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砲撃のパラディン大佐隊編(【05】の裏)

262【挨拶回りの前後編14】あくまで臨時

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【パラディン大佐隊・作戦説明室】

 十四時。パラディンとモルトヴァンが入室してくる。
 しかし、今回はエリゴールも入室してきたので、ハワードたちは目を見張る。
 エリゴールは目立たないように壁際に立つが、何もしていなくてもパラディンより目立っている。

パラディン
「諸君。二日にわたる合同演習、本当にお疲れ様。私は実戦に近い演習を望んでいたのだが、コールタン大佐はそうではなかったようだ。しかし、二日連続で我が隊が勝利したことは紛れもない事実! 私は君たちを心から誇りに思っている!」

砲撃隊の班長たち(副班長含む)
「大佐殿……!」

十一班長・ロノウェ
「そう来たか」

十二班長・ザボエス
「でもまあ、確かにコールタン大佐のせいで、逆に実戦からは遠くなっちまったわな……」

パラディン
「ただし、今後行う訓練や演習では、被弾していないのに〝墓場〟へ行くことは、不正行為として厳重に禁じる。……まあ、そもそも実戦では、一発かすったくらいで離脱リタイアにはならないが」

一班長・ハワード
「やはり、そうなるか……」

三班副班長・クライン
「むしろ、そうしていただかないと、またうちのあれが……」

二班長・キャンベル
「そうかな。一度使った手は二度と使わないタイプのように思えるが」

一班長・ハワード
「キャンベル……急に口数が増えたな……」

パラディン
「さらに、訓練や演習中、私の許可なく区域外を出たは、無条件で被弾したものとみなす。これは私の乗艦にも適用されるから、区域外に出たら撃つな。絶対に撃つな」

十一班長・ロノウェ
「あれは俺に言ってるのか」

十二班長・ザボエス
「おまえを通して、レラージュに言ってんだよ」

パラディン
「そういうわけで、実戦とはかけ離れてしまったが、あの合同演習によってわかったこともいくつかある。たとえば……〝一班組〟には、臨機応変に隊形を変更でき、かつ速やかに移動できる班が望ましい、とか」

四班長・ワンドレイ
「そう来たか……!」

五班長・ロング
「明らかに、元四班長に進言されたな……」

パラディン
「すでに次回の〝留守番〟は、三班と八班に決定している。が、万全を期すため、今一度、〝留守番〟決定戦を行いたい!」

十一班長・ロノウェ
「物は言いよう……」

十二班長・ザボエス
「相変わらず、そういうとこはうめえよな、大佐」

八班長・ブロック
「……よし!」

七班長・カットナー
「珍しく、ブロックがやる気を出している」

九班長・ビショップ
「やっぱり、三班と留守番は嫌だったんだろ」

十班長・ヒールド
「そういや三班、まだ次の班長は決まってないんだよな? どうするんだ?」

九班長・ビショップ
「さあ……決定戦するまでに任命するのかな……」

パラディン
「なお、この決定戦は明日行う!」

砲撃隊の班長たち(副班長含む)
「明日!?」

十一班長・ロノウェ
「相変わらず、無茶振りすんなあ……」

十二班長・ザボエス
「今度はいったい何させる気だ?」

パラディン
「決定戦の詳細は、全班の待機室に送信したメールを参照のこと!」

砲撃隊の班長たち(副班長含む)
「メール!?」

十一班長・ロノウェ
「相変わらず、手抜きすんなあ……」

十二班長・ザボエス
「たぶん、エリゴールに考えさせたから、自分で説明できねえんじゃねえのか?」

パラディン
「それから、皆すでに知っているだろうが、これまで三班長を務めていたプライス中佐が今日付で退役となった。懲戒ではなく、本人の希望による退役だ。理由は詮索しないでやってほしい」

十一班長・ロノウェ
「俺らはたった今知ったぞ……」

十二班長・ザボエス
「今日はいねえなとは思ってたが……ヴァッサゴが知ったら何て言うかね……」

パラディン
「次の三班長は、熟慮して任命したいと考えている。そのため、明日の決定戦では、三班は班長不在のまま戦うことになる。しかし、それではあまりにも三班が不利だ。そこで、私が班長を任命するまでの間、臨時の班長を立てることにした」

 臨時の班長と聞いて、ざわめく班長たち(副班長含む)。

十一班長・ロノウェ
「あ……何か、ものすごく嫌な予感が……」

十二班長・ザボエス
「奇遇だな。俺もだ」

十班長・ヒールド
「まさか……あの悪夢が再び……?」

パラディン
「何度でも言うが、あくまで臨時だ。……エリゴール中佐。登壇して挨拶するかね?」

 全員の視線がエリゴールに集中。
 エリゴールは涼しい顔で答える。

エリゴール
「いえ。自分はここで。あくまで臨時なので」

 パラディンがいることも忘れ、悲鳴を上げる班長たち。

十一班長・ロノウェ
「うわあ! やっぱり!」

十二班長・ザボエス
「今度は〝臨時で三班長〟か……いっそもう、そのまま三班長になれよ!」

三班副班長・クライン
「……これは夢ですか?」

二班長・キャンベル
「よかったな、三班! 今日はラッキーデーだ!」

一班長・ハワード
「え……元四班長が臨時で三班長って……じゃあ、その間、うちはどうなる?」
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