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砲撃のパラディン大佐隊編(【05】の裏)
46【悪魔の居場所編11】パラディン大佐争奪戦・決着
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【パラディン大佐隊・旗艦〈オートクレール〉ブリッジ】
パラディン
「……三十分経過した。おめでとう、エリゴール中佐。君たちの勝利だ」
エリゴール
「それは十一班長に言ってやってください。実際に一班と戦って勝ったのは彼の班です」
パラディン
「えーと……副長には言わなくてもいいのかい?」
エリゴール
「十一班長の勝利は、副長の勝利でもありますので」
パラディン
「うんうん、そうだよね、そういうものだよね。……うらやましい」
エリゴール
「……でも、その前に一班長に通信を入れたほうがいいのでは?」
パラディン
「傷心の一班長にさらに追い打ちをかけるのかい? 君も容赦ないね」
エリゴール
「いえ、そうではなく。十一班の勝利確定の宣言と、今後の予定の概略と、一班長への慰めを少々」
パラディン
「今後の予定?」
エリゴール
「次の出撃で、どこに十一班を配置して、どの班に〝留守番〟をさせるおつもりですか?」
パラディン
「そうか。その問題があったね」
エリゴール
「まだ考え中ですか?」
パラディン
「そうだねえ。〝留守番〟させるのは三班で確定してるんだけどね」
エリゴール
「大佐殿も容赦ないですね」
パラディン
「配置は帰ったら検討するよ。まずは君の言うとおり、一班長に通信を入れようか。……今は入れないほうがいいような気もするけどねえ」
***
【パラディン大佐隊・第一班第一号ブリッジ】
通信士
「班長……〈オートクレール〉から映像通信が入っています……」
ハワード
「……今は出たくないという俺の気持ち、みんな、わかってくれるよな?」
フィリップス
「ああ、痛いほどよくわかるが仕方がない。……出ろ」
ハワード
「ほんとに班長なんてなるもんじゃないな……いいよ、つなげよ、こんちくしょう!」
クルーA
「班長が切れた……」
クルーB
「ウェーバーやアルスターの理不尽な仕打ちにも耐えつづけた班長が……」
通信士
「班長、すみません! ……ぽちっとな」
パラディン
『一班長、お疲れ様。……よく頑張った』
ハワード
「……いくら頑張っても、勝てなければ無意味です……」
パラディン
『うん、そのとおりだ。さすがに君はよくわかっているね。では、次の実戦には十一班を出撃させるよ。異存はないね?』
ハワード
「……はい。まったく微塵もありません……」
パラディン
『まあ、そう落ちこまないで。これが現実というものだよ。非情だね』
ハワード
「……ええ、そうですね……」
フィリップス
「笑顔でそう言う大佐も非情だ……」
パラディン
『明日また招集して発表するが、十一班のかわりに三班を〝留守番〟させようと考えている。理由の説明は必要かい?』
ハワード
「いえ……あえてご説明いただかなくとも、三班も納得すると思います……」
パラディン
『そうか。それならいいんだけど。私もちょっと言いづらいからね』
フィリップス
「うちの班長には笑顔で言えるのにな……」
パラディン
『とにかく、これで本当に訓練は終了だ。基地に帰って解散しよう。……お疲れ様』
***
フィリップス
「……〝よく頑張った〟」
ハワード
「おまえまで言うな……」
***
【パラディン大佐隊・第十一班第一号ブリッジ】
通信士
「班長! また〈オートクレール〉から映像通信が入ってます!」
ロノウェ
「ああ? またエリゴールか? ちゃんと勝ったのに、今度は何だ……」
レラージュ
「待ってください! 今度は元四班長ではなく、大佐の可能性があります!」
ロノウェ
「ええ? 何でだ?」
レラージュ
「元四班長の性格からして、基地に帰ればいくらでも話せることを、わざわざ〈オートクレール〉の通信機器を借りてまでするとは考えられません。おそらく、元四班長に〝おめでとう〟と言って、元四班長に〝それは直接十一班長に言ってください〟とでも言われたのでは?」
ロノウェ
「何ィ? ……き、緊張するじゃねえか……」
レラージュ
「敬礼して、〝はい〟と〝ありがとうございます〟を繰り返していれば大丈夫です」
ロノウェ
「そ、そうかあ?」
