チャラ男は愛されたい

梅茶

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入学式編

おいおいおい…

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学校に合わせるためにチャラ男になったぐらいには決断力と行動力があるオレだ。
そこからは早かった。

すぐにその学校に出願届を出し受験準備をしていく。募集期間ギリギリで、このチラシを見るのが遅かったらと思うとオレはなんて運がいいんだろうとニコニコしてしまった。普段から勉強しているからか受験勉強も大してすることはなくすぐに入試を迎え見事合格することが出来た。

ちなみに同中の奴らには実家に帰る的な事を適当にぼかして伝えた。オレがそんなおぼっちゃま学校に行くことを知られたらなんて言うか…ついてきそうな奴もいるし絶対に口外はしなかった。偉いぞオレ。

そして迎えた運命の日…そう、入学式である。さすが金持ち学校というか荷物は全て寮に運んでもらっていて、前も言った通り成績上位者は授業料、寮代が無料なのだ。また寮の個室はすごく広い一人部屋となっておりかなり手厚い待遇だ。

あぁ、やっぱりオレの選択は間違っていなかった……そう、間違っていなかったはずなんだ…しかし、自分を守るために必死に作ったチャラ男というキャラは簡単に治るものではなかった。むしろこの格好じゃないと不安になるほど重症だ…。

く、くそっ…!オレはここでもあの不良校の影響を受けなきゃ行けないのか…!真面目になってまた小学生の頃みたいにチヤホヤされたかった…!流石だねって先生に褒められたかった!!

そう、この話からわかるようにオレは高校生になって髪を黒く戻すことをしていない。なんならピアスに制服の着崩してまでしている。あぁ…こんなお坊ちゃま校でこの格好は絶対目立つ…グッバイオレの青春…おはようぼっち生活…

そんな超絶ネガティブなことを考えながら門を潜るとチラチラと感じる視線。そりゃそうだよなと思いながらも、視線を集めていると自覚したことで、なんでもない風を装う癖が出てしまいあくびが出る。入学式に髪染めて制服着崩してあくびしながら歩く舐め腐った新入生がいるってマジ??オレなら絶対関わりたくないね!!ってオレじゃん!ガハハハハ!!!!…………はぁ~

高校生デビューも失敗に終わりそうな予感に昨日父に応援されながら練り上げた自信がどこかに旅立っていくのがわかる。

せめて…友達とまでは行かなくても誰か話せる人…!話せる人が欲し"い"…!!(泣)


そんな風に考え事をしながら歩いていたのが悪かったのか、玄関で人とぶつかってしまう。身長差があったからかよろけて転けそうになってしまったその子の手を慌てて取り、なんとか転けさせてしまうことは回避した。

あ、あぶね~!!ただでさえ巫山戯た格好で浮いてるのにこれで誰かを怪我させてみろ。お前はチャラ男じゃなくて不良キャラで生きていかなきゃ行けなくなるんだからな???そんなん心がしんじゃう……!!

心臓バクバクのまま何とか笑顔を保ちその子に声をかける


「あっ…ぶなぁ~!ごめんねぇ前見てなくてぇ~!怪我してない…?」
「ひゃ、ひゃぃぃ……」


ひゃい?不思議に思ってその子を見ると何だか目がハートマークになってるような…それに制服は男物だし髪も短いけど、声は高いし背も低い…そして顔が可愛い…えっっ!?この子女の子じゃない!!??

慌てて体を離し、真っ赤になってしまった頬を触る。あ、熱い!もしかして熱があるんじゃ?なんてこった。オレがぶつかったせいとか!?あとここって男子校じゃなかったっけ!!?頭の中が混乱して真っ白になるが、体に染み付いたチャラ男が自然と女の子を相手にしたように動いてしまう。


「あれ、顔が赤い!もしかして熱があるんじゃない?!ほ、本当にごめんねぇ~!!取り敢えず保健室行こ!」
「そッそそそそんな!!あ、あっていきなりなんて大胆すぎますぅ…!!!///」
「????」


な、何だこの反応。よくわかんないことになってきたぞ……?どう返せばいいか困って目線を下に下げてピシッと固まる。

こ、この子……勃起してる!!!!??

