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第15節 ~史上最低辺の戦い~

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少し湿った土の様なベッドの感触に俺は目を覚ま――――――既視感デジャブ

俺は急いで起き上がると辺りを見渡す。
良かった、森の中では無い様だ。
少し先の“平野”から煙が上がっているのが見える。
おそらくあそこで原因不明の爆発に巻き込まれて、爆風でここまで吹っ飛ばされたのだろう。

見覚えのある風景だ。
夢から覚めたら別の異世界、を願っていた俺からすれば落胆の事実である。

さて、俺としてはもう一つ確認したい事があった。
今回見た夢・・・アレがどういう意味で見れたのか、と言う事だ。
もしかしてこの世界におけるLvUPの儀式的なモノなのかもしれない、と期待しながら俺は立ち上がる。

もしこの仮定が事実ならば、俺はLv108の冒険者になっているはずだ。
そうならばもちろんスキルも使えるわけで。

確か夢の中で最終的に残したスキルは『女神の加護』、『隠密』、『韋駄天』、『異次元のバックパック』、『ステータス』、『走覇者』の6つだった。
『女神の加護』は呪いの類みたいなので今回は無視するとして、効果の分かりそうなものと言えば『隠密』と『異次元のバックパック』ぐらいだろうか。
『隠密』おそらく名前の通り気配を消すとか姿を消すとかそんな感じのスキルだろう。
『異次元のバックパック』はスイナの説明にもあったように移動型冒険者が覚えるというアイテム保有用の常時スキルなはずだ。
ただ、『異次元の~』と言う部分がよくわからないが、おそらく保有量の増えたバックパックスキルと考えればいい気がする。

他の『韋駄天』と『ステータス』、『走覇者』はおそらく自己能力上昇系のスキルだと思うんだが、よくわからないので冒険者ギルドでステータス確認する際に効果を見よう。

ひとまず、使えそうな『隠密』スキルを使うべく声に出しながらスキル名を念じてみる。

「『隠密』」

直後、俺の全身に不思議な力が漲るような感じがした。
自分の手は見えているので、透明になるスキルではなかったようふだ。

都合よく少し離れた川辺にゴブリンが見えたので俺は近づいていく。
気配が消えていれば、それで効果が分かるはずだ。

100m・・・90m・・・80m・・・

ちょうど俺とゴブリンの距離が50mに差し掛かった時、ゴブリンが何かに気付いたようにハッと俺の方を振り返る。
そして、獲物を見つけたようににんまりと笑った。

「ありゃ?」

予想外どころの問題じゃない。
50mって通常状態でも反応されない距離な気がするのだが・・・。
もしかして、夢は夢だったってオチじゃないよね?

俺が頭を悩ませる間もゴブリンは棍棒を振り回しながら近づいてくる。
ここで俺は致命的なミスに気が付いた。

武器が無い!
仕方ないので足元に落ちていた20cmくらいの木の枝を拾い上げる。

俺の腕ぐらいの太さがある棍棒vs小指くらいの太さしかない枝。
RPG協会もびっくりの戦闘だと俺は思う。
なんせ、ここに立っている俺自身が一番驚いているんだから。

「勝てるわけない!」

俺の叫びもむなしく、ゴブリンは棍棒を持ち上げると全力で振り下ろしてくる。
俺はその攻撃を避ける為、急いで横へと転がった。
ゴブリンの動きはそこまで早くないので、なんとか今の俺でも避けることが出来る。
攻撃なんて当たらなければ無いのと一緒だ。

「ゴブッ!」
「ジャンプ!」
「ゴブ!?」

ゴブリンが俺の回避に驚いたような表情を見せる。
「なんでこんな雑魚が回避なんて使えるんだ」的な表情だった。
実に心外だ。

「ゴブゴブ!」
「ぬ、フェイントだと!だが、あまい!」
「ゴブッ!」
「何のっ」
「ゴブブ!」
「これしきっ」
「ゴッ、ブッ!」
「俺にはっ」
「ゴブ!」
「朝飯前だな!」

ひたすらにゴブリンが攻撃し俺が避ける。
5分にも渡る史上最低辺の戦闘がここにあった。

史上最低辺の戦いに大きな変化が現れたのは、俺がゴブリンの攻撃を避け始めてから5分ほど経った頃だった。

そろそろ避けてばかりじゃいられないと俺が攻撃に転じる。
避ける方向を少し変えゴブリンの真横へと移動すると、持っていた枝でゴブリンの腕を叩く。

ズシャァッ
「ゴブゥゥゥーーーーー!!?」

直後、ゴブリンの左腕が斬り飛ばされた。

「・・・・・・」

目の前に事実に俺の頭がついて行けない。
木の枝でなぜ斬撃が?
まさか、魔剣『木の枝』とか言わないよな?
どれだけ考えてもよくわからないので、瀕死のゴブリンにもう一度枝を振る。

ズシャァッ
「ゴブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!」

断末魔のような叫び声をあげてゴブリンが真っ二つになった。

「・・・・・・」

どうやらまぐれではなく、本当にLvUPして強くなっているようだった。
ただ、LvUPはしているが、スキルはなぜか使えない。
分からない事ばかりだが、早急に街へ戻りステータスを確認しなくちゃいけない事だけはよくわかる。

「・・・・・・よし」

考えるのも面倒になったので、俺は街を目指して歩き始めた。
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