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砲撃のパラディン大佐隊編(【05】の裏)

187【交換ついでに合同演習編92】合同演習一日目:どうにか

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【パラディン大佐隊・第一班第一号ブリッジ】

エリゴール
「〝無旋回〟を第二の撮影班にする?」

フィリップス
「いや、まだあくまで候補段階。今日、テストがわりに演習の撮影してもらって、それなりに撮れてたら、六班が撮れないときとかに撮ってもらおうかと」

エリゴール
「……十班のあの映像、やっぱり気に入らなかったのか」

フィリップス
「元四班長も実はそう思ってたのか! それなら何でコピーして配らせた!?」

エリゴール
「まあ、あれくらいなら許容範囲内かと。一応撮れてはいたし」

フィリップス
「〝最初から縦〟派の元四班長にとっては許容範囲内だったかもしれないが、〝移動しながら縦〟派の俺たちにとっては、もう二度とないかもしれない思い出の映像になるはずだったんだ! 十班にはすまないが、あれではもう二度と見返せない!」

エリゴール
「だから他に撮ってた班を探し出して、六班の他にもう一つ撮影班を作ろうなんて考えたのか。……撮ってたのは〝無旋回〟だけだったのか?」

フィリップス
「いや、他に七班と九班も撮ってたけど、僅差で〝無旋回〟に」

エリゴール
「その映像は、今ここで見られるか?」

フィリップス
「残念。待機室だ。でも、三班とも十班よりはましだった。各班の撮影技術レベルなんてわかりっこないけど、どうして十班に撮らせたんだ?」

エリゴール
「別にどこの班でもよかったんだが、十班はまだ〝飴ちゃん〟もらってなかったから、その分必死で撮るだろうと」

ハワード
「まあ、確かに一生懸命さは伝わってきたがな」

フィリップス
「でも、世の中には一生懸命だけでは許されないこともあるんだよ!」

エリゴール
「しかし、こだわるな。元祖・撮影班の六班は、別に何も言ってきてないだろ?」

フィリップス
「ああ。でも、あの映像を一目見て、きっと内心がっかりしたと思うぞ」

ハワード
「いや、逆にやっぱり自分たちがいちばんと優越感を抱いたかもしれない」

フィリップス
「そうか。その可能性のほうが高いか」

エリゴール
「……確かに、今日なら〝無旋回〟は『連合』役だから、撮影をする余裕はあるな。ただ、問題はいつまで続けられるかだが」

フィリップス
「そのとおりだ。依頼しといて何だけど、〝無旋回〟でも遠慮なく〝背面撃ち〟させてもらうぜ!」

ハワード
「おまえ……〝無旋回〟には厳しいのか甘いのかよくわからないな……」

フィリップス
「サンドイッチ作戦だけは、今でも買ってるけどな!」

エリゴール
「サンドイッチ作戦?」

フィリップス
「昨日、あんたの三班に〝側面撃ち〟された馬鹿作戦」

エリゴール
「ああ、あの〝ファイアー・ウォール〟縦置き二列の。……あれ、〝無旋回〟が考えたのか?」

フィリップス
「昨日の〝レフト〟であんなこと考える奴、他にいないだろ」

エリゴール
「確かにな。あれ見たとき、どういうつもりかわからなかったから、とりあえず〝壁〟の端から〝解体〟していくことにしたんだ」

フィリップス
「えっ! 〝解体撃ち〟!?」

エリゴール
「〝側面撃ち〟だ」

ハワード
「あ、そういえば。昨日、班長会議が終わった後、〝無旋回〟が〝解体撃ち〟じゃなくて〝囓り撃ち〟だって考え直してたぞ」

フィリップス
「おとっつぁん、また余計なことを」

エリゴール
「〝囓り撃ち〟?」

ハワード
「あれは〝半身〟が〝ロールケーキ〟を囓ってるんだそうだ」

エリゴール
「……採用はしないが、〝飴ちゃん〟一個やってもいいな」

フィリップス
「やっぱり元四班長のツボはわからない!」

エリゴール
「フィリップス副長には、あのサンドイッチ作戦とやらがツボだったのか?」

フィリップス
「ああ、激ツボ。何しろ〝ファイアー・ウォール〟が〝縦走り〟して追っかけてくるんだぜ。あんたから敢闘賞か何とか賞で〝飴ちゃん〟もらえるんじゃないかと期待してたんだけどな」

