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砲撃のパラディン大佐隊編(【05】の裏)
89【合流編08】執務室での攻防
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【パラディン大佐隊・執務室】
パラディン
「いやー、今回も本当に助かったよ、エリゴール中佐。正直、砲撃になったらこれほど事務仕事が増えるなんて、想像もしていなかったんだ……」
モルトヴァン
「護衛は動きが少ないから、事務仕事も少なくて済んでいたんですね……」
エリゴール
「……それなら、今からでも訓練を中止しますか?」
パラディン
「え! 嫌だよ! 訓練したくて今必死で事務仕事してるのに!」
エリゴール
「そうですか。ところで大佐殿。明日の訓練だけでなく、三日後の出撃でも、自分は一班の班長艦に乗艦いたします」
パラディン
「え! どうして!?」
エリゴール
「……自分の今の所属は一班なので」
パラディン
「それはそうだけど、出撃のとき以外は私の軍艦に乗ってくれるって言ってたじゃないか!」
エリゴール
「自分が大佐殿の軍艦にいては、一班長の補佐ができませんので」
パラディン
「くっ! 反論の余地がまったくない!」
モルトヴァン
「大佐……さすがにそれは一班長が可哀相です……」
パラディン
「じゃあ、明日は一班でいいから、出撃のときはやっぱり私の軍艦に乗って!」
エリゴール
「理由は?」
モルトヴァン
(うっ! またあの虫けらを見るような目だ! 俺だったら耐えられない!)
パラディン
「うう……やっぱり嫌なんだよう。戦闘中でも君の意見を聞きたいんだよう」
エリゴール
「戦闘中は自分ではなく、専門の方々の意見を聞いてください」
パラディン
「うちにいるのは護衛専門ばっかりだよう」
エリゴール
「……言われてみれば」
パラディン
「せめて砲撃担当でいる間は、出撃のときだけでも私の軍艦に乗っておくれよう」
エリゴール
「……ああ、レラージュに〝やっぱり〟と嘲笑される……」
パラディン
「レラージュ副長?」
エリゴール
「了解いたしました。大佐殿がそこまでおっしゃるなら、出撃時には大佐殿の軍艦に乗艦させていただきます」
パラディン
「エリゴール中佐!」
エリゴール
「そのかわり、お願いが一つあるのですが、よろしいでしょうか?」
パラディン
「……それを受け入れないと、私の軍艦には乗ってもらえないんだよね……?」
エリゴール
「無論です」
パラディン
「一瞬の迷いもためらいもなかったね。……何だろうか?」
エリゴール
「最後に一度だけ、十一班・十二班限定の差し入れをお願いいたします。そして、そのときにはレラージュ副長の要望を叶えてやってください」
パラディン
「ああ、そういえば、あれからそのままになってしまっていたね。それならたやすいことだけど、本当に十一班と十二班だけでいいのかい? また十二班全部に差し入れしてもいいんだよ?」
エリゴール
「いえ、結構です。……で、どうされますか?」
パラディン
「どうされるかって……〝わかった〟って答えるしかないじゃないか……」
エリゴール
「別に断ってくださってもかまいませんが」
パラディン
「そうしたら君、私の軍艦には乗ってくれないんだろう?」
エリゴール
「当然です」
パラディン
「なぜそこまで躊躇なく言いきれるんだ……」
エリゴール
「自分の態度がご不満なら、いつでも除隊の手続きを」
パラディン
「わああ、最終カード切ってきたあああ!」
エリゴール
「で、結論は?」
パラディン
「……明日、十一班と十二班にだけ差し入れをします。以後は二度といたしません。そのかわり、出撃時には私の軍艦に乗ってください。お願いします」
