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第四章 魔城清洲城攻め

前任者としての意地を見せるとき

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 戦闘はすぐに始まった。「佐竹」の兵士数百名ほどを吸収した、奴らはスライム状に作った槍を手にしてこちらに「信虎」勢に襲いかかってくる。

 触れたら最後すぐにスライムが動き吸収されてしまうというかなり理不尽な戦いになってしまうがそれでも「信虎」勢は果敢にも立ち向かっていく。

 奴らの槍と刀が交差した時、あわや吸収されてしまうのではないかと思ったのだが何故か奴らの槍がぐにゃりと曲がりそのまま槍が斬られしまう。

 (「どうやら……義元達の対策が功をそうしたようだな、やはり魔力をエサにしているようだな。しかもそれを取り込み新しいやつに分裂するというわけか、なるほどな」)

 既にどういう意図があって奴が生まれなんの目的で作られたのかさえわからない、もしくは作った奴でさえこんな進化する事はわかっていなかったのだと思うかもしれないだが現にこいつは人の流れる魔力をエサに人を食い数を増やそうとしている。ならば人類の敵で間違いではなかった。

  「なんとか、解析には成功したらしいなこの刀なら奴らを倒す事ができるな!者どもすすめ!」

 「信虎」の号令と共に百名の赤備えが津波ように襲ってくるスライム兵をダムのように堰き止めながら立ち向かっていく。

 「先の戦で用いた刀よりもさらに強力になっている奴らの魔力だけに反応する様に調整されている刀だ!これなら奴らのスライムの体を引き裂き再生できないまま倒す事ができるぞ!!」

 防衛戦が始まる前に義元達は既に先の戦いのデータを取っておりそこから改良を加えた刀を用意させていたのだ。

 ただし誤算だったのは五千程先行量産した刀は百本しか使われていない事であった。

 「ほんとだ!少し前に使っていた刀よりも奴らの槍が止まってしまう!」

 「これなら少しは戦えるだろうな!」

 やっと戦える事に兵士達の士気が上がり始める、そして流れが変わり始めてきた。

 一人の兵士がスライム兵を切ったのだ、その瞬間スライム兵は身悶えしながら溶けるように消えてしまったのだ。そして二度と再生する事は無く、奴がいた場所は虚しく濡れているだけであったのだ。

 「やった!、やっとこの憎らしい奴を倒すことができたぞ!」

 一人の兵士の叫びに周りの兵士達も感化されまた一人、また一人と敵を倒していく者が現れ始めたのだ。

 「どうやら、流れはこちらにあるようですよ!どうしますか!?攻め込みますか!」

 先代昌景だった老兵が叫ぶが、「信虎」は首を振り、少し下がるように指示を出す。

 「確かに攻めどきだが忘れるな?我々の兵力は百名ほどの寡兵にしか過ぎないそれに相手は恐れもしないスライムという人工生命体であり、感情が無い唯本能のまま仲間を増やす事を考えいるようだ。
 このまま攻めてはいずれ疲れた我々が奴らに飲まれてしまうだろうここは一体引いてまた攻めることにしょう」


 先代昌景は短くうなづき直ぐに兵を引き上げさせた。撤退命令に気づいた兵達はすぐに味方本陣まで引き始める。

 一方、スライム兵達は「信虎」方が引くのを追おうともせずに動きを止め、ただ様子を伺っているような感じであった。

 「全く動こうとはしないですね…もしかして魔力が多い場所に向かって動いているのかもしれませんね」

 「そうか、だから我々のような少数では動きが鈍いのかもしれないな、だがそれなら何故ワシ達を無視して動こうとしないのかが分からなくなってしまうな」

 全く動こうとしないスライム兵達に対して「信虎」達は不思議がる、あれまで猛威を奮っていた軍の動きが止まる理由が見つからないからだ。


 それからしばらく膠着状態が続く、「信虎」側にとって時間が稼げるのはいい事なのだがこちらは疲れが溜まってきてしまうしなにぶん全員が老兵であるために持久戦に持ち込まれるとかなり不利になってしまう。

 「「信虎」様、そろそろ動かないと兵の士気にも関わってきます。それに…このままでは兵糧もなくなり始めてきておりますので使いをもう一人生かして義元様から輸送してもらいましょうぞ」

 「そうだな、いささか我々も決死の覚悟で決戦に挑んだのがまさか持久戦になるとは思いもしていなかったからな。兵達の士気は想像より落ちているかもしれない兵糧の輸送は任せる。ワシは殿に状況を伝えこれからの動きをどうすべきか伺うとしようと思う」

 「わかりました、では手はず通りに兵糧の輸送をーー」

 今後の相談が大方決まった時に兵が一人慌てた様子で本陣の陣所に転がり込んできたのだ。

 「何事だ!!……お前は確か!?」

 先代昌景は驚いた表情で転がり込んだ兵士を見た、それもそのはずこの兵士は開戦後の状況を伝える為に駿河に送った伝令の兵士であったのだからなのだ。

 帰ってくるにしても一日はかかる筈なのにままだ半日も経っていないしかもかなり深手を負っているでかなり危険な状態であった。


 「もうし…上げます!奴らは私が思っているほどに敵は強大でありました!奴ら既に先回りしており、街道を封鎖しておりますここは既に孤立しておるのです!」


 「まさか、ではあの動いていない奴らはダミーで我々の視線を釘付けている間にこちらをほういしていたというのか!?」

 「そうで……ございます、それに奴らは騎兵まで真似をできるようになっておりスライムの人型では無く、私達と同じ人間と瓜二つに化けることができるようになっておりますのでどうか気をつけてくだ……さい」

 そうまで言って伝令兵ほ事切れてしまう。

 「どうやら、奴らはかなりの戦上手になるほどに成長しているのかもしれないなこれではこちらも迎え撃つのは難しくなるだろうなここはいったん包囲を突破するほかないのかもしれませんな」

 「うむ、どうやらそのようだこんな搦手を使うとは奴らを侮ってしまっていたワシにも落ち度はあるすぐに陣を畳みこのまますぐに撤退を開始するぞ!!」


 「(マズイな…いつから包囲が始まっているかはわからないがすぐさま撤退を開始しないと何もできないまま我々は全滅してしまうそれだけは避けなければならない」)

 
 すぐに撤退を開始する為に指示を出そうとした矢先にさらに慌てた兵士が陣所に息を切らせながら入る。

 「申し上げます!!敵スライムは既に包囲は完成しており、さらにスライム達が何やら不可解な行動をしております!!」

 「不可解な行動!?、それは一体どんな動きをしておるのだ!」

 「はっ!何やら共食いをしているように私には見えまして徐々に体が大きくなり何やら一人の武将の形になり始めておりまする」

 「「信虎」様!事は一刻を争う事態になりましたな!このままでは私達は!」

 「そうだな……まさかスライムにこんな悪知恵が働くとは思ってもいなかったないやはやスライムにいっぱい食わされてしまうとはないやはや全く面白いものだな!」

 状況は最悪、徐々に包囲され静かに押し寄せてくる敵しかもその数二万程さらに合体して数は変わっていると思うがそれでも敵に飲まれてしまうのは明白な状況で「信虎」は不敵な笑みを浮かべていることに周りの兵士達は驚いている。

 「だが私達は唯では死なんぞ!目的の時間稼ぎはある程度果たしているこのまま包囲を突破して先代「武田信玄」として今川家家臣としての武威を示してやろうぞ!!」


 ガタっと!イスを蹴り飛ばして「信虎は立ちあがり!白装束の陣羽織を羽織る、背中に書かれている文字は「虎」の一文字だけで実にシンプルなデザインである。

 「「山県」様!!殿が御乱心されましたぞ早くお止め下さい!このままでは早々に討死にしてしまいますぞ!!」

 元「信虎」の家臣達は口々慌てふためいていたが先代「昌景」は一人騒がずにゆっくりと立ち上がる。

  「この数十年、あの方が自ら戦うことが無かったからお前達は忘れているかもしれないが「甲斐の老獅子」と言われたことのある名将であられたその理由をお前達は見ることになるかもしれんぞ」

 「「甲斐の老獅子」?それはもう十数年も前も話ですぞ!?今の殿にそれだけの力ガタおありだともうされますか!」


 まるで過去の栄光に憑かれているかのように見えたのだろうか一人の兵士が悲痛な叫びを上げるが先代「昌景」は「信虎」と同じく不敵な笑みを浮かべる。

 「まぁ、よく見といた方が良いぞなんせ甲斐に伝わる伝説の最後をこの目で見ることができるのだからな」

 既に敵は包囲の壁を作りそのまま一息に飲み込む勢いで包囲したエサの動きを眺めているようであった。

 獲物がどう足掻くのか?どうやってこの状況を切り抜けていくのか興味が湧いているようであったのかもしれない。

 だがそんな事はこの男にとって興味は無かった既に後悔もないこの老兵はただ眼前に迫ってくる敵対峙して……。

 一閃、刀を振るうそれだけでスライムの切り口は真っ赤に燃え再生すること無く燃え朽ちていく。

 自分達が簡単に切られた事に少し動揺があったのか、スライム達は少し身構える動きをしたような気がした。
 
 だがそんな事はお構いなしにさらに一閃続けて袈裟斬りにもう二、三度切り裂き始めていく。

 それだけで簡単に再生していたスライム兵達だった分厚い壁が容易く切り崩れてぐすくすに崩れていく。

 ポッカリと包囲網に穴ができてしまう。

 「信虎」は後ろをるり振り返り、呆然と見ている味方に精一杯叫ぶ。

 「早くしろ!このまま一気に包囲網を抜けるぞ!いつまで空いているかわからないから早く進め!!」

 我に返った兵士達は一斉に駆け出し始め一気に包囲網から抜け出すことができたのだ。

 「こんな簡単に抜け出すことができるなんていったいどんな魔術を使ったんだ?!」

 「いや、魔術なんか使ってないさ、こんな芸当ができた理由はあいつの武器に意味があるのさ」

 「「山県」様!どういうことですか?」


 山県呼びをしてくる、戻って部下達に対して少し迷惑そうな顔になりつつも先代「昌景」は周りを警戒しながら口を開く。

 「あまり、こういう事は直接本人から説明して貰ったらいいのだけどなあれは「信虎」様が武田家の切り札として作らせた刀でなその名も「虎火龍刃」という宝刀でな、抜けば当たりを焼き尽くすまで止まらないと言われるほどの魔剣でな、「信虎」様しか扱えない刀だ」

  老兵達は驚きながら聞いていた、彼らも長い事仕えていたのだが全く「刀」の存在を、知らなかったのだから。

 「まぁ、無理もない。私も知ったのはつい数年前ほどだからなそれも本人から聞かなければ私もお前達と同じく反応をしていたのかもしれないな」


 「ですが、何故今まで使わなかってのですか?その「刀」さえあればもう一度「武田」の当主に戻る事かなったはずなのになぜ今まで」

 「いや、それは難しかったのかもしれないこの「刀」にはかなりリスクがあってなそれは膨大な魔力を必要とする事で使用者に多大な負担をかけてしまう、それにさらに力を解放すると本人が燃え尽きてしまうかなりマズイデメリットあってなこの話を聞いた義元様は抜く事を禁止されるほどでな」

 「それならなぜ今回それを…まさかでは始めからそのつもりで……」

 「あぁ、お前が思っている通りだ、死ぬ気だの我らの殿様は」

 先代「昌景」の話を間近で聞いていたものは足を止めてしまう、理由は言わなくてもわかってしまうというより長年追われる身になっても「信虎」ついてきた彼らにとってどうするべきかなど行動で示してしまう。

 「だがそれの役目は俺だ……俺だけで充分なんだよ見届ける役目は」

 「信虎」は駆け抜けた後今は殿を務めているその理由は出来るだけ仲間との距離をスライム達から離して自分は時間を稼ぐ為に踏みとどまるつもりなのだ。

 「しかし!それではお二人が!」

 「「殿」!!の為にもお前達は生きてほしいのだ!今スライム軍と戦ったのは俺たちだけだ少しでも情報がほしい筈だそれに実戦経験豊富なお前達がいるだけでそれだけで戦力は上がる」


 もう先代「昌景」は彼らを見ようとはしなかった彼は既に主人の元に向かう為に足をすすめていく。

 「山県様!!」

 今度は嫌そうな顔はせずに振り向くと既に年甲斐も無く涙を流している老兵達が数十名いる。

 「どうか……ご…ご武運を!!」

 泣くのを押し殺したような声で言う彼らの言葉を受け止め、彼はこの時だけ山県昌景に戻り主人の元へ全速力で向かう。


 既に殿を務めた主人がいた場所は炎に包まれていたのだが関係無かったただ主人の最後を見届ける為に彼はそれだけの為に命をかけるつもりでいるのだから。


 「さて、そろそろみんなは離れたようだな流石にワシもこの体ではコイツを扱うのには骨が折れてしまうがな」


 包囲網を抜けて殿をしてから、追ってのスライムをただひたすら倒している状況であったのだがここにきてスライム兵達が連携を取るようになってきた事に対して「信虎」は怪しみ始めていた。

 「(さて……これだけで済めばいいのだけどそうはいかないのだろうな)」

 そして少しずつスライム兵の服装も徐々に変わり始め旗指物まで身につけていく始末その旗についているのは今川の二文字であった。

 そして……

 「やれやれ、こんなどうでも良い戦にお前が出張る事は無いと思っていたのだがな」

 「信虎」は後ろから聞こえた声と押さえつけられるような魔力を感じて数メール後ろに飛び退いた。額からは汗がにじり出てきていた。

 「やはり……かまさかいや流石に貴方様がそんな簡単に取り込まれるとは思ってはいなかったからな「義元」もとい「信秀」でよかったのかな?」

 後ろに現れた男は、先程までのスライム兵とは違いほぼ普通の人間と変わらない服の色なども精巧に擬態している、まさに完璧と言ってもおかしく無いほどに。

 「いや、実際この私も仮の姿であるのだがなそれに本体は今も義元の小娘達のお陰で清洲の城で動けない状態になっている。全く鬼となった私にあのような一撃を食らわすとは思いもしなかったのだがね」

 「それなら本体は本調子では無いと言うことかな?」

 「まぁ……そう言う事になるな、現にここまで君達を追い詰めるつもりは無かったし本来ならすぐにでも幕府を潰して私が天下を獲るつもりの算段だったのだがね」

 不意に「義元」もとい「信秀」から何もないところから刀が出てきたしかも両手からそしてそして一気に間合いを詰めてきた。

 ギィンっとすんでのところで刀を間に挟む事でなんとか相殺しようとしたがどうやら少し遅かったようで「信虎」の脇腹からわずかに血が漏れてしまっていた。

 「ぐっ!?、やはり歳はとりたくないですなこの程度の一撃をかわせなくなるとは思いもしてなかった」

 「フン、老いとは悲しい物だな小僧よ。いや今はしがない老兵であったか?まぁそれは良い本当ことを言うと私もかなりかなりおいつめられていてね、今本体を襲われると非常にマズイ状況でな」

 「そうなのか?ならこのままやられてくれないかね、可愛い後輩や若者をいじめるのはやめてもらいだがね!!」

 「虎火龍刃」を振るいすぐさま「信秀」の体を二つに裂こうとしたが彼の炎刃は片腕で防がれてしまう。

 「やはり、この程度の炎では貴方様を燃やし切る事はできないようだな。それにその体は特別性のようだね?」

 「そうだな…まぁ教えといてやるよ今の私はスライム二万体分を凝縮させて作り出した仮初の体なのだよその為強度もスピードもかなり上がっている従って私はどんな奴よりも強いと自負している」

 「ほぅ、それは自陣たっぷりだなだがそんなこと言って大丈夫か?右手焦げてるよ?」

 「何?」

 「信秀」は一瞬だけ自分の左肩当たりを見てみると本当に炎が上がっており、彼の体を焦がし始めていたのだ。

すぐさま払い除けたが、その時には既に「信虎」は視界から見失っており、気づいた時には左腕が吹き飛ばされていた。

 「 「龍炎刃」と言ってなこの技は全ての炎を一瞬だけ刀に集めた切り付ける、いわば必殺剣見たいなものだしかも今回は練れるだけの魔力で炎を作った為に二万体分のスライムだったか、容易く斬ることができたぞ」


 「ほう、少しはやるようになったようだな爺さん褒めてやるがまだ甘いようだな」

 「信秀」は失った左腕には目をくれずに済ました顔で「信虎」に対して余裕がある態度を示す。

 「(やはり、痛みなどは感じないようだなそこまで人間と同じ外観でもやはりスライムはスライムと言うことだな)」

 「信虎」的には反応が無いのはあまりにも悪すぎる、少しでも痛みで怯んだところにさらなる一撃を加えたいが奴は既に涼しい顔でこちらの様子を見ている、まるで何かをまっているようだった。

 「フン!?」


 しばし時が少し流れた、お互い牽制しあって全く動く気配は無いそんな中、「信秀」が動き出す。

 「フン!」

 ボコボコと無くなった左腕の辺りからたくさんの気泡が出始めみるみるうちに左腕を再生し始め、一瞬のうちに左腕を直してしまった。


 「哀れだな、そこまでの強さがありながら当主にならなかったのが不思議でならないな」


 「あいにく、私はあまり当主に向いていなかったようでなこうしてしがない一武将としての、地位にいる方が比較的マシに思えてくるのだよ」

 「そうか、だがあいにくだがここからは様子見は無い殺せ!」

 無くなっていた左腕の動きを確認し、一気に攻勢をかける「信秀」は二刀流の使い素早く切り付けられる。

 「うおっと!?どうやら少しは本気になるようだな、ここからは私も本気でいかせてもらうとする」

 すんでのところでなんとかかわしそのまま反撃に斬りつけるが奴の刀とぶつかり合うのだがどうやら「虎火龍炎」の一撃を受けても折れる事はなかったのだ。


 続けてさらに炎を加えた一撃を奴に食らわすのだが奴の刀は折れる事は無く、むしろ跳ね返して反撃してくる。

 「相変わらず応用がすぐに効いてるようだなこのままでは私が不利かもしれないな」

 さらに十合と刀同士のぶつかり合いが響き渡る。

炎を飛ばしたり、纏わせ斬りつけたりとなんとか奴に攻撃を仕掛けるがまるでこちらを嘲笑うかのようにこちらの攻めは簡単にいなされてしまう。

 「なんだ?その程度なのか?もう少し遊べると思っていいのだがな?」

 「(どうやら、最初に感じた様にこいつはここで倒さなければならないな)」

 弾かれた炎を見つめながら一旦後方に下がりつつ状況を確認する「信虎」は相手が使う力についてわからずにいた。
 

 「(おそらく、コイツは本体を守るために出てきた防衛装置みたいなものの様らしいだからかここまで強いのかもしれないとワシは踏んでいるつもりだ。となるとこやつを倒せばそのまま清洲城まで一気に攻めることができるのかもしれん)」

 動き続けながら「信虎」は思考を張り巡らせていく、「虎火龍刃」を抜いた今彼には後が無い。攻め続けることでしか活路は、見出せない状況になり始めてきたのだ。

 「その「刀」どうやら普通の名刀とかの部類では無いのだろうな?恐らくはお前の命を犠牲にするタイプの「刀」なのだろう?」


「よくわかっているなぁ、確かにそうだこの武器はお前が言う様に最後は俺の命を吸い取る「妖刀」の類なのかもしれん」

 既に「信秀」に知られてしまった、このまま時給戦に持ち込まれてしまえば「信虎」が勝てる見込みは全く無くなる、そのまま炎に焼かれ焼け死ぬだけになるだろう……


  「だがそれはこのワシが本気にならなかったの話だからな!!」

 老兵とは思えない活力のある大声が響き渡り周りの木々が激しく揺れ動くそして「信虎」の体から漏れ出る様に炎が溢れて出てくるのだ。

 「信虎」がいる場所に向かっている、先代「山県昌景」がそびえ立つ炎の柱を確認し一気にスピードを上げる。

 「どうやら「殿」は本当に死ぬ気かもしれないな、あんな激しい炎を巻き上げるなんて見たことがないぞ!」

 紅蓮の人柱はなおも伸びており、周囲を明るく照らしはじめるほどに苛烈さを増す。

 「少しは楽しめそうな感じだな」

 益々、魔力と炎がさらに上がっていく「信虎」に対して「信秀」の顔に笑みが浮かんでくる。

 「まぁ、ワシもここまで「刀」の力を出すとは思っていなかったのだがね」

 瞬間、一気に炎が消えてしまった。

 「(!?、空気がかなり乾いてきたと言う事はこの小僧やはり何かを企んでいるのか?)」

 異様な乾いた空気の中にひときわ異質を放つ男が一人いた。

 「これでもワシは「先代武田信玄」であったからな、何より現在の「武田信玄」に見せてやらなければならないのだよまぁ先輩としての意地としてな!!」


 煤けた刀を手にした「信虎」は反撃に動く。


 



 

 

 

 

 



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