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【05】始まりの終わり(中)
18 コールタン大佐の執務室にお邪魔しました(後)
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「それで?」
口直しのようにバタークッキーを囓ってから、コールタンはドレイクを見やった。
「俺にアルスター大佐のことを話して、いったい何をさせたいんですか?」
その質問はドレイクにとって〝いい質問〟だったようだ。満足げに目を細め、うまそうにコーヒーを飲む。
「俺は今、アルスター大佐が原因で起きそうな二つのことを恐れてる。一つは〝全艦殲滅〟できなくなること。もう一つは戦死者が出ることだ。……ウェーバーのときみたいに戦死者を出して〝栄転〟ってのは、もうこりごりなんだよ。そうなる前に、本人も周囲も〝よかったね〟と思える形でここを去っていただきたい。何かいい方法ないかな?」
「〝よかったね〟ですか」
コールタンは本気で驚いたように、真っ青な目を見張っていた。
「そいつは難問だ。ここじゃ〝栄転〟は〝よかったね〟じゃないですからね」
「だろ? 陥れて失脚させるのはあんたには簡単かもしれないが、俺はあの人のこれまでの功績に敬意を表して、〝よかったね〟にしたいんだよ」
「さらっと失礼なこと言ってますね。そんなことができてたら、あんたが来る前にウェーバーとマクスウェルをどうにかできてましたよ」
「どうにかできるネタは握ってたんじゃないの? ただ、使いどころがなかっただけで。ただでさえ少ない〝大佐〟の頭数、うかつに減らすわけにはいかんでしょ」
「……あんたはやっぱり恐ろしいですね」
「どこが? 俺に言わせりゃ、あんたら三人のほうがよっぽど恐ろしいよ。みんな若いのに、どうやって護衛の〝大佐〟になったんだい?」
「パラディンはもともと砲撃を希望してましたよ。何を考えてるんだと呆れましたけどね」
「だから、あんたが裏から手を回して護衛にしたんだ。……残念だったね。殿下に砲撃に回されて。それも結局、アルスター大佐のせいだよ」
「……失脚でいいでしょ」
「駄目だよ。あくまで〝よかったね〟」
「俺個人としては、〝よかったね〟にしたくないですけどね」
肩をすくめたコールタンは、少し眉をひそめてから、コーヒーカップを傾けた。
「とにかくまあ、一緒に考えてよ。それから、こういうお話は電話じゃなくて、こうして直接会ってしましょう。せっかく〝直接交流解禁〟になったんだから」
コールタンは苦笑いして、コーヒーカップをローテーブルの上に置いた。
「悪い人だなあ……」
「あんたには言われたくないよ。でも、ほんとにパラディン大佐を護衛に戻したいんだね。俺に本音ぶっちゃけすぎだよ」
「本音?」
「〝裏読み〟ってさ、実は自分の願望、反映しちゃってるんだよね」
にやにやしながら、ドレイクはまたアーモンドクッキーに手をつける。
「〝これから先は横の連携が必要だ〟って、あんた自身がそう考えてたんだろ? さびしんぼうのコールタンくん?」
「……本当に悪い人だ」
「失敬な。本当に悪かったらこんな忠告、わざわざしたりしないよ。黙ってたほうがあんたが勝手にペラペラ喋ってくれて、こっちは都合がいいもの」
そう言うドレイク自身も本音を〝ぶっちゃけすぎ〟ている気がするが、コールタンは忠告と受け止めてくれたようで、ばつが悪そうに眉尻を下げた。
「あんたから見たら俺たちなんて、いい気になって思い上がってるガキですね」
「うーん。言っちゃ悪いけど、あんたたち三人の中で思い上がってるのは、あんただけだよ」
「うおおおお!」
再び頭を抱えて呻いているコールタンに、ドレイクはさらに追い打ちをかける。
「ダーナには七班長、パラディン大佐には四班長っていう〝側近〟がいる。……お、考えてみたら、どっちも元マクスウェル大佐隊だ。あらゆる意味で恐ろしい隊だったな、あそこは。できる奴とできない奴との差が超ありすぎ」
「ドレイク大佐……」
頭から手は離したが、深くうなだれたままコールタンは訴えた。
「俺……しばらく立ち直れそうにありません……」
「調子ぶっこいて、おまえのコーヒーの好み知ってるぞ、なんてガキみたいな自慢するからです。たまには挫折感を味わいなさい」
「うああ、恥ずかしい……こんなに恥ずかしかったこと、近年ない……」
「でもまあ、〝これから先は横の連携が必要だ〟っていうのは俺も同感だ。現に今、あんたに〝連携しない?〟って言ってるじゃない。俺がアルスター大佐追い出したいって話したこと、あんたが殿下にチクれば、アルスター大佐じゃなくて俺を失脚させられるかもよ?」
「それはありえませんよ」
コールタンはすぐに顔を上げ、あわてたように否定した。
「それどころか、殿下が自分でアルスター大佐を切りますよ。たぶん、メール一本で〝栄転〟。ついでに、俺もあんたを陥れようとしたとして〝栄転〟……だけで済めば、むしろラッキー」
「殿下は自分でもそう思ってなきゃ切らないよ。ウェーバーもマクスウェルも前から切りたいと思ってたから、わざと失策しそうな状況作って切ったんだよ」
「ああ、あれ。やっぱりそうだったんだ」
「そうだよ。ダーナも引っかかりそうだったから止めてやったよ。俺に直接メール返信してきた、その〝侠気〟に感服して」
「侠気……」
「あれはさ、俺が姑息に副官通してメール送信してきたのが気に食わなかったんだよ。まともな回答は他の大佐の副官がするだろうから、自分は『知りたいことがあったらこんなふうに直接〝大佐〟にメールしてこいや!』って俺に〝馬鹿野郎〟メール返信してきた。……ほら、尊敬できる〝馬鹿〟だろ?」
「いや、それこそあんたの〝裏読み〟だと思いますが。その前の幹部会議であんたにこっぴどくやられたから、カッとなって衝動的に送信」
「まあ、それならそれでいいけど、俺はあのメール一本であいつを見直した」
「そんなのが、あんたのツボですか」
「うん、ツボ。たぶん、俺の〝弟〟もツボ」
「ほんとによく似た〝兄弟〟!」
「それだけに、ダーナにはアルスター大佐の話は絶対にできない」
一転して、ドレイクは真顔になった。それに呼応するように、コールタンも表情を改める。
おそらく、ここが今日の〝本題〟だ。事前に教えてもらいたかったなという思いには蓋をして、イルホンはこれまで以上に真剣に耳を澄ませた。
「〝弟〟のほうは〝わかってる〟と思うが、ダーナに被害が及びそうにならなきゃ腰は上げない。パラディン大佐は直接の〝被害者〟だから、あえて〝部外者〟でいてもらったほうがいい。となると消去法で、あんたと俺がどうにかするしかないわけだ」
「どうにかねえ……しかも、〝よかったね〟で、でしょ? ……そうですね。結果的には同じでも、向こうから呼び寄せてもらったら、本当の意味で〝栄転〟になりますね」
「向こうって……〝帝都〟からってこと? そんなこともあるの?」
「俺の知るかぎりありませんね。だからこそ、〝よかったね〟になるんじゃないかと。ただ、こいつはこっちじゃどうしようもありません。〝帝都〟の誰にナシつけて、どんな理由で呼び寄せてもらったらいいんだか」
「あんた、向こうにコネないの?」
「少なくとも、ここの軍人呼び寄せられる人間にコネはありません」
「今から大至急作んなさいよ」
「無茶言うなあ。それなら、あんたが殿下に全部話して、殿下に向こうから呼び寄せてもらったように偽装工作してもらったほうが早いですよ」
「それじゃ俺、ほんとに〝悪い人〟みたいじゃん」
「こんな話してる時点で、すでに〝悪い人〟です」
「でも……ふんふん、向こうからね。なるほど、逆転の発想だな。さすがコールタン大佐、悪巧みは得意だね。俺が見こんだとおりだ」
「俺……あんたにそう思われてたんですか?」
「思われてたから、こんな相談されてるんじゃない」
「一応、喜んどくか……」
「自分に嘘はつかないほうがいいよ」
「とにかく、現時点での俺の一推しは、〝殿下に偽装工作してもらう〟です」
「殿下はともかく、アルスター大佐が納得するような理由を考えるのが大変だな」
「確かに、現状じゃ〝どうして自分が〟って思いますよね。裏工作されたとすぐに勘づかれそう」
「よし、そこは宿題だ」
ドレイクは両手をはたいて、自分の腕時計を一瞥した。
ハンカチは持たせてあるのだが、使う気配はなさそうだ。イルホンはドレイク用に携帯しているハンカチをそっと差し出し、ドレイクは当たり前のようにそれで指を拭うと、またイルホンに返して寄こした。
「ずいぶん長居しちまったな。クッキー、こんなに食っちまった」
言われてクッキー缶に目をやれば、アーモンドクッキーだけが激減していた。
というか、あれはもう一枚くらいしか残っていない。一応、ドレイクも全部食べ切ってはまずいだろうと思ったようだ。かといって、他の種類のクッキーは食べないのがやはりドレイクである。
「あ、いつの間に!」
「あんたが落ちこんでいる間に」
「やっぱり〝悪い人〟!」
「戦術の基本でしょ。それじゃイルホンくん、そろそろお暇するよ」
「あ、はい!」
イルホンが我に返ったときには、ドレイクはソファから腰を上げていた。
