トリッパーズ!

有喜多亜里

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第一話 召喚・勇者・そしてチート

09 木刀よりも軽かった

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「とりあえず、僕は選んだよ。君も早く選んだら?」

 そう言いながら、皆本はその鞄を幼稚園児みたいに肩に掛けた。大きすぎもせず、小さすぎもせず、皆本にはぴったりだ。制服を着ているから、通学用のバッグのようにも見える。実際に使っていたのは、黒っぽいナップザックだったが。

「あ、ああ……」

 なぜそれにしたのか理由を訊いてみたかったが、皆本は自分が気に入ったからとしか答えてくれない気がする。
 それに、たとえ皆本が言うように武器限定ではなかったとしても、やっぱり俺は武器っぽいものを選んでおいたほうがいいと思う。で、武器って言ったら、俺には刀か剣しか思い浮かばない。
 俺は皆本から離れると、武器庫というよりガラクタの詰まった倉庫みたいな部屋の中から、俺でも使えそうな刀か剣を見つけることにした。
 できれば日本刀みたいなのがよかったのだが、これ見よがしに石の壁に飾られていたのは、西洋風の剣ばかりだった。

 ――悪くはないけど、違うんだよなあ。

 皆本が知ったら日本語になっていないと突っこまれそうなことを思いながら、ふと部屋の隅に目をやれば、槍っぽいのが鉄っぽい箱の中に何本も突っこまれていた。
 まるで雨の日の傘立ての傘みたいだ。剣と比べてあからさまに扱いが悪い。俺的に槍は対象外だが、何となく気の毒になって近づいてみると、もっと気の毒なやつらがいた。槍を倒れないようにするストッパーみたいに、剣らしきものも数本、一緒に入れられていたのだ。
 何で剣じゃなくて剣らしきものなのかって言うと、それらはみんな薄汚い粗布でぐるぐる巻きにされていたからだ。本当に剣だったらやっぱり気の毒だなあと思い、それも確認してみようかと、そのうちの一本を適当に引き抜いてみた。
 大きさからいって結構な重量を予想していたのだが、拍子抜けするくらい軽かった。そうだな。観光土産の木刀より軽いかもしれない。ちなみに、うちではその木刀は布団叩きとして使われている。
 やっぱりこれは剣じゃないんじゃないか。そう思いつつも茶色い布を剥いでみると、布と同じくらい薄汚れた、やっぱり茶色い鞘つきの剣が現れた。
 装飾のたぐいはほとんどない、実用一点張りな感じの剣。例の木刀よりは若干短いが、布を取ったらもっと軽くなった。

 ――これ、本当に剣じゃないんじゃないか。もしかしたら、柄しかないとか。

 今度は好奇心から、赤っぽい革らしきものが包帯みたいに巻かれている柄を左手でつかんで引っ張ってみた。ら、一気に半分くらい抜けてしまった。
 俺としては、ちょっとだけ引き抜いて、柄の先に刀身があるかどうか見てみるつもりだった。そんなに力は入れていなかったはずだが、どうせここまで抜いたならと、鞘から全部引き出してみた。
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