エリゴール
「……自分が言うのも何ですが、上官命令で強制的に自分を乗艦させることもできると思うのですが」
パラディン
「そうしたら君、乗艦中は一言も私と口をきかないつもりだろう?」
エリゴール
「〝はい〟と〝いいえ〟くらいは言いますよ。ああ、あと〝申し訳ありません〟と〝ありがとうございます〟」
パラディン
「骨董品のロボットだってもっとしゃべるよ……」
エリゴール
「それでは、そういうことで。……もし約束を破られたら、以後、沈黙で応答します」
パラディン
「……はい。わかりました」
パラディン
「今度こそ! 今度こそ本当に駄目かと思った……!」
モルトヴァン
「よかったですね……と言いたいところですが、さすがにあそこまでしてエリゴール中佐に〈オートクレール〉に乗ってもらいたいのかと引かざるを得ません……」
パラディン
「あそこまでして乗ってもらいたいんだよ!」
モルトヴァン
「もう恥も外聞もかなぐり捨てましたね」
パラディン
「エリゴール中佐には〝除隊〟という切り札がある。〝きれいな辞め方〟にさえこだわらなければ、いつでもこの艦隊から出ていけるんだ」
モルトヴァン
「でも、エリゴール中佐は、大佐が護衛担当に戻ってから退役したいと考えていたのでは?」
パラディン
「確かにそうだったが、十一班があんなに強くなってしまったから、もう自分が退役しても大丈夫かもしれないと思いはじめている……!」
モルトヴァン
「え!」
パラディン
「でも、元ウェーバー大佐隊のほうが不安だらけなので、かろうじて留まってくれている。かろうじて!」
モルトヴァン
「そこまでわかっているなら、エリゴール中佐の希望どおり、出撃時にも一班の軍艦に乗せてあげればいいじゃないですか。彼の言っていることのほうが、どう考えても筋が通っていますよ」
パラディン
「嫌だ! 私が寂しい!」
モルトヴァン
「全然筋が通っていない!」
パラディン
「退役することしか考えていない人間を引き留めつづけるのは本当に難しい……元ウェーバー大佐隊には、私が〝栄転〟にならない程度に、ほどほどに頑張ってもらいたい」
モルトヴァン
「何て身勝手な……元ウェーバー大佐隊が気の毒すぎる……」
パラディン
「しかし、十一班・十二班限定の差し入れということは、また〝お礼〟がもらえるかな? 最後の〝お礼〟は何だろう……」
モルトヴァン
「あの〝お礼〟のことを知っていたら、エリゴール中佐はレラージュ副長の要望を叶えてやろうとは決して思わなかったでしょうね……」
パラディン
「いやー、今回も本当に助かったよ、エリゴール中佐。正直、砲撃になったらこれほど事務仕事が増えるなんて、想像もしていなかったんだ……」
モルトヴァン
「護衛は動きが少ないから、事務仕事も少なくて済んでいたんですね……」
エリゴール
「……それなら、今からでも訓練を中止しますか?」
パラディン
「え! 嫌だよ! 訓練したくて今必死で事務仕事してるのに!」
エリゴール
「そうですか。ところで大佐殿。明日の訓練だけでなく、三日後の出撃でも、自分は一班の班長艦に乗艦いたします」
パラディン
「え! どうして!?」
エリゴール
「……自分の今の所属は一班なので」
パラディン
「それはそうだけど、出撃のとき以外は私の軍艦に乗ってくれるって言ってたじゃないか!」
エリゴール
「自分が大佐殿の軍艦にいては、一班長の補佐ができませんので」
パラディン
「くっ! 反論の余地がまったくない!」
モルトヴァン
「大佐……さすがにそれは一班長が可哀相です……」
パラディン
「じゃあ、明日は一班でいいから、出撃のときはやっぱり私の軍艦に乗って!」
エリゴール
「理由は?」
モルトヴァン
(うっ! またあの虫けらを見るような目だ! 俺だったら耐えられない!)
