12 / 21
11話
しおりを挟む
和樹は、自分の症状に気づいていない。
自分で気づくことは難しいだろう。
でも、周りの人は和樹が忘れていることに気づいてなかった。
和樹がふざけていると思っていたのだろう。
次の日────────
今日の昼休みに屋上に行く。
その事を忘れないように授業を受けている。
4時限目。
いつも眠くなる国語を終え、昼飯を食べている。
いつもの如く、1人で食べてるが今日はなんだかクラスの雰囲気が違った。
なんでかと考えていると、和樹の様子がおかしかった。
いつものはしゃぎすぎておかしい、ではなく、喋らなすぎておかしい、だ。
体調が悪いのか。
俺にはわからなかったけれど、周りの和樹の友達は、和樹の異変に気づいてないみたいだった。
昼食を食べ終わり、直ぐに屋上へ向かった。
階段を上がっていると、普通はあまり吹かない風が、踊り場にふきつける。
1番上まで上がると、屋上のドアが空いている。
いつもは、ほとんど閉まっているというのに。
「誰かいるのかな。」
屋上に入り、周りを見渡すと人の姿が。
その人は、屋上のフェンスを飛び越えようとしていた。
「ちょ、ちょっと!待って!!」
先輩か、後輩かも分からないのにタメ口で叫んでしまった。
そして、フェンスの中に連れ戻した。
「やめろっ!」
その声の主は、
「和樹。」
「なんだ、大翔か」
「大翔か。じゃないよ!何してんだよこんなところで」
「別に。何も。。」
「何も。」という声は、嘘をついてる時の声だった。
「本当は何があった?」
俺がそう聞くと、和樹は少し黙り込んで言った。
「嫌なんだよ。」
「えっ、」
「病気が進行してるって言われて、どんどん弱って死ぬ。そんな姿を見られたくないんだよ。病気ってこと隠してても、結局はバレるし、皆に気使わせたりするじゃん。そういうのが嫌なんだよ。弱っていくところを見られるのも嫌だ。」
和樹がここまで追い詰めてるって気づくことが出来なかったんだ。
「だからって、なんで死のうとするんだよ。」
「どうせ死ぬなら、苦しんで死ぬより、サッって痛みも苦しみもなく死にたい。周りのヤツらに迷惑かけずに」
「余命なんて、ただの基準だろ。実際、和樹がどこまで生きるかなんて誰にもわからないじゃん。もしかしたら、余命より長く生きるかもしれないだろ。諦めんな。」
「諦めんな。か。」
「えっ」
「ありがとな。大翔」
「俺は、別に大したことしてないよ。」
「大したことだよ。大翔は、俺の命を救ってくれた。ここに来てくれてありがとう。」
「ほんと、来てよかった。あ、思い出じゃないけどさ、明日の放課後どっか行かない?」
「おう。放課後な。久しぶりで楽しみだわ」
「俺も。教室戻ろっか」
「うん」
和樹の気持ち。気づけなかったのが、少し情けない。
でも、和樹を助けることが出来て良かった。
遊ぶ約束も出来た。
和樹を、今まで以上に支えていこう。
自分で気づくことは難しいだろう。
でも、周りの人は和樹が忘れていることに気づいてなかった。
和樹がふざけていると思っていたのだろう。
次の日────────
今日の昼休みに屋上に行く。
その事を忘れないように授業を受けている。
4時限目。
いつも眠くなる国語を終え、昼飯を食べている。
いつもの如く、1人で食べてるが今日はなんだかクラスの雰囲気が違った。
なんでかと考えていると、和樹の様子がおかしかった。
いつものはしゃぎすぎておかしい、ではなく、喋らなすぎておかしい、だ。
体調が悪いのか。
俺にはわからなかったけれど、周りの和樹の友達は、和樹の異変に気づいてないみたいだった。
昼食を食べ終わり、直ぐに屋上へ向かった。
階段を上がっていると、普通はあまり吹かない風が、踊り場にふきつける。
1番上まで上がると、屋上のドアが空いている。
いつもは、ほとんど閉まっているというのに。
「誰かいるのかな。」
屋上に入り、周りを見渡すと人の姿が。
その人は、屋上のフェンスを飛び越えようとしていた。
「ちょ、ちょっと!待って!!」
先輩か、後輩かも分からないのにタメ口で叫んでしまった。
そして、フェンスの中に連れ戻した。
「やめろっ!」
その声の主は、
「和樹。」
「なんだ、大翔か」
「大翔か。じゃないよ!何してんだよこんなところで」
「別に。何も。。」
「何も。」という声は、嘘をついてる時の声だった。
「本当は何があった?」
俺がそう聞くと、和樹は少し黙り込んで言った。
「嫌なんだよ。」
「えっ、」
「病気が進行してるって言われて、どんどん弱って死ぬ。そんな姿を見られたくないんだよ。病気ってこと隠してても、結局はバレるし、皆に気使わせたりするじゃん。そういうのが嫌なんだよ。弱っていくところを見られるのも嫌だ。」
和樹がここまで追い詰めてるって気づくことが出来なかったんだ。
「だからって、なんで死のうとするんだよ。」
「どうせ死ぬなら、苦しんで死ぬより、サッって痛みも苦しみもなく死にたい。周りのヤツらに迷惑かけずに」
「余命なんて、ただの基準だろ。実際、和樹がどこまで生きるかなんて誰にもわからないじゃん。もしかしたら、余命より長く生きるかもしれないだろ。諦めんな。」
「諦めんな。か。」
「えっ」
「ありがとな。大翔」
「俺は、別に大したことしてないよ。」
「大したことだよ。大翔は、俺の命を救ってくれた。ここに来てくれてありがとう。」
「ほんと、来てよかった。あ、思い出じゃないけどさ、明日の放課後どっか行かない?」
「おう。放課後な。久しぶりで楽しみだわ」
「俺も。教室戻ろっか」
「うん」
和樹の気持ち。気づけなかったのが、少し情けない。
でも、和樹を助けることが出来て良かった。
遊ぶ約束も出来た。
和樹を、今まで以上に支えていこう。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
【R18】僕の筆おろし日記(高校生の僕は親友の家で彼の母親と倫ならぬ禁断の行為を…初体験の相手は美しい人妻だった)
幻田恋人
恋愛
夏休みも終盤に入って、僕は親友の家で一緒に宿題をする事になった。
でも、その家には僕が以前から大人の女性として憧れていた親友の母親で、とても魅力的な人妻の小百合がいた。
親友のいない家の中で僕と小百合の二人だけの時間が始まる。
童貞の僕は小百合の美しさに圧倒され、次第に彼女との濃厚な大人の関係に陥っていく。
許されるはずのない、男子高校生の僕と親友の母親との倫を外れた禁断の愛欲の行為が親友の家で展開されていく…
僕はもう我慢の限界を超えてしまった… 早く小百合さんの中に…
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます
おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。
if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります)
※こちらの作品カクヨムにも掲載します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる