上 下
69 / 349
砲撃のパラディン大佐隊編(【05】の裏)

55【異動編04】2プラス1

しおりを挟む
【パラディン大佐隊・第一班第一号待機室】

ハワード
「……ただいま」

班員A
「あ、班長、お帰りな……」

エリゴール
「さすが元ウェーバー大佐隊。行儀がいいな。うちじゃ『おーす』、『うぃーす』だ」

フィリップス
「班長……あんた、ついに親衛隊に入隊しちまったのか……?」

エリゴール
「親衛隊?」

ハワード
「本当に俺が入隊したんなら、親衛隊長がうちに来るはずないだろう」

エリゴール
「親衛隊長?」

ハワード
「まあ、とにかく座ってくれ。あとで全員紹介するが、とりあえず、こいつが副長のフィリップスだ」

エリゴール
「ああ、話したことはないが知っている。初めましてじゃないがエリゴールだ。よろしく頼む」

フィリップス
「あ、ああ、よろしく……って、いったい何事!?」

ハワード
「その説明も今からする。おまえも座れ、フィリップス」

フィリップス
「……何か、ものすごい緊張感が」

エリゴール
「何で?」

フィリップス
「まあ……初めましてじゃないが、直接話すのはこれが初めてだから。で、班長。大佐んとこに訓練申請に行ったはずのあんたが、何で親衛隊長引きつれて戻ってきたんだ?」

エリゴール
「ちょっと待ってくれ。さっきから言ってる〝親衛隊〟とか〝親衛隊長〟ってのはいったい何なんだ?」

ハワード
「申し訳ない。うちではあんたたちを勝手にそう呼んでるんだ。〝元マクスウェル大佐隊〟だと長いし、右翼のそれと区別がつかないから」

フィリップス
「それで、あんたはそこの代表だから〝親衛隊長〟と」

エリゴール
「代表になった覚えはないが、その〝親衛隊〟っていうのはいいな。正式には〝パラディン大佐親衛隊〟ってことになるのか?」

フィリップス
「まあ、そうなるな」

エリゴール
「そうか。じゃあ、今度から俺もそう呼ぶことにしよう。俺ももう〝元マクスウェル大佐隊〟からは卒業したいと思ってた」

フィリップス
「でも、そう言うあんたは、俺たちを〝元ウェーバー大佐隊〟って呼んでるんだな」

エリゴール
「……すまん」

フィリップス
「いや、あんたたちにはそう呼ばれても仕方がない。俺たち、一応同じ〝パラディン大佐隊〟だからな。俺たちにも〝親衛隊〟みたいな別称があればいいんだが」

ハワード
「……フィリップス。おまえ、俺の代わりに親衛隊長と話してくれ」

フィリップス
「班長、何いじけてんだよ。今から説明するんじゃなかったのか?」

エリゴール
「……班長はお疲れのようだから、俺が代わりに説明する。結論から先に言うと、俺が大佐に――悪いが、この名称を使わせてくれ――〝元ウェーバー大佐隊〟に異動させてもらえないかと頼んだ。大佐は渋ってたが、そのとき、班長が大佐の執務室に来て、うやむやのうちに話がまとまった。俺の所属は一応この第一班第一号。もちろんヒラだから、余計な気遣いは無用だ」

フィリップス
「いや、親衛隊長に気遣いするなっていうほうが無理だって。いったい何でまた? 親衛隊ほったらかしてきていいのか?」

エリゴール
「実はわざとほったらかしてきた。俺がいなくても本当にやっていけるかどうか見てみたくて。あと、今はあんたたちのほうを早急にどうにかしないとまずいと思った」