通信士
「……もうつないでもいいですか?」
ロノウェ
「お、おう……よし、いいぞ」
パラディン
『十一班長、お疲れ様。すごかったね。感心して見ていたよ』
ロノウェ
「は……ありがとうございます」
パラディン
『エリゴール中佐が言っていたとおり、次の実戦には君たち十一班を出撃させる。〝おめでとう〟……と言うのは不適切かな。私としては〝ありがとう〟と言わせてもらいたい。実戦でも私の軍艦をよろしく頼むよ。ただし、今度から軍艦で庇わないように。実戦では洒落にならないよ?』
ロノウェ
「はい……」
パラディン
『ところで、君の副長は今近くにいる?』
ロノウェ
「は? いますが……何か?」
パラディン
『いや、ちょっと話をしてみたいんだけど』
ロノウェ
「はあ……おい、レラージュ。大佐殿が話があるって」
レラージュ
「え……あ、はい……」
パラディン
『……ああ、君か。隊員名簿はざっと見たが、名前は覚えていなかった。申し訳ない』
レラージュ
「いえ、とんでもございません。改めまして、自分はレラージュと申します。縁あって、この艦の副長を務めさせていただいております」
パラディン
『縁かあ……いい言葉だね』
レラージュ
「え?」
パラディン
『さっきのあの隊形は、君が考案したのかい?』
レラージュ
「いえ、自分一人では……班長が中心となって決定いたしました」
パラディン
『うっ……あくまで班長を立てるんだね……感動だ……!』
レラージュ
「は?」
パラディン
『これからも、十一班長を支えつづけてあげてね。応援しているよ』
レラージュ
「はあ……?」
パラディン
『それでは、基地に帰ろう。……今日は本当にお疲れ様』
***
ロノウェ
「一応……今のは大佐に褒められたことになるのか?」
レラージュ
「そうなると思いますが……どうして俺が考えたと……元四班長が言ったのかな」
ロノウェ
「まあ、それしか考えられねえな。大佐がおまえの趣味、知ってたとは思えねえし」
レラージュ
「どうしてバラすんだ……」
ロノウェ
「隠すこともねえだろ。現におまえが考えてんだから」
レラージュ
「〝支えつづけてあげてね〟って言ってたから異動させる気はないんだろうが……〝応援しているよ〟っていったい何を……」
ロノウェ
「まあとにかく、大佐が言ってたとおり、早く基地に帰ろうぜ。さすがに最後のはうちの奴らも疲れただろ」
レラージュ
「……軍艦で庇ったの、注意された……」
ロノウェ
「いや、あの場合は仕方なかっただろ。訓練だからああした……」
レラージュ
「第七号……次はないと思え」
ロノウェ
「レラージュ……」
***
クルーA
「副長が副長らしいことをした……」
クルーB
「え……俺は副長っていうより、別なものを想像したが……」
クルーA
「頼むから、それは絶対言葉にはしないでくれ」
クルーC
「大佐、何でレラージュ出させたんだろうな。隊形考案者の顔が見たかったのかな?」
クルーB
「きっとそうなんだろ。レラージュが素直に自分が考案して班員も動かしましたって言えば、レラージュのことも褒めるつもりだったんじゃないのか?」
クルーA
「言うわけねえよなあ……外見以外で目立つの、〝大嫌ぇ〟だもん」
クルーB
「大佐も……何か……わかってなかったか?」
クルーC
「……ついに、大佐まで〝公認〟?」
クルーA
「いやあああ! やめてえええ!」
クルーB
「あの大佐だからな。そりゃ〝応援〟するよな」
クルーC
「……どうやって?」
クルーB
「さあ……とりあえず、レラージュは副長のままでいられるんだろうな。希望どおり」
ゲアプ
(今日はネタが多すぎて、日誌に書ききれないかもしれない……)
***
【パラディン大佐隊・旗艦〈オートクレール〉ブリッジ】
エリゴール
「一班長にはもう少し、言いようというものがなかったんですか」
パラディン
「私なりに、少しは慰めたつもりでいるよ」
エリゴール
「あくまで〝つもり〟ですね」
パラディン
「それより、十一班長の副長。あまりにも若くて驚いたよ。以前、元マクスウェル大佐隊が私の指揮下に入ったときにも、直接会っていたのは班長・副班長までだったからね」
エリゴール
「そうですね。普通は副長が大佐に直接お会いすることはありませんね。班内の人事異動は班長裁量ですし」
パラディン
「君たち、たった二班しかいないのに、元ウェーバー大佐隊に分けてあげたいほど人材豊富だよね」