もちろん、イルホンも続こうとしたが、まだ自分がトレーを持ったままだったことに今さら気づき、ローテーブルの上にさりげなく置いた。
「宿題って、提出期限はいつですか?」
見送るつもりか、コールタンも立ち上がった。
ドレイクは顎に手を当てて、独り言のように呟く。
「できれば、次の出撃では、パラディン大佐にアルスター大佐隊を指揮してもらいたいんだよね……」
「鬼ですね、あんた。あらゆる意味で」
「あ、それから、俺が続けてここを訪ねるのも不自然だから、今度はあんたがうちの執務室に遊びにきてよ。ちなみに、手土産はそこそこ高級なコーヒー豆がいい。うちの経費が浮く」
「〝そこそこ〟でいいんですか?」
「うん。あんまり高級なのは飲みつけてないから。あと、うちは砂糖もミルクも置いてないから、どうしても必要だったら持参ね」
「……鬼ですね」
「小腹空いたとき用に、茶菓子くらいはあるよ」
「そうですか。それも持参しようかと思ってました」
「持ちこみ大歓迎だよ」
「……何がいいんですか?」
「カップ麺」
「それ、あんたの食事にする気でしょ」
執務机を離れたクルタナが、こちらに向かって歩いてくるのを眺めながら、イルホンは心の中で答えた。
――いえ。俺の食事にもなります。
* * *
コールタンに見送られて執務室を出ると、案の定、あの護衛二人が自動ドアの両脇に立っていた。
もしかしたら、途中座って休憩していたかもしれないが、行きと同様、クルタナが先頭に立って歩き出せば、彼らは無言でイルホンたちの後ろを歩き、移動車の前に到着してからは、クルタナの後ろに立った。
執務室を出てからはほとんど喋らなかったクルタナだが、最後に「ぜひまたいらしてください」と薄く笑った。ドレイクは「もちろん。今度は第八のほうに」と朗らかに笑った。一言多い、しかし同感とイルホンは思ったが、クルタナは表情を変えずに「必ずそうさせます」と返してきた。コールタンとの力関係が垣間見えた一言だった。
「前から思ってましたけど、コールタン大佐って、ほんとに護衛らしくない〝大佐〟ですね」
赤みを帯びはじめた空の下、イルホンが移動車を走らせながら口を切ると、両腕を組んでシートにもたれていたドレイクはにやにやして言い換えた。
「っていうか、〝大佐〟らしくない〝大佐〟じゃない?」
「大佐。……〝おまえが言うな〟ですよ」
「確かに、俺と同じ臭いはするな。基本属性はSだが、パラディン大佐に対してだけはドM」
「そっちの臭い!?」
「そして、パラディン大佐は、コールタン大佐に対しては〝女王様〟」
「〝女王様〟。……しっくりきますね」
「え、しっくりきちゃったの?」
「しかし、例の件、本気でコールタン大佐と組んでするつもりですか?」
「もちろん本気だよ。冗談であんな話するわけないじゃない。案の定、コールタン大佐も乗り気だ。アルスター大佐って、実はみんなに好かれてなかったんだね」
「……そうですね。そういうことになりますね」
「俺は嫌いじゃなかったんだけどなあ。元ウェーバー大佐隊は元マクスウェル大佐隊よりもお行儀よくて大人しかったから、つい調子に乗っちゃったかな。元マクスウェル大佐隊員も『連合』の右翼の大半も、みんな元ウェーバー大佐隊に押しつけた」
「大佐……」
「元ウェーバー大佐隊が、本当にアルスター大佐隊と一体化してたらそれでもよかったんだけどね。実際は〝第二分隊〟として差別されてたわけだろ。それで負担ばっかり増やされてちゃ、そりゃモチベーション、ダダ下がりだ。そんなことがどうしてわからなかったのかねえ。それとも、アルスター大佐は元ウェーバー大佐隊を潰して解体したかったのかな。まあ、いずれにしろ、アルスター大佐が元マクスウェル大佐隊員の〝しつけ〟を放棄した時点で、みんなに愛想つかされたな」
「大佐は?」
「……悲しかったね。元ウェーバー大佐隊には申し訳ないけど、俺もいつかこんなふうにわからなくなるんだろうなと思って悲しくなった。だから、最後は〝よかったね〟で終わらせたいってのは、自分もそう終わりたいっていう願望から出た自己満足だよ。決してアルスター大佐のためだけじゃない」
「大佐はアルスター大佐のように、わからなくなることはありませんよ」
食い気味に否定すると、ドレイクはイルホンに顔を向けて、おどけたように笑った。
「どうして? 今だって、俺はわかってるとは断言できない」
「大佐がわからなくなったと思ったら、俺もみんなも大佐にはっきりそう言いますよ。大佐がわかってくれるまで何度でも」
「……そうか」
ドレイクは照れくさそうに笑い、前に向き直って目を閉じた。
