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砲撃のパラディン大佐隊編(【05】の裏)

260【挨拶回りの前後編12】大佐代行は元四班長

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【パラディン大佐隊・執務室】

元三班長・プライス
「それでは失礼いたします!」

 背筋をピンと伸ばして声を張り、執務室から退室していくプライス。
 パラディンとモルトヴァンは、執務机からその後ろ姿を見送る。

パラディン
「何というか、晴れ晴れとしているな。……エリゴール中佐。彼に何を言ったんだい?」

 パラディン、自分から少し離れたところに立っているエリゴールを、にやにやしながら見やる。

エリゴール
「特には何も。自分はただ、退役届を書かせてここまで連れてきただけです」

パラディン
「まあ、そういうことにしておきたいならそうしておこう。三班長……いや、元三班長が、ちゃんと〝エスケープ〟を二本携帯していてよかったね」

エリゴール
「それは本当によかったです。アンドラスのときのような二度手間にならずに済みました」

パラディン
「だから、今回はちゃんと回収したじゃないか……」

エリゴール
「そうですね。……自分が口を挟まずに済んでよかったです」

モルトヴァン
(そうか。だからエリゴール中佐は帰らないでここに残っていたのか。……ムルムス中佐の件があるから、〝エスケープ〟にはものすごく気を遣っているな)

パラディン
「で、エリゴール中佐。私は十四時に班長たちを集めて、いったい何を話せばいいのかな?」

エリゴール
「そうですね。まずは合同演習の総括。次に〝留守番〟を変更する訓練についてお話しください」

パラディン
「総括ねえ……どうしても必要かい?」

エリゴール
「我々があの合同演習は無駄ではなかったと思うために必要です」

パラディン
「そうか。それではしないわけにはいかないな。でも、〝留守番〟の変更というのは? 三班と八班じゃ都合が悪くなったのかい?」

エリゴール
「いえ、三班は〝留守番〟のままで結構です。問題は八班。次の実戦には八班を出撃させて、四班を〝留守番〟にしたいのです」

パラディン
「四班……合同演習で何かミスを犯していたのかい?」

エリゴール
「一日目に『連合』役をしていた八班を見逃して砲撃しませんでした」

パラディン
「それは私も気づかなかった……」

エリゴール
「大佐殿はコールタン大佐隊を殲滅することに集中されていたようですから。八班は一度も砲撃をしなかったので、我々は命拾いをいたしました。もしあのとき自分が八班にいたら、迷うことなく背後から〈オートクレール〉を撃っています」

パラディン
「うん。四班は何としてでも〝留守番〟にしなくてはいけないね」

エリゴール
「しかし、あのときのミスだけでは〝留守番〟にするには弱すぎます。確実に四班を〝留守番〟に追いこめる訓練が必要なのです」

パラディン
「いや……君がそのミスを指摘すれば、四班自ら〝留守番〟を志願すると思うんだが……」

エリゴール
「駄目です。自分が納得できません」

パラディン
「そうか……君が納得できないか……それなら仕方ないね……」

モルトヴァン
(本人は絶対否定するだろうけど……基本的に真面目だよな、エリゴール中佐……)

パラディン
「でも、私には四班を確実に〝留守番〟にできる訓練なんて考えられないよ。エリゴール中佐、君はもう考えてあるのかい?」

エリゴール
「はい。あります」

 間髪を入れずに、小脇に抱えていたブリーフケースから書類を取り出すエリゴール。

エリゴール
「時間がなかったので手書きで申し訳ありませんが。……訓練計画書です」

パラディン
「そこに入っていたのは、退役届だけではなかったのか……」

 戦慄しながら書類を受け取り、目を通すパラディン。

パラディン
「……もしかして、これを考えたのは私ということにしておきたいのかな?」

エリゴール
「自分はただの平隊員ですので」

パラディン
「それ、今でも本気で言っているのかい?」

エリゴール
「それから、三班も訓練には参加させたいので、三班の新班長の任命を早急にお願いいたします」

パラディン
「新班長ねえ。……君は誰がいいと思っているんだい?」

エリゴール
「それは自分が考えることではありません。大佐殿が決めることです」

パラディン
「そう言われても、私は君よりもわからないよ。隊員のことは全部、君に丸投げしてるからね」

エリゴール
「改めて考えると、本当にひどいですね」

パラディン
「適材適所だよ。……三班は次回も〝留守番〟だから、まだ猶予はあるね? では、この訓練で誰が班長にふさわしいかもついでに見極めよう」

エリゴール
「ついでですか」

パラディン
「真の目的は四班を〝留守番〟にすることなんだろう? ……もし万が一、〝留守番〟にできなかったらどうするつもりだい?」

エリゴール
「〝留守番〟にできるまで、訓練を続けます」

パラディン
「それほど四班が許せないのかい? 〝元四班長〟なのに」

エリゴール
「だからこそ、余計に四班が許せません」

パラディン
「……なるほど。ものすごく納得したよ」

モルトヴァン
(エリゴール中佐……真面目だけど大人げない……)
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