おいおいおいなんてこった。こんな可愛い顔した子が男!?というかなんて勃起してるの!?オレか?オレのせいなのか??!いやそんなわけあるか。流石におかしいだろ。

そして少し前のあまり噛み合わなかった会話を思い出す。つまりなんだ?この子はオレが善意で保健室に連れてくよって言ったのをお誘いだと勘違いしたってこと??そんなバカな。ここは金持ちでおしとやかなお坊ちゃまたちだらけの学校ではなかったのか???

顔を赤くしてるのも照れてるのだと察する。誰か助けてくれと周りを見渡してみるも、大体がこの子と同じように顔を赤くして「きゃぁ~!大胆!!」「あの子いいなぁ僕も誘ってほし~!」「チャラ男攻め最高じゃん…」「い、色気がやばい…ウッ//」と完全にオレが誘った雰囲気になっていた。なんで????

や、やばい…でも目の前の子も貴方様が言うならってモジモジしてるってぇ~!!泣


「あ、な、な~んだぁ、熱はないっぽいね~!!勘違いだったみたい!じゃあオレ教室行かなきゃだからぁ~」
「ひ、ひどい!貴方様から誘ってきたのに、僕をこんな状態にして捨てるんですか!?お願いしますぅぅ!!一回ヤルだけでいいんで僕に思い出をくださいぃ!!」


ひぇ~~怖いよ~~!!!!誘った覚えもないしそもそも拾ってないんだよな~~!!!!
………うぅん、お坊ちゃま学校だと思って抑えてたけどこれはもうチャラ男風にあしらうしかないか…!!

オレは自分の容姿の良さも声の良さもある程度把握してる。そしてそれが色んな人に好かれることも。そんな色んな人の中でもオレに性的興奮を覚えるやつは不良学校に通っていたからか結構な数いた。チャラ男だったら全員とは言わないが可愛い子だったりしたら即OKでヤッちまうんだろう。

しかしオレはエアチャラ男なので本当にヤるなんて貞操観念的にNGである。ならチャラ男だと思わせたまま無理やりにでも性行為に持ち込もうとする輩をどうするのか?
簡単だ。少し声に甘さを含め目の前の子に顔を近づける。


「ふ~ん…そんなに俺とシたいんだ~?」
「はい!!!!」


すごい熱量で返してくるな…
少し怖気づきそうになりながらもその子の頬をスルっとひとなでして、そのまま耳たぶに触れる。オレなら行けるオレなら行けるオレなら行ける。そう頭の中で繰り返しながら手で触ってる方とは反対の耳に顔を近づけ、少し息を吹きかける。それだけでこの子は顔を今以上に真っ赤にしビクッとしてしまう。
そうしてたっぷり色気を含ませた掠れた声で囁く。


「…えっち…♡」
「」


これである。数々の参考書少女漫画を参考にオレの顔と声の良さを存分に活かしたこの技で大抵の子は動けなくなるし、酷ければ気絶してしまうのだ。…自分で言ってて恥ずかしいなこれ。いやさ??最初はそんな自意識過剰な感じではなくて、焦ってオレのイメージするチャラ男風に動いてみたらたまたま成功しちゃっただけなんだけどさ??

…何回かやってみたら高確率で成功しちゃったから味をしめたというかなんというか……これで落ち着くならいいんじゃないというかなんというか…
まともに食らった男の子を見ると、湯気が出るほど真っ赤になりながらへなへなと崩れ落ちてしまっていた。なんならプシューって幻覚まで聞こえた。

自分で連れて行ってもいいがまた動きだしたらが怖いなぁ。そう思って近くにいて流れ弾をくらったのか、顔が真っ赤になっていた男の子の集団に声をかける。


「ねぇ~ごめんだけどこの子立てなくなっちゃったみたいでぇ~。保健室まで運んであげてくれなぁい?」
「えっあっ、ぼ、僕たちですか?//」
「そぉ~……だめ?」
「喜んでーーー!!!!!」


少し首を傾けて上目遣いで見てみると、勢いよく顔を振りながらその子を掴んで走り去ってしまった。それを見届けてから合格届けに入っていた自分のクラスを目指す。入学時のクラスは完全にランダムで、最初の定期テストで成績順にクラスが別れるらしい。そんなことを頭で考えながら先程のことを思い出す。

保健室という言葉で性行為だと勘違いし、勃起する男。そしてそれに対し何も思わないどころか一緒になって騒いでいる男たち。……もしかしてオレは、とんでもないところに入学してしまったんじゃないか……???

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