「きっと、アルスター大佐には、そう言ってくれる部下がいないんだな。あるいは……自分で排除してしまったか」
おそらく、排除してしまったのだろう。
コールタンには七班長や四班長のような〝側近〟がいないとドレイクは言ったが、ここぞというときにはあの〝エルフ〟が進言していそうな気がする。
「……あ、そういえば」
「どうした、イルホンくん」
「いえ、いま急に思い出したんですけど……そういえば、コールタン大佐とパラディン大佐は、一昨日まで合同演習してたんだなって……」
「ああ、オールディスによるとそうらしいね。でも、パラディン大佐もコールタン大佐も、そのことには一言も触れなかったね」
「ですよね……護衛と砲撃がいったいどんな演習をしたのか、かなり興味があったんですけど……」
「それはあるな。でも、オールディスも内容や結果に関しては秘密にされてるそうだ」
「オールディスさんでさえ訊き出せていないなんて……ますます興味が湧きますね」
「そうだね。でも、俺は自分からは訊かないな」
目は閉じたまま、ドレイクは苦笑いを浮かべた。
「合同演習したのにもかかわらず、コールタン大佐がパラディン大佐を恋しがってる。……それがすべてじゃない」
* * *
クルタナが執務室に戻ると、コールタンは一人掛けのソファに座り直していて、まだあのコーヒーを飲んでいた。
「無理しないほうが……」
見かねて声をかけたが、コールタンはしごく真面目な顔で答えた。
「いや、約束どおり飲み切らないと、〝栄転〟になりそうな気がする」
「そんな馬鹿な」
「まあ、この〝コーヒー豆茶〟は別として、やっぱりドレイク大佐は面白かったな!」
「面白かったというか……怖かったですよ……二人して何を話しているんですか……」
「おまえには守秘義務がある」
「わざわざ念押しされなくてもわかっています。しかし、ドレイク大佐も大佐と同じことを考えてらっしゃったんですね」
「同じことを考えてると思ったから、俺と〝連携〟しようと思ったんだろ。……今この艦隊はドレイク大佐を中心にして回ってる。あの人と組んで得はあっても損はない」
「ドレイク大佐は、本気でアルスター大佐を切ろうと考えてらっしゃるんですか?」
「そうみたいだな。それでも〝よかったね〟にしたいってところが、いかにもあの大佐らしいよな。ダーナやパラディンは巻きこみたくないってところも」
「結局、汚れ仕事を一緒にしようと誘われて、大佐はそれに乗っかったわけですね」
「乗っかったっていうか、乗せられたな。こっちのペースで話を進めようと思ったら、いきなり『護衛、一人じゃ寂しいの?』ってレーザー砲撃された」
「『そんなにパラディン大佐が恋しいの?』もありましたね」
すかさずそう言うと、コールタンはまた「うおおおお!」と呻いた。当分はこれで遊べそうだ。だが、そんな感情は微塵も見せず、クルタナはきれいに飲み干されたドレイクのコーヒーカップをトレーに乗せて持ち上げた。
「本当にドレイク大佐は恐ろしいですね……うちみたいにスパイを使っている様子はないのに」
「スパイ言うな。噂話を収集させてるだけだろ」
「それもスパイ活動では?」
「とにかくまあ、今回のドレイク大佐の〝挨拶回り〟の真の目的は、アルスター大佐の現状把握と、うちとの同盟締結だったわけだ」
「え? パラディン大佐たちは?」
「カムフラージュだよ。特に行く必要はなかったが、〝挨拶回り〟の建前上、一応回った。このクッキーは小道具だ。これを渡して次の約束があるからとでも言えば、大した話もせずにすぐに帰れる」
「だとすると、ドレイク大佐の話したことは、どこまで本音かわかりませんね」
「だから〝本音ぶっちゃけすぎ〟って俺に忠告してくれたんだろ。いやあ、あののらりくらりとした話術は見事だ。思わず本音で話したくなる」
「〝話したくなる〟じゃなくて〝話していた〟じゃないですか。パラディン大佐のこと、もうバレバレですよ」
パラディンにはまったく相手にされていないが、表沙汰にはされたくないことではある。
コールタンはコーヒーカップを両手で持つと、ローテーブルに置かれたままのクッキー缶を見つめた。
「あの人にはもう何もかも見透かされてしまっているような気がする……」
「本当はスパイを使っていらっしゃるんでしょうか。まさか、盗聴器?」
「毎日チェックしてるからそれはないと思うが……あの人はそんなもの使わなくても、ほんの些細な言動だけで本音がわかっちまうんだろ」
軽く溜め息をついたコールタンは、しかし、楽しげににんまりと笑った。
「きっと、今日の俺はずいぶん情報収集されたな。でもまあ、ドレイク大佐ならそれでもいいかと思わせる。そこがまた恐ろしい。あんな調子で話されてたら、そら、殿下が夢中になるはずだ。……子供は話上手な大人に弱い」
