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砲撃のパラディン大佐隊編(【05】の裏)

166【交換ついでに合同演習編71】訓練二日目:新技誕生

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【パラディン大佐隊・第六班第一号ブリッジ】

六班長・ラムレイ
「前半と同じく六班横一列! 〝レフト〟には学習能力がないのか!?」

クルーA
「どうしても一斉突破したいみたいですね。こっちは両翼を横にしましたから、向こうにとってはやりやすくなりました」

ラムレイ
「同時にこっちもやりやすくなった。向こうは外側と各班の間を必ず通る。それを狙って撃ちもらしたら、非常に不本意だが、護衛隊形縦にして〝卑怯撃ち〟だ」

クルーA
「あの〝横縦ぐるり〟を考えた人が〝卑怯撃ち〟も考えたなんて……!」

副長
「現実は非情だ」

ラムレイ
「……中央は八班か。班の並びはかなり変えてるな」

クルーA
「〝先生〟を〝卑怯撃ち〟したという十二班は左端です。おそらく、三班の外側を通るつもりではないかと」

ラムレイ
「前言撤回。〝レフト〟、多少は学習したな」

クルーA
「でも正直、今日の三班は、どこの班の手にも余ると思いますが」

ラムレイ
「それでも、三班には〝護衛隊〟をぶつけておくのがいちばん無難だ。前半でも後半でも〝レフト〟で生き残っていたのは十二班だけだ」

クルーA
「うちは前半も後半も全滅しましたね……」

ラムレイ
「俺は後半の全滅だけは誇りに思っている!」

副長
「確かに!」

クルーA
「でも……〝先生〟、何も言ってくれませんでしたね……」

ラムレイ
「いいんだ! それが〝先生〟だから!」

クルーB
「見返りを求めなくなったのか、諦めたのか」

副長
「たぶん、諦めた……」

 ***

【パラディン大佐隊・第一班第一号ブリッジ】

フィリップス
「十二班長、大正解だ! 心おきなく〝今日だけ三班長〟と戦ってくれ!」

十二班長・ザボエス
『おいおい……あれじゃ戦いようがねえだろ。的になりにいくようなもんだ』

フィリップス
「それなら、せめて三班の班長艦だけでも道連れにしていけ。三班は〝今日だけ三班長〟さえいなくなれば、以前の三班に戻る」

十二班長・ザボエス
『まあ、確かにな。向こうもそれわかってるから、絶対班長艦だけは落とさせねえ。……うちは突破は諦めて、三班の〝元四班長撃ち〟を狙ったほうがにいいかもしれねえな』

フィリップス
「なるほど、それもありだな。問題は中央の六班か。一班だけだから、両脇に艦首を向けて、心おきなく撃ちまくれる」

五班長・ロング
『何か、十二班より、俺たちのほうが危険じゃないか?』

フィリップス
「だから〝無旋回〟に〝盾〟になってもらって、その隙に六班を突破しよう。……〝無旋回〟。おまえのとこだけは〝最初から縦〟状態だ。十二班みたいに〝海蛇〟になって避けるなよ?」

八班長・ブロック
『はあ……?』

 ***

【パラディン大佐隊・第三班第一号ブリッジ】

副長補佐
「団体で向かってこられると、〝魚〟というより、まるで戦車のような……」

エリゴール
「確かに、前から見ると横一列は迫力あるな。でもまあ、一応一斉掃射しろ。〝魚〟の〝頭〟を狙って」

クルーたち
「了解!」

クルーA
「班長! 十二班が急旋回してうちの真横に……!」

エリゴール
「俺はまた余計なことを教えちまったかな。……全艦急速前進! 左に旋回しながら十二班を横から撃て!」

クルーたち
「了解!」

エリゴール
「まずは〝頭〟だ! 〝頭〟を潰せ! 十二班の〝頭〟は〝レフト〟の〝頭〟の一つでもある! ここで十二班を全滅させておけば後が楽だ!」

 ***

【パラディン大佐隊・第一班第一号ブリッジ】

十二班長・ザボエス
『一班! 面目ねえ!』

ハワード
「十二班長! どうした!?」

十二班長・ザボエス
『三班を〝元四班長撃ち〟しようとして、こっちが〝新・元四班長撃ち〟された! 情けねえことに全滅だ!』

フィリップス
「〝新・元四班長撃ち〟? 何じゃそりゃ?」

十二班長・ザボエス
『護衛隊形で旋回して、うちを横から撃った! あまりの速さに呆然として逃げそこねた!』

フィリップス
「何で三班にそんな真似が!?」

十二班長・ザボエス
『〝開き〟の応用だ! あれは副班長隊が急旋回する! 今の三班は今までの三班とは別人……いや別班だ!』

フィリップス
「さすが元四班長! ここに来てまた新たな技を!」

ハワード
「ただ、その技名……何とかならないか?」

フィリップス
「〝開脚屈伸〟のおとっつぁんに他人がつけた技名をとやかく言える資格はない! が、俺もそう思う! とりあえず十二班長! あんたにはこの一言を! ……この役立たずがっ!」

十二班長・ザボエス
『……それが聞けるなら、全滅されるのも悪くねえなあ……』

フィリップス
「どうしよう、おとっつぁん! 罵れば罵るほど逆効果に!」

ハワード
「たぶん、それも〝護衛隊〟魂……」
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