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真実を知る者 ジェダイナ公爵視点

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「その証拠とは?」

あるはずがない。
ある訳がないんだ。
そのくらい私は慎重に進めてきたんだ。
それはラグデル家の人間にしても同じだ。
つまり国王は私がボロを出すのを待っているんだ。
証拠なんてないんだ。

「俺がジェダイナ家を怪しんだのは正直言って勘だな。ただ古くから仕えてくれているジェダイナ家だったからこそ、俺が信用してはいけないと思ったことがきっかけになったんだ。だがな、俺の勘は当たっていた。」

勘?そんなもので私に罰を与えようと思っているのか?笑わせてくれる。

「ある者がな…ジェダイナ公爵の悪意を密告してくれたんだよ。」

密告?馬鹿げている。
私の計画は綿密に練られているんだ。
私が真に信用した者達にしか計画は任せていないんだ、誰かが密告なんて出来るはずがない。
国王は証拠を捏造する気か?

「その者は公爵に罪を認めて更生して欲しいと願っていた。」

そのような話で私が絆されるものか。

「だが俺はこの国の王だ。更生させたいと願うその者には申し訳ないが、今日まで公爵を捕まえられなかった事を悔やんでいる。それは俺が欲を出したせいだがな。無用な犠牲者を増やしたのは俺の落ち度だな。」

何を言っているんだ?何が言いたいんだ?

「公爵よ。」

「何でしょうか?」

「何故、俺の妹を殺した?」

人身売買の話だったのではないのか?
何故パトリシア嬢が亡くなった話になった?
落ち着け…気付かれるような事は何もない…証拠は何も残っていないんだ。

「何のことでしょうか?」

「質問の意味が分からなかったか?」

「…えぇ。」

「ならもう一つ質問しよう。何故、娘のクリスティーンを殺した?」

!!!!
何故、その事も知っている?
いや、それも証拠なんてないんだ。

「ですから何のことでしょう?」

「自分から話す気はないのか?」

もったいぶった話し方をする。
それが作戦なのか?
そんな子供騙しのような策に私が嵌ると思っているのか?

「ですから何のことか…」

「お前が人身売買をしているラグデル家と手を組んでいたこと、娘のクリスティーンを事故に見せかけ殺したこと、それから俺の妹であるパトリシアを自殺に見せかけ殺したこと、それから俺の姪であるネイオウミも同じく殺そうとしたな…それらのことについて自身の口で話す気はないかと聞いている。」

本当に知っているのか?本当に証拠があるのか?そんなはずはないんだ。

「ふぅ…そうか。言う気はないか。そうだ、俺も言い忘れていた事があった。」

何だ?

「俺に願い出た者は当時はまだ5才の男の子だった。」

「ご、5才?」

「その男の子の言葉に自身も真実を知りたいと協力してくれた者がいた。その子の祖母にあたる。」

私は咄嗟に妻の顔を見た。
当時5才の男の子は…ヴィンセント?今、ヴィンセントは何歳になった?10才か?では5年前のあの日、ヴィンセントは見ていたのか?それを国王に伝えたというのか?5才の子供が?
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