口直しのようにバタークッキーを囓ってから、コールタンはドレイクを見やった。
「俺にアルスター大佐のことを話して、いったい何をさせたいんですか?」
その質問はドレイクにとって〝いい質問〟だったようだ。満足げに目を細め、うまそうにコーヒーを飲む。
「俺は今、アルスター大佐が原因で起きそうな二つのことを恐れてる。一つは〝全艦殲滅〟できなくなること。もう一つは戦死者が出ることだ。……ウェーバーのときみたいに戦死者を出して〝栄転〟ってのは、もうこりごりなんだよ。そうなる前に、本人も周囲も〝よかったね〟と思える形でここを去っていただきたい。何かいい方法ないかな?」
「〝よかったね〟ですか」
コールタンは本気で驚いたように、真っ青な目を見張っていた。
「そいつは難問だ。ここじゃ〝栄転〟は〝よかったね〟じゃないですからね」
「だろ? 陥れて失脚させるのはあんたには簡単かもしれないが、俺はあの人のこれまでの功績に敬意を表して、〝よかったね〟にしたいんだよ」
「さらっと失礼なこと言ってますね。そんなことができてたら、あんたが来る前にウェーバーとマクスウェルをどうにかできてましたよ」
「どうにかできるネタは握ってたんじゃないの? ただ、使いどころがなかっただけで。ただでさえ少ない〝大佐〟の頭数、うかつに減らすわけにはいかんでしょ」
「……あんたはやっぱり恐ろしいですね」
「どこが? 俺に言わせりゃ、あんたら三人のほうがよっぽど恐ろしいよ。みんな若いのに、どうやって護衛の〝大佐〟になったんだい?」
「パラディンはもともと砲撃を希望してましたよ。何を考えてるんだと呆れましたけどね」
「だから、あんたが裏から手を回して護衛にしたんだ。……残念だったね。殿下に砲撃に回されて。それも結局、アルスター大佐のせいだよ」
「……失脚でいいでしょ」
「駄目だよ。あくまで〝よかったね〟」
「俺個人としては、〝よかったね〟にしたくないですけどね」
肩をすくめたコールタンは、少し眉をひそめてから、コーヒーカップを傾けた。
「とにかくまあ、一緒に考えてよ。それから、こういうお話は電話じゃなくて、こうして直接会ってしましょう。せっかく〝直接交流解禁〟になったんだから」
コールタンは苦笑いして、コーヒーカップをローテーブルの上に置いた。
「悪い人だなあ……」
「あんたには言われたくないよ。でも、ほんとにパラディン大佐を護衛に戻したいんだね。俺に本音ぶっちゃけすぎだよ」
「本音?」
「〝裏読み〟ってさ、実は自分の願望、反映しちゃってるんだよね」
にやにやしながら、ドレイクはまたアーモンドクッキーに手をつける。
「〝これから先は横の連携が必要だ〟って、あんた自身がそう考えてたんだろ? さびしんぼうのコールタンくん?」
「……本当に悪い人だ」
「失敬な。本当に悪かったらこんな忠告、わざわざしたりしないよ。黙ってたほうがあんたが勝手にペラペラ喋ってくれて、こっちは都合がいいもの」
そう言うドレイク自身も本音を〝ぶっちゃけすぎ〟ている気がするが、コールタンは忠告と受け止めてくれたようで、ばつが悪そうに眉尻を下げた。
「あんたから見たら俺たちなんて、いい気になって思い上がってるガキですね」
「うーん。言っちゃ悪いけど、あんたたち三人の中で思い上がってるのは、あんただけだよ」
「うおおおお!」
再び頭を抱えて呻いているコールタンに、ドレイクはさらに追い打ちをかける。
「ダーナには七班長、パラディン大佐には四班長っていう〝側近〟がいる。……お、考えてみたら、どっちも元マクスウェル大佐隊だ。あらゆる意味で恐ろしい隊だったな、あそこは。できる奴とできない奴との差が超ありすぎ」
「ドレイク大佐……」
頭から手は離したが、深くうなだれたままコールタンは訴えた。
「俺……しばらく立ち直れそうにありません……」
「調子ぶっこいて、おまえのコーヒーの好み知ってるぞ、なんてガキみたいな自慢するからです。たまには挫折感を味わいなさい」
「うああ、恥ずかしい……こんなに恥ずかしかったこと、近年ない……」
「でもまあ、〝これから先は横の連携が必要だ〟っていうのは俺も同感だ。現に今、あんたに〝連携しない?〟って言ってるじゃない。俺がアルスター大佐追い出したいって話したこと、あんたが殿下にチクれば、アルスター大佐じゃなくて俺を失脚させられるかもよ?」
「それはありえませんよ」
コールタンはすぐに顔を上げ、あわてたように否定した。
