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小娘退治? サミュエル公爵視点

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ニコラス侯爵は膝から崩れ落ち肩を落とし一点を見つめたまま動かなかった。
まぁ私がニコラス侯爵の立場なら同じようになっていたと思う。
最愛の人…私だとヴィッキーに裏切られたと疑い続け、その疑い自体が過ちだと知り、娘を邪険に扱ってきたのだ。
その上、自分の娘だと分かった時にはもう自分の娘ではなくなるなんて…
ニコラス侯爵が今までイオにしてきた事は許せる事ではないが…我が父親の業の犠牲者であることも間違いない。
パトリシア夫人…姉さんの髪はその髪色のせいかグラデーションが分かりにくかったと兄さんも言っていた。
まさか自分の妻が王家の血を継いでいるなんて思いもしないよな…
まぁイオをニコラス侯爵から引き離す私が言っても聞く耳を持たないだろうが、今の侯爵とイオにはある程度の距離は必要だと思っている。
もし、このまま侯爵の元にイオを返したとしたら…気まずいまま侯爵はイオを手放さなくなるだろう。
それでは私の息子が憤怒の悪鬼になりかねないからな。
侯爵とイオのためにも今は距離を置く方がいいだろう。

さて、それではそろそろ夜会も終焉に向かうべきだろう。
だがその前に、もう少々余興があってもいいだろうか?
私は兄さんに比べれば温厚な方だが、だからといって怒る事がない訳じゃあない。
ただ私より兄さんの方が怒りの沸点が低いだけだ。
さて、私が何を言いたいかと言うと…先ほど私の息子と未来の義娘を侮辱しただけにとどまらず現在進行形で喚き散らす小娘…シャーロット・レナイト。
イオが王家の血を継いでいると聞いても彼女だけは顔を青ざめさせる者達とは違い血気盛んに喚いている。
根性と度胸だけは褒めてやっても良いが、世間知らずなのか怖いもの知らずなのかは分からないが分を弁えないところは減点だな。
とにかく自分が今までしてきたことも含め反省をすべきなのだ。
なのにこの状況になっても己の立場が分かっていない馬鹿な小娘には粛清しなければならないな。
私がそう思い声をかけようとしたその時だった。

「黙らっしゃい小娘が!」

そんな清々しい惚れ惚れするような声が聞こえてきたのです。
その声の主は私の最愛の妻ヴィクトリア・サミュエル。
こういう時にヴィッキーが表立つことが多いからか、余計に私が温厚だと言われるようになるんだ。
でも仕方ないだろう。
ヴィッキーは愛情深い優しい女性だ。
自分の息子を冒涜され、可愛がっているイオを侮辱されているのだから。
それにイオは過去には髪を切られ階段から突き落とされ大怪我を負ったのだから。
だから私は妻に花を持たせるべく静観することにした。

「こ、小娘⁉︎」

「淑女のかけらも見当たらないのだから小娘で十分でしょう。それとも貴女は自分の事を非の打ち所のない立派な淑女とでも思っているのかしら?」

「と、当然ですわ!私はハロルド様と結婚し未来の王妃になるのだから!」

ピシッ…

あぁ、なんて命知らずな…
ヴィッキーの美しい笑顔にヒビが入るほど馬鹿な小娘だ。
この後に及んで王妃になるなどと…
まず、ハルが王位を継ぐとは決まっていない。
なのにそうなるのが当然のように言うとは国王に対しても不敬極まりない。
さらにハロルドの母親であるヴィッキーへのその物言いは火に油だからやめて欲しい。
頼むからこれ以上ヴィッキーを怒らせないでくれ…
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