エリゴール
「まあ、面白いことは面白いけどな。あえてやるなら技能賞」

フィリップス
「技能賞?」

エリゴール
「〝魚〟の速度に合わせて〝ファイアー・ウォール〟を〝縦走り〟させた。なかなかできることじゃない」

フィリップス
「何だ、〝ファイアー・ウォール〟が追っかけてくるところは評価してくれないのか。俺にはそこがツボだったのに」

エリゴール
「うーん。やっぱり〝半身〟は〝炙り撃ち〟していくのがいちばん効率いいからな。サンドイッチは左右に逃げられない手段として使って、後ろから〝炙り撃ち〟」

フィリップス
「さすが元四班長……あくまで効率を追求するか」

ハワード
「同時に恐怖も追求しているような気がするな」

エリゴール
「……そんなにあのサンドイッチ作戦を気に入ったのか?」

フィリップス
「ああ。改良してどうにか使えるようにしたいんだけど、おとっつぁんには馬鹿馬鹿しすぎて実戦では使えないって、それこそ馬鹿にされてる」

エリゴール
「俺も一班長と同意見だ」

ハワード
「元四班長……心強い!」

フィリップス
「くそー! そう言われると、かえってどうにかしたい!」

エリゴール
「……〝無旋回〟の考える作戦は、実効性はともかく、人を虜にする魔力はあるな」

ハワード
「元四班長……どうにかできるものならどうにかしてやってくれないか。三班はどうにかできただろう」

エリゴール
「班と作戦は別物だろ。あと、三班はまだ〝どうにか〟できてない」

フィリップス
「え、でも〝移動しながら縦〟までできるようにしただろ」

エリゴール
「それだけは〝どうにか〟な。根本的な問題はまだ解決できてない」

フィリップス
「そういや、三班長はあんたの三分類のうちのどれだったんだ? おとっつぁんと同じ〝代表者〟?」

エリゴール
「分類以前だ。……あそこに〝班長〟はいなかった」

ハワード・フィリップス
「え?」

エリゴール
「ただ、〝班長〟という名の〝伝達係〟がいただけだ」

フィリップス
「……きっついなあ」

エリゴール
「三班長自身、自分が〝班長〟であることに疑問を持っていた。きっと、アルスター大佐の指揮下だったらそれでも勤まったんだろうがな。パラディン大佐は〝変化〟を求めてる。おそらくは三班の班員たちも。〝伝達係〟の三班長では、その要求に応えることができなかった。……今日・明日の演習だけは班長としてやりぬけと言ったが、その後のことはわからない。まあ、心の準備だけはしといてくれ」

ハワード
「……三班長はもう〝どうにか〟できないのか?」

エリゴール
「俺は〝人切り〟だからな。平時ならともかく、今の状況で三班長を〝どうにか〟しようとするのは時間の無駄としか思えない。そんな時間があったら、さっさと班長をすげかえて、一から班を立て直したほうがいい」

フィリップス
「班長すげかえるって……いったい誰に?」

エリゴール
「それはパラディン大佐に任命してもらって……」

フィリップス
「ってことは、元四班長が決めるってことだろ。……まさか、元四班長が今度は〝ずっと三班長〟に!?」

エリゴール
「それは絶対ない。まあ、班員が異常に素直で、どんな嘘ついても真に受けてくれて、面白かったことは面白かったけどな」

フィリップス
「昨日、そんなことしてたのか……」

ハワード
「キング・オブ・ダークネス……」
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