フィリップス
「自覚はあったが……やっぱりまずいか?」

エリゴール
「自覚はあったのか。でも、どうすればまずくなくなるのか、わからないで悩んでる状態なんじゃないのか?」

フィリップス
「親衛隊長っ!」

エリゴール
「……〝親衛隊〟はいいが〝親衛隊長〟はやめてもらえないか? エリゴールでいい」

フィリップス
「親衛隊長を呼び捨てなんて、恐れ多くてできない。それなら〝元四班長〟でいいか?」

エリゴール
「……どうしても、それからは逃れられないな」

フィリップス
「〝元四班長〟と呼ばれるのも嫌なのか?」

エリゴール
「好きじゃないが、親衛隊でも年下にはそう呼ばれてた。まあ、仕方がない。〝親衛隊長〟よりはましだ」

フィリップス
「なら、改めて元四班長。……そのとおりだ!」

エリゴール
「俺は今まであんたたち、特にこの一班を見ていて、いつも〝惜しい!〟と思っていた。あと少し。あと一歩。それが足りなくて十一班にも負けた」

フィリップス
「そうか……やっぱりな……俺たちもわかってはいたんだ……あんたがそう言うんなら、やっぱりそうだったんだな……」

ハワード
「……頼む。やっぱり班長やめさせてくれ……」

フィリップス
「また始まった……」

エリゴール
「心労がたまりにたまっていそうだな」

フィリップス
「俺も気の毒には思うが、それでも〝元ウェーバー大佐隊〟をまとめられるのはこの男だけなんだ。今は特にやめられちゃ困る」

エリゴール
「……あんたも、副長じゃない副長だな」

フィリップス
「何だそりゃ?」

エリゴール
「とりあえず班長。あんたの副長に、明日からの訓練予定表見せてやれよ。あと、これからすぐに全班招集して訓練の打ち合わせしないと、時間的に間に合わないんじゃないのか?」

ハワード
「やっぱり俺は班長失格だ!」

フィリップス
「自分で合否判定下すなよ。……おい。訓練内容、まったく変わってないか?」

エリゴール
「悪いが、俺が横から口を出した。訓練の目的は、親衛隊に勝つことだ」

フィリップス
「……何?」

エリゴール
「俺はそのために来た。でも、大佐の護衛もしなくちゃならないから、ちょくちょく別行動をとる。それはどうか見逃してくれ」

フィリップス
「……やっぱりあんた、〝親衛隊長〟じゃないか」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうやら生まれる世界を間違えた~異世界で人生やり直し?~

黒飴細工
BL
京 凛太郎は突然異世界に飛ばされたと思ったら、そこで出会った超絶イケメンに「この世界は本来、君が生まれるべき世界だ」と言われ……?どうやら生まれる世界を間違えたらしい。幼い頃よりあまりいい人生を歩んでこれなかった凛太郎は心機一転。人生やり直し、自分探しの旅に出てみることに。しかし、次から次に出会う人々は一癖も二癖もある人物ばかり、それが見た目が良いほど変わった人物が多いのだから困りもの。「でたよ!ファンタジー!」が口癖になってしまう凛太郎がこれまでと違った濃ゆい人生を送っていくことに。 ※こちらの作品第10回BL小説大賞にエントリーしてます。応援していただけましたら幸いです。 ※こちらの作品は小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも投稿しております。

ヒロイン不在の異世界ハーレム

藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。 神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。 飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。 ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?

俺の義兄弟が凄いんだが

kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・ 初投稿です。感想などお待ちしています。

虐げられ聖女(男)なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました【本編完結】(異世界恋愛オメガバース)

美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!

主人公の兄になったなんて知らない

さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を レインは知らない自分が神に愛されている事を 表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346

異世界に転移したショタは森でスローライフ中

ミクリ21
BL
異世界に転移した小学生のヤマト。 ヤマトに一目惚れした森の主のハーメルンは、ヤマトを溺愛して求愛しての毎日です。 仲良しの二人のほのぼのストーリーです。

無冠の皇帝

有喜多亜里
BL
「連邦」、「連合」に次ぐ銀河系内の第三勢力「帝国」。その宗主であった「連合」五星系の一つザイン星系は「帝国」の再植民地化をもくろみ侵攻しようとするも「帝国」宇宙軍と皇帝軍護衛艦隊に阻まれる。「帝国」の元皇太子アーウィンが司令官を務める皇帝軍護衛艦隊の鉄則はただ一つ。〝全艦殲滅〟。――なーんて感じの「なんちゃってSF」。コメディ寄りのボーイズラブ(自称)。大佐(変態だけどまとも)×元皇太子(ツンデレストーカー)。 ◆BOOTH様で同人誌を通販しています。既刊4冊(https://aarikita.booth.pm/)。 ◆表紙はかんたん表紙メーカー様で作成いたしました。ありがとうございました(2023/03/16)。 ◆「第11回BL小説大賞」で奨励賞をいただきました。ありがとうございました。

普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。

かーにゅ
BL
「君は死にました」 「…はい?」 「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」 「…てんぷれ」 「てことで転生させます」 「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」 BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。

処理中です...