「それどころか、殿下が自分でアルスター大佐を切りますよ。たぶん、メール一本で〝栄転〟。ついでに、俺もあんたを陥れようとしたとして〝栄転〟……だけで済めば、むしろラッキー」
「殿下は自分でもそう思ってなきゃ切らないよ。ウェーバーもマクスウェルも前から切りたいと思ってたから、わざと失策しそうな状況作って切ったんだよ」
「ああ、あれ。やっぱりそうだったんだ」
「そうだよ。ダーナも引っかかりそうだったから止めてやったよ。俺に直接メール返信してきた、その〝侠気〟に感服して」
「侠気……」
「あれはさ、俺が姑息に副官通してメール送信してきたのが気に食わなかったんだよ。まともな回答は他の大佐の副官がするだろうから、自分は『知りたいことがあったらこんなふうに直接〝大佐〟にメールしてこいや!』って俺に〝馬鹿野郎〟メール返信してきた。……ほら、尊敬できる〝馬鹿〟だろ?」
「いや、それこそあんたの〝裏読み〟だと思いますが。その前の幹部会議であんたにこっぴどくやられたから、カッとなって衝動的に送信」
「まあ、それならそれでいいけど、俺はあのメール一本であいつを見直した」
「そんなのが、あんたのツボですか」
「うん、ツボ。たぶん、俺の〝弟〟もツボ」
「ほんとによく似た〝兄弟〟!」
「それだけに、ダーナにはアルスター大佐の話は絶対にできない」
一転して、ドレイクは真顔になった。それに呼応するように、コールタンも表情を改める。
おそらく、ここが今日の〝本題〟だ。事前に教えてもらいたかったなという思いには蓋をして、イルホンはこれまで以上に真剣に耳を澄ませた。
「〝弟〟のほうは〝わかってる〟と思うが、ダーナに被害が及びそうにならなきゃ腰は上げない。パラディン大佐は直接の〝被害者〟だから、あえて〝部外者〟でいてもらったほうがいい。となると消去法で、あんたと俺がどうにかするしかないわけだ」
「どうにかねえ……しかも、〝よかったね〟で、でしょ? ……そうですね。結果的には同じでも、向こうから呼び寄せてもらったら、本当の意味で〝栄転〟になりますね」
「向こうって……〝帝都〟からってこと? そんなこともあるの?」
「俺の知るかぎりありませんね。だからこそ、〝よかったね〟になるんじゃないかと。ただ、こいつはこっちじゃどうしようもありません。〝帝都〟の誰にナシつけて、どんな理由で呼び寄せてもらったらいいんだか」
「あんた、向こうにコネないの?」
「少なくとも、ここの軍人呼び寄せられる人間にコネはありません」
「今から大至急作んなさいよ」
「無茶言うなあ。それなら、あんたが殿下に全部話して、殿下に向こうから呼び寄せてもらったように偽装工作してもらったほうが早いですよ」
「それじゃ俺、ほんとに〝悪い人〟みたいじゃん」
「こんな話してる時点で、すでに〝悪い人〟です」
「でも……ふんふん、向こうからね。なるほど、逆転の発想だな。さすがコールタン大佐、悪巧みは得意だね。俺が見こんだとおりだ」
「俺……あんたにそう思われてたんですか?」
「思われてたから、こんな相談されてるんじゃない」
「一応、喜んどくか……」
「自分に嘘はつかないほうがいいよ」
「とにかく、現時点での俺の一推しは、〝殿下に偽装工作してもらう〟です」
「殿下はともかく、アルスター大佐が納得するような理由を考えるのが大変だな」
「確かに、現状じゃ〝どうして自分が〟って思いますよね。裏工作されたとすぐに勘づかれそう」
「よし、そこは宿題だ」
ドレイクは両手をはたいて、自分の腕時計を一瞥した。
ハンカチは持たせてあるのだが、使う気配はなさそうだ。イルホンはドレイク用に携帯しているハンカチをそっと差し出し、ドレイクは当たり前のようにそれで指を拭うと、またイルホンに返して寄こした。
「ずいぶん長居しちまったな。クッキー、こんなに食っちまった」
言われてクッキー缶に目をやれば、アーモンドクッキーだけが激減していた。
というか、あれはもう一枚くらいしか残っていない。一応、ドレイクも全部食べ切ってはまずいだろうと思ったようだ。かといって、他の種類のクッキーは食べないのがやはりドレイクである。
「あ、いつの間に!」
「あんたが落ちこんでいる間に」
「やっぱり〝悪い人〟!」
「戦術の基本でしょ。それじゃイルホンくん、そろそろお暇するよ」
「あ、はい!」
イルホンが我に返ったときには、ドレイクはソファから腰を上げていた。
もちろん、イルホンも続こうとしたが、まだ自分がトレーを持ったままだったことに今さら気づき、ローテーブルの上にさりげなく置いた。
「宿題って、提出期限はいつですか?」
見送るつもりか、コールタンも立ち上がった。
ドレイクは顎に手を当てて、独り言のように呟く。
「できれば、次の出撃では、パラディン大佐にアルスター大佐隊を指揮してもらいたいんだよね……」
「鬼ですね、あんた。あらゆる意味で」
「あ、それから、俺が続けてここを訪ねるのも不自然だから、今度はあんたがうちの執務室に遊びにきてよ。ちなみに、手土産はそこそこ高級なコーヒー豆がいい。うちの経費が浮く」
「〝そこそこ〟でいいんですか?」
「うん。あんまり高級なのは飲みつけてないから。あと、うちは砂糖もミルクも置いてないから、どうしても必要だったら持参ね」
「……鬼ですね」
「小腹空いたとき用に、茶菓子くらいはあるよ」
「そうですか。それも持参しようかと思ってました」
「持ちこみ大歓迎だよ」
「……何がいいんですか?」
「カップ麺」
「それ、あんたの食事にする気でしょ」
執務机を離れたクルタナが、こちらに向かって歩いてくるのを眺めながら、イルホンは心の中で答えた。
――いえ。俺の食事にもなります。
* * *
コールタンに見送られて執務室を出ると、案の定、あの護衛二人が自動ドアの両脇に立っていた。
もしかしたら、途中座って休憩していたかもしれないが、行きと同様、クルタナが先頭に立って歩き出せば、彼らは無言でイルホンたちの後ろを歩き、移動車の前に到着してからは、クルタナの後ろに立った。
執務室を出てからはほとんど喋らなかったクルタナだが、最後に「ぜひまたいらしてください」と薄く笑った。ドレイクは「もちろん。今度は第八のほうに」と朗らかに笑った。一言多い、しかし同感とイルホンは思ったが、クルタナは表情を変えずに「必ずそうさせます」と返してきた。コールタンとの力関係が垣間見えた一言だった。
「前から思ってましたけど、コールタン大佐って、ほんとに護衛らしくない〝大佐〟ですね」
赤みを帯びはじめた空の下、イルホンが移動車を走らせながら口を切ると、両腕を組んでシートにもたれていたドレイクはにやにやして言い換えた。
「っていうか、〝大佐〟らしくない〝大佐〟じゃない?」
「大佐。……〝おまえが言うな〟ですよ」
「確かに、俺と同じ臭いはするな。基本属性はSだが、パラディン大佐に対してだけはドM」
「そっちの臭い!?」
「そして、パラディン大佐は、コールタン大佐に対しては〝女王様〟」
「〝女王様〟。……しっくりきますね」
「え、しっくりきちゃったの?」
「しかし、例の件、本気でコールタン大佐と組んでするつもりですか?」
「もちろん本気だよ。冗談であんな話するわけないじゃない。案の定、コールタン大佐も乗り気だ。アルスター大佐って、実はみんなに好かれてなかったんだね」
「……そうですね。そういうことになりますね」
「俺は嫌いじゃなかったんだけどなあ。元ウェーバー大佐隊は元マクスウェル大佐隊よりもお行儀よくて大人しかったから、つい調子に乗っちゃったかな。元マクスウェル大佐隊員も『連合』の右翼の大半も、みんな元ウェーバー大佐隊に押しつけた」
「大佐……」
「元ウェーバー大佐隊が、本当にアルスター大佐隊と一体化してたらそれでもよかったんだけどね。実際は〝第二分隊〟として差別されてたわけだろ。それで負担ばっかり増やされてちゃ、そりゃモチベーション、ダダ下がりだ。そんなことがどうしてわからなかったのかねえ。それとも、アルスター大佐は元ウェーバー大佐隊を潰して解体したかったのかな。まあ、いずれにしろ、アルスター大佐が元マクスウェル大佐隊員の〝しつけ〟を放棄した時点で、みんなに愛想つかされたな」
「大佐は?」
「……悲しかったね。元ウェーバー大佐隊には申し訳ないけど、俺もいつかこんなふうにわからなくなるんだろうなと思って悲しくなった。だから、最後は〝よかったね〟で終わらせたいってのは、自分もそう終わりたいっていう願望から出た自己満足だよ。決してアルスター大佐のためだけじゃない」
「大佐はアルスター大佐のように、わからなくなることはありませんよ」
食い気味に否定すると、ドレイクはイルホンに顔を向けて、おどけたように笑った。
「どうして? 今だって、俺はわかってるとは断言できない」
「大佐がわからなくなったと思ったら、俺もみんなも大佐にはっきりそう言いますよ。大佐がわかってくれるまで何度でも」
「……そうか」
ドレイクは照れくさそうに笑い、前に向き直って目を閉じた。
「きっと、アルスター大佐には、そう言ってくれる部下がいないんだな。あるいは……自分で排除してしまったか」
おそらく、排除してしまったのだろう。
コールタンには七班長や四班長のような〝側近〟がいないとドレイクは言ったが、ここぞというときにはあの〝エルフ〟が進言していそうな気がする。
「……あ、そういえば」
「どうした、イルホンくん」
「いえ、いま急に思い出したんですけど……そういえば、コールタン大佐とパラディン大佐は、一昨日まで合同演習してたんだなって……」
「ああ、オールディスによるとそうらしいね。でも、パラディン大佐もコールタン大佐も、そのことには一言も触れなかったね」
「ですよね……護衛と砲撃がいったいどんな演習をしたのか、かなり興味があったんですけど……」
「それはあるな。でも、オールディスも内容や結果に関しては秘密にされてるそうだ」
「オールディスさんでさえ訊き出せていないなんて……ますます興味が湧きますね」
「そうだね。でも、俺は自分からは訊かないな」
目は閉じたまま、ドレイクは苦笑いを浮かべた。
「合同演習したのにもかかわらず、コールタン大佐がパラディン大佐を恋しがってる。……それがすべてじゃない」
* * *
クルタナが執務室に戻ると、コールタンは一人掛けのソファに座り直していて、まだあのコーヒーを飲んでいた。
「無理しないほうが……」
見かねて声をかけたが、コールタンはしごく真面目な顔で答えた。
「いや、約束どおり飲み切らないと、〝栄転〟になりそうな気がする」
「そんな馬鹿な」
「まあ、この〝コーヒー豆茶〟は別として、やっぱりドレイク大佐は面白かったな!」
「面白かったというか……怖かったですよ……二人して何を話しているんですか……」
「おまえには守秘義務がある」
「わざわざ念押しされなくてもわかっています。しかし、ドレイク大佐も大佐と同じことを考えてらっしゃったんですね」
「同じことを考えてると思ったから、俺と〝連携〟しようと思ったんだろ。……今この艦隊はドレイク大佐を中心にして回ってる。あの人と組んで得はあっても損はない」
「ドレイク大佐は、本気でアルスター大佐を切ろうと考えてらっしゃるんですか?」
「そうみたいだな。それでも〝よかったね〟にしたいってところが、いかにもあの大佐らしいよな。ダーナやパラディンは巻きこみたくないってところも」
「結局、汚れ仕事を一緒にしようと誘われて、大佐はそれに乗っかったわけですね」
「乗っかったっていうか、乗せられたな。こっちのペースで話を進めようと思ったら、いきなり『護衛、一人じゃ寂しいの?』ってレーザー砲撃された」
「『そんなにパラディン大佐が恋しいの?』もありましたね」
すかさずそう言うと、コールタンはまた「うおおおお!」と呻いた。当分はこれで遊べそうだ。だが、そんな感情は微塵も見せず、クルタナはきれいに飲み干されたドレイクのコーヒーカップをトレーに乗せて持ち上げた。
「本当にドレイク大佐は恐ろしいですね……うちみたいにスパイを使っている様子はないのに」
「スパイ言うな。噂話を収集させてるだけだろ」
「それもスパイ活動では?」
「とにかくまあ、今回のドレイク大佐の〝挨拶回り〟の真の目的は、アルスター大佐の現状把握と、うちとの同盟締結だったわけだ」
「え? パラディン大佐たちは?」
「カムフラージュだよ。特に行く必要はなかったが、〝挨拶回り〟の建前上、一応回った。このクッキーは小道具だ。これを渡して次の約束があるからとでも言えば、大した話もせずにすぐに帰れる」
「だとすると、ドレイク大佐の話したことは、どこまで本音かわかりませんね」
「だから〝本音ぶっちゃけすぎ〟って俺に忠告してくれたんだろ。いやあ、あののらりくらりとした話術は見事だ。思わず本音で話したくなる」
「〝話したくなる〟じゃなくて〝話していた〟じゃないですか。パラディン大佐のこと、もうバレバレですよ」
パラディンにはまったく相手にされていないが、表沙汰にはされたくないことではある。
コールタンはコーヒーカップを両手で持つと、ローテーブルに置かれたままのクッキー缶を見つめた。
「あの人にはもう何もかも見透かされてしまっているような気がする……」
「本当はスパイを使っていらっしゃるんでしょうか。まさか、盗聴器?」
「毎日チェックしてるからそれはないと思うが……あの人はそんなもの使わなくても、ほんの些細な言動だけで本音がわかっちまうんだろ」
軽く溜め息をついたコールタンは、しかし、楽しげににんまりと笑った。
「きっと、今日の俺はずいぶん情報収集されたな。でもまあ、ドレイク大佐ならそれでもいいかと思わせる。そこがまた恐ろしい。あんな調子で話されてたら、そら、殿下が夢中になるはずだ。……子供は話上手な大人に弱い」
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