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愛しい人 ハロルド視点

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何か起きると人は後悔してもしきれない気持ちになる。
それが分かっていたからといって気が休まるどころか、あの時一緒にいれば…という思いが溢れてくる。
約束の事があるからと気持ちを言うのを先延ばしにして、それを理由に逃げていただけだった。
もしもこのままイオに会うことが叶わなくなったら…そう思うと恐怖で恐ろしくなる。
幼い頃に誘拐された時よりも恐ろしい。
こんな事ならイオに気持ちを伝えておくべきだった。
そうすれば俺のエゴだったとしても片時も離さず側にいたのに…
イオを何としても探し出さなくてはと思い立ち探しに行くも
ジェダイナ公爵家を自由に見て回る事はできず、イオの捜索は進まない。
苛立ちを発散する事も出来ず怒りが燻る。
何も出来ない時間が過ぎて行く…
時間だけが無常に過ぎていく。
そんな時だった。

「……の~」

微かにイオの声が聞こえた気がした。

「今イオの声が聞こえなかった?」

直ぐに皆に確認するも皆んなには聞こえていないようだった。
イオに会いたくて幻聴が聞こえたのかもしれないと落胆し椅子に腰掛けた時だった。

「ゔっ…あ、あっあの‼︎」

ガタッ!

やっぱりイオの声がして思い切り立ち上がる。
今度は俺だけではなく皆んなにも聞こえたようで皆んなも慌ただしくなる。
イオの声だと思いたいだけかもしれないと思いながらも声をかける。

「イオなのか?」

そうであって欲しいという思いとそんな訳はないという思いで聞いてみた。

「そうです。ここを開けてください!」

やっぱりイオだ!でもどこに?壁の中から声が聞こえる気がする。
『ここか?』『いやこっちか?』などと言いながら探し続ける。その間もイオは何度も『ここです!』と言い続けたが声が反響したように聞こえて場所が特定できない。
途中からイオが壁をドンドンと叩いてくれる。
壁を叩いてくれたから場所が分かる。

「ここか!」

壁際に置かれた棚を移動させると扉が現れる。

「イオ!」

扉の中にはイオがいた。
イオは綺麗に着飾った朝の姿ではなくなっていたが俺には関係なかった。
イオがどこにも怪我を負っていなかったから、無事に帰ってきたからそれだけで幸せだった。
無意識にイオを抱きしめていた。

「離れてごめん…ごめん…」

イオも『離れてごめんなさい』と伝えてくる。
イオが謝る必要なんてないのに…
俺は腕の中にいるイオが愛しくてたまらなかった。
もう絶対に離さない、このまま連れ帰る…と思っていたのに何故か母さんの一声でイオは夜会に参加することになっていた。
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