーエンドにするつもり
長編とありますが、あまり長くはならないようにする予定です
弟いわく、ここは乙女ゲームの世界らしいです
慎
BL
――‥ 昔、あるとき弟が言った。此処はある乙女ゲームの世界の中だ、と。我が侯爵家 ハワードは今の代で終わりを迎え、父・母の散財により没落貴族に堕ちる、と… 。そして、これまでの悪事が晒され、父・母と共に令息である僕自身も母の息の掛かった婚約者の悪役令嬢と共に公開処刑にて断罪される… と。あの日、珍しく滑舌に喋り出した弟は予言めいた言葉を口にした――‥ 。
無自覚美少年のチート劇~ぼくってそんなにスゴいんですか??~
白ねこ
BL
ぼくはクラスメイトにも、先生にも、親にも嫌われていて、暴言や暴力は当たり前、ご飯もろくに与えられない日々を過ごしていた。
そんなぼくは気づいたら神さま(仮)の部屋にいて、呆気なく死んでしまったことを告げられる。そして、どういうわけかその神さま(仮)から異世界転生をしないかと提案をされて―――!?
前世は嫌われもの。今世は愛されもの。
自己評価が低すぎる無自覚チート美少年、爆誕!!!
****************
というようなものを書こうと思っています。
初めて書くので誤字脱字はもちろんのこと、文章構成ミスや設定崩壊など、至らぬ点がありすぎると思いますがその都度指摘していただけると幸いです。
暇なときにちょっと書く程度の不定期更新となりますので、更新速度は物凄く遅いと思います。予めご了承ください。
なんの予告もなしに突然連載休止になってしまうかもしれません。
この物語はBL作品となっておりますので、そういうことが苦手な方は本作はおすすめいたしません。
R15は保険です。
俺のまったり生活はどこへ?
グランラババー
BL
異世界に転生したリューイは、前世での死因を鑑みて、今世は若いうちだけ頑張って仕事をして、不労所得獲得を目指し、20代後半からはのんびり、まったり生活することにする。
しかし、次代の王となる第一王子に気に入られたり、伝説のドラゴンを倒したりと、今世も仕事からは逃れられそうにない。
さて、リューイは無事に不労所得獲得と、のんびり、まったり生活を実現できるのか?
「俺と第一王子との婚約なんて聞いてない!!」
BLではありますが、軽い恋愛要素があるぐらいで、R18には至りません。
以前は別の名前で投稿してたのですが、小説の内容がどうしても題名に沿わなくなってしまったため、題名を変更しました。
題名変更に伴い、小説の内容を少しずつ変更していきます。
小説の修正が終わりましたら、新章を投稿していきたいと思っています。
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる