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第三章今川vs織田 怨恨渦巻く桶狭間
敵の正体は……
しおりを挟む清洲城、現在の織田家の本拠地であり、現当主の「信長」の手腕により今の尾張を経済大国にまで成長させた。
だが今この城は何者かにより乗っ取られてしまい怪しい妖気に満ちあふれている。
「うまく「信玄」達は陽動してくれたようですね。これで動きやすくなりました」
既に「信玄」達連合軍が勝っていることは知らずに義元は清洲城に侵入している。
「人々の姿が全くありませんな?一体どこに行ったのでしょうか?」
現今川家中一最強と言われている、岡部元信は何か罠がないかと視線を鋭くし周りを観察している。
「何も無いとは思うわよ、もしかしたらもう民はいないのかもしれないけどね」
「それは一体どう言う意味で?」
意味ありげな事を言う義元に対して元信は眉をひそめる。
「いや、単純に殺されたか、操られてしまったのかの二択だと思ったんだけどね、あの時の奇襲で違和感を感じね。よくよく考えたらあの部隊、もしかしたらこの国の民だったかもしれないよ?」
「まさか……あの「信長公」がそのような事をするとは思いませんぞ」
義元の仮説に真っ向から元信は否定してくる、彼は一度や二度では無いが「信長」の姿を見ているのと一時期は会談の場で話をしたことがあるために少しだけ人となりを知っている為に彼は納得がいってなかった。
「まぁ、確かにあの娘ならあり得るかもしれないがだがなここまでくるとそうは言ってはられない」
少しずつ周りを警戒しながらゆっくりと城の上を目指そうとしていたのだが、不意に義元の表情が曇り、急に階段を降りていく。
義元の急な動きに元信は慌てて合わせながらも彼の顔には納得が言ってはいないと書いてあった。
「やはり、あの時奇襲された兵士達に何かしらの催眠的ものがかけられていたのかもしれないと思って降りてみたのだがやはり当たりだったのかもしれないな」
今まで上がった階段を全て降りて彼女は魔力が感じる方に視線を向けるの、そこでひときわ何かを感じれるところを見つけゆっくりと畳を退ける、そこには厳重にカギがかけられた扉があった。
「これは一体どういうことですか?」
「私もわからないが、ここからかなり嫌な魔力が流れてきているのがわかるということだけ伝えておくよ」
元信には義元の言っていることはあまりわからなかった。元来武人として鍛えてきた彼にはそもそも魔力を探知する能力は欠けていたのであるからだ。だが義元は昔から魔力探知に関してはかなり優秀であった、そのおかげで今回の奇襲も難なく切り抜けることができたのである。
「この下に行ってみるとするか?元信多分だが私の予想ではここに真実が隠されているかもしれないと思うんだよ」
元信を手招きしつつ、義元は彼の返事も聞かずにゆっくりと下に通じる隠し扉を開く。
「わかりました、ですが危ないとわかったらすぐに帰りますからね。一応何人かは連れて行くほうがよろしいですか?」
勝手に開ける、義元に対して元信は何も言わずについてきてくれた、何名かの兵士に視線を向ける。
一緒に向かう時にいた兵士達だが陽動や撹乱の為にかなりの数が陽動側になったために数える程度、五人しか残っていなかった。
「そうですか?、なら全員連れて行くのがいいだろうしな」
義元の言葉に元信は首を横に振る。
「いや、一人はここに残しておこう、流石に全員が行くには危険すぎるそれに最悪義元様だけでも逃した時に誰か護衛が一人でもいないとそんな向こう見ずな事はできない」
残った五人の兵士達もうなづき、義元を見つめていた。
「そうか……そうだななら君達の気遣いに甘えるとするよ」
そうして一人だけ残ることにして義元、元信を含めた六名で隠し通路へと降りて行くのであった。
隠し通路へと続く階段を降りてしばらく歩いていて義元が気づいたのは最近造られた場所らしくかなり設備が新しいもので溢れているようであったのだ。
「どうやら、ここで間違いないのかもしれない、かなり濁った魔力反応がたくさん存在しているからここで非人道な実験が行われていたのは確かよ」
義元の魔力探知は確かに優れている。それをより正確にしているのは彼女の右眼にだけ備わっている、魔眼によるものだ。
義元曰く、魔力の色は水で例えるなら普通の人は透き通った水なのだが人とは違う魔物とかの色は茶色く濁った感じでドロドロとしているらしい。
そのドロドロとした反応が複数もあるために義元はここが実験場であったことを推察することができた。
「わかりました、義元様ここでの魔眼を使われるのはかなりお身体に負担になっておりませんか?」
元信は義元の体調を気遣う、それもそのはず魔眼事態珍しいものであるがその分魔力消費が激しい。
さらには汚れた魔力を見ることは使用者に対して精神汚染にも繋がりかねない為に探知などで使うときでも常時使用してしまうのはあまり良くない。
「あぁ、大丈夫よ。それなりにこの眼については訓練もしているので簡単にダメになるわけではないかね」
元信がふと義元の顔を覗くと右目の色が青く輝いている。
その美しさに見惚れてしまいそうになった元信は首を振り、先へと続く道へと無理矢理体を動かして進ませる。
どのぐらい歩いたかわからないが順調に先へとは進んでいることはわかっている。
義元の魔眼のお陰でもあるが罠などにかからずに案外すんなりと奥へと進んでいる。
途中、逃げる際に場所がわかる様にマーキングをつけながらなんとか研究室みたいな場所にたどり着くことができた。
「ここから、人の魔力が感じるからここに今回の首謀者がいることは間違いない」
扉の前で義元の顔が少しだけ強張る、その様子を見た元信は手にした槍に力を込める。
「義元様、最初は話し合いになるでしょうがもしそれが終わり次第私が先鋒を務めて切り掛かりますゆえ」
「頼りしているよ、早いとここんな茶番みたいなことは終わらせて氏康にあわなきゃな」
義元はゆっくりと扉に触れる、するとゆっくりと扉が開いていく、魔眼による魔力解析でどうやらこの扉は一定の魔力で開く事はわかっていたのだが。
義元はある懸念点があったことを元信達に告げていなかった。
それはこんな簡単に開くセキュリティをしていることは確実に罠である事、それと確認した魔力は確かに人の魔力であったのだがその中にうっすらと人ではないものが混ざっていた様な感じしたことであった。
彼女の強張った表情になったのはそのことが少し気がかりであったのだがそれに元信は気づけなかった。
扉を開けた瞬間、そこにいたのはしがない老人が車椅子に座っていたのだ。
だがその顔に見覚えがあり、動揺したのは義元より元信が顔色を青くしていた。
「どうしてあなたがここに…いや何故生きておられるのですか!」
青ざめた顔を抑えながら叫ぶ元信に対して老人は渇いた笑みを浮かべていた。
「まさか、小娘だけがくると思っていたのだがよもやお前までくるとは思っていなかったぞ」
嘲笑う様に元信を見つめ渇いた両手を叩く老人。
「あいつは一体何者なんだ?お前の反応から相当ヤバいやつだと言うことはわかっただがこれから私達がどうすればいいかわからないだから教えてくれあいつは一体!?」
狼狽する、義元に対して元信は優しく問いかける。既に彼女は「今川家伝来の鎧」を召喚する準備に入っている。
「奴は…おのお方は三代前の今川義元であり織田信秀だった男です。ですがそれは彼が人間であった時の名前でした。ですが今の彼は」
そこで勢いよく息を吸い元信は答えた。
「鬼です、れっきとした怪物です」
それは誰も予想だにしない名であった、その瞬間全員魔力回路を回す。
既に義元は鎧を装着していた。
「なら、鬼退治をしましょうね!」
今、現代初の鬼退治が始まろうとしていた。
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