トリッパーズ!

有喜多亜里

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第二話 森・騎士・そしてフラグ

01 それだけはわかった

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「僕、思うんだけど」

 銀縁眼鏡の真ん中を人差指で押し上げて、皆本が唐突に切り出した。

「異世界トリップって、現実ではモブでしかない凡人の願望充足ジャンルだよね」
「モブ? 何だそれ?」

 異世界トリップは知っているが――というか、皆本に教えてもらったが、モブは知らなかった。
 知らないことには同意できない。だからすぐに訊いたのに、皆本は呆れたような眼差しを俺に向けてきた。
 畜生! おまえが知ってることは誰でも知ってると思うなよ!

「英語だよ。もともとの意味は『暴徒』とか『犯罪集団』とか、よくない意味での『群衆』だけど、日本じゃ『その他大勢』みたいな意味で使われてる。主役どころか、脇役ですらない。ちなみに、英語でいうなら『エキストラ』だね」
「なるほど。『その他大勢』か。それだけはわかった。ありがとう」

 ちゃんと礼を言ったのに、不満げな顔をしている。「エキストラ」の意味もわかったと付け足すか。そう思った瞬間、皆本が諦めたように溜め息をついた。

「それだけわかってもらえれば充分だよ。ようするに、現実ではどこにでもいそうな人間が、ある日突然異世界にトリップして、そこで唯一無二の選ばれた存在だってちやほやされる。――異世界トリップの典型的パターンの一つだよ。現実ではいくら努力したってそうなれない。でも、このパターンではそんなのはなしだ。まあ、ある程度の努力が必要とされる場合もあるけど、その前提にはすでに選ばれた存在っていうのがある。努力は決して無駄にはならないんだ」

 典型的パターンと言われても、俺は小説も漫画もほとんど読んでいなかったからピンと来ない。だがまあ、奴の主張したいことは何となくわかった。

「おまえ、その選ばれた存在ってやつになりたいと思ってたか?」
「いや、まったく」

 皆本はきっぱり否定した。

「僕はモブがよくてモブでいたんだ。誰にも注目されず、ただ存在しているだけのモブキャラ。最高じゃないか」
「そうだな。俺も『その他大勢』でよかったな」
「さっそく使いこなしてるね。教えた甲斐があったよ」

 今は昼。俺たちは大平原のど真ん中に立っている。
 そして、俺たちの視界のはるか前方には、刻々と近づいてくる黒いモヤ。
 例によって、魔物の大群だ。本当に、魔物がいる世界にしか召喚されないな、俺ら。
 そろそろ、無駄話タイムは終了だ。俺はいつものように皆本より前に出て、鞘から〝勇者の剣〟を引き抜いた。
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みんなの感想(2件)

かるは
2021.03.25 かるは

いつ主人公×皆本が始まるんだろうとワクワクしながら見てたのに、いつの間にか陰謀推理が始まっててそっちをハラハラ見守ってる間に終わってしまった…
主人公はアホなのに皆本君の名前は覚えてたり、皆本君は皆本君でフルネーム覚えてたり殺されそうになったことに対して激おこだったので実は主人公ラブなのかなあとか両思いなのかなあとか思いつつ、なんで二人召喚になっちゃったのかとか謎がいっぱいでした。
面白かったです!続きも期待してます。

有喜多亜里
2021.03.25 有喜多亜里

ご感想ありがとうございます。
実は全三話予定(は未定)で、最後には謎が明らかになります!(たぶん)
続きはいつ書けるかまったくわかりませんが、せめてこれで終わりではないことがわかるようにしておこうと思います。
ご感想ありがとうございました。

解除
魁誠
2020.03.25 魁誠

#BLとは?

BL展開が無さすぎてBLと言うのを忘れてしまう(((
けど、異世界トリップという括りにするとこれがまた面白いなって思うから、今後に期待!!
すごく楽しませてもらってます❤
頑張ってください

有喜多亜里
2020.03.25 有喜多亜里

ご感想ありがとうございます。
何と言うか、裏設定ではBLなんですが、
そのまま、BLということを忘れていただいたほうが有難いような。←
いずれにしろ、すみません(汗)。
ご感想ありがとうございました。

解除

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