パラディン
「うう……やっぱり嫌なんだよう。戦闘中でも君の意見を聞きたいんだよう」
エリゴール
「戦闘中は自分ではなく、専門の方々の意見を聞いてください」
パラディン
「うちにいるのは護衛専門ばっかりだよう」
エリゴール
「……言われてみれば」
パラディン
「せめて砲撃担当でいる間は、出撃のときだけでも私の軍艦に乗っておくれよう」
エリゴール
「……ああ、レラージュに〝やっぱり〟と嘲笑される……」
パラディン
「レラージュ副長?」
エリゴール
「了解いたしました。大佐殿がそこまでおっしゃるなら、出撃時には大佐殿の軍艦に乗艦させていただきます」
パラディン
「エリゴール中佐!」
エリゴール
「そのかわり、お願いが一つあるのですが、よろしいでしょうか?」
パラディン
「……それを受け入れないと、私の軍艦には乗ってもらえないんだよね……?」
エリゴール
「無論です」
パラディン
「一瞬の迷いもためらいもなかったね。……何だろうか?」
エリゴール
「最後に一度だけ、十一班・十二班限定の差し入れをお願いいたします。そして、そのときにはレラージュ副長の要望を叶えてやってください」
パラディン
「ああ、そういえば、あれからそのままになってしまっていたね。それならたやすいことだけど、本当に十一班と十二班だけでいいのかい? また十二班全部に差し入れしてもいいんだよ?」
エリゴール
「いえ、結構です。……で、どうされますか?」
パラディン
「どうされるかって……〝わかった〟って答えるしかないじゃないか……」
エリゴール
「別に断ってくださってもかまいませんが」
パラディン
「そうしたら君、私の軍艦には乗ってくれないんだろう?」
エリゴール
「当然です」
パラディン
「なぜそこまで躊躇なく言いきれるんだ……」
エリゴール
「自分の態度がご不満なら、いつでも除隊の手続きを」
パラディン
「わああ、最終カード切ってきたあああ!」
エリゴール
「で、結論は?」
パラディン
「……明日、十一班と十二班にだけ差し入れをします。以後は二度といたしません。そのかわり、出撃時には私の軍艦に乗ってください。お願いします」
エリゴール
「……自分が言うのも何ですが、上官命令で強制的に自分を乗艦させることもできると思うのですが」
パラディン
「そうしたら君、乗艦中は一言も私と口をきかないつもりだろう?」
エリゴール
「〝はい〟と〝いいえ〟くらいは言いますよ。ああ、あと〝申し訳ありません〟と〝ありがとうございます〟」
パラディン
「骨董品のロボットだってもっとしゃべるよ……」
エリゴール
「それでは、そういうことで。……もし約束を破られたら、以後、沈黙で応答します」
パラディン
「……はい。わかりました」
パラディン
「今度こそ! 今度こそ本当に駄目かと思った……!」
モルトヴァン
「よかったですね……と言いたいところですが、さすがにあそこまでしてエリゴール中佐に〈オートクレール〉に乗ってもらいたいのかと引かざるを得ません……」
パラディン
「あそこまでして乗ってもらいたいんだよ!」
モルトヴァン
「もう恥も外聞もかなぐり捨てましたね」
パラディン
「エリゴール中佐には〝除隊〟という切り札がある。〝きれいな辞め方〟にさえこだわらなければ、いつでもこの艦隊から出ていけるんだ」
モルトヴァン
「でも、エリゴール中佐は、大佐が護衛担当に戻ってから退役したいと考えていたのでは?」
パラディン
「確かにそうだったが、十一班があんなに強くなってしまったから、もう自分が退役しても大丈夫かもしれないと思いはじめている……!」
モルトヴァン
「え!」
パラディン
「でも、元ウェーバー大佐隊のほうが不安だらけなので、かろうじて留まってくれている。かろうじて!」
モルトヴァン
「そこまでわかっているなら、エリゴール中佐の希望どおり、出撃時にも一班の軍艦に乗せてあげればいいじゃないですか。彼の言っていることのほうが、どう考えても筋が通っていますよ」
パラディン
「嫌だ! 私が寂しい!」
モルトヴァン
「全然筋が通っていない!」
パラディン
「退役することしか考えていない人間を引き留めつづけるのは本当に難しい……元ウェーバー大佐隊には、私が〝栄転〟にならない程度に、ほどほどに頑張ってもらいたい」
モルトヴァン
「何て身勝手な……元ウェーバー大佐隊が気の毒すぎる……」
パラディン
「しかし、十一班・十二班限定の差し入れということは、また〝お礼〟がもらえるかな? 最後の〝お礼〟は何だろう……」
モルトヴァン
「あの〝お礼〟のことを知っていたら、エリゴール中佐はレラージュ副長の要望を叶えてやろうとは決して思わなかったでしょうね……」
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