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新入生歓迎会
し、嫉妬じゃないやい!
しおりを挟む「はぁ…シルクのように柔らかい蜂蜜色の髪も、シルクのように滑らかで白い肌も、飴細工のように輝く瞳も全て美しい。ふふ、剥製にして我が家で飾っておきたいほどです…」
「は、はは、ありがとうございまぁす……」
やばいやばいやばい
何がやばいって、オレを対面になるように膝の上に乗せ、うっとりと見つめてくる美緒先輩がやばい。なぜこんな体勢なのかって…?いや知らん知らん!!!真顔で急に、こちらに来てくださいませんか?とか言われたから近づけば、流れるように腰を抱かれこの体勢にされただけなんだが何?!なんで??!
普通に恥ずかしすぎるし絶対重いはずなので下ろしてくださいと暴れてみたが、この細い腕のどこにそんな力があるのか手を掴まれ腰をグッと抱かれるだけで全然抜け出せる気配がしなくて泣きそうだ。そんなオレの抵抗と泣きそうな顔を見てさらにニッコリと微笑む美緒先輩が怖すぎるし…
美緒先輩曰く不細工を至近距離で見て触れたことで動悸息切れのような発作が起きてしまったらしいが…そ、そんなことある??なんか久遠くんのように美しい人を見れば落ち着くとか言ってるが…いやそんな事ある????ないことになれ。…というか別に動悸息切れ起こしてなかっただろ…!!
この体勢も意味わかんないしオレそんなに美しいことはないだろ~!なんて疑問も言いたいこともあったが、一応こんな残念なところを見せられても憧れの美緒先輩だからなと黙ってされるがままになっていれば先程の発言だ。
な、なんでオレこんな恐怖体験させられてるの…?
冗談ですよねと聞きたいが、目がマジな感じだし否定された時が怖すぎて何も言えない…!それに、見ていれば落ち着くとか言っていたくせにぺたぺたとオレの髪や頬、体なんかに触れてくるんだが…いやっ…ちょ、なんか、て、手つきがいやらしくないですか!!?
誰だよ美緒先輩のこと優しくて頼りになる先輩だから仲良くなりたいとか言ったやつ~~~!!!??
オレだよ~~ッ!!!!騙されたぁ…!!!!
それに不細工を見たから~なんて言ってるが、美緒先輩の親衛隊はチラ見しただけだが別に不細工だとは思わなかったし…なんなら見た目だけ見れば男らしさを感じてかっこいいまであったと思う。それなのにそれで動悸息切れをしましたって…まあ美醜感覚は人それぞれだけど、美緒先輩顔が整っているのハードルがクソ高いんでは…???
そう思うと余計にこの状況が不可解に思えてきて謎に焦ってしまう。いやオレ、自分の顔が整っている部類に入ることはもちろん自覚してるけどさぁ…チャラついてる感じがもうマイナス点すぎて美緒先輩レベルと比べたら月とすっぽんな気がするじゃん…?
……あと、これはただちょ~っと思っただけなんだが、美緒先輩が美しいものが好きだというならあんなに茜くんに構っていたのも納得である。中身はあんなにわんぱく小僧でも、マジで茜くん顔だけは美少女だからな。今はオレに対してこんな感じの美緒先輩だけど、確かに茜くんといたらオレなんか霞んじゃうよね、なんて。そんなことを考えてしまい、なんだか胸がモヤッとする。
「はぁ…ずっと…くんと久遠くんを…こう…て眺める…どうすれば……」
「へ?」
考え事をしていたからか、美緒先輩がボソッと何かを呟くが聞き取れなかった。何だこの鈍感主人公みたいなうっかりは。切実に聞きたくないが今までからして聞かなかった方が怖いので、今なんて言いましたか?と聞き返してみる…が、なんでもありませんよと微笑まれれば笑顔の圧と神々しさで何も聞き返せなくなる。くそっ、本当に顔が綺麗だなぁっ…!!!
なんて1人取り留めもないことを考えていれば、美緒先輩が何かに気が付いたような顔をする。
「……そうだ久遠くん、もし将来特に予定がないなら私の秘書なんて興味ありませんか?」
「はぁ……えっ!?きゅ、急に!?」
「それなら私も久遠くんの美しい顔を見ることができますし、久遠くんにとっても悪い話ではないでしょう、いけませんか?」
い、いけませんが??なんなのこの人急すぎない…?ついでにそれ今?今しなきゃ行けない話だった??
割と今後の進路的に超重要なことのはずだが全然集中できないし、頭に入ってこない…!それに、平時であれば嬉しいはずのその勧誘も、今この状況では全く違う意味というか、不純な動機が見え隠れどころか飛び出してきてしまっていて全く喜べないんだが…!!どう考えても悪い話だコレ!!!!
「い、いやぁ、はは……というかぁ!それなら俺なんかより美緒先輩の方がよっぽど綺麗だし、あの、えっと…あっじ、自分の顔鏡とかでみとけばいいんじゃないですかぁ!?な、なんなら俺じゃなくて、茜くんでもぉ…」
そこまで言って、顔がサァーと青くなる。
このままなし崩し的に勧誘される訳にはいかないと話題を変えようとして焦って言い返してしまったけど、い、今のめっちゃ嫌味みたいじゃなかった!!?いや違うんですもう本当に口が滑ったというか焦りすぎて何も考えてなかったというか~!!!
「………おや、久遠くん」
ビクッ
必死に言い訳を考えていれば、真剣そうな声で呼びかけられ体が跳ねる。わ、ワァ……!!美緒先輩怒ってるゥ??!そりゃ一般庶民がええとこの坊ちゃんに、そんなに美しいものが好きなら自分の顔でも見とけなんて生意気言ったらねぇ~~~!!
ところでここから入れる保険ってあるんですか!!?ない???!知ってたァ~ッッ!!!!美緒先輩の顔怖すぎて見れないんだけどぉ~~!!!
「いやあの、べ、別に深い意味はなくて!そのほんと純粋にあの美緒先輩綺麗だしなってぇ…!!」
「…もしかして、嫉妬させてしまいましたか?」
「ち、違います嫌味とかでもなく、て……へ……?」
い、今なんて??
完全に怒られると思って焦りのまま言い訳を撒き散らしていたから、美緒先輩が言った言葉の意味が頭に入ってこなくて間抜けな声を出してしまう。
な、なんて?嫉妬!?いやいやいや、オレはただこの状況を抜け出したかっただけなんですけど…?!それに普段は茜くんのこと可愛いとか言ってるから、オレじゃなくて茜くんにこういうことすればいいのにってモヤッとしただけだし!!
この先輩のことが全く理解できないと呆れていたが、先程の自分の発言を思い返して固まる。
……あ、あれ?オレ、モヤっとしたの??そ、それに何でわざわざ茜くんのこと言っちゃったんだろおれ。これじゃ本当に嫉妬みたい…じゃ…
そうして回らない頭をフル稼働させて思う。
…………あれぇ!??オレ嫉妬しちゃってた!!??
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みーんな茜くんにばっかり構って!!!
遥くんも私もちょっと怒っているのですよーー!( ・᷅-・᷄ )
親衛隊という絶対的な味方と、遥くんにあまあまな風紀委員がいなければ、ちょっと嫉妬してるかわいい遥くんを楽しむ余裕なんてなかったです……
千歳も早く戻ってくるんだ!
遥くんが悲しんでるぞーー!
こーんな心の中まで可愛くていい子を放っておくなんて生徒会のみんなは有罪ですよ!
鬼ごっこで風紀委員の方々も出てきますかね?^^
風紀委員長にたじたじな遥くんがとっても好きなので期待してスタンバイしてます笑
イラストは描くのは12月以降になってしまうのですがお嫌でなければ…( >ㅅ< )՞ ՞
Twitterのユーザー名を教えていただければお送りしたいです!
最近寒くなってきましたので、作者様も体調にお気をつけください!
続きも楽しみにしております!!
全体的にめちゃくちゃ好みの内容で一気読みしちゃいました!
すごく面白かったです
これから先の展開が気になりすぎます‼︎
応援してます!
更新ありがとうございます!!
今回もすごく面白かったです。
私も思わず一緒にえ!?そっちなん!?
ってなってしまいました。
次の更新まで何周も見返しておこうと思います!
応援してます!作者神
返信の方遅くなって申し訳ありません!素敵な感想をありがとうございます…!!
私としても美緒先輩は真人間枠の予定だったのですが…何故かこう言う変わったキャラの方が筆が乗ってしまうんですよね……
こんな拙い作品ですが、そう言っていただけると胸がいっぱいです…これからもゆっくりではありますが更新していきたいと思っているので、楽しんで頂ければ幸いです。