チャラ男は愛されたい

梅茶

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むかしのはなし

俺は優等生

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小さい頃の話をしよう。
俺は幼稚園の頃から優等生だった。
先生の手を煩わせることも無く、誰とも喧嘩せず、いつもニコニコ笑っているみんなの人気者。そんなポジションだ。

小学校に上がってもそれは変わらず、相も変わらずクラスの中心となり、誰もやりたがらないような委員長や雑用を進んで引き受け、クラスのみんなからは慕われ、先生にはいつも褒められていた。
しかも俺は勉強も運動も得意だし、だいたいどんなスポーツも人並み以上にできた。ついでに人と話すことも得意で顔もいい。女子からも男子からも好かれている自覚はあった。まあクラスのガキ大将みたいなやつには生意気だと嫌われていたが。

しかし、それを除けば俺は完璧。歳の割に驕ることもなくいつも落ち着いていてあの子は天才だと誰もが口を揃えて言うほど優秀だった。そうして小さな頃からもてはやされて人生イージーモードな毎日を送っていた。
ちなみにこれは俺が勝手に思っている妄想ではない。決してない。周りが言っていたことである。もう1回言うが俺の妄想ではない!!違うって言ってるでしょ!!!

…ん"ん"、そんな話はどうでもいい。それが崩れたのは俺が小学6年生のときだ。
なんと母親の浮気が発覚したのだ。
父が仕事でたまたま遠くに行っていた時に、これまた遠くに仕事に行っているはずの母が若い男といちゃついているのを見つけたらしい。その時は何も言わなかったが帰ってから問い詰めるとあっさり白状。

しかも俺の母親は結構偉い家の出らしく、そのお相手も母親より更に上の地位の方だったらしい。お相手は母が結婚していること、子供がいることを知らないらしく、だからなのか母方の家は俺たちの方が遊びであちらが本命ということにし、なんと俺たちと母の関係を隠蔽しようとしたのだ。

俺の知らぬ間に父と母とそれぞれの両親が集まり話し合いがあったらしい。その時に父は大量の手切れ金をやるからこのことは秘密にして欲しいと言われたらしく、俺たちをなんだと思っているんだと激怒。金などいらないから二度と顔を見せるなと、その場で離婚届を投げつけたらしい。
そしてそれを母は承諾したらしく、次の日目覚めると家から母の荷物が全て消えていた。

それに関して俺はあんまり気にしていないが、父はそうではなかったようで地元に帰ることを決意。理由は母に会う可能性を出来る限り下げて関係をスッパリと断ちたかったからだという。それと、ご近所さんに女性が多いのが嫌だったらしい。これはもう間違いもなく女性不信である。
まぁ、仕方ないとは思うが。

そうして父に引き取られ生きることを決意した俺だが、ここで問題がひとつ。
離婚したのは俺が小学6年のときで、しかも3月。そんな時期から中学受験などできるはずもなく、家から近い地区内の中学に行くしか無かった訳だ。そこが、とんでもない不良校と噂の中学校だったとしても。

でもいうて中学校で不良って言っても大したことないんじゃない~?と思ったそこのあなた。これがもうめっちゃ大したことであったのだ。
何故か常に割れている窓ガラス。髪を染めたり服を着崩すのは当たり前。ピアスにタトゥーと何でもあり。リンチにいじめや痴情のもつれなど何かしらの問題がいつも起こっているという、全国的にも有名な超底辺校だったのだ。

入学前の見学に行った時俺は恐怖した。
小学校ではいい子と常にもてはやされていた俺がこんな学校でやって行けるわけないと。入ったが最後カツアゲされて虐められる図が容易に想像できてしまった。

暴力などできるわけがないがいじめられるのも嫌だ。悩みに悩んだ挙句俺がとった手段は…髪を染めることだった。いつも清潔感を心がけていた制服をチャラく着崩し、喋り方も間延びしただらしない喋り方に。それに加え女物の香水を漂わせ、さも遊んでいる感を演出。

そうしてどこからどう見ても完璧にチャラ男な俺が完成したのである。
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