エリゴール
「たった二班しかいないからわかりやすいんですよ。元ウェーバー大佐隊の中にも必ずいると思います。彼らはウェーバー大佐殿の命令に従わず、生き残った隊員たちですから」
パラディン
「そういえばそうだった。……あのとき、マクスウェル大佐は君たちに同じ命令をしたのかい?」
エリゴール
「しましたが、七班長……当時はヴァラク中佐が止めました。これでもうあの男は〝栄転〟になる。そんな命令に従って無駄死にする必要はないと」
パラディン
「そこがウェーバー大佐隊との決定的な違いだったね」
エリゴール
「そうですね。たった一人の人間がいたかいなかったかで、ここまで違ってしまいました」
パラディン
「本当にね……たった一人の人間が、いつまでもいつまでも一人の人間の心を縛りつづける……」
エリゴール
「は?」
***
副長
「勝ってしまいましたね……」
モルトヴァン
「エリゴール中佐……たいへん申し訳ありません……許してください……」
副長
「うちに転属されてきた元マクスウェル大佐隊員というのは、いわゆる〝落ちこぼれ〟だったんでしょう? どうしてあんなに高度なことができるんですか?」
モルトヴァン
「それは私のほうが訊きたいです。殿下の命令で約三八〇人を抱えこむことになったときには、さすがの大佐も途方に暮れていましたからね……」
副長
「やはり、エリゴール中佐ですか?」
モルトヴァン
「やはり、エリゴール中佐ですね。ただし、なぜか本人には、自分が元マクスウェル大佐隊員たちを統括しているという自覚はあまりないようですが」
副長
「大佐じゃありませんが……不思議ですね」
モルトヴァン
「はい。退役を念頭に置いているせいかもしれませんが、彼は隊員たちを〝指揮〟するというより〝指導〟しているような気がします」
副長
「では、今度の〝生徒〟は元ウェーバー大佐隊ですかね」
モルトヴァン
「ああ……そうかもしれません。でも、あちらはそう簡単には〝指導〟できなそうですね」
副長
「よその学校でさんざん躾けられてきた〝生徒〟ですからね。おまけに、それなりにプライドもある」
モルトヴァン
「……エリゴール中佐がどうするのか楽しみ……と言ったら罰が当たりますかね」
副長
「では、私も一緒に当たりましょう。……楽しみです」
パラディン
「……三十分経過した。おめでとう、エリゴール中佐。君たちの勝利だ」
エリゴール
「それは十一班長に言ってやってください。実際に一班と戦って勝ったのは彼の班です」
パラディン
「えーと……副長には言わなくてもいいのかい?」
エリゴール
「十一班長の勝利は、副長の勝利でもありますので」
パラディン
「うんうん、そうだよね、そういうものだよね。……うらやましい」
エリゴール
「……でも、その前に一班長に通信を入れたほうがいいのでは?」
パラディン
「傷心の一班長にさらに追い打ちをかけるのかい? 君も容赦ないね」
エリゴール
「いえ、そうではなく。十一班の勝利確定の宣言と、今後の予定の概略と、一班長への慰めを少々」
パラディン
「今後の予定?」
エリゴール
「次の出撃で、どこに十一班を配置して、どの班に〝留守番〟をさせるおつもりですか?」
パラディン
「そうか。その問題があったね」
エリゴール
「まだ考え中ですか?」
パラディン
「そうだねえ。〝留守番〟させるのは三班で確定してるんだけどね」
エリゴール
「大佐殿も容赦ないですね」
パラディン
「配置は帰ったら検討するよ。まずは君の言うとおり、一班長に通信を入れようか。……今は入れないほうがいいような気もするけどねえ」
***
【パラディン大佐隊・第一班第一号ブリッジ】
通信士
「班長……〈オートクレール〉から映像通信が入っています……」
ハワード
「……今は出たくないという俺の気持ち、みんな、わかってくれるよな?」
フィリップス
「ああ、痛いほどよくわかるが仕方がない。……出ろ」
ハワード
「ほんとに班長なんてなるもんじゃないな……いいよ、つなげよ、こんちくしょう!」
クルーA
「班長が切れた……」
クルーB
「ウェーバーやアルスターの理不尽な仕打ちにも耐えつづけた班長が……」
通信士
「班長、すみません! ……ぽちっとな」
パラディン
『一班長、お疲れ様。……よく頑張った』
ハワード
「……いくら頑張っても、勝てなければ無意味です……」
パラディン
『うん、そのとおりだ。さすがに君はよくわかっているね。では、次の実戦には十一班を出撃させるよ。異存はないね?』
ハワード
「……はい。まったく微塵もありません……」
パラディン
『まあ、そう落ちこまないで。これが現実というものだよ。非情だね』
ハワード
「……ええ、そうですね……」
フィリップス
「笑顔でそう言う大佐も非情だ……」
パラディン
『明日また招集して発表するが、十一班のかわりに三班を〝留守番〟させようと考えている。理由の説明は必要かい?』
ハワード
「いえ……あえてご説明いただかなくとも、三班も納得すると思います……」
パラディン
『そうか。それならいいんだけど。私もちょっと言いづらいからね』
フィリップス
「うちの班長には笑顔で言えるのにな……」
パラディン
『とにかく、これで本当に訓練は終了だ。基地に帰って解散しよう。……お疲れ様』
***
フィリップス
「……〝よく頑張った〟」
ハワード
「おまえまで言うな……」
***
【パラディン大佐隊・第十一班第一号ブリッジ】
通信士
「班長! また〈オートクレール〉から映像通信が入ってます!」
ロノウェ
「ああ? またエリゴールか? ちゃんと勝ったのに、今度は何だ……」
レラージュ
「待ってください! 今度は元四班長ではなく、大佐の可能性があります!」
ロノウェ
「ええ? 何でだ?」
レラージュ
「元四班長の性格からして、基地に帰ればいくらでも話せることを、わざわざ〈オートクレール〉の通信機器を借りてまでするとは考えられません。おそらく、元四班長に〝おめでとう〟と言って、元四班長に〝それは直接十一班長に言ってください〟とでも言われたのでは?」
ロノウェ
「何ィ? ……き、緊張するじゃねえか……」
レラージュ
「敬礼して、〝はい〟と〝ありがとうございます〟を繰り返していれば大丈夫です」
ロノウェ
「そ、そうかあ?」
通信士
「……もうつないでもいいですか?」
ロノウェ
「お、おう……よし、いいぞ」
パラディン
『十一班長、お疲れ様。すごかったね。感心して見ていたよ』
ロノウェ
「は……ありがとうございます」
パラディン
『エリゴール中佐が言っていたとおり、次の実戦には君たち十一班を出撃させる。〝おめでとう〟……と言うのは不適切かな。私としては〝ありがとう〟と言わせてもらいたい。実戦でも私の軍艦をよろしく頼むよ。ただし、今度から軍艦で庇わないように。実戦では洒落にならないよ?』
ロノウェ
「はい……」
パラディン
『ところで、君の副長は今近くにいる?』
ロノウェ
「は? いますが……何か?」
パラディン
『いや、ちょっと話をしてみたいんだけど』
ロノウェ
「はあ……おい、レラージュ。大佐殿が話があるって」
レラージュ
「え……あ、はい……」
パラディン
『……ああ、君か。隊員名簿はざっと見たが、名前は覚えていなかった。申し訳ない』
レラージュ
「いえ、とんでもございません。改めまして、自分はレラージュと申します。縁あって、この艦の副長を務めさせていただいております」
パラディン
『縁かあ……いい言葉だね』
レラージュ
「え?」
パラディン
『さっきのあの隊形は、君が考案したのかい?』
レラージュ
「いえ、自分一人では……班長が中心となって決定いたしました」
パラディン
『うっ……あくまで班長を立てるんだね……感動だ……!』
レラージュ
「は?」
パラディン
『これからも、十一班長を支えつづけてあげてね。応援しているよ』
レラージュ
「はあ……?」
パラディン
『それでは、基地に帰ろう。……今日は本当にお疲れ様』
***
ロノウェ
「一応……今のは大佐に褒められたことになるのか?」
レラージュ
「そうなると思いますが……どうして俺が考えたと……元四班長が言ったのかな」
ロノウェ
「まあ、それしか考えられねえな。大佐がおまえの趣味、知ってたとは思えねえし」
レラージュ
「どうしてバラすんだ……」
ロノウェ
「隠すこともねえだろ。現におまえが考えてんだから」
レラージュ
「〝支えつづけてあげてね〟って言ってたから異動させる気はないんだろうが……〝応援しているよ〟っていったい何を……」
ロノウェ
「まあとにかく、大佐が言ってたとおり、早く基地に帰ろうぜ。さすがに最後のはうちの奴らも疲れただろ」
レラージュ
「……軍艦で庇ったの、注意された……」
ロノウェ
「いや、あの場合は仕方なかっただろ。訓練だからああした……」
レラージュ
「第七号……次はないと思え」
ロノウェ
「レラージュ……」
***
クルーA
「副長が副長らしいことをした……」
クルーB
「え……俺は副長っていうより、別なものを想像したが……」
クルーA
「頼むから、それは絶対言葉にはしないでくれ」
クルーC
「大佐、何でレラージュ出させたんだろうな。隊形考案者の顔が見たかったのかな?」
クルーB
「きっとそうなんだろ。レラージュが素直に自分が考案して班員も動かしましたって言えば、レラージュのことも褒めるつもりだったんじゃないのか?」
クルーA
「言うわけねえよなあ……外見以外で目立つの、〝大嫌ぇ〟だもん」
クルーB
「大佐も……何か……わかってなかったか?」
クルーC
「……ついに、大佐まで〝公認〟?」
クルーA
「いやあああ! やめてえええ!」
クルーB
「あの大佐だからな。そりゃ〝応援〟するよな」
クルーC
「……どうやって?」
クルーB
「さあ……とりあえず、レラージュは副長のままでいられるんだろうな。希望どおり」
ゲアプ
(今日はネタが多すぎて、日誌に書ききれないかもしれない……)
***
【パラディン大佐隊・旗艦〈オートクレール〉ブリッジ】
エリゴール
「一班長にはもう少し、言いようというものがなかったんですか」
パラディン
「私なりに、少しは慰めたつもりでいるよ」
エリゴール
「あくまで〝つもり〟ですね」
パラディン
「それより、十一班長の副長。あまりにも若くて驚いたよ。以前、元マクスウェル大佐隊が私の指揮下に入ったときにも、直接会っていたのは班長・副班長までだったからね」
エリゴール
「そうですね。普通は副長が大佐に直接お会いすることはありませんね。班内の人事異動は班長裁量ですし」
パラディン
「君たち、たった二班しかいないのに、元ウェーバー大佐隊に分けてあげたいほど人材豊富だよね」
エリゴール
「たった二班しかいないからわかりやすいんですよ。元ウェーバー大佐隊の中にも必ずいると思います。彼らはウェーバー大佐殿の命令に従わず、生き残った隊員たちですから」
パラディン
「そういえばそうだった。……あのとき、マクスウェル大佐は君たちに同じ命令をしたのかい?」
エリゴール
「しましたが、七班長……当時はヴァラク中佐が止めました。これでもうあの男は〝栄転〟になる。そんな命令に従って無駄死にする必要はないと」
パラディン
「そこがウェーバー大佐隊との決定的な違いだったね」
エリゴール
「そうですね。たった一人の人間がいたかいなかったかで、ここまで違ってしまいました」
パラディン
「本当にね……たった一人の人間が、いつまでもいつまでも一人の人間の心を縛りつづける……」
エリゴール
「は?」
***
副長
「勝ってしまいましたね……」
モルトヴァン
「エリゴール中佐……たいへん申し訳ありません……許してください……」
副長
「うちに転属されてきた元マクスウェル大佐隊員というのは、いわゆる〝落ちこぼれ〟だったんでしょう? どうしてあんなに高度なことができるんですか?」
モルトヴァン
「それは私のほうが訊きたいです。殿下の命令で約三八〇人を抱えこむことになったときには、さすがの大佐も途方に暮れていましたからね……」
副長
「やはり、エリゴール中佐ですか?」
モルトヴァン
「やはり、エリゴール中佐ですね。ただし、なぜか本人には、自分が元マクスウェル大佐隊員たちを統括しているという自覚はあまりないようですが」
副長
「大佐じゃありませんが……不思議ですね」
モルトヴァン
「はい。退役を念頭に置いているせいかもしれませんが、彼は隊員たちを〝指揮〟するというより〝指導〟しているような気がします」
副長
「では、今度の〝生徒〟は元ウェーバー大佐隊ですかね」
モルトヴァン
「ああ……そうかもしれません。でも、あちらはそう簡単には〝指導〟できなそうですね」
副長
「よその学校でさんざん躾けられてきた〝生徒〟ですからね。おまけに、それなりにプライドもある」
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「……エリゴール中佐がどうするのか楽しみ……と言ったら罰が当たりますかね」
副長
「では、私も一緒に当たりましょう。